コードギアス ~生まれ変わっても君と~   作:葵柊真

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第二十九話 波涛⑤

 闇夜に瞬くミサイルの閃光――それが開戦の合図だった。

 

 ミレイは敵艦隊へと向かって降下していく6機のKMFと眼下に位置するアヴァロンの姿を斑鳩から見つめつつ、それらの戦いを見届けるつもりだった。

 ルルーシュによってルーベンとラクシャータの技術チームに与えられた資料データ。そこにはこの航空戦艦のデータもあり、実現に向けて急ピッチで開発が進められていた。

 ルルーシュに対する報告は実戦投入が可能になったらと言う予定だったのだが、今回の変事は渡りに船であり、軌道実戦も兼ねて秘密裏に後方へと投入されていたのだ。

 おかげで南九州のゲットーへの支援やレジスタンス達への協力がスムーズに成り、今後の騎士団の勢力圏拡大へと繋がっていくことになるだろう。

 福岡に居たミレイにそんな報告と共に、ルルーシュ達の敵機動部隊攻撃の報がもたらされたのはほぼ同時のこと。

 冷静でいて、激情を常に心にとどめている我らが主君は即座に自らの手による討伐を決め、彼の血を分けた異母姉も同様の決断を出した事で、ミレイも決断したのだ。

 

 

 

『ここで殿下のお役に立てなくていつ立つというの? お爺さまはルルーシュ殿下が登極した際の恩恵だけ受け取るつもり?』

 

『馬鹿を言うな。私はジェレミア等と共に殿下の盾となる事を誓っているぞっ』

 

『だったら、サプライズプレゼントも当然有りよね~?』

 

 

 

 そんな調子で斑鳩の投入を強引に決めたミレイは、秘密裏に運び込まれていたフロートユニットまで持ち出してリヴァルとソフィーを巻き込み、さらに残った一機の存在を知ったシャーリーに有無を言わさずそれを持っていかれている。

 戦力と言えば伴ってきた三機のKMFだけであり、アヴァロンのような強力な防護壁も無い現実。

 今のところはルルーシュの盾になるどころか、盾になってもらって居るのが実情だった。

 

 

 

「ミレイさん、お兄様はあんな調子でしたが、いつも私たちを見守っていてくださる貴方には感謝していますよ?」

 

「……殿下は私の心をいつもお見通しなんですね」

 

 

 

 そんなミレイの心情を読み取ったように傍らにあるナナリーが口を開く。

 

 開眼してからの彼女はそれまでの読心とも言えるような鋭さにさらに磨きを掛け、ほとんどの人間の虚偽や虚勢を見抜いてしまう。

 儚さやか弱さが目立っていたナナリーはすでになく、現状では『ルルーシュの妹』もしくは、『シャルルとマリアンヌの娘』を体現する存在して騎士団でも色々な意味で恐れられている。

 ミレイにとっては、守護対象であった少女に変わりは無いが、時折、ルルーシュ以上の恐ろしさを感じる時もあった。

 

 

 

「ミレイさん、いつものように呼んでもらって良いですよ? 私もちょっとピリピリしすぎましたね」

 

「……ナナちゃんは本当に大人になったわね」

 

「私は皆さんに甘えて守られるばかりでしたから。でも、目が見えるようになりましたし、ラクシャータさんのおかげで歩くことにも光明が見えました。となれば、私もいつまでも甘えているわけに行きません。――っ!? リヴァルさんっ!! 速射砲が来ますっ!! 電子妨害をっ!!」

 

『うおっ!? 危ねえ、助かったよ』

 

 

 

 やはり、ミレイの心情を感じ取ったのか、困ったような笑みを浮かべてそう語るナナリー。そして、彼女なりの心情を語る中でも自身の役割は忘れていない。

 現場ではルルーシュとシャーリーが連携して管制に当たっているが、見落としがちな点のフォローはこちらの役目となる。

 

 

 

「こっちはこっちの役目を果たすべきね。枢木少尉、カレンっ、エナジーフィラーの消耗が激しいわ。攻勢限界まで達したら無理にでも収容するからそのつもりでいなさいっ!! 艦長、アヴァロンの防御壁からは出ないよう、上手く立ち回って」

 

 

 

 そんなナナリーの様子にミレイも自身の役割を果たすべく座席に着く。

 彼女の元では、現場で戦闘を続ける六機のエナジーフィラーが一元管理されている。カレンとスザクは戦い方も激しい分、その消耗もまた早い。

 戦闘の要である両者が万一にも損失しては、戦いは寄り厳しいモノになる以上、こちらから機体にアクセスして強制収容なども可能としているのだ。

 

 

 

「しかし、輪形陣の防御は固いですね。お兄様が下手を打つとは思えませんが……」

 

 

 

 それなりのバックアップを用意し、制空権を取っている状況でもやはり数の優位は相手にある。

 対空網を突き破っての攻撃であっても、KMFの本領は陸上戦闘であり、海戦に関しては実践例自体がほぼ無いと言っても良い。

 つまりは、作戦を指揮するルルーシュの才覚と自分の達の支援にかかっていると言っても過言では無かった。

 

 

 

「とは言え……、海のことは海の人達に任せるべきなのかもね」

 

 

 

 ナナリーの言に、ミレイもまたルルーシュ等を信じると共に、今はこの場に無き戦力に思いをはせる。

 そんな思いが通じたのか否か、彼等の気付かぬ眼下にうごめく影の存在はゆっくりと戦闘海域へと接近していたのだが。

 

 

 

◇◆◇◆◇

 

 

 

 速射砲の激しい弾幕が艦隊を包み込み、その間隙を縫うように対空ミサイルが襲いかかってくる。

 KMF同士の戦闘とはまったく異なる戦場がそこにはあり、陸において絶対的な優位性を誇ったKMFも、海上においては航空機より遙かに大きな的である事を見せつけられているようにも思えた。

 

 

 

『敵を沈める必要は無い。敵空母の飛行甲板さえ破壊すればこちらの勝ちだ』

 

 

 

 戦闘開始を前にルルーシュはそう言って皆を鼓舞したが、それは敵にとっても同じ事であり、こちらの武器は駆逐艦クラスの小型艦には通用しても、旧時代の異物と揶揄された戦艦にはまるで通用しないのが実情。

 そして、ミサイルに気を取られてその大型砲の射線に入ってしまえば、待っているのは死のみだった。

 

 

 

「ったくっ!! 誰だよ、戦艦は無用の長物なんて言ったのはっ!!」

 

『悪かったな。実際、燃料と金ばっかり食って、使いどころが限られるのは本当なんだぞ?』

 

 

 

 先ほど、ナナリーからの通信で速射砲の弾幕から逃げ延びたリヴァルだったが、お返しとばかりに沈黙させた護衛艦達はともかくとして、空母の周囲を守る大型艦。

 特に、一隻は艦体自体も大きく、ルルーシュが当初は無用の長物と侮った戦艦が巨大な盾として空母群の前に立ちふさがっている。

 ミサイルだけで無く、その巨大な砲塔を持ってこちらを撃滅せんと照準を向けてくる。

 

 

 

『いずれにしろ、夜間砲撃が当たる事など、よほど運が悪くなければ無い。対空砲火とミサイルの接近に気を付けろ。シャーリー、敵空母に動きは?』

 

 

 

 

 すでに輪形陣の内部に入り込んでおり、後方からの攻撃にも対処する必要がある状況。

 夜間である事が幸いしていて、敵戦艦も巡洋艦もその巨砲を撃つことは無い。実際、空を飛ぶ相手を仕留めるには精度が悪すぎるのだ。

 ただし、旧時代のそれに比べ、ハリネズミのように備え付けられた対空砲群やミサイル防御によってまさに動く要塞と化しているそれを潰すことは容易ではない。

 とはいえ、当初のようにこちらがそれを沈める必要も仕留める必要も無い。後方にて情報収集に専念させているシャーリーは、斑鳩のミレイやナナリーと連携して敵空母の動静を探っているのだ。

 

 

 

『現在、直掩機の発艦作業を急ピッチで行っています。まもなく、甲板に航空機が』

 

『スザク、カレン。タイミングが重要だ。こちらの合図を見逃すなっ!!』

 

『了解。任せておいてっ!!』

 

『……了解した』

 

 

 

 機動部隊にとっては奇襲といえど、その防御手段はいくつも用意する。

 

 本来だったら上空にてこちらの侵入を阻むはずだった直掩は攻撃隊の出撃を終えて帰還している状況だっただろう。

 帰投してきた一時攻撃隊の装備換装作業の合間、こちらの攻撃を艦隊を持って抑えていたのだ。

 

 そして、甲板に機体が並びはじめたと言う事は、その準備も整ったと言える。

 

 侵入してきたKMFなど、空の支配者足る航空機の前には恐るるに足りぬ。現場に生きる人間達は皆こう思っているだろうし、状況を知るルルーシュもまた同様に考えている。

 エナジーウィングの装備が行き届けばKMFも航空機と同様に空を支配する兵器に生まれ変わるだろうが、現状の装備ではまだまだ航空機にKMFは及ばないのだ。

 そして、彼等がその翼を空を解き放つときが来ようとしていた。

 夜間であり、本来は危険な発艦であったが、カタパルトをはじめとする多くの装備がそれを可能にしている。

 何より、艦隊の危機に空の番人足る航空機が出て来ないことなど、戦闘機乗りの恥と多くは考えるのだ。

 

 しかし……。

 

 

 

『弾けろっ!! ブリタニアっっっ!!』

 

 

 

 カタパルトに配備され、正に空へと飛び立とうとした刹那、上空から急降下してきた紅蓮とランスロットは、各々がヴァリスと輻射波動を用いて、発艦途中の戦闘機へと襲いかかったのだ。

 発艦時は空母にとっては対空防御を行えぬ最も危険な状況となる。ミサイル防衛が確立された今となっても、それは空母の宿命として変わらぬモノ。

 そして、熟練のベテランでも死傷率は過半を超える急降下爆撃の脅威はいまだに変わることは無い。

 

 

 

「よっしゃあ。さすがカレンっ!! でも、相手はブリタニアじゃ無いだろ」

 

『枢木スザクも相変わらずやるわね。敵陣営に居るのがもったいないわ』

 

 

 

 紅蓮とランスロットの急降下攻撃によって赤い炎を灯し、激しく炎上しはじめる敵空母。

 鋼鉄で覆われたその巨大な艦体は、連続出撃と装備換装作業の連続で、ごった返し、武器弾薬が満載された状況においては、単なる火薬庫に過ぎなくなる。

 如何に防御を固めたとしても、人の為すことが続く以上、一度の攻撃が致命傷になる事実に変わりは無い。

 

 

 

『っ!? リヴァルっ!? ソフィーっ!? 避けてっ!!』

 

 

 

 とは言え、紅蓮とランスロットの共同での大戦果である。囮という役目を何とかこなしてきたリヴァルとソフィーも歓喜の声を上げる。

 しかし、戦場においては一瞬の油断がすべてを台無しにしかねない。それを警戒していたシャーリーの声に、二人ははっと我に返ると、慌てて機体を翻させた。

 刹那、耳を劈く爆音と爆風が機体を包み込むと、その遙か後方にて巨大な閃光が起

こった。

 

 

 

『……ちぃっ!! 空母がやられたのを見てなりふり構わなくなったか。カレン、スザクっ!! すぐに合流しろ。敵が仇討ちのために襲いかかってくるぞっ!!』

 

 

 

 空母の損傷によってもはや作戦を遂行することは不可能。

 

 となれば、役目を果たせなかった戦艦達はその憎き敵を道連れにすることを考えたのだろう。当たりもしない砲撃であったが、その衝撃波は巨大であり、ともすれば味方をも巻き込みかねないほどの威力を誇る。

 だが、作戦が失敗した以上はそのようなことに構うことは無い。中華連邦軍とはそういう組織だった。

 

 

 

『OKっ!! と言いたいところだけど、そうもいかないみたいよ……』

 

『っ!? どうした?』

 

『ゼロ、無理をさせすぎだ。誘爆で紅蓮のフロートユニットが損傷した』

 

 

 

 しかし、ルルーシュやリヴァルの耳に届いたのは、状況をさらに悪化させかねない報告。

 カレンの勇ましい声に陰りが混じり、それまで口を噤んでいたスザクも思わず声に出すほどの状況だったのだ。

 

 

 

『ミレイ、ナナリー。敵の防御網の薄いところを割り出せ。リヴァル、ソフィーっ!!』

 

「分かってるっ!! 任せとけっ!!」

 

 

 

 とは言え、状況が分かればやることは一つである。

 

 ルルーシュの指示と同時にリヴァルとソフィーはカレンとスザクのいる空母へと向かって機体を走らせ、ルルーシュとシャーリーは戦艦を惹きつけるべくハドロン砲へのエネルギー充填と大型キャノンの標準を合わせる。

 

 

 

『っ!? ゼロ、私には構わず離脱してっ!!』

 

「そうはいかないぜカレン。うちの大将は、どっかの皇帝と違って身内は大事にするんだ」

 

『……皇帝陛下への不敬は許さないぞ?』

 

『不敬なんて今更ね。皇帝が怖くて反乱組織になんか身を投じないわよ』

 

 

 

 味方が自身の救出へと動き始めた事を察したカレンがそれを止めようと声を荒げるが、生憎とルルーシュ達は味方を死なせるつもりなど無い。

 スザクとのやり取りも相変わらずだったが、それでも味方の救出を第一としたこちらの行動に、それまでより口調は柔らかい。

 

 

 

「カレン、ちゃんと機体を固定しろよ。こっちは空いてる片手でも戦わなきゃ何だしな」

 

『……私だって自力で動けないわけじゃ無いわ』

 

「緊急事態にとっておけって。こんな時ぐらい素直になれっての」

 

『まあ、素直なカレンなんて病弱モードの時ぐらいしか見られないしね』

 

 

 

 なんとか空母から離れていたようすの紅蓮にヴィンセントとサザーランドが取り付き、ハーケンで機体を固定する。

 肩を貸す形でも空いた腕での戦闘はこなしたい以上、紅蓮を上手くしてもらう必要がある。

 そんな状況でも強がってみせるカレンにリヴァルとソフィーは苦笑するが、抵抗する様子が無い事には安堵していた。

 時折、変な強情さを見せてこちらの言う事を聞かなくなるのがカレンの欠点だったが、自身の命の危機とあっては素直にならざるを得ないのだろう。

 

 

 

『さあさあ、騎士様。負傷した女性がいるんだからしっかりエスコートしてね』

 

『……声の感じからまさかと思っていたが、やはり女性だったのか』

 

 

 

 そして、ソフィーがからかうような口調でスザクに対してそう告げると、スザクは渋々と言った様子で三人の前にランスロットを走らせる。

 通信は聞こえているが、個人名等には雑音が入って聞き取れず、顔も仮面やバイザー越しでは見ることは出来ない。

 さすがに声まで隠したら信用のしようが無いためそのままだったが、やはり口調や声から性別ぐらいは判断が付くのだろう。

 

 

 

「我らが総督様も女だし、女のパイロットなんて珍しくないだろ」

 

『日本ではまだまだ特殊なんだ。せいぜい、四聖剣の千葉凪沙ぐらいしか』

 

「日本女って気が強そうだもんな。ブリタニアも負けていないけど」

 

『悪かったわね』

 

『どう言う意味かしら~?』

 

「さて、枢木少佐、俺達も行くとしようか」

 

『うん? もちろんそのつもりだが……。それより、敵の攻撃が落ち着いている??』

 

 

 

 戦闘中にもかかわらずどこか気の抜けた会話を繰り返す四者。しかし、リヴァルの冗談めいた口調に真面目の答えたスザクは何かに気付いたように周囲を見返す。

 他の三人も続くが、彼の言うように、どこかおかしく感じている。敵の攻撃がすっかり止んでいるのだ。

 

 

 

「ゼロ、どうかしたのか?」

 

『ん? ああ、お前達か。戦艦は俺とシャーリーで潰したから安心して良いぞ』

 

「でも、他の艦が居るだろ?」

 

『心配ない。もうすぐ居なくなる』

 

「は?」

 

 

 

 そんな状況に、リヴァルは首を傾げながらルルーシュへと通信を繋ぐ。

 だが、ルルーシュも何かを考えるような口調でそれに答え、おそらくハドロン砲であろう、艦橋が溶けてえぐれるようにひしゃげ、主砲に巨大な穴が開けられている戦艦の画像が送られて来る。

 しかし、最大の脅威を振り払ったとは言え、まだまだ周囲には敵艦隊が居るはずだった。

 だが、リヴァルの問いに答えたのはルルーシュではなかった。さらに言えば人でも無かった。

 

 

 

 轟音と共に水しぶきを上げ、傾いていく敵護衛艦達。そして、ルルーシュ達に潰された戦艦に対しても、数本の白き波が伸びていくと、左舷に水しぶきがいくつも上がり、やがて戦艦は大きく傾斜していく。

 そして、その白波を生み出した4つの影は、炎上する空母へと向かっていく。

 

 その間、生き残りの護衛艦達からの砲撃が襲いかかるが、四方からの砲撃をなんなくかわすと、脇腹を空母へと向け、今度は十数本の白波が空母へと伸びていく。

 誘爆が続いていた空母は、さらにいくつもの水柱が上がると、さらに大爆発を起こして周囲を赤く照らし上げた。

 

 

 

「ルルーシュ、あのすばしっこい連中は……?」

 

 

 

 あっと言う間の出来事に、リヴァルだけで無く他の者達も唖然としていたが、何とか機体をガウェインと紅蓮壱型の元へと寄せ、ルルーシュに対して問い掛ける。

 

 

 

『『華の二水戦』。公方院がキョウトにも隠していた隠し球だ』

 

 

 

◇◆◇◆◇

 

 

 

 炎上する空母と拉げた戦艦の姿を尻目に、V.V.は脱出艇へと足を進めていた。

 ギアスによって支配した艦隊。本来だったら、たった数機のKMFと数隻の駆逐艦如きに後れを取るモノでは無い。

 だが、ギアスの支配によってその意思を歪められ、本来の実力を発揮させること無く敗れ去った。

 

 

 

「ギアスにも一長一短があると言う事か。それが分かっただけ良しとしようか……。おや?」

 

 

 

 後に続くギアスユーザー達を一瞥しつつそう告げたV.V.だったが、通路の先に立つ1人の男の姿に口を開く。

 

 

 

「やあ、鄭倫提督じゃない。指揮を放り出してどうしたの?」

 

「この艦隊の指揮官は貴方です。ヴィクトル・キングスレイ」

 

「やだなあ、それは君に任せたハズじゃ無いか。職務を放棄しないでね?」

 

「任されたとは言え、私の指示に答えもしない者達をどう指揮しろというのか。貴様が軽口で言うように、皆好き勝手に戦っておる」

 

「ああ、じゃあ命令に重ね掛けは出来ないわけだ。その辺りも収穫かな。まあ、命令が出来ない提督なんてもう不要だね」

 

 

 

 憎しみの籠もった表情でV.V.を睨む鄭倫提督。

 

 その手に握られた拳銃の標準がV.V.へと向けられるが、彼やギアスユーザーもまた、手にしていた武器を鄭倫提督へと向ける。

 状況的に、鄭倫に勝ち目はまず無い。

 

 

 

「私は提督であり、艦隊と運命と共にする権利がある。だからこそ、貴様等の手などは借りぬ」

 

 

 

 そう言うと鄭倫提督は手にしていた拳銃で自身の頭をを撃ち抜く。途端に、こめかみより鮮血をまき散らしながら崩れ落ちる。

 

 

 

「つまり、意地を張るために僕たちの前に現れたと。中華連邦一の提督もつまらない人間だね」

 

 

 

 倒れ伏した鄭倫提督の姿にさしたる感銘も何も受けなかったV.V.は、ゆっくりとその遺体に近づくと、無表情のままにそれを足蹴にする。

 

 

 

 刹那。

 

 

 

「えっ!?」

 

 

 

 死したると思われた鄭倫がV.V.の足を掴み、その動きを奪うと、周囲から弾丸の雨が彼等の身体へと降り注ぐ。

 一瞬の自体に何が起こったのか理解できなかったV.V.。崩れ落ちるその視界に同じように全身に穴を穿たれた鄭倫の姿。

 その表情は明らかに笑っていた。

 

 

 

「……っ。下らない、僕を殺すために死んだふりまでしたのか? 意味が分からないよ」

 

 

 

 何とか起き上がり、そう毒づきながら這うように歩き出したV.V.。だが、その刹那、激しい轟音と共に艦が揺れると、ほどなく揺れと共に大量の水が通路へと流れ込んでくる。

 二水戦の放った酸素魚雷が戦艦の硬い装甲を打ち破り、その命脈を止めたのである。そして、それは船乗り達にとっての絶望。大規模浸水となって艦全体を海中へと飲み込みはじめたのである。

 

 

 

 

(…………身体はまだ残っているはず。だったら、僕はまだ死なない……。シャルル、君にはコードなんか渡さないよ)

 

 

 

 流れ込んできた水に呑まれ、意識が消える間際にそんな事を考えたV.V.。

 

 コードは奪われたはずであったが、V.V.自身、まだCの世界と自分の繋がりを感じ取っている。

 肉体の老化から、不老の呪いは消えたと思われるが、かの世界に用意された自身の身体のストックとの繋がりまでは消えていないと思うのだ。

 

 

 

『そんなに生きたいのか?』

 

 

 

 そんな事を考えていたV.V.の耳に届く女性の声。

 何事かと思っていたV.V.は、周囲の海水が消えた上、暗き艦内に立っていることに気付く。

 そして、語りかけてくる声。

 

 

 

『人間にギアスを与えたのは間違いだったと思っていたが……。貴様はなぜ、ギアスを憎みながらギアスを、そしてコードを求める?』

 

 

 

 尚も語りかけてくる女性の声。

 それに対して、V.V.は憮然としたまま口を開くしか無かった。




更新が大幅に遅れてしまい大変申し訳ありません。
夏場は仕事が繁忙期になるため、秋口までは更新が安定しないと思いますのでご了承ください。
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