戦乱の時代にあって、表舞台に立つのは戦場を駆ける軍人達である。
侵略であれ、防衛であれ、戦場となる地で命のやり取りが行われる中で生まれる英雄譚と言うモノはいつの時代でも人々を魅了する。
しかし、戦争の本質は大量消費。特に、近代戦ともなれば一回の戦闘で膨大な物資が消費される。そして、そんな物資の生産、流通、調達などを担うのは所謂軍官僚もしくは文官と呼ばれる者達であった。
如何なる強兵であっても、武器がなければ戦うことは難しいし、食糧がなければ生きることすらも困難になる。
そして、それは国家、組織にあっても同じ事。表舞台に立つ人間達は、数多の人間達の支援を受けて舞台に立っているのである。
「総督閣下、物資の到着が遅れたこと、お詫び申し上げます」
「いや、元々対EU戦線を意識していた中でよくやってくれた。ヴィランス大公からの催促もうるさかったであろう?」
「はっ。ですが、前線に物資を整えることは我らの使命……。しかし、ゼロなるテロリストはその辺りに関しても手強い相手のようですな」
キュウシュウ戦役において、黒の騎士団に九州地方への潜入を許したコーネリアは、その原因として旧日本海軍が生み出した高性能潜水艦の存在を導き出していた。
ブリタニア側が台風によって足止めされている中、海中を抜けて易々と九州に上陸し、中華連邦を翻弄したあげく、こちらにも戦果を分けるというこざかしさまで見せたゼロ。
ユーフェミアなどは、騎士団とブリタニアの共闘という図式に、将来の融和を夢見たようだったが、コーネリア達からしてみれば黒の騎士団――ゼロはブリタニアに恩義を売ると言うよりも、いつでもブリタニアに代わって日本を守ってみせると言う結果を示したとも言える。
キョウトに対する抗議を行うも、彼等からの返答は、あくまでも旧海軍の艦艇はブリタニアに接収されて沈んでいると言うだけのもの。
つまりは、クロヴィスの治世下にあっても長きに渡って艦隊の存在を隠し通すだけの準備を彼等はしてきたとも言える。
日本は領土こそEUの一国と同レベルであったが、その領海は広く、経済水域をはじめとして、西太平洋全域はかつては彼等が支配した海域。
それだけに、ブリタニアの目の届かない孤島や岩礁の存在も考えられるし、国土の割に深い山々にはかつての反抗勢力日本解放戦線の根拠地も存在していたと言う。
ブリタニアの目をかいくぐり、そういったところに勢力を伸ばしている黒の騎士団やNACを追い詰めるには、人と同時に最新兵器の投入も求められるのだ。
そして、コーネリアと対面する男、マティス・シュタットフェルトが担うのは、正規のルートとは異なるルートを持って軍需物資を用意することにある。
ゼロが裏に生きることで勢力を伸ばしたように、彼もまた裏に生きる貴族の一人であるのだ。
「本来であれば、軍を動員して探り出すところだから、実情としてはゼロの行方を追うことが主眼でな。人員を割くことは出来る限り避けたい。貴公の助力に感謝しよう」
「ありがたき御言葉……」
コーネリア自身、自らの手でゼロを捕らえ、騎士団などもまとめて葬ってやるという気概はあったが、海に目を向けてみれば自身の手の届かない存在はいくらでもあることを思い知らされた形である。
そのため、表も裏も知り尽くした人材の助力は必要と割り切っていた。ダールトンやギルフォードもその辺りの柔軟性を持つ軍人であり、当初は軍人から商人に鞍替えしたシュタットフェルトに良い感情を抱いていなかったコーネリアを説得したのも彼等であった。
シュタットフェルト自身、日本に居を構えて妻と娘を残していた事もあり、政情安定に力を尽くすことにためらいもなかった。
「ところで、シュタットフェルト。本国の情勢はどうなっている?」
「現状に変化はございませんな」
改めてコーネリアが尋ねることの意味は、コーネリアの元に届く情報ではなく、シュタットフェルト等、軍需産業界での話である。
当然だが、シュタットフェルト自身が易々と話すわけも無いが、現状としては皇帝シャルルはヴィクトルを追放して以降も宮殿奥にこもり、政治は宰相シュナイゼルに任せきりである。
ラウンズの追放を弁護しなかったことで不信を抱いたオデュッセウス等皇族達も任地から戻ってきては居るが、温厚なオデュッセウスですら剣呑な態度を隠すことなくシュナイゼルにシャルルの動向を問い詰めるぐらいに本国の不穏は続いていた。
「売り込み先は決まったか?」
「……そうですな。しばらくはエリア11にて過ごそうかと思っております」
「…………そうか」
シュタットフェルトの答えは、本国での水面下の争いに関して、誰の幕下にも付かないつもりであると言う返答である。
シュナイゼルもオデュッセウスもギネヴィアも無能でも愚か者でも無いから正面切って争うことはないが、この利に賢い“死の商人”が誰にも組みすることを選ばなかった事で、ともすれば共倒れの危険を孕んでいるという事実がそこにはあった。
「エリア11は貴公の支援があれば私が必ず平定してみせる。しばらくは、力を貸してもらいたい」
改めてそう告げたコーネリアに対し、シュタットフェルトは無言で頭を下げる。
皇族に対する不遜ではあるが、シュタットフェルトは軍人でもなければ文官でもない、一貴族である。
貴族が仕える相手は皇族ではなく皇帝であり、彼が行う礼の先には『マジェスティ』以外には無かった。
「シュタットフェルト卿、この後は予定はあるか?」
「いや、久方ぶりに屋敷に戻るだけですが?」
コーネリアの執務室から出たシュタットフェルトに対し、見送りも兼ねて追ってきたダールトンがそう問い掛けると、思いがけぬ問いに眉をひそめつつもシュタットフェルトは答える。
実際のところ、タリシアとカレン、それからかな子が待つ屋敷に戻り、個人的な書類の処理などをしようと思っていたところである。
軍人としてのダールトンの人となりは知っていたが、シュタットフェルト自身は特段親しい間柄ではない。
「時間があればだが、ユーフェミア様と会ってはくれぬか?」
「ユーフェミア殿下と? なぜかな?」
「姫様はユーフェミア様に平定後のエリア11を任せるよう皇帝陛下に上奏するおつもりだ。貴公のような腹黒い人間に学ぶこともあろう。と本人が提案してきていてな」
「腹黒いは余計だ。しかし、平定後のエリア等、お飾りになっていれば十分だろうに?」
シュタットフェルトのユーフェミアに対する印象は“コーネリアの人形”以上でも以下でもない。
武勇に優れる皇女が母親を同じくする妹を溺愛し、鳥籠に囲っている事は周知のこと。
副総督の地位も皇女を彩る飾りに過ぎないと言うのはシュタットフェルトを含むブリタニア貴族共通の認識だった。
「そうもいかぬ事情があってな……」
ダールトン自身はユーフェミアを蔑ろにするつもりは無いモノの、それでもユーフェミアが官僚群を御せるとは思えないし、何よりシュタットフェルトの提言を生かせるとも思っていない。
とは言え、サクラダイトの一大生産地であり、四方を海で囲まれ、大陸に近いと言う時点で日本は補給拠点としては最適であり、軍需産業に影響力を持つシュタットフェルト以上に政策面で教えを受けるに適した相手はいないとも思っている。
加えて、ユーフェミアが言いだした“特区”の事がある。
ユーフェミア自身、コーネリアに否定され、さらには友人を通じてアッシュフォード学園の学生にもボロクソに否定された政策を現状では強行しようとはしていないが、コーネリアに良く似た強情さを持つユーフェミアである。
エリア11を任された後で、自分の理想を叶えようと躍起になるに違いないし、ユーフェミアに取り入ろうと近づく主義者や利権集団も現れると思われる。
それらに対する対処法や現実路線でブリタニアの国是にならう路線に修正させる事などはシュタットフェルトのような人間にはお手の物であろう。
それらのことを告げたダールトンに対し、シュタットフェルトもまた肩をすくめる。
「別にイレブンどもが大人しくなり、国家のプラスになるのならば問題無いのではないか?」
「イレブンどもが満足すると思うか?」
「それを御すのが政治であり、総督の役割であろう。まあ、それを私に指南しろと言いたいのだな?」
「うむ。もちろん、生業を邪魔するつもりはないが、空き時間にでも色々と話をしてもらえぬか?」
「それは構わんが……。ふむ、娘も同じ年頃であるし、色々と教え込むにはちょうど良いか」
「ほう? グラストンナイツや枢木スザクと同年代か?」
「枢木スザク?」
「ユーフェミア様の騎士だ。名誉のな」
「…………なるほど、シン・ヒュウガ・シャイングのようなモノか」
「アレよりも質が悪いとも言えるし、大分マシとも言える」
枢木スザクの名と立場に、シュタットフェルトはユーロブリタニアにて頭角を現しつつある一人の若者を思い返す。
ダールトンもシンの名に、周囲の喝采と比べ、その目の奥底に宿る光に引っ掛かるモノを感じていたが、それはそれで枢木スザクが持つモノとは別であるとも思っていた。
いずれにしろ、シンがシャイング家に入り込むことでユーロブリタニアにて地位を得ようとしている事実とユーフェミアが特区なるモノを考え出し、騎士として名誉を選んだ事情を知ったことが重なったシュタットフェルトは、たしかに自身が何らかの手を打つ必要性を納得したのであった。
◇◆◇◆◇
あまりに急な出来事にカレンは思わず現状では最も頼りになるであろう、正直なところいけ好かない男に対して助けを求めていた。
「どうすりゃ良いのよルルーシュ」
『ユフィが突拍子もないことをするのはいつものことだ。とりあえず、親御さんの言うとおりにしておけば良い』
「私の正体がバレたって事は?」
『スザクもユフィも変なところで鋭いが、“病弱なお嬢様”を演じ続ければ良いだろ? 俺としても、意図が分からない以上は有効な手は打てない。渡してある通信機はオンにしておいてくれ』
「仕方ないわね……。あの男も何を考えてるか分からないし」
『死の商人の意図が分かれば俺の助けなんていらないさ。いずれにしろ、動くのは得策じゃない。そもそも、お前の正体が知れればシュタットフェルトとてただでは済まない。焦って足下をすくわれる必要は無いだろう』
実際のところ、カレンはシュタットフェルトの実の娘である。
過去においては母親諸共追い出されただけでその後の動向は不明だったが、実の娘がテロに組みしていた時点で“それまで”のシュタットフェルト家は終わりである。
権力抗争等の弱みになるし、小さな失態で即処刑されるような、まさに薄氷を踏むかのような手綱を求められたはずである。
カレン自身は正式に捨てられたと認識したはずだったが、手元に置いておくことすら不可能になったことは間違いなかった。
ルルーシュ自身も、事跡を追うことが難しいぐらいにシュタットフェルト家の活動は小さくなり、唯一と言っても良いことは、ペンドラゴンにて一族郎党諸共フレイヤで死亡したことぐらいであった。
「っ………ふっ!! よしっ!!」
当然、そんな未来は知らないカレンであったが、父親としてではなく、むしろ敵として見なければならない男とはっきりと敵である皇女とその騎士との対面である。
加えて、彼女が得意とする戦場ではなく、口頭の、むしろ謀略に該当するのではないかと言う事態に、彼女らしくなく震えを感じるも、両の手で頬を張り、改めて自身を見つめ直す。
そして、準備を終えた体で部屋を出たカレンであったが、応接室に行く前にかな子の様子を見ようと思い立ち、扉に手を掛ける。
「お母さん、入るわよ~って、何してるの?」
特にノックもせずにかな子の部屋に入ったカレンは、思いがけぬ光景に目を丸くする。
リフレインの後遺症からか、仕事がないときは部屋でぼーっとしていることが多いかな子だったが、今日に限っては壁に向かって手を合わせて立ち、傍らにはシュタットフェルトが胸に手を当てて瞑目していたのだった。
「カレンか。母親といえど、部屋に入る前に声を掛けなさい」
「悪かったわね。それより、二人で何をしているのよ縁起でも無い」
「ナオトの事でね……」
「あっ…………」
振り返った2人、特にシュタットフェルトからの苦言を適当にあしらったカレンだったが、2人の視線の先、立てかけられた写真立てには兄であるナオトが写った一枚の写真が置かれていた。
「……私の責任でもあるからな」
「そりゃあ、仕事にかまけて放って置いたんだからね。でも、お兄ちゃんは」
写真を一瞥し、苦悩の表情を浮かべるシュタットフェルトに対し、カレンは何を今更?と言う思いで口を開く。
“貴方を父親だなんて思っていなかった”とでも言ってやりたかったところだが、その言葉はシュタットフェルトの思い掛けない言葉で中断される。
「そうでは無い……カレン、いや、紅蓮パイロット、紅月カレンと呼んだ方が良いか?」
「っ!?!?」
「はわわ……、2人とも落ち着いて」
紅月と呼んだのは別に構わない。実際、かな子は紅月かな子として雇われている形である。
だが、紅蓮のパイロットと言う言葉は聞き捨てならなかった。
咄嗟に、仕込みナイフに手を掛けたカレンだったが、気付いたときにはシュタットフェルトもまた、腕に仕込んでいたナイフをカレンに突き付けている。
一色触発の事態だったが、どこか緊張感のなく止めに入ったかな子の声で若干中和されたモノの、カレンとしては追求しないわけにはいかなかった。
「どこでそれを知ったの?」
「ゼロが聞いているのに、言うわけが無いだろう?」
「っ!? ゼロ、ちょっと切ります」
状況的には不利であったが、こうなった以上は引き出せるだけ引き出すしかない。
そう思ったカレンはルルーシュの咎め立てを無視して通信機を切り、改めてシュタットフェルトをにらみ付ける。
「さあ、話してもらうわよ。なんで、貴方が私の正体を知っているのよっ!!」
「声が大きいぞ。お前がレジスタンスに加わっていたことはナオト君から聞いていたし、永田君からも連絡を受けている」
「永田さんが?? スパイだったの??」
カレンからの詰問に、シュタットフェルトは眉をひそめつつ、周囲の気配を探るものの、彼の答えもカレンにとっては驚きでしかない。
永田はブリタニア人のクォーターであるため、潜入任務などでは自分と共に行動することが多く、扇グループだけでなく、ゼロからも信頼の厚いメンバーでもある。
思えば、ルルーシュと最初に出会った際にも、彼の冷静さには助けられたモノだった。
とは言え、ナオトや扇のみならず、彼自身もまたシュタットフェルトとして生きるように諭してくる機会が他のメンバーと比べて多かった。
永田自身は奥さんと娘さんを失っていたからこそと言う思いもあったのかも知れないが、今となってはそれも疑問に思えてしまう。
「永田君は私がナオトに付けた参謀役だ。陶芸家のパトロンもしていたが、中々の切れ者だったからな」
「お兄ちゃんに付けた? 参謀役??」
「扇君は良くも悪くも調整役だし、吉田君達もそれぞれ得意分野が違う。名誉ブリタニア人として、他のメンバーとは違う視点を持った彼にしか出来なかった」
「扇さんや吉田さんって、あんたが何を知っているのよっ!?」
「おいおい、ここまで言っても分からないのか??」
カレンにとって、兄代わりとも言っても良い者達の名前が次々に挙げられて困惑するカレンに対し、眉をひそめるシュタットフェルトだったが、カレンもその先にある事実には気付いている。
とは言え、扇達とシュタットフェルトが面識があるなどと知るよしもなかったし、何よりナオトも永田も何も伝えてはくれなかった。
そもそも、自分が生まれた後になっても家を空けたままで居たシュタットフェルトが兄たちと接触していた事実に納得がいかなかったのだ。
「でも、お兄ちゃんも扇さんもレジスタンス活動の支援はキョウトから受けていたって」
「NACと言う名でな。そもそも、そのNACは買収されたブリタニア人官僚や企業も噛んでいることは知っているだろ?」
「それじゃあ……?」
「そうだ。ナオト君に資金を提供し、レジスタンス活動を支援していたのは私だ」
カレンの問い掛けに、そう答えたシュタットフェルト。
元々、軍人だったシュタットフェルトは両国の関係が悪化する以前は日本に長く赴任しており、かな子と知り合った縁もあって日本のことが気に入り、赴任先が変わっても休暇の際には日本を良く訪れ、かな子との関係も進んでいた。
しかし、ブリタニアの、それも血統を重んじるユーロブリタニア貴族であった両親は日本人への差別感情が強く、当然のように反対され、カレンが生まれた後も断固として結婚を認めなかった。
代々、軍人から軍需産業を担う家に入る事が慣習化されていたため、いずれは日本がブリタニアの標的になる事は分かっていたからこその反対であった。
もっとも、貴族であれば妾等は普通に存在するため、正式な結婚はせずとも、内縁関係であることにまではとやかく言わなかったのだが、幼いカレンに対し、父親としての役割を果たせなかったことは事実であり、年頃のナオトにしても、母の苦労を知らず、男としてのケジメを果たさない男を父親とは認めてくれなかった。
そして、その後、退役したシュタットフェルトは軍官僚を多く輩出しているローマイア家の令嬢タリシアと結婚したが、当然政略結婚であり、お互いの利害を見出した割り切った関係でもあった。
「タリシアに日本のことを任せたのも、元々アイツは優秀な軍官僚だったからだ。まさか、部下に丸投げで好き勝手やっているとは思わなかったが……」
「正妻と妾を一緒にして上手く行くわけなんて無いでしょっ!! そのせいでお母さんは……」
「カレン、ここに務めたのは私の意思なのよ」
「それは前に聞いたけど、でも……」
カレンの気持ちとしては当然の反応である。
かな子を大切に思うにも関わらず、タリシアと一緒に住まわせれば立場の弱いかな子が虐げられるのは当然の成り行きであったし、カレン自身も悔やむところだが、母の真意を知らずに軽蔑の眼差しを向けてしまっていた。
「本家に引き取るとなれば、母(カレンにとっての祖母)からの風当たりは強かっただろう。かといって、お前達をゲットーに置いておくわけにもいかなかったからな。子どもが出来なったタリシアがお前を娘として育てることを受け入れた以上、かな子だけを放り出すわけにはいかなかったのだ」
「お兄ちゃんが出て行ったときに付いていっても良かったのに……」
「それは考えたが……、それでもナオト君に負担を掛けるわけにもいかなくてな」
当初はナオトもかな子とともに屋敷に居り、使用人として働く傍ら、名誉として外に働きにも出ていた。
そこで受けた仕打ちから、彼はレジスタンスを率い、ブリタニアに抵抗するようになった。
「さすがに驚いた。父親面するなら、自分達を支援しろと啖呵を切ってきたのだからな」
シュタットフェルトとしては青天の霹靂だったが、ナオトがレジスタンスとして動いているとなれば、かな子との関係からシュタットフェルト家のスキャンダルとして敵対貴族達の攻撃の的になる事は明白であり、かな子とカレンの身も危険になる。
ナオトからすればなりふり構わない状況だったのだろうが、彼はその後もシュタットフェルトの影を表に出すことなく、順調にレジスタンスとしての成果を上げ、ついにはキョウトからの接触を得た。
キョウトとすれば、戦績著しい若者に期待したようだったが、ナオトと共にシュタットフェルトが現れた際にはさすがに驚きを隠さなかった。
特に、刑部や公方院は軍人時代に知己があった人物であり、互いに人となりは知っている。彼等としても、ナオトへの支援は実入りが大きいことが分かり、正式な支援が行われることになった。
「でも、それが……っ!!」
「分かっている。ナオト君は私が殺したようなモノだ」
「っ!? お兄ちゃんは死んだわけじゃ」
「だが、お前達の前から姿を消してしまったことは事実だ。そして、お前まで戦場に送り込んでしまっている事もな」
シュタットフェルト自身、自らの失態からナオトとカレンをレジスタンス活動に走らせ、かな子を追い込んでしまったという自覚はあるのだろう。
とは言え、彼はブリタニアの貴族であり、家長としての役割を果たす責任もある。ようやく、今になって日本に戻ってくる機会を得たわけだが、彼自身、どうやって償うべきかという答えは見つかっていない様子だった。
「お姫様を連れてきたのはどういうつもりなのよ?」
「“特区”の事はゼロから聞いているか?」
「ええ。夢物語だと切り捨てていたけどね」
「そうだろうな。だからこそ、私はそれを実現可能なレベルにまで落とし込みたいと思っている」
「はあっ!? お姫様のお遊びの手伝いをするつもりなのっ!?」
「せざるを得ない状況になっていると言うことだ。わざわざダールトンがユーフェミア皇女の事を託してきたのは、私やキョウトとNACの関係を察したからだろう。フナバシやキュウシュウで黒の騎士団に手玉に取られたことで彼等も必死になっているのだ」
「…………それじゃあ、私に話したのって」
そこまで話を聞くと、カレンもまたシュタットフェルトが何を言いたいのかと言う事を察する。
そもそも、最初の会話はルルーシュの耳に入っているのだ。彼の方から接触してくるに決まっている。
とは言え、疑い深いルルーシュである。こちらから胸襟を開かねばあっさりと切り捨てられる可能性は大いにある。
これまでも、利権を狙って接触してきたブリタニア貴族が何人も潰されているのだ。
「ああ、ゼロと接触したいと思っている。当然だが、お前達2人はゼロに対する人質になる……。その事だけは覚悟しておいてくれ」
そして、カレンが予想したとおりの言葉を口にしたシュタットフェルト。
カレン自身、突然の事態が続くことに困惑するしかなかったが、こうなってしまった以上はシュタットフェルトとルルーシュの接触を取り持つ以外に選択肢は無かったのである。
更新が遅れてしまい、大変申し訳ありません。
カレンの父親に関する設定は、ユーロブリタニア貴族と言う事ぐらいしか見つからなかったため、こう言った形になりました。
公式設定等で落としている部分があれば御指摘頂けるとありがたく思います。