『ギアス』
ルルーシュのみならず、今この場にいる者達の運命を狂わせ、過去においては命までも奪われる結果となった、人が抱く“願い”の象徴。
結果として、ルルーシュは大きすぎる代償を払い、償いきれぬ罪を背負って世を去った。
何の因果か、こうして再びの生を歩み、過去においては顔すらあわさなかった男との会見に望んでいる。
「それが如何なる結末を私にもたらすのか……。おそらくですが、私の意思など意に介さぬ結末が待つだけのモノでしょうな」
「知識として知っていれば予想は立つだろうな。それで、お前は俺に何をもたらす?」
ギアスにはいくつかの種類がある。ルルーシュのような支配に関連するモノやシャルルのような記憶操作などがあるが、基本的にはギアスユーザーの潜在的な願いに基づいたものが発現するとされる。
「そうですな。“明日を”とでも申しましょうか」
「っ!?」
シュタットフェルト自身がギアスを使役する様子は見られない。所持していればC.C.やジェレミアが気付くであろうし、ルルーシュ自身もコードに囚われているとも言える状態である以上、どこかで感じる部分があるとは思う。
しかし、彼の発言にはどこかルルーシュの心を読んだかのような言葉が紡ぎ出されていた。
即座に目を見開いたルルーシュはシュタットフェルトの意図を読もうと思考を巡らせるが、彼を落ち着かせるように静かに肩に手が添えられる。
思わず視線を向けたルルーシュの目には、苦笑するシャーリーの顔が写る。
シャーリー自身、なぜシュタットフェルトの言葉に自分が反応したかは分からない。だが、心のどこかで「朝は来ますよ」と言う自分では無い自分の声が聞こえたようにも思えた。
「ふむ。殿下はやはり時代の変化を求めておられますな。それにしても、明日というモノに大きく心を動かされる様子」
「だからなんだ?」
そんな二人の様子にどこか納得したかのようにシュタットフェルトが肯く。
ルルーシュからすると、やはり意図が読めずに眉をひそめるしか無いが、シャーリーの反応も含めて、過去において対峙した者達に告げた自身の思いがよぎる。
だからこそ、シュタットフェルトが軽々しく口にしたとすれば不快にも思うものだった。
「言葉の通り、私は殿下に明日をもたらしたく思います」
「ふん。商人のくせに、ずいぶんとまあ曖昧な話だな」
「そうですな。私自身は明日というモノの明確なビジョンはございませぬ。仕事柄、数字を通じてで先を読むことはございますが、金と違い、人というモノの未来はいくらでも道筋がある」
「要するに、自分は何かを変えたいと言う気持ちがあるが、どうやって変えるか、そう言った道筋が思いつかないからそれを坊やに任せようと言う事か?」
ルルーシュの問いにどこか的を得ないシュタットフェルトの返答。
立場上、相手を煙に巻く言動を取ることは身について居るであろうが、双方の様子を無言で見ていたC.C.が口元に試すような笑みを浮かべつつ口を開く。
「その通りですな。カレンが怒ったように、ナオト君のレジスタンス活動を支援したのも、私には先のビジョンが無いが故、ナオト君やキョウトのお歴々が抱くビジョンを私が後押しし実現する。商売でもそうですが、現場の者へと投資し、それが大きくなっていく様を見るのが私は好きなのですよ」
シュタットフェルト自身、ルルーシュの心を見透かしたわけでは無いのだが、こうして相手の心を見透かしたかのように言葉を紡ぎ出すのは天性のものであろうか。
ふと口をついた言葉が相手の動揺や期待を誘い、それを元に相手を意のままに操る。こう言った手管をシュタットフェルトは持っているのであろう。
とはいえ、相手の出方を見てそれを利用したり、支援したりすることはいくらでも出来ても、人に道を指し示したり、人を率いることは自分には出来ない。
要するに、自身は“王”になる事は出来ない。だからこそ、有力貴族でありながら水面下に潜り、地下深くの闇の世界に生きているのであろう。
「ふん、キングメーカーを気取るつもりか?」
「まさか……。皇室を意のままに操ろうという意図など」
「リチャード・ネヴィルも当初はそうであった。だが、最後は自身が支援した国王と対立し、その栄光も潰えた」
ブリタニアの前身、イングランド王国の内戦。薔薇戦争と呼ばれる権力闘争の中心にあって活躍した人物であったが、現在まで続くブリタニア皇室にあっては、ミニネヴィルとでも言うべき大貴族の跳梁が目立つ。
彼自身はその出自も巨大な背景を持っていたとは言え、若き王を補佐し、その即位を助けた功績を持って国政を牛耳った人物である。
最後は王と対立し、自身が鍛え上げた王弟によって討ち果たされると言う末路を迎えたわけだが。
「私にそこまでの力量はございませぬ。とはいえ、口先では何も信用されないでしょうな」
「その通りだな。それで、お前は俺の信用を買うために何が欲しいんだ?」
「へ? シュタットフェルトさんがルルに何かしてくれるんじゃ無いの?」
「さっき自分で言っただろ? 明確なビジョンを持って行動する人間では無いと」
「なにそれ。普通、呼び出したんだったら手土産の一つも寄越すものなんじゃ無いの?」
「その手土産がユフィを追い返したことだ。俺としてはまあ、悪くない土産だった」
ユーフェミアの特区を思い留まらせたことはこちらとしては僥倖だった。
自分達の存在を知った以上、こちらがどんなに拒絶しても近づいてきてしまうのが彼女である。それを遠ざけただけでもルルーシュにとっては意味がある。
「まずは、カレンをお返し頂けませぬか?」
「ふざけんじゃないわよ」
「まあ待て、カレン。こちらとすれば、騎士団のエースを簡単に渡すわけにはいかんな。例え、実の父親だとしてもな」
「悪いようにはいたしませぬ。むしろ、コーネリア総督に打ち勝つための武器として殿下に献上いたしましょう」
「人を物みたいに言うんじゃ無いわよっ!! それに、勝つって言ったってルルーシュだったら自力で勝てるんじゃないの?」
「勝つさ。ただし、コーネリアだけにはという条件がつくな」
この事に関しては以前もルルーシュはカレン達に伝えている。
コーネリアを打ち破ったとしても、本国からオデュッセウスなりシュナイゼルに率いられた本国軍が来襲すれば勝ち目は無い。
かといって、かつての超合集国を作り出すにはまだまだ実績が乏しい。だからこそ、モニカやキョウトが必死に工作を行っている最中なのだ。
「それだけでは無いだろう? カレンを用いて俺がコーネリアに勝てる算段を立てる。それで?」
「本国軍を動かすことが出来ぬ状況……ちょうど、クルシェフスキー卿や宗像公の手管を利用させて頂く機会がございましてな」
「…………聞こう」
ルルーシュとしてはシュタットフェルトがカレンを必要とすることはなんとなくだが予想できていた。紅月ナオトをレジスタンスのリーダーへと押し上げた男である。
その妹であるカレンの利用方法もルルーシュにとっての最強の矛以上の使い方を考え得るとも。
とは言え、ブリタニア本国の、それもモニカや宗像を出し抜く形の提言が出てくるとまではさすがに出来すぎているとルルーシュは思っていたのだ。
そう。出来すぎている。
だからこそ、C.C.は眉をひそめてルルーシュを見つめてくるし、シャーリー、カレン、ソフィーの三人は互いに顔を見合わせてルルーシュへと視線を向ける。
政戦に関してはルルーシュに及ばない彼女達ですらも感じ取れるほどに、その提言はルルーシュ達にとっては甘すぎる果実。
ルルーシュの正体とギアスを知るシュタットフェルトが危険を承知で会談を申し入れてきたとしても納得のいくだけの証拠とも言えるのだった。
それが、事実だとすればであるが、この状況ではルルーシュ自身も聞くしか無いと言うのが本当のところであったのだった。
◇◆◇◆◇
ユーフェミアが帰国してから一月。
コーネリアはキュウシュウ戦役の戦後処理を完了させ、各地に点在するレジスタンスの取り締まりをさらに強めていた。
ユーフェミアの決意表明を受け、内政にも目を向け始めたコーネリアだったが、根が武人である彼女はどうしても軍政に傾きがちである。
表面的な汚職は徐々に改善されていくが、NACをはじめとする百戦錬磨の妖怪達はさらに地下深くに潜り、ブリタニア内部の腐敗に隠れて勢力を保っていく。
ダールトンの内偵もシュタットフェルトから情報を得た彼等に付けいる隙は無く、手詰まり感は目に見え始めている。
さらに、大企業や貴族層にも情け容赦の無い取り締まりを断行した結果、ブリタニア本国においてコーネリアに対する風当たりは強くなる一方でもあった。
『君らしいと言えば君らしいんだろうけどね……』
『君のことだ。我々の苦言も聞き入れることは無いのだろう?』
「私の落ち度であるならば聞きもいたしますが、貴族にあるまじき行為に手を染めていた者、暴利を貪る商人などはブリタニア臣民にも害をもたらす存在です」
久々の顔合わせとなった数少ない年長者達の言をコーネリアは至極当然とばかりに突っぱねる。
シュナイゼルとしてもオデュッセウスとしても、そしてはじめから説得する気のないギネヴィアとしても、自身の元に集う派閥貴族からの突き上げを受けての事であったが、さすがに妹の気性を知っている兄姉である。
はじめから説得できようと等思っても居ない。
『出来もしない内政に手を出すからこうなるのよ。せめて私にぐらい相談したらどうなの
?』
「何をっ!?」
『出来もしない事をやろうとするなと言っているのよ』
「泳がして利用しているだけの貴様に何が出来るというのだ?」
とは言え、何も説得できずに帰るだけなら時間の無駄でもある。
ただでさえ武人であるコーネリアと謀略家であるギネヴィアは仲が悪い。とはいえ、ギネヴィアからすれば腐敗貴族を粛清する事は自分の畑であるのだ。一言相談ぐらいしてくれても良いだろうと言う気持ちは強かった。
だが、コーネリア自身は腐敗貴族であっても利用できるところは利用し尽くそうとするギネヴィアのやり方には小賢しさを感じでいる。はじめからギネヴィアに相談するという選択肢もコーネリアには無い。
『まあまあ、二人とも。落ち着きなさい。コゥ、君の気持ちは理解できる。だが、君が取り締まった者達もブリタニアに貢献してきた者達でもある。それを排除するにたるだけの成果を君には提示する義務があるよ?』
そんな妹の口喧嘩を仲裁するのはいつもの如く長子の役割である。
凡庸と陰口をたたかれ、妥協や馴れ合いを常とするオデュッセウスであったが、平時に乱を起こす面があるブリタニア皇族達からするとその存在は貴重である。
今の発言にも、コーネリアが筋の通った理由と成果を示せば自分は支持すると言う旨を暗に伝えている。
それはそれで、仮にコーネリアに成果が無くとも次に繋がる要素があるため、彼女も納得しやすい。
オデュッセウスとしたら、それを理由に貴族達の減刑を考えていたのだが、コーネリアは彼の予想とは異なる返答を示してきたのだ。
「はい、こちらをご覧ください」
三名の元に転送されたデータ。そこに示されたのは、島全体が海に沈んでいるように見える光景。
一見、海に浮かぶ岩塊にしか見えなかったが、次の画面に切り替わると、そこにはそれまでの岩塊を頂とした火山島とおぼしき島が現れ、その周囲の環礁には数隻の環礁とおぼしき艦影が確認できる。
『こ、これは……?』
「内偵の結果、割り出した旧日本海軍の残党どもの巣です。陸の戦力足る日本解放戦線は片瀬帯刀の死後、黒の騎士団に大部分が合流しましたが、海軍の残党どもはこうして息を潜めていたようです」
『これだけの泊地を……』
『コーネリア、これが貴女が強硬に出た理由ですか?』
「ええ。極東侵攻の数年前に起きた大震災によって生まれた特殊な気象状況が生み出した屈折現象によって偵察機も偵察衛星でも割り出せない地。そして、水や重油などの資源の供給は」
『君が逮捕した者達によって巧妙に隠されていた。と言う事かね?』
データに目を向ける三者三様の反応。
オデュッセウスは驚愕するのみであったが、ギネヴィアは苛立つように顔を歪め、シュナイゼルは不敵に口元に笑みを浮かべる。
両者にとってはイレブン達が自分等をここまで出し抜いた事に対する苛立ちと興味を抱いているのだった。
「背後にはNACの存在があると思ったのですが、ジェレミアの下でヤツ等が暗躍していた際にも接触はありませんでした。代わりに事務次官をはじめとする……」
『ふふ、逃げられたのかな?』
「面目次第もありません」
『ヤツはクロヴィス時代から巧妙に権力の座を維持し続けた奸物。貴女やダールトンのような軍人とは相性が悪いわ』
「バトレーも悔やんでおりました。お役に立てなかったと」
『そうか。彼でもか……。では、この地を討伐できたのはシュタットフェルト卿の力かな?』
「はい。きな臭い動きもありますが、ヤツは見事にこの地を」
『そうだろうね。なにせ、ユフィを動かしたのも彼だからね』
意図を持って呼び寄せたシュタットフェルトは見事に役割を果たした。
黒の騎士団に渡っていたとされる最新鋭潜水艦の出撃拠点。この地を潰せば、ゼロをはじめとする首魁達に国外逃亡を許すことも無くなるであろうし、ようやく落ち着きを見せたキュウシュウを荒らされる心配も無くなる。
すでに騎士団の勢力浸透が進んでいることなどつゆ知らず、コーネリアはそう考えていたが、それまでの評価を吹き飛ばす言葉がシュナイゼルよりもたらされる。
「……やはり、そうなのですね」
『落ち着きなさい。ユーフェミアには良い勉強の機会よ』
『私も驚いたけどね、まだ着任したばかりだが、アールストレイム卿やゴットバルト嬢ちゃんが補佐してくれているから安心しなさい』
「ゴットバルト嬢ちゃん?」
『ジェレミア卿の妹だよ。取り潰される直前に学生だった彼女が引き継ぐと申し出てね。他の貴族達も傀儡に出来ると思ったのか、特に反対も無く領地の引き継いで居てね。それが中々の切れ者でみんな驚いているよ』
「そうですか……」
『ジェレミア達が帰参する可能性は無いの?』
「あったとしても、私が討ち果たします」
『そう。貴女がそう言うなら好きにしなさい』
コーネリアは着任と同時にヴィクトルの引き起こした変事の後処理で国内の、特に貴族間の勢力争いを気にする暇など無かったと言うのが本来のところである。
とはいえ、ジェレミアが騎士団に寝返ったことは暗黙の事実でもある。当然、ゴッドバルト家は取りつぶしになると思っていたのだ。
実際、親族はEUに亡命したと聞いていた。実際には、日本にあるゴッドバルト領に軟禁されているのだが。
『話を戻そう。コーネリア、これだけの規模となると、装甲の薄いKMFだけでは心許ないんじゃないかい? ハワイにある太平洋艦隊の一部を回航しよう』
「お願いします。ですが、最後の攻略に関してはKMFを持って制圧いたします」
『君らしいね。その辺りは任せるよ』
「はい。それともう一つ」
『何かな?』
「シュタットフェルトから、提言がありまして。子細をご覧ください」
シュナイゼルとしても、せっかく割り出した敵の存在を見過ごす理由は無い。
海のことは海に任せるべきでもあるが、KMFはその汎用性が最大の利点である。航空機と砲雷撃を持って敵を撃滅し、制圧に関しては歩兵を投入するよりも安全に事が進む。
オデュッセウスもギネヴィアも同様の考えであったが、さらにコーネリアから提示されたデータに一様に眉をひそめる。
『名誉ブリタニア人部隊か……』
『正確にはハーフと言うべきか。イレブン寄りの思考を持っている者どもでは無いのか?』
「多くが妾腹であり、イレブンからもブリタニア人からも迫害を受けてきた者達であるとの事です。それ故に、イレブンどもへの恨みも、栄達への思いも一際強いと」
『なるほど。コーネリア、君が我々に判断を仰いだのは、彼女のことだね?』
相変わらず口元にのみ笑みを浮かべたシュナイゼルの言に、コーネリアは重々しく肯く。
名誉ブリタニア人部隊候補の最上位。つまり、部隊指揮官候補として名前を連ねているのは、カレン・シュタットフェルトと言う少女であった。
データを見れば、シュタットフェルトが日本に赴任した際、妾にした女に生ませた娘であり、今は夫人であるタリシア・シュタットフェルトの娘としてアッシュフォード学園に在学しているという。
ただ、シュタットフェルトの与り知らぬところでジェレミアによる手ほどきを受け、クロヴィスとジェレミア総督時代には騎士としてKMFを操っていたと言う。
『軍籍には存在していないね』
『あの者ならば、巧妙に隠すことは可能かと思いますが』
「実際、手合わせをしたところ、グラストンナイツに御する才を有しておりました」
シュタットフェルト、ジェレミア、アッシュフォードと言う今のブリタニア内では、最優先の諜報対象が線となって繋がる存在が彼等の目の前に現れている。
加えて、コーネリア軍の最精鋭と渡りあうだけの伎倆を持つ少女。これがこれまでブリタニアの目を逃れて軍内部に存在していた事など、本来であれば有り得ない。
『考えられるとすれば、シュタットフェルトが娘の暴走に気付いて、禊ぎをさせようとしていると言う事かな?』
『ですが、このものが戦場に立った途端、黒の騎士団が現れると言う可能性もあります』
『しかし、シュタットフェルトが真にこちらの益を考えていれば、エリア11に大きな楔を打ち込むことにもなる。中々考えられているね』
彼等からすれば、軍にも貴族層にも深い人脈を持ち、世界中で暗躍する死の商人である。信用はしても信頼をしないのは当然のことであるが、同時に彼がこれまでブリタニアの不利益になるような行動を取ったことは無い。
もちろん、それも巧妙に隠し立てしてきた可能性はあるが、妾や娘を放り出してブリタニアに逃げ帰ってきた姿を知っている彼等からすればその可能性はどうしても排除の方向に動く。
ユーフェミアに対する進言を見れば、真に皇族に対する忠誠心からの行動とも言えるのだ。
「それを証明するために、名誉どもをKMFに乗せろというのは不快な話です。とは言え、ヤツ等を試す意味でもこちらに益はあるかと。加えて、ヤツ等の搭乗するKMFはNACに用意させようかと考えております」
『待ちなさいコーネリア。NACがKMFとは?』
「解放戦線との癒着はすでに判明しております。桐原泰三は与り知らぬところと関与した者達の首を持って平身低頭して参りましたが……」
『ふん、解放戦線を捨て、騎士団に走った事を裏付け、さらには騎士団をも裏切った事になるか』
『単純では無いだろうけどね。ゼロが果たしてNACをも掌握しているならば可能かも知れないが』
藤堂鏡志郎が様々な戦場に現れ、ついには新鋭機に搭乗していると言う事実はすでにブリタニア軍部には知れ渡っている。
それを提供する組織は割り出せていなかったが、NACが関与していれば水面下で動く事はいくらでも可能だろう。
そして、仮に黒の騎士団とも関与しているとなれば、NACの供与したKMFがイレブン達を殺害したとなればゼロとしても桐原等を処断せざるを得なくなるだろう。
こちらとすれば、いつまでも尻尾を見せぬ男を合法的に消しさることが可能となる。後に残るのは文字通り命惜しさに尻尾を振る売国奴だけだ。
『それらすべての絵をシュタットフェルトは描いてきたと言う事か。薄ら寒いね』
『まったくです。シュナイゼルはどう思うの?』
『まずはやらせてみればよろしいでしょう。こちらとしても、エリア11の事はエリア11内で処理してもらえれば助かる』
それぞれが行き着いた結論を考えると、一人の男の手の平で回るという事実の恐ろしさを実感させられるのだが、コーネリアとしては実際に直面している自分と同等に三人がそう言った認識にある事への違和感もある。
とは言え、シュナイゼルの言にはどこか引っ掛かりを覚える。現状、大きな火種を抱える地は三つ。
一つはブリタニア内部にある不協和音。しかし、これはオデュッセウスとギネヴィアがコーネリアの呼びかけに応じてシュナイゼルと場を共にしている点で深刻さは和らぐ。コーネリアも父シャルルを今更頼りにはしていないのだ。
二つは言うまでも無く極東情勢である。黒の騎士団をはじめとする激しい抵抗を続けるエリア11とそこに隣接する大国中華連邦。
だが、エリア11は自分が居る限りは大事ないというプライドがあるし、中華に関しても大宦官の暗躍で弱体化の一途である。
となれば、残る一つ。
「…………ユーロブリタニアに何かございましたか?」
『ちょっと面倒なことがあってね。ヴィランス大公が行方不明なんだ』
そこに辿り着いたコーネリアであったが、シュナイゼルのクチから語られた真実は、予想以上に深刻な事態が起きていることを端的に告げていたのだった。
年内に投稿したかったのですが、結局、年をまたいでしましました。
謀略絡みや世界情勢などの要素が出てきましたが、少々時間が空いてしまったため、矛盾が発生しているかも知れません。
また、「作者の頭以上のキャラは書けない」との鉄則の通り、ルルーシュやシュナイゼルのような天才が出し抜かれる描写は納得しがたいかも知れませんが、現状ではこれが限界でもあります。
言い訳でしかありませんが、ご了承頂けると幸いです。
冬場は比較的時間が出来そうなので、できるだけ更新できたらと思っていますので、今後ともよろしくお願いします。