コードギアス ~生まれ変わっても君と~   作:葵柊真

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第二十五話 波涛②

『我々は、ここに独立国家、日本の再興を宣言するっ!!』

 

 

 

 中継画面にて痩身の男が声高々に宣言する。

 

 ルルーシュの記憶にある過去にあっては、男の周囲に日本人はおらず、その背後には中華連邦のKMFや軍人達がひしめくなんとも寂しい独立宣言であった。

 しかし、今回に限りはそこに一部のレジスタンス勢力やどこに潜んでいたのか、旧枢木政権の幹部達も数名駆け付けている。

 当初の計画では、ここに片瀬率いる日本解放戦線も加わっているはずだったのだから、規模は小さくとも国家の体裁は整っていたのだろう。

 片瀬が謀殺され、糸を引いていたモニカがブリタニアから追放されたことで宙ぶらりんになるはずだった計画。

 そこは権勢を欲する澤崎と中華の利害が一致したために行動を起こしたと言える。

 本来であれば、モニカによるレジスタンスの扇動も無く、ほぼ中華連邦軍の戦力のみで傀儡政権が樹立されるはずだったのだから。

 

 

 

『して、日本の姫としての返答は如何に?』

 

「当然、認められるはずがありませんわ。総督閣下。まだ幼き身にあれど、私はかつての日本の主。今はエリア11に暮らす名誉ブリタニア人として、ブリタニアに背くつもりも、彼等に組するつもりもございませぬっ!!」

 

『ふん、勇ましいことだ』

 

 

 

 切り替わった画面に映るコーネリアの鋭い視線に、神楽耶は伏せていた顔を上げ、立ち上がるとはっきりと答える。

 

 彼女としても、自分を無視して独立を宣言したあげく、サクラダイトの採掘利権の譲渡まで要求されては呑めるはずも無い。

 そんな神楽耶以下、キョウト達の態度にコーネリアは鼻白むも、キョウト側が匿うこの日本の姫の存在はゼロと並ぶ日本の象徴。

 水面下ではゼロに組しているという情報もあったが、尻尾を掴めない以上は放置している状況であり、神楽耶としてもゼロとの盟約を嗅ぎつけられるわけにはいかない以上、綱渡りとも言えるやり取りが続いている。

 コーネリアからすれば、神楽耶達が澤崎を拒絶し、改めてこちらに膝を屈する言質を取れればそれで良い。

 

 固有の武力を持たず、サクラダイト利権に縋る亡者達という認識である以上、前言を翻して澤崎の側に走ったところで排除する名分になるだけであるし、合流しなければ澤崎の宣言に期待する日本人の希望を砕くことが出来る。

 そんなダールトンの進言を受けて、サクラダイトの後方輸送を命じた後、コーネリアの興味は彼女達から前線の中華軍へと移っていき、画面からは消え去った。

 

 

 

「……ルルーシュ様、これでよろしかったでしょうか?」

 

『けっこう。さすがですね、神楽耶様』

 

 

 

 そんなやり取りを聞いていたルルーシュと騎士団幹部達。

 

 篠崎咲世子を通じてルルーシュには澤崎との連携やサクラダイトの融通は無い事を改めて告げており、騎士団側に加わる日本人に動揺は無い。

 あるとすれば、はじめてこの場に招かれた朝比奈と千葉がブリタニアの皇子と親しげに話す神楽耶の様子に目を丸くしているだけだが、ルルーシュ達が気にすることでも無い。

 

 

 

「大分のレジスタンスはそちらが抑えてくれたおかげで蜂起を思いとどまった。だが、熊本や鹿児島は同調してしまった。彼等を見捨てるのは忍びない」

 

『澤崎を捕らえたとしても、彼等の支援を大義名分に中華も侵攻を続けるでしょう。そして、ブリタニア側もそれを討伐せざるを得ない』

 

 

 

 コーネリア等に先立って九州入りした吉田や井上は大分から宮崎にかけてのレジスタンス達との接触に成功し、澤崎は中華の傀儡に過ぎないことなどを説いて回り、蜂起を思い留まらせている。

 澤崎が用意したとされる支援物資の大半がブリタニア製であったことから、謀略の真相に気付かされ、キョウトからの通告も影響している。

 九州に関しては騎士団としても介入するのは難しい距離であるから、こちらの方面指揮官なども欲しいところではある。

 

 

 

「こちらが支援していたグループも半々と言ったところだ。中華側に組したグループは、致し方ないが討ち果たすしかあるまい」

 

『当初の予定通り。ブリタニア軍の攻撃を受けているグループは救出するが、中華と合同し、説得に応じないグループに関しては相応の対応をさせて頂くが、よろしいか?』

 

 

 

 桐原に変わって口を開いた刑部の言に、さらに言質を取るように問い返すルルーシュと、それに対して肯いたキョウトの首脳達に、藤堂達が色めき立ちかける様子がルルーシュの目には映った。

 

 

 

「お待ちください。中華はともかく、レジスタンス達はヤツらに利用されているに過ぎません。討ち果たすと言うのは……」

 

『では、貴公が説得するか? 藤堂中佐』

 

「許されるのならば」

 

 

 

 目に見えて反抗的な視線をルルーシュへと向ける朝比奈や千葉を制しつつ、口を開いた藤堂にキョウトの重鎮達が眉をひそめるも、ルルーシュは表情を変えずに問い返す。

 藤堂自身、広大な九州各地のレジスタンスを説得できるという自信は無かったが、ルルーシュ―ゼロのこれまでの戦いを考えれば、敵対者は容赦しないだろうと言う事は予想が付く。

 とは言え、藤堂からすれば、ここで日本人に犠牲が出ては解放戦線同様に強硬派を抑えられなくなると言う懸念もあった。

 片瀬の残した戦力も大半が海軍に保護されて合流しないままであり、騎士団に走ったメンバーも多い以上、これ以上手勢が減っては何も出来なくなってしまう。

 

 そして、行き着く先はゼロ―ルルーシュによる日本の支配という構図が容易に予想が付く以上、藤堂としても譲るわけにはいかなかった。

 

 

 

「藤堂中佐。いくらあなたの名声を持ってしても、目の前にぶら下がったエサに食いついた者達がそれを離すことは難しいでしょう。私としましても、より多くの日本人が救われることを願いますが、澤崎に組したことの意味をしっかりと考えなさい」

 

 

 

 だが、それを許さぬものもまた存在する。

 澤崎の宣言によって自身の立場を蔑ろにされた神楽耶である。

 

 

 

「神楽耶様は澤崎を決して許さぬおつもりですか?」

 

「当たり前であろう。何を言っているのです?」

 

「いえ。出過ぎたことを申しました」

 

「藤堂中佐。私に何か隠し立てすることがあるのですか? ならば申して見よ」

 

 

 

 鋭く、澤崎を否定する神楽耶に対し、藤堂はどこか含みのある事を口にする。傍らに座す卜部と仙波が止めておけとでも言いたいような視線を向けているが、藤堂は眉をひそめたままである。

 

 おそらく、藤堂は片瀬と澤崎の謀議を知っているのだろう。

 

 モニカが彼に詳細を話すはずは無いからすべてはモニカの手のひらの上であった事は知らないだろうが、片瀬の置き土産のような計画を否定されたことで藤堂自身も混乱しているようにもルルーシュには思えた。

 

 

 

「申して見よと言っているのですが、聞こえませぬか?」

 

「はっ……。では、藁にも縋る思いで澤崎に組してしまった者達に関しましては何とぞご寛恕のほどを」

 

「……レジスタンスメンバーは当然でしょう。ですが、澤崎と共に独立宣言の場に居た指導者層はそうはいきませぬ。よろしいですね?」

 

「はっ」

 

 

 

 しかし、神楽耶の剣幕に藤堂は兵士達の地位保全を願い出るしか無くなってしまう。

 卜部や仙波はそれで安堵しているが、朝比奈や千葉はなんとも言えない表情である。

 

 実際の所、解放戦線をはじめとする旧軍はこう言った責任回避主義とも言うべきか、連帯責任主義の結果、事なかれ主義的な空気が蔓延していた。

 結果として、結束は生むが信賞必罰が成り立たなくなり、組織としての在り方も崩れる。

 キョウトにある刑部なども当初はそうであったが、当人達が意識しないところで縁故やゴマスリが退廃を産み、組織を腐らせていたのだ。

 藤堂は軍人としてだけでなく、武人としての立場もあったため、そう言った組織的な欠陥を知ること無く英雄として祭り上げられてしまい、立場上逆であるが、片瀬からのゴマスリめいた信頼を恩として受け止めてしまった。

 軍人としての期間が長い卜部や仙波はそれに危惧を持っていたが、まだ若い朝比奈や千葉もその空気に浸りきっている面がある。

 そのため、同じ日本人のレジスタンス達に対する処分も受け入れがたいという気持ちになっているのだ。

 

 結果として、それは組織の破滅を生むだけなのだが、命のやり取りをしている軍人という立場にとって、結束というモノが何よりも求められる側面があるだけに否定しがたくもある。

 

 

 

『神楽耶様、我々としては、剣を収めた者達はともかく、剣を向けてくる者達に対して配慮する義理は無い。藤堂中佐の説得が間に合わない、もしくは通じなかったグループに関しては、ブリタニア、そして中華諸共討ち果たす。これに対しては了承して頂きたい』

 

「なっ!?」

 

「致し方ないでしょう。あなた方には少なくないレジスタンス達の命を救って頂いているのです……彼等の命に対する責任は、私が背負いましょう」

 

 

 

 だが、ルルーシュとしては藤堂達が危険を犯すことは構わなくとも、ようやく形になってきた騎士団を壊滅させるわけにはいかない。

 元々、神楽耶達との間では話が付いていたため、これは藤堂達への楔でもある。案の定、藤堂等は憮然としたままこちらに視線を向けて続けていた。

 

 

 

 

「ふう、嫌われたかなこれは?」

 

 

 

 本州から中国地方を抜けて、九州へと向かって伸びる山岳道路をG1ベースとトレーラーの車列が続く。

 先ほどまでのやり取りはこの場に居る全員が聞いているが、なんとも言えない緊張感が漂っている。

 

 

 

「神楽耶との会話を聞いておきながら、『自分の知ったことか』と言い放ったようなモノだ。当然だろう?」

 

 

 

 通信を終え、苦笑したルルーシュに呆れながら口を開いたC.C.だったが、彼女としても藤堂達の煮えきらない態度は腹立たしくも感じていた。

 謀略に引っ掛かった事は仕方が無いが、神楽耶の立場を考えない独立宣言に同調したのだ。反逆者として討伐されても文句は言えないのである。

 そして、それを担うはずの藤堂等の代わりをこちらがしてやるというのだから、感謝されども反発されるいわれは無い。

 

 

 

「しかし、本当に討ち果たしてしまうのか? さすがに、俺達も抵抗があるぞ?」

 

「説得に応じないならな。九州はさすがに俺にも管理しきれないし、兵力は残っていないときつい」

 

 

 

 今回、九州方面を任せられるかどうかを見るために伴ってきた扇が不安そうな表情を向けてくる。本格的な始動はともかく、レジスタンスと現地住民の融和などに関しては彼でも十分にこなせる。

 

 

 

「それならいいが、俺にどうにか出来るんだろうか……」

 

「軍事面での補佐役は用意する予定だ。扇グループのメンバーの方がいいかも知れないが、吉田達を取られると俺が困るからその辺りも検討しないとだな」

 

 

 

 変なところで人たらしなところがあるため無用な反発は生みにくいだろう。

 問題は、軍事面で補佐するべき人材だったが、当初は藤堂に任せてみようとも思っていたが、あの調子ではただの解放戦線の復活になりかねないと言う懸念があった。

 扇と一緒では、シュナイゼルなどにあっさりと切り崩されてしまうかも知れないだけに、智勇の両面で頼りになる人材が必要だった。

 しかし、吉田や永田を残してしまうと本隊の統率が取れなくなってしまうし、井上は良くも悪くも扇と同じ文官タイプだから該当しない。

 

 

 

「ならばいっそ玉城に任せてはどうだ?」

 

「なにっ!? とうとう俺にも重役が来るのかっ!?」

 

 

 

 そんな事を考えていたルルーシュに対し、C.C.が人の悪い笑みを浮かべて提案してくると、双葉と浮かれながら話をしていた玉城がピクリと反応して笑顔を浮かべてこちらに寄ってくる。

 

 

 

「駄目だ」

 

「勘弁してくれ」

 

 

 

 珍しく扇が自分の意思を表明したと思えばルルーシュとぴったりと意見が合う。

 

 

 

「あんだよっ!! 扇まで」

 

「お前は司令官と言うよりは現場向きだ。とりあえず、機体を壊すクセをさっさと直せ」

 

「ちぇっ……。まあ、期待していなかったけどよ。ようやく、怪我も治ったんだから持ち場をくれよな?」

 

「それはもちろんだ。言っておくが、俺はお前の殺しても死なないタフさを買っているんだぞ?」

 

「おうよ。この玉城真一郎様が簡単にくたばるかよっ!!」

 

 

 

 言外に、兵隊のままだと言ったつもりだったが、当然のようにそれを理解できなかった玉城は満足げに笑いながら双葉達の所へ戻っていく。

 

 彼女は加入して間もないが、元々ホテルジャックの際に玉城等と顔見知りとなり、モニカ等との和解現場となったアッシュフォード系列病院に勤めていた事から騎士団に参加している。

 オペレーターとしてのイメージの方が強かったが、元々看護士だった事まではルルーシュも把握していなかったため、今回はオペレーター以外にも応急手当などに当たってもらう予定だった。

 トリオを組んでいた日向と水無瀬はまだ加入していないため、時期によっては彼女が上司になってしまうかも知れないなとルルーシュは思っても居たが、今は初陣を前に緊張している様子も見てとれる。

 

 彼女以外にも、本格的な遠征となる今回に備えて、G1ベースに詰める人員は増やしているため、シャーリーとナナリーを中心にバックアップ事項の確認をしていたのだが、そこに玉城が軽口を挟んで緊張を解いているらしく、笑顔も見られるようになってきている。

 

 

 

「適材適所ってヤツなのかな?」

 

「かもな。扇だってそうだろう?」

 

「あ、ああ。最初はプライドの高い連中を取り持つのは骨だったけど、戦闘指揮が無いだけマシだったな」

 

「それで良いさ。問題は戦闘指揮官だが……」

 

「珍しいな。宛てが無いのか?」

 

「一応、当たりは付けていたんだがな。再検討が必要になった」

 

 

 

 元々は扇グループのトップだったが、今は騎士団内部の立場は吉田や井上と同格である。

 

 その事に不満を訴えない人間性は買っていたが、上に立つとその重荷から暴走してしまう事は過去からもはっきりしている。

 あくまでも文官という地位から外さないという事が重要になって来るだろう。何より、彼の判断を狂わせた女性はこちらの陣営にあるのだ。

 

 

 

「そう言えば、お前達が保護したヴィレッタ・ヌゥだが」

 

「ああ、あの時は勝手な事をして申し訳無かった」

 

 

 

 扇達は井上を通じて片瀬等の救出作戦の場において民間人の避難を指揮していた。ルルーシュも井上からの提案であったので追認していたが、扇達が来ることまでは把握していなかった。

 そして、民間人を保護した後はこちらの戦いを見ていたのだが、運命の巡り合わせか、戦闘に巻き込まれて負傷したヴィレッタを彼等が保護してG1ベースまで連れてきたのだ。

 

 

 

「おかげさまで軽傷で済んでいる。彼女は元々ジェレミアの下にあった協力者でな……むっ!?」

 

「どうした?」

 

「いや、ちょっと思いついたことがある。いずれにしろ、その後の事は後でとりまとめるとしよう。到着まで九州のレジスタンス達の情報を頭にたたき込んでおいてくれ」

 

 

 

 今回、扇には先発している井上達と合流し、レジスタンス達をブリタニア軍後方から蜂起させる役割を担ってもらう。

 

 それを理解している扇もまた、ルルーシュの言に表情を引き締めて肯いた。

 

 

 

◇◆◇◆◇

 

 

 

 玄界灘を挟んで交戦を開始したブリタニア軍と中華連邦軍。

 

 強力な戦力を揃えるブリタニア軍に対し、数で勝る中華連邦軍は台風の上陸と言う気象状況にも助けられ、航空戦力の展開が無いブリタニア軍相手に戦線をしっかりと守り切っている。

 そして、後続軍が長崎から熊本に掛けての沿岸部に上陸し、現地レジスタンスと呼応して守備隊を蹴散らし、着実に九州全域を支配下に収めようと軍を展開していく。

 

 

 

「まだまだ荒れるな……」

 

「クマモト、カゴシマのそれぞれのゲットーでもレジスタンスが蜂起し、中華連邦に組していると」

 

「ふん、小娘め。澤崎だけで無く、レジスタンスも抑えられぬでは無いか」

 

 

 

 暴風の吹き荒れる中、エリュティアを瀬戸内海にて着水させ、コーネリアもまた艦隊と共に玄界灘に布陣している。

 陸軍に比べ、海軍の強化が進んでいない中華連邦としては、海上での戦闘は避け、陸での決戦に備えると言うことであろう。

 上陸を防げれば東シナ海と日本海と言う天然の防壁が猛威を振るう日本列島だったが、制海権を奪われてしまえば、九州は安定した戦力の供給地となってしまう。

 コーネリアとしても面白くない事実であるが、先ほど自分に対して啖呵を切って見せた皇神楽耶の放言を思い返すと、ますます苛立ちも募る。

 

 

 

「閣下」

 

「うん? ……姫様、クマモト、カゴシマの双方にて戦闘が始まったようです」

 

「何を言っている?」

 

「それが、黒の騎士団が介入してきたとの連絡が」

 

「っ!? また、ヤツらかっ!! この機に乗じてキュウシュウを取り戻そうというのかっ!!」

 

 

 

 ギルフォードの口から告げられた事実に、コーネリアは目を見開き、即座に戦況マップを九州南部へと移す。

 

 すると、中華連邦とレジスタンスを示す赤いマークと友軍を示す緑色のマークの交戦点に所属不明を示す青いマークが灯っている。

 黒の騎士団の介入が事実となれば、その背後にあるとするのはNACであろう。

 コーネリアはダールトンの報告からキョウトこそがそれであると思っていたが、そうなると澤崎の反乱を黙認していることにもなる。

 

 

 

「小娘がっ!! 私を謀るとはなっ」

 

「お待ちください。騎士団は……中華連邦軍との交戦を開始しました」

 

「なにっ!?」

 

 

 

 神楽耶のような年少者に出し抜かれたという事実に歯ぎしりしかけたコーネリアだったが、騎士団の介入で一気に苦しくなると思われた友軍を救援し、勢いに乗る中華連邦軍へと襲いかかっている。

 さらに、レジスタンス側も一部が黒の騎士団に同調し、瞬く間に情勢は逆転してしまった。

 

 

 

「どういうつもりだ??」

 

「皇神楽耶の言の通りと言う事でしょうか?」

 

「報告によれば、レジスタンスの決起は現地守備隊のイレブンに対する暴虐が原因とのことです。その一隊を排除した後、中華連邦への攻撃に転じたと」

 

「…………中華連邦と同じ大義名分と言う事か。馬鹿にしおって」

 

 

 

 オペレーターの報告を見れば、物資の徴用を巡って一悶着があり、民間人に少なくない犠牲者が出たという。

 それを理由に現地に潜入していた騎士団がそれを排除。すると、占領地での中華連邦軍の略奪行為が発覚して、今度は中華連邦への攻撃に転じたとされる。

 双方に対して戦端を開いた形だったが、互いに激突して疲弊している状況に加え、元々騎士団が抱える“力無き者を救う”と言う大義名分に沿った行動と言える。

 そして、これは人道支援と言う大義名分を掲げた中華連邦に対する皮肉と批判も含まれていた。

 

 

 

「しかし、騎士団の介入を許した以上はあまり悠長な事は出来ませんね」

 

「ああ……。やはり、兄上の提案に乗るしか無いか」

 

 

 

 開戦に先んじて、本国にあるシュナイゼルから、特派に関する一つの提案をコーネリアは受けていた。

 いまだシミュレーション段階だったが、特派がKMFのフロートシステムを完成させたという情報であり、必要であればコーネリアの権限で戦線へ投入することを許可すると言うモノである。

 特派の主任であるロイドは奔放な振る舞いが多く、デバイザーの枢木スザクはユーフェミアの騎士となった事もあってコーネリアは遠ざけがちであったが、情勢は自分のわがままを許してくれそうに無い。

 シュナイゼルとしても、本国における兄姉達の動向が油断できぬモノになってきたとの背景があり、武器となる駒は多い方がいいという判断であろう。

 航空戦力の強化は戦争そのものを大きく変容させるだけの影響力があるのだ。

 

 

 

「風雨が去り次第、行動を開始する。各員は戦闘態勢のまま待機し、前線部隊は敵を押し続けるよう伝えよ。騎士団の介入前に澤崎を捕らえるぞっ!!」

 

「イエス、ユアハイネスっ!!」

 

 

 

 現状は自然の猛威が自分の前に立ちふさがる。だが、それもあと僅かなこと。

 騎士団の介入という予想外の事態はあったモノの、こちらが先に澤崎を捕らえれば、レジスタンスの件と併せてキョウトを追い詰める理由にもなる。

 天さえ自分に味方してくれれば、すぐにでも状況を回復してみせると言うのがコーネリアの本音であった。

 

 

 しかし、情勢は彼女の知らぬ所で再び動きつつあった。

 

 

 遠き東シナ海の海上。闇に包まれた海原を疾走する複数の影の存在を、この時まだコーネリアは、そしてルルーシュもまた知るよしも無かったのだった。

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