コードギアス ~生まれ変わっても君と~   作:葵柊真

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第三十六話 後夜祭②

 ユーフェミアを生徒会へと案内したルルーシュは、私室に戻り、手際よく身支度を調えると、同じく着替えを終えたナナリーとそれを手伝った咲世子と共に生徒会室へと向かう。

 

 途中、いくつかのアクシデントが報告されていたが、それらに対する対応を指示し、ユーフェミアとミレイの会話に耳を傾けた。

 話を聞く限りでは、記憶の中の彼女と比べ、随分成長したようにルルーシュは思えた。

 ジェレミアの介入に加え、自分も加わったことで世界には細かな変化が起こった一つに、ユーフェミアがコーネリアから離れる時間が出来た。

 

 結果として、ジェレミアを通じて自分が介入する時間ができ、現場での政治を見る機会が出来たことで、過去のような暴走が抑えられたことが何よりも大きい。

 とは言え、ミレイが指摘したように、彼女が接したのは共に着任してきたコーネリア派の官僚達が主であり、ジェレミアが用意した官僚達やクロヴィス時代の官僚達とはそこまで接する機会は無かったようである。

 

 コーネリア自身、着任後はジェレミアのやり方に不満があったものの、日本人達も大人しかった事ですぐに取り締まったり、中止させるようなことをしなかった。

 V.V.や解放戦線の暴走の後処理に追われてそちらに構っている暇が無かった事も影響しているが。

 だが、コーネリア派の官僚達にとっては、そういう状況下にあっても主君の意向を忖度することが彼等の役目。

 水面下の争いでジェレミア派は閑職に回されていき、クロヴィス時代の俗物達もジェレミアやキョウトなどとの後ろ暗い過去を隠蔽することに時間を取られて主導権を握られていた。

 そのため、ジェレミア時代に斡旋されていた復興事業などに対する主導権は徐々に日本人の手から離れていっており、少しずつではあるが不満が燻りだしている。

 

 サイタマゲットーでの虐殺が起きていないため、コーネリア自身はクロヴィスのような不倶戴天の敵と言った認識は抱かれていないが。

 いずれにしろ、ユーフェミアが経験を積み、コーネリアが過去ほどに日本人を忌み嫌っている状況で無かった事で、ユーフェミアが事を急がなかったことが今のところは幸いしている。

 

 しかし、彼女は彼女である意味予言者めいた洞察力を発揮するときがある。今がまさにその時だった。

 

 

 

「…………先ほどは失礼をいたしました。リリーシャ・ランペルージ改め、ルルーシュ・ランペルージです。ユーフェミア皇女殿下」

 

「同じく。ロロ・ランペルージ改め、ナナリー・ランペルージです」

 

 

 

 ミレイやシャーリーの置かれた立場を洞察したユーフェミアに対し、ルルーシュはさすがに聞き耳を立てているだけではマズいと思い、ナナリーと共に生徒会室へと足を踏み入れる。

 ランペルージを名乗ったのは、皇族としてではなく、あくまでもアッシュフォードの一学生であると言うスタンスだったが、そのような回りくどい事がユーフェミアに通じるとも思ってはいなかった。

 

 

 

「本当に……、生きていてくれて」

 

「気持ちはいただいておく。そして、コーネリア総督の目をかいくぐってまで会いに来た理由は何だ?」

 

 

 

 二人の他人行儀な物言いに、ある程度は覚悟していたであろうユーフェミアだったが、それでも動揺は隠しきれてはいない。

 改めて生存を喜ぶも、ルルーシュは手を上げてそれを制すと、皇族に対する態度とは思えぬままに席に座り、ユーフェミアを鋭く見つめる。

 

 

 

「はじめに、騎士団絡みの情報からルルーシュに良く似た少年がいると言う噂があって気になっていたの。それから、ニーナに特区の事を話したときの反応を聞いて」

 

「そうだったな。否定されればそれを挽回しようと躍起になるのが君だった」

 

 

 

 ランペルージとして会っているのに、昔の事を思い返すルルーシュの様子は矛盾でしか無いだろうが、名目は名目である。

 

 仮に、後々ユーフェミアが生徒会室で何を話したかとなれば、参加者の中にはルルーシュとナナリーは存在せず、リリーシャとロロという人間が居たことになる。

 とは言え、ルルーシュ自身、きっかけはディートハルトの工作だったことに額を抑える。

 提案された時点で実行は許可しなかったが、粛清した工作員がおそらく情報を流したのだろう。

 外見だけなら、良く似ている少女。でごまかせたところが、ユーフェミアだけには通じなかったのだ。

 

 

 

「お姉様、いえ、ユーフェミア様。その、お兄様に否定された“特区”とやらには、まだ拘っていらっしゃるんですか?」

 

「ナナリー。ここだけでも、姉として呼んでくれて良いのよ? それと、私自身の理想もあるわ。だからこそ、こんな形で問題点を突き付けてもらえて良かったのよ?」

 

 

 

 ディートハルトの工作活動への見直しを改めて咲世子に命ずるべきかと思案するルルーシュを横目に、ナナリーは凜とした視線をユーフェミアに向けたままそう問い掛ける。

 ナナリー自身、彼女の理想には共感する。同時に、ルルーシュ達が否定する内容にも賛同できる。

 おそらく、これはルルーシュも同じだろうとはナナリーも思うが、それを実現する方法にユーフェミアはたどり着けているのだろうか?と言う思いはある。

 ミレイに言及されたように、ジェレミア派の官僚達や所謂“主義者”と呼ばれるブリタニア人達とは接触できていないようであるのだ。

 

 とは言え、ルルーシュが指摘した事項をまとめた書類が彼女の手に届いたというのは意味があるとも思う。

 ナナリーからすれば、その通りにやってみせれば失敗はしないだろうという思いもある。問題は、“その通り”にやることが困難であると言う点だったが。

 

 

 

「その理想は、日本人もブリタニア人も関係が無い世界を作りたい。と言うモノか?」

 

「ええ。そして、ルルーシュ達もそのために戦っている……違う?」

 

 

 

 

 ルルーシュの言を肯定したユーフェミアは、有る確信を持って彼に対して問い掛ける。

 

 きっかけは些細なことだったが、日本で戦いを始めたゼロの下には日本人のみならず、ブリタニア人も多く集っていた。

 特に、ドロテアとモニカという二人のラウンズが皇帝シャルルを捨て、二君に仕える形になった。

 彼女等が受けた仕打ちを考えれば裏切るのも仕方が無い多くの人間が思ったが、二人をよく知る人間からすれば、誇り高い二人がシャルル以外に仕えるならば、その相手はブリタニア皇族以外には無い。と言う認識は多くあった。

 その中でも、日本に送り込まれて死んだとされるルルーシュとナナリーの存在は候補と上げられた。

 

 しかし、忠義に篤いジェレミアや復権のきっかけとなるであろうアッシュフォード一門が二人の生存を知っていて担ぎ出さないわけは無い。と言うのがブリタニア中枢の判断だった。

 自身が皇族を権力争いの旗頭と持ち上げているように、他者もまた同じように皇族を持ち上げていると思うモノである。

 そして、それをせずにエリアに逼塞しているジェレミアやルーベンの様子に、ヴィ兄妹の生存という可能性は多くが否定したのだ。

 

 

 だが、ユーフェミアには枢木スザクという騎士の存在があった。

 

 彼が話した幼い頃のルルーシュの様子と、彼が悪し様に罵るゼロの行動が、実は根本的な部分で似ているようにユーフェミアには思えたのだ。

 ブリタニアをぶっ壊す。とスザクに宣言したルルーシュとまさにその通りにブリタニアに対して宣戦布告したゼロの姿が。

 それが確信に変わったのは、リリーシャとしてのルルーシュの姿を見た際に、その周囲にあった人間達の目だった。

 武人であるコーネリアは戦場や政治の場においてはそう言った一種の殺気には敏感であるが、今日のような祭りの場においてはその勘は薄れる。

 暗殺者などのようなはっきりとして攻撃の意思を持てば別だが、隠そうとする憎悪や警戒心は戦場とは異なる平和な空気の中では薄れてしまうのだ。

 だが、ユーフェミアは戦場とは基本的に縁が無い。出撃しても後方にてその空気を吸うぐらいしか出番が無い。

 そのため、ミレイやシャーリーをはじめとして学生達の中にある一種の緊張感を戦場に漂う一種の空気として感じ取っていたのだ。

 そして、ルルーシュ達を待つ間のミレイやシャーリーの言動は、変革を志すと言う、根っ子の部分で自分と同じ思いを持つ事も感じ取ったのだった。

 

 

 

「さあな。俺は多くの人間に宣言したように、“ブリタニアをぶっ壊す”ために戦っている。この姿勢に変わりは無い」

 

「……っ。それは、お父様やお姉様も打ち倒すと言う事なの?」

 

「力ある者が力なき者を虐げるならば。そして、シャルルもコーネリアも、力ある者の象徴だ」

 

 

 

 ブリタニアを変えると言う気持ちはたしかに共通する。

 

 しかし、ルルーシュとユーフェミアの決定的な違いはこれである。ルルーシュ自身、コーネリアには借りがあると思っていたが、シャルルに対しては当人の本音を知っても許すつもりなどは無い。

 そして、ミレイやシャーリー、そしてナナリー達はそんなルルーシュの覚悟を受け入れた上で彼に従っている。

 そして、これはユーフェミアが皇女であるからこそ、決断できない要素でもあるのだ。

 

 

 

「ユフィ。俺の特区に対する考えはその書類の通りだ。君は日本人の、そして俺達やスザクのことを思って計画したんだろう。その気持ちを否定するつもりは無い」

 

 

 

 ルルーシュ自身、ユーフェミアが皇籍奉還してまで自分達を守ろうとした思いは知っている。過去のように戻ることの出来ない状況になってしまっていれば、自分は全身全霊を掛けて彼女のために戦ったとも思う。

 だが、今はまだ構想でしか無い段階である。なにも危険を犯してまで特区に協力する必要は無い。

 

 

 

「ルルーシュ……」

 

「だが、ブリタニアでそれを成すのは無理だ。少なくとも、シャルルが皇帝にある限りはな」

 

 

 

 その事はすでに書類の中で指摘している。

 

 皆、その事を理解しているため、細かい部分まで合理的なルルーシュがなぜ?と言う様子である。

 だが、ルルーシュがあえて口にした意図に、ユーフェミアや他の者達も気付いては居ない様子だった。

 

 

 

「お姉様。お兄様の発言の意味はお分かりですか?」

 

「お父様が皇帝である間は、特区を成功させることは不可能と言う事でしょう?」

 

「そうです。あくまでも、皇帝である間は。です」

 

 

 

 唯一、発言の意図を分かっていたナナリーは、その青き瞳をユーフェミアに向けて静かに問い掛ける。

 ユーフェミアの答えはたしかにその通りである。やはり、その真意には気付いていないのだなという若干の失望を交えつつもナナリーは注目すべき点を強調する。

 

 

 

「ああ、そう言う事。殿下の目的そのままと言う事ですね」

 

「ルル……。ナナちゃん……」

 

 

 

 そして、ナナリーの言にミレイとシャーリーは納得がいったように肯く。

 はじめから、ルルーシュが宣言したとおりの結果なのである。ユーフェミアが思い描く特区構想の行き着く先は。

 

 

 

「皇帝である間は実現不能ならば、その座から引きずり降ろせば良いんですよ。お姉様」

 

 

 

 はっきりと、ユーフェミアを見据える形で言い放ったナナリーに対し、ユーフェミアだけでなく、ミレイやシャーリー達も息を呑む。

 覚悟をしていたつもりだったが、改めて“皇帝の排斥”を口にされると、その重さがズシリと肩にのし掛かってくる。

 特に、他の者達が騎士団の中枢にあることを知ってはいても、それに手を貸すつもりは無いと宣言し、自分はむしろユーフェミアの為に働きたいと思っていたニーナはなんてことを聞かせるのかとでも言いたいような、非難めいた視線をルルーシュとナナリーへと向けていた。

 

 

 

「…………っ。とんでもない事を言うのね」

 

「だが、俺の考えは変わらない。ユフィ、真に皆が仲良く暮らせる世界を作りたいのならば、シャルルが掲げる弱肉強食の国是は邪魔なだけだ。人は平等じゃ無い。進化を求める姿勢も間違ってはいない。だが、それを理由に他者を殺し、奪い、支配する。これを肯定している限り、君の理想は叶わない」

 

「でも、私は、日本人を助けたいですし、お姉様やお父様と戦う事なんて」

 

「だったらこの話は終わりだ。ユフィ。君のことだから、俺とナナリーの生存を信じて、しかも、ゼロとして戦うぐらいだったら特区で平穏に暮らして欲しいと思ったんだろう? スザクと俺達が友達だったことも聞いているだろうしな」

 

 

 

 ニーナの視線を受けつつもルルーシュはユーフェミアを見据え、さらに言葉を続ける。

 

 実際問題、ブリタニアの侵略によって国土や家族を失った者達がユーフェミアの特区に希望を見出したのかと言えば、単純に7年間という長く過酷な支配を受けていたからである。

 勝者が敗者のすべてを奪うことは、戦争の道理として古代から続く。

 だが、それは次なる戦争を産む結果のみを残す。それを産まぬ為ともなれば、敗者を根絶やしにするぐらいにしか方法は無く、そこから先に支配や搾取は無い。

 それを求めるとなれば、支配と搾取を統治や融和、もしくは同化へと持っていくべき所だったが、ブリタニアはその過程を放置していた。

 虐げられ、未来も奪われたからこそ日本人は抵抗を選んだわけだが、七年という時間は人が戦う上では長すぎるほど長い。

 

 言うなれば、伸ばした手を何度もはたき落とされていた者達にとって、初めて手を握り返してきたのがユーフェミアだったのである。

 

 だからこそ、あまりに多くの危険性を孕んでいたにも関わらず多くの人を惹きつけ、その崩壊は世界を怒りの渦へとたたき込んだと言えるのだ。

 ルルーシュ自身、今となってはどういった手段を用いれば特区を成功に導けたかを明言できる自信は無い。

 ギアスを用いたとしても、待っていたのは似たような破綻だっただろうと今となって思う。

 

 とは言え、自分が壊してしまった理想を放っておく事も難しい。だからこそ、ユーフェミアには最適解とも言える答えを提示して見たのだが、それを受け入れられないとすれば、ルルーシュの出来ることは無い。

 

 せいぜい、日本解放の際の人身御供を避けることぐらいであろうか。

 

 

 

「終わりなんて……。ルルーシュ。どうしても、お父様を許すことは出来ないのですか? お父様も日本を攻撃したのは貴方達が殺されたという話を聞きつけた勢力に押されたからと聞いているわ。だからこそ……」

 

「違うな。間違っているぞユフィ。いや、君はそう教えられていたんだろうから間違っては居ないな」

 

 

 

 そこまで考えていたルルーシュだったが、ユーフェミアの言に聞き捨てならない話が出てきた事に眉をひそめる。

 たしかに、自分達の死を開戦理由にするなど、人質として送り込んだ事を考えれば当然だろう。実際問題、倉庫代わりの倉に子ども同士を押し込んだけでも戦線理由にはなり得る。

 

 

 

「お母様が亡くなられ、私も意識不明だったときにお父様がお兄様になんと言われたか、ユフィお姉様はご存じですか?」

 

「いいえ。お姉様もひどく混乱していましたが、詳細は……」

 

 

 

 そこまで聞くと、ナナリーもまた訝しげにユーフェミアに視線を向ける。

 そして、ユーフェミアの返答に、ナナリーは不快さを隠すこと無く、眉をひそめながら瞑目する。

 ナナリーからしてみれば、あの男は自分の発言に対する責任すら背負っていないのだと言う事を改めて認識させられた形になる。

 コーネリア達が黙っていたのも、無責任な第三者以外は人格を疑うような発言であり、かつそれを指摘されぬ立場に有る人間の言動である事を理解していたからだろう。

 

 そして、それをルルーシュが口にしようとしたその時、意外の口からその“暴言”は発せられた。

 

 

 

「『死んでおる……お前は、生まれた時から死んでおるのだ。身にまとったその服は、誰が与えた?』」 

 

「シャーリーっ??」

 

「え? なんで知っているんですか??」

 

 

 

 思い出すだけでも苛立ちが募るシャルルの暴言。

 

 それを口にしたシャーリーに対し、ルルーシュとナナリーは目を丸くするが、二人に構うこと無くシャーリーは続きを口にする。

 

 

 

「『家も食事も、命すらも、全て、ワシが与えたモノ。つまり、お前は生きたことなど、一度も無いのだ。しかるに、何たる愚かしさ!! ……ルルーシュ。死んでおるお前に、権利など無い。ナナリーとともに日本に渡れ。皇子と皇女ならば……良い、取引材料だ』だよね? ルル」

 

「……私も初耳だったんだけど?」

 

 

 

 ルルーシュがシャルルから言い放たれた言葉。

 

 ナナリーにだけは話し、聞き耳を立てていた咲世子とはじめから知っていたジェレミア以外には伝えていないそれ。

 なぜそれをシャーリーが知っているのか? と言う疑問もルルーシュとナナリーにはあったが、今はそれを肯定するしかない。

 シャルル達の計画すらも聞かされているミレイとソフィーにも初耳となったその暴言は、僅かに残っていた皇帝に対する畏怖すらも消し飛ぶほどの内容であったのだ。

 

 

 

「え? なんですかそれ?? お父様がそのようなことをルルーシュに??」

 

 

 

 そして、それを聞かされたユーフェミアもまた、自分が耳にした話が真実なのか分からないまま困惑する。

 だが、シャーリーの表情を見ればそれが真実である事など容易に導き出せる。ルルーシュもナナリーもそれを否定していないのだ。

 

 

 

「ああ、俺ははっきりと言われた。 母さんが死に、ナナリーが光と足を失ったにも関わらず、玉座でふんぞり返っていたあの男にな」

 

 

 

 ユーフェミアの言に、ルルーシュは苦虫をかみつぶしたような表情でそれを肯定する。

 彼としては今思い出しても怒りが沸き立つが、その行動の原因となったマリアンヌもまた、今となっては母と慕っていた過去が恥ずかしくなるような女だったのだが。

 

 

 

「馬鹿みたいな事を考えていたのに、そんな事まで言っていたのね。そりゃあ、殿下が恨むわけよね」

 

「そんなんでも、支持率は高いんだから、ブリタニアにとっては良い皇帝なのかも知れないですけどね」

 

 

 

 ミレイの呟きに、ソフィーが応じたように、実際のところ、ブリタニア人の多くはシャルルを支持している。

 

 

 

「……お恥ずかしながら、私はそう言った評価を信じておりました」

 

「それは仕方ないぞユフィ。お前や俺の理想や目的を実現させようとするならばヤツは敵でしか無いが、ブリタニアの民だけを考えるならヤツは英雄的な実績を持つ。腹立たしい事だがな」

 

 

 

 皇族、貴族に特権を与えているが、それ以下の国民を豊かに生活させ、数多くの領土を作って繁栄させている。

 言いがかりをつけて他国を侵略し、他国の民を奴隷として使役している結果であったが、結果は結果である。

 弱者を切り捨て、強者のみを栄えさせるというのは、善悪理非を無視すれば確かにもっとも効率がいい方法だった。

 弱者となる側からしたら最悪の悪政でも、強者からはまことに最高の善政なのだ。

 そして平民は皇族・貴族からしたら弱者でも、ナンバーズに対しては強者になることが出来る。

 

 

 

「動物の社会でも似たような例がある。例えば鶏だと、ストレス発散のために下の地位の鶏を苛め、その鶏がさらに下の鶏をいじめる。まさしくブリタニアが実現した弱肉強食の世界だな」

 

「さらに、己がいつ弱者になるかという不安が常に付きまとうし、いつ誰に切り捨てられるか戦々恐々としなくてはならない面はあるから、社会は常に競争を強いられるから、結果としてさらに発展していくわけですね」

 

 

 

 ナンバーズに苦労を押し付け甘い蜜を吸うことに慣れたブリタニア人達は日を追うごとに増えて行っていることも事実である。

 特に、日本においては黒の騎士団が善戦していることもあり、ブリタニア人達の中ではこの生活に対する終わりを感じ取った焦燥感からさらに横暴に走る者も出てきている。

 この場に居る者は皆、ただ生まれだけでナンバーズに暴行を加えるブリタニア人を見たことがある。

 

 

 

「彼等にとっては、ナンバーズは生きた道具にすぎないわけです。ナンバーズはもの言う車や電車や電気……だから人格を無視した法律が存在する」

 

「…………」

 

 

 

 ルルーシュの説明を引き継ぐ形でナンバーズとブリタニア人の関係を口にするソフィーの言に、ユーフェミアは何も言うことが出来なかった。

 実際、自分が見てきた世界で起こっている事であったのに対し、自分の理想を口にし、実現のために動く事はしてきたが、こうして目の前に転がっている問題に対する対処法を考えては居なかった。

 今となっては、特区に参加するブリタニア人の善意に従うしか無かったが、この理想に賛同する人間はナンバーズを害するようなことはしないし、逆であれば特区に参加することは無い。

 

 

 

「悲しいことですが、世の中は結果です。たとえ何があろうと、最終的に結果を出した者こそが支持されます。だからこそ、幼くして何も出来なかった私やお兄様は、お母様という結果を出せる人間を失った為に追い出された。結果が何よりも物を言うからこそ、ユーフェミアお姉様が、皇帝になるために父シャルルを殺し、兄弟を殺し、その末にナンバーズを解放したとしても、ナンバーズや世界中の人々はお姉様を支持して快哉を叫ぶと思います」

 

「皇帝に?」

 

「そうだな。ユフィ、本当に誰もが笑って暮らせて、真に平等な社会を作り出したいのであれば、ナナリーの言うように、“皇帝となって世界を解放しろ”。その過程で、シャルルやコーネリア達を殺すことになったとしてもな」

 

 

 

 自分が歩んでいるのはそういう道であると言うことも含め、ユーフェミアを見据えながらそう口を開いたルルーシュ。

 彼自身、ユーフェミアが自身の理想を実現したいと願うのならば、それは茨の道であり、長き時を必要とする道である事を理解するべきだと思っていた。

 

 

 

 同時に、自分自身にも改めて言い聞かせるかのように、ルルーシュは告げたのであった。




投稿が遅れてしまい申し訳ありません。

ユフィとの再会はギアスにおけるハイライトの一つだと思うのですが、彼女を糾弾せず、かつ特区の問題を教え込むと言うのはやはり難しいです。


一応、最期の方のナナリーの言動が特区を実現させる上での現実的な手段になると思っています。
「特区が成功していればすべて丸く収まっていた」と言うのは公式からの設定らしいですが、あれを成功させるぐらいだったら正面から戦って勝つ努力をする方がマシ。なレベルで困難だと個人的には思っています。


次回も出来るだけ早く投稿できるよう頑張ります。それでは。
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