コードギアス ~生まれ変わっても君と~   作:葵柊真

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第14話 決戦前夜②

 宵の闇を駆ける風達が奏でる音曲はサイタマゲットーへと届いていた。

 旧さいたま新都心に屹立するアクシスタワー跡地から夜の闇間を塗って布陣するブリタニア軍を見つめるルルーシュとジェレミア。

 “戦争にはにおいがある”

 兵が動けば土が動き、糧食が用意され、兵科の補給が行われる。

 戦争はそのような基本行動の動きの結晶であり、それを本能的に感じ取る人間が最終的に勝利を得る。

 闇夜にあっても、二人の元にはブリタニア軍の動きが見えている。同時に、コーネリア達にもサイタマゲットーにこもる黒の騎士団の動きは見えているだろう。

 ここから先は、お互い相手に自身の手札を読ませぬ探り合いが続くことになる。

 ふと、ルルーシュはブリタニア軍後方のトウキョウ租界の明かりを一瞥し、周囲の闇に包まれる廃墟群へと視線を向ける。

 広大なサイタマゲットーも旧緑区や岩槻区の整備は進んでいたが、基幹駅のあった大宮~浦和地区はいまだ廃墟が目立ち、急ピッチで建設された外壁以外は瓦礫の山が広がっている。

「荒川と中川沿いに火砲部隊を布陣させ、南北より戦線を押し上げる。時期は異なっても、コーネリア殿下の指揮は変わりませんな」

「川に阻まれているとは言え、こちらの防備も硬くなっているところから。と言うのがコーネリアらしい。ただ、前回のように誘い込んでからのゲリラ戦は使えないな」

 二人はは記憶の中にあるサイタマゲットー包囲戦を思い返す。

 ルルーシュにとって、戦争というモノに対する甘い認識を叩きのめされた苦い敗戦の地。これまで戦火に巻き込まなかったことで、無用な虐殺の犠牲者達への贖罪は果たしたという思いはあったが、結果として決戦の舞台になってしまっている。

 復興の途上にあり、要塞化を進めている事に加え、レジスタンスとの対立を演出させた民間人が多く残っている。

 地下区画に避難させている民間人は少しずつ近隣ゲットーへと脱出させているが、元々の数を考えても全員を逃がすことなど不可能だった。

「シュタットフェルトの策をコーネリア殿下は見破ったようですが、名誉ブリタニア人部隊は出撃しているとの報告があります」

「信頼を得た。と言うわけでは無いだろうな」

「はっ……。現状、味方殺しの汚名を負い、戦場のただ中に残されている状況にあります」

 シュタットフェルトから提案された“勝利”への条件として差し出した形になったカレン達。加えて、旧日本海軍の残存部隊や一部のレジスタンスが生贄となっている。

 “味方殺し”をカレン等にさせた上、コーネリア等に埋伏の毒を見抜かれた形になっている。

 神楽耶の宣戦とその後の決戦の空気に支配されている面はあるが、必要な策として受け止めている者とカレン達に味方殺しをさせたことへの不信を抱く者とに別れている。

 策を知らぬ一般団員やレジスタンス達は元々名誉ブリタニア人は裏切り者という認識が強いためそこまでの混乱は見られなかったモノの、名誉ブリタニア人部隊が当初の予定通りにこちらに寝返ったとしても不信の目は免れないだろう。

「情報統制のためとは言え、難しいモノですな」

「だが、策を知る者の不信は俺にある。とは言え、勝利の暁にはカレンから1発もらわないとかも知れないな」

「我が君の咎は私が受け止めましょう……。しかし、よろしかったのですか?」

 ふっと自悪的な笑みを浮かべたルルーシュに対し、ジェレミアも答えるように笑みを浮かべるが、すぐに表情を改め、ルルーシュに対して問い掛ける。

「危険な手段ではあるが、“王が動かねば兵は付いてこない”。これは、俺だけの問題でも無い」

「それ故に、皇神楽耶様もサイタマゲットーに?」

「ああ。感化されたと言うのが正しいだろうな……。あの方も、生まれ持っての指導者だ」

「それだけでは無いように思えますが」

「なんだと?」

 神楽耶の覚悟に対する賞賛に肯きつつも、彼女の心情はそれ以外の気持ちもある事を察したジェレミアであったが、等のルルーシュがそれに気付いていない様子である事になんとも言えない気持ちにもなる。

「ルルーシュ様。神楽耶様は自身の誇りのために行動したことも事実。ですが、それだけではございませぬぞ?」

「なんだと?」

「あの方もまた、“王が動かねば兵は付いてこない”と言うルルーシュ様の信条に倣っておられる。つまりは、ルルーシュ様と道を共にするという表明でもあるのです」

「うん? 彼女ははじめからそのつもりだろう? 改まってどうした?」

「ルルーシュ様。それは、互いに君主としての立場としてお考えですか?」

「…………ジェレミア、何が言いたい?」

「神楽耶様のお立場では、戯れとして妻を自称することが精々であり、己個人の恋心を人に告げることなど許されぬお立場。この事は、ルルーシュ様も理解しておられると思います」

 それまでのジェレミアの雰囲気と異なる様子にルルーシュもまた、表情を引き締める。さすがに不敵に笑って済ませては、この忠臣に対して礼を失するとルルーシュは思ったのだ。

「そうだな。俺も今は異なる立場だが、皇族であれば好いた相手と結ばれるとは限らぬ。だからこそ神楽耶はゼロという記号か、ブリタニア皇族としての俺と結ばれることを願っている」

「そうではございませんぞ。ルルーシュ様、そうであれば、彼女は御身を守るべくキョウトに匿われておらねばなりませぬ。ですが、彼女は貴方様と同様に戦場に立つ事を選択成された」

 たしかに、神楽耶の死は日本という国そのものの滅亡を意味する。

 血筋による継承を否定し、憎んですら居るルルーシュには信じられない話かも知れなかったが、日本人にとっては皇の血は存在意義の一つでもあると言う。

「……やれやれ、そう言う事か」

 とは言え、ルルーシュもまた忠臣からここまで言われれば色々と察するところはある。

 神楽耶とは過去以上に深く語り合い、盟友としてたしかな存在になりつつもある。しかし、彼女自身はルルーシュに対してそれ以上の、過去において戯れも含めての立場を本気で思っていると言う事であろう。

「それが、勝利に繋がるというのであれば、俺は受け入れるさ。例え、あの男と同じ俗世に堕ちたとしても、アイツらのように独り善がりな愛情を向けることも無い」

 そう言うと、ルルーシュはジェレミアに対し、「これで良いか?」とも視線で問い掛けると、ジェレミアもまた瞑目しつつ膝を折る。

 戦場においては危急の事態がいつ起こりうるかは誰にも分からぬ事。

 しかし、ジェレミアとしては、臣下として再び主君が倒れることを許容することは出来ないし、さらにはその血筋が絶えることもまた受け入れがたい。

 さらには、ジェレミアは悲恋に身を湛えた少女達の姿を見てきているのである。新たな生を受け、過去の過ちを正すべく行動している身としては、主君と彼を思う者達の未来もまた道筋を付けたいという思いはあったのだ。

「さて、お前も休め。機械の身体だった事が身体に染みついているようだが、今は生身だ」

「はっ……ルルーシュ様も、ご無理をならぬように」

 そして、ルルーシュは一人になるべくジェレミアを下がらせる。

 普段であれば主君の身を按じて先に休むことなど有り得ないが、今はルルーシュが一人になりたいという気持ちを察したのである。

「すでに世界は俺の手から離れて動き始めている……。神楽耶が、そして……」

 ルルーシュ自身、過去の記憶から失われた者達を守るべく行動し続けてきたつもりである。

 しかし、工作の結果として、ペンドラゴンは過去同様に悲劇に見舞われた。

 フレイヤによる問答無用の大虐殺とは異なるモノの、すでにユーロブリタニア軍はブリタニア本国に侵入し、ペンドラゴン壊滅によって混乱する本国軍は次々に撃破されているという。

 短期間で大軍を上陸させた事を考えれば、彼等の背後には“ギアス”がある事は想像に難くない。

 つまりは、ルルーシュとしてもこれからの戦いは全くの未知数と言う事になる。

「ナナリーは自ら呪縛を打ち破り、自らの足で歩き始めようとしている。俺が望み、願った未来を歩み始めている」

 何に代えても守ろうと思った妹もまた、自らの手から離れ、歩み始めている。

 だからといって、ルルーシュが守らないと言う事は無い。ナナリー自身もまた、守られるだけで無く、守るために尽力している。今もなお、G1ベースにてミレイ等と共に情報収集や戦略管制に当たっているはずだ。

 そして、ナナリーと同様にルルーシュが何に代えても守ると誓った一人の少女。

「シャーリー……」

 一言、その名を口にしたルルーシュの手に握られた携帯ディスプレイには、不在着信記録のみが残されている。

 彼女が望み、覚悟をして赴いた戦場であったが、それが示すのは彼女自身の心の内に現れた不安であろう。

「……最後に決めたのは俺だ」

 彼女の事を考え、今度はカレン達に対する言い訳めいた考えが脳裏によぎったルルーシュはそう口にするとゼロとしての仮面を被る。

 ジェレミアを誘い、宵の闇に視線を向けたのは、自身の中にある後悔と向き合うため。それがあっては、危険を犯し、汚名を被り、そして覚悟を決めた人間達を否定することになる。

 そんな後悔を消し去るために、一人、弱音を吐きだしたルルーシュはゆっくりとマントを翻して皆が待つ司令部。

 アクシスタワー地下に据えられた“合衆国日本”へと足を向けた。

 

 

◇◆◇◆◇

 

 

 アクシスタワー地下に備えられた格納庫では、最終点検を終えた機体が居並ぶ。

 決戦に間に合わせるべく整備を進められた新鋭機月下と陽炎。

 前者は紅蓮弐式を元にして開発され、後者はジェレミアが持ち出したランスロットとその量産機であるヴィンセントのデータを元に開発された機体である。

 そして、それらを従える指揮官仕様機は三機。二房の赤い髪の毛状の衝撃拡散自在繊維が取り付けられた月下には当然の如く藤堂が。

 グロースターに似たマントを着けた二機にはドロテアとモニカが搭乗する。紅蓮と共に黒の騎士団を象徴する機体として、その三機は機体色は黒に塗装されている。

 さらに、ドロテアとモニカのマントはそれぞれのパーソナルカラーであるライトブルー、ライトグリーンで彩られており、彼女等に従う近衛騎士達の機体は制服と同様の白色の機体カラーと細部に指揮官のパーソナルカラーが施されている。

「明日は互いに異なる役割を担うことになる。……くれぐれも、神楽耶様のこと、よろしく頼む」

「ああ。諸君等の勇戦も期待する」

 互いに並び立ち、機体を見上げる藤堂とドロテアは視線を交わすこと無く口を開く。互いに譲れぬモノがあり、同時に相手に媚びることを良しとしない両者。

 腕を組んだまま静かに決戦の時を待つ。互いに実力を知り、同じ雄敵を相手に戦う事になる両者だったが、これまでのいきさつからのわだかまりが消えたわけでは無い。

「えーと、皆さん、決戦を前にそんな顔していちゃ勝てるものも勝てないですよ。笑って笑って」

 そんな空気を嫌ってか、はたまた顔を合わせて困惑していた吉田達に背中を押されたのか、両者の前に進み出たリヴァルが笑顔を浮かべるも、双方から鋭い視線を向けられるだけである。

「ええっと、藤堂さんもドロテアさんもそんな顔してちゃ男前や美人が台無しですよ?」

「小僧、ふざけているのか?」

「まあ待てって。リヴァル君の言うとおりだぜ?」

 そんな視線に冷や汗をかきつつも、なおも口を開き続けるリヴァルに、藤堂をチャカされたと思ったのか、千葉が鋭くにらみ付ける。

 それを切っ掛けに、それまでの態度に苛立っていた近衛騎士達の視線が鋭くなるが、一触即発といった空気が流れる前に卜部が両手を挙げながら進み出て、リヴァルの傍らに立って肩を抱く。

「別に仲良くしようってわけじゃあねえ。俺達の鬨の声が気に入らなかったことも、あんたらに水を差されたって気持ちも互いにある。でも、俺達は軍人だ。その事は忘れていないだろ? 藤堂さんもそうですよね?」

「…………無論だ」

「なればいい。こちらもつまらぬ意地を張った……此度の戦、必ず勝つぞ」

 わだかまりがあるのは分かるが、軍人として目の前の勝利に全力を尽くすことは当然の義務。

 その事を改めて声に出し、藤堂からの言質を取った卜部の視線を受けたドロテアは、藤堂へと視線を向け、手にしていた剣を差し出す。

 藤堂もまた、それ受けて握りしめていた軍刀を差し出し、互いに剣を抜き、差し戻す。

「ふう……、朝比奈も千葉もいい加減大人になるのじゃな。ほれ、手伝え」

「仙波大尉、俺は別に」

「で、何をするんです?」

 その光景を見ていた残りの四聖剣、特に最年長の仙波はふっと息を吐くといまだに不満げな雰囲気を纏う朝比奈と千葉を促し、テーブルに並べられた杯に水を注いでいく。

「何をするんです??」

「水杯だ。古来より、今生の別れを覚悟した際に交わすものだ」

「水を飲み干した後、地面に叩きつけて割ることで、その盃を二度と使わない。すなわち、二度と会うことは無いと言う意味合いを持っているんだよ」

 仙波が水を注いでいく様子を興味深げに見つめるリヴァルに千葉と朝比奈が不承不承と言った様子で説明していく。

 その意図を聞かされたリヴァルは、覚悟をしていたつもりでも、息を呑まずには居られなかった。

「だが、我々はそれを割ることはせず、機体へと持ち込む。再びこの杯を用いる。つまり、これを持って勝利を宣言すると言う事だ」

「なるほど……。中々しゃれた儀式だな」

 そんなリヴァルに対し、藤堂は不敵な笑みを浮かべつつ、彼等なりにアレンジした意図を説明すると、ドロテアもまた同様の笑みを浮かべる。

 この場にあっては最年少のリヴァルを介してか、ようやく互いに胸襟を開きつつある両者。

 そして、互いの上官が杯を手にすると、旧解放戦線側も近衛騎士側も互いに肩の力を抜きつつ杯を手にしていく。

 リヴァルもそれにならい、杯を手にすると卜部とモニカの両者から肩をぽんと叩かれ、笑みを浮かべられる。

 当初はやらかしてしまったかと思ったリヴァルだったが、それによってようやく安堵することが出来ていた。

「で、声出しはどうするんです? 日本万歳じゃあれでしょ?」

「せっかくだ、リヴァル君が何か言ってくれ」

「へ? 俺ですか??」

「本来だったら紅月がやるべき事なんだろうが、この場をまとめてくれたのは君だ」

「実力的にも十分ですよ。騎士団のエースが不在な今、準エースが皆を鼓舞するべきです」

 と、安堵も束の間、とんでもない大役を任されてしまったリヴァルだったが、藤堂とモニカに背中を押され、この場の全員の視線を受けて覚悟を決める。

「ええと、俺はちょっと前までただの学生で、長年戦ってきた皆さんに偉そうな事は言えません。だから単純明快に行きます」

 そして、改めて自分に向けてくる皆の視線を一瞥したリヴァルは、ふっと息を吐くと覚悟を決めて声を上げる。

「明日は、かちゅっ!? 痛ってっ!? か、勝つぞっ!!」

「勝つぞっ!!」

 そして、盛大に舌を噛んだリヴァルに、藤堂とドロテアが揃って躓きかけるも、痛み耐えて声を上げたリヴァルに、全員が笑みを浮かべつつも、見事に調和した勝利を誓う。

 互いのわだかまりも、その解決も、すべては勝利と言う結果が無ければ成り立たない未来。だからこそ、“勝つ”。それが、今この場において全員が一致すべき目的であった。

 

「あーあ……、やっちゃったよ」

「ははは、リヴァルらしくて良い。その悔しさは、明日ブリタニア相手にぶつけてやれ」

 その後は自然と解散となり、全員が明日の戦いに向けて身体を休めに向かう。

 とはいえ、リヴァルは盛大にやらかした自覚があるためすっかりむくれてしまっていたため、少しの間とは言え教官として面倒を見たドロテアは彼を宥めるべく夜風に当たりに誘い出した。

「それでも感謝して居るぞ? 私の部下達と彼等が揉めたことがあってな。それがあってのあの空気だったが、おかげでずいぶん和らいだ」

「そんなドロテアさんらしくない優しさをもらっても余計に傷付きますよ」

「こら、どう言う意味だ?」

「な、なんでもありませーん」

 今もむくれるリヴァルだったが、訓練の際には鬼になっているドロテアの慰めに冗談めいて返すも、余計な一言だったらしく頭に拳を当てられてグリグリと押し付けられる。

 普通の女性であれば大したことは無いが、相手は最強の騎士。当然だが、リヴァルの頭部には鈍い痛みが響き渡る。

「おいおい、お二人さんいつまで遊んでいるつもりだい?」

「む? 卜部か。貴様も人のことは言えんだろ?」

 そんな二人の元に歩み寄ってきた卜部に対し、比較的交流のあるドロテアは軽口で応じる。

 先ほどの状況でも飛び出したリヴァルを素早くフォローし、状況を利用して両者の本音を引き出した。

 騎士団側との折衝を任される事が多いのもよく分かる機転の効き方だ。

「俺はまだまだやることが有ってね。部隊間の連携とか、埋伏させた部隊やトーチカの位置の把握もしとかなきゃだしな。ほれ、飲みな」

「ありがとうございます。参謀役も大変なんですね」

「そんな大したもんじゃねえよ。俺等のところはそう言うのが苦手なヤツばかり集まってるだけさ」

「たしかに、軍人と言うよりは私兵集団の方が似合いそうだ」

 休憩がてら夜風に当たりに来たところに先客が居た様子だが、二人の分も飲み物を持ってきたところを見ると、リヴァルとドロテアがここに居たことを把握していたと言う事だろうか?

 卜部の謙遜めいた言に皮肉で応じたドロテアに、リヴァルは非難めいた視線を向けるも、卜部は表情を変えずに持ってきたカフェオレを一口飲むと口を開く。

「前にも言ったと思うが、今もキョウト直属部隊は藤堂さんの信奉者が大半だ。今回、共同作戦が取れるのも、コーネリアが神楽耶様に手を出そうとしたからって言うのが大きい」

 そこまで言うと、再びカフェオレを口に含むと、一瞬口元をほころばせる。リヴァルとドロテアから見ても甘党と言う事が一目で分かる。

 ちなみに、両者の好みも把握していたようで、卜部はかなり糖度の高いカフェオレに対し、リヴァルは微糖でドロテアはブラックであった。

「んで、俺がさっき軍人である事を強調したのも、正規の士官教育を受けていないヤツがほとんどだからさ。軍人としての誇りや責務を骨の髄まで叩き込まれたならば、不本意な戦いでも命令があれば戦う。だが、アイツらはそうじゃない。だからこそ、無駄に高いプライドを煽ってやらなきゃならない」

「以前にも言っていたな。藤堂が遊軍を引き受けたのも、勝利の暁には追撃では無く後詰めを受け入れたのも、以前の問題があったからであるしな」

 今回の戦いにあって、先陣を務める栄誉に預かったにはドロテア率いる近衛騎士達であり、リヴァルの居る黒の騎士団も第二陣である。

 対する藤堂達は夜明けを前にサイタマゲットーから出撃し、カワゴエやイワツキと言ったサイタマゲットーの周囲に点在する中規模ゲットーを拠点とした遊撃行動を取る。

 特に、藤堂部隊は規模が大きく、KMFの数も一際多い。コーネリアがサイタマゲットーを包囲する形を取って来たが、その背後は常に藤堂によって脅かされる事になる。

 結局のところ、ゼロの命令に不服をもたれては軍として機能しなくなるため、神楽耶の名を持っての独立軍という体裁を取っているのだ。

「舵取りは大変だと思うが、藤堂の動きを掣肘されぬよう動く事も参謀の責務だぞ?」

「だからそんな大したもんじゃねえっての」

「ふ、口で言う割にはなじんでいるように思えるがな。それにしても、貴様の態度もずいぶん砕けてきたでは無いか」

「何回もぶちのめされれば慣れるんだよ」

 そう言うと、卜部はカフェオレを飲み干すと、罰が悪そうに空き缶を外へと投げ捨てる。

 ユーフェミア絡みの騒動の間、黒の騎士団との合同演習は幾度も行われ、その都度代償の揉め事は起こりつつも練度は上がっている。

 それでも、最終的にはドロテアが全員を叩き潰すという構図は最後まで変わらなかったが、一部では和解が進んでもいる。

「ふ、私に抗えれば、コーネリア殿下とギルフォード以外には負けはせぬ。自信を持つことだな」

「分かってるよ。さてと、休憩はここまでだ。色々とありがとよ」

「うむ。互いの健闘を祈ろう」

「ああ。リヴァル君も……死ぬなよ?」

「…………はい」

 そう言うと、肩の力が抜けたのか、表情を和らげた卜部はその場を後にする。

 死ぬな―そう言われたリヴァルは一瞬表情を強ばらせたが、それでも今となっては覚悟の方が勝る。とは言え、気にならないことが無いわけでもない。

「ルルーシュのあの話は。どこまで本当なんですかね?」

「さてな。あやつも私達と話すことでヒントを得ようとしているのかも知れないが……」

「口に出せば頭の中も整理できますしね」

「いずれにしろ、アイツらの問題だ。別に“情報が漏れていた”ところで、それはお互い様だからな」

 そう言うと、ドロテアはリヴァルを促し、それぞれの待機所へと促す。

 主戦力であるKMFのパイロットは戦時においても個室が与えられている。疲労に関してはかつての航空パイロットと同等であり、貴重な戦力に対する優遇はどこの軍隊でも有り得る。

 リヴァルは闇夜の中で仮眠を取る兵士達に感謝しつつも、明日の戦いにおいては彼等を守るべく奮戦することを心の内で誓う。

 

 

 戦いの火ぶたはまもなく切られようとしていたのだった。




投稿が遅れて申し訳ありません。
加えて、読み返してみると描写が矛盾していたりする場面がけっこうあったりして申し訳ありません。



どうでも良いことですが、「女師匠キャラ」って良くないですかね?
ルルーシュやスザクは「師匠なんていらん」って言う天才型なので、リヴァルはこう言う人間関係も描きやすいです。
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