コードギアス ~生まれ変わっても君と~   作:葵柊真

90 / 103
第23話 去りゆく者達の意地

 コーネリアと激突するカレンの元へと機体を走らせたリヴァルはドロテア等と共に、妨害してくるコーネリア親衛隊及びクラウディオ、エドガーの両隊との交戦のただ中に居た。

 

 グロースターを中心とした精鋭部隊で有り、自分達以外は近衛騎士達はともかく、騎士団内部の精鋭と言われたメンバー達は多くが無頼に搭乗しているため、機体性能という面では不利になる。

 必然的に、新鋭機に搭乗する自分達が矢面に立ち、彼等は回避を優先しつつ砲撃支援という形を取っている。

 

 リヴァルの乗る陽炎は日本製の機体では無く、元々日本に試験機として配備されていたブリタニア機を基礎にした機体で有り、藤堂と四聖剣達に配備された月下と同等の性能を有する。

 騎士団ではリヴァルの他はドロテアとモニカのみが搭乗しており、リヴァルに関してはゼロの腹心として厚遇である事は明白だった。

 当然だが、相応の戦果も求められる以上、今のようにドロテアを轡を並べて、相応の戦果を得ることが求められるのだ。

 

 

「おわっ!? と、この野郎っ!!」

 

 

 近接戦闘はいつどこから敵が来るか分からない。

 

 今も、不意を突いきたランスをギリギリで躱し、廻転刃刀を振るって敵グロースターの片腕を両断すると、左手に持つアサルトライフルで操縦席を容赦なく射撃する。

 基本的に、操縦席は硬い装甲で守られている。そのため、そこを射撃するというのは遠回しに脱出させる手段でもある。もっとも、逡巡すれば装甲を抜かれてミンチになるだけであったが、そこまでの責任はリヴァルには持てない。

 今回は相手も敗北を認めて脱出したが、親衛隊のように三機連携で容赦なく操縦席にランスを突き立てる戦い方はリヴァルは真似をする気にもなれなかった。

 とはいえ、視界に取られたカレンとコーネリアまでの距離が縮まらない事への焦りもある。

 

 一騎討ちという状況であり、ブリタニア騎士達も割って入るような真似はしていないが、あのカレンが互角という事実がリヴァルには驚きがある。

 コーネリアがブリタニアの魔女と呼ばれていても、どこかでお姫様へのおべっかが含まれているんじゃないかと思っていたため、実際にカレンと互角に戦っているコーネリアのグロースターの動きは、親衛隊や指揮官のクラウディオやエドガーよりも無駄が無ければ力も強く見えた。

 実際にコーネリア仕様として性能は高いのであろうが、それを存分に発揮できるかどうかが操縦者の力量でもある。

 だからこそと言うべきか、互角だからこそ、カレンがコーネリアを倒すことも有り得るし、逆も有り得た。

 上空を旋回しつつ攻撃しているシャーリーの動きを見ても、ルルーシュが何かを仕掛けることはリヴァルには分かっていたが、それが成るまでには少しの不確定要素も排除したかった。

 

 

「ちくしょうっ!! 雑魚には用は無いんだよっ!! どきやがれっ!!」

 

『イレブン風情がっ!! 生意気な口を叩くなっ!!』

 

「残念。俺は主義者の方だっ!!」

 

 

 その苛立ちからか、リヴァルの暴言は回線を通じてしっかり敵に届いたらしく、複数基を倒したリヴァルに対して敵意を向けて向かってくる数機の機体。

 それに対しても恐れよりも苛立ちが勝り、無茶な突撃をして二機を叩くも、周囲に敵が群がりはじめる。

 

 

『熱くなりすぎだ馬鹿者』

 

 

 一転して窮地に立たされたリヴァルだったが、呆れたような声色でドロテアがそこに割って入り、ほどなく残った四機を叩きのめす。

 

 

「すいません。調子に乗りました」

 

『勇猛と蛮勇は違うぞ。紅月のことを案ずる気持ちは買うがな』

 

 

 一瞬の空白か、周囲の敵をドロテアが一閃、叩きのめしたことで出来た合間に師弟へと戻った両者。

 リヴァルに対して勝敗の鍵であるカレンのことを口にした手前、責めるわけにも行かない状況ではあったが、強力な敵を前にすれば当然焦りなども伴う。

 それを最低限に抑え込み、努めて冷静に戦う事をドロテアはリヴァルに説いてきたが、戦場ではどうしてもそれが脇に置かれてしまう事も多い。

 実際、異なる世界において、ドロテア自身もそれを忘れ、仇討ちに燃えたことで枢木スザクに対して一太刀も浴びせること無く敗れ去ったのだ。

 

 

「はい。――って、ドロテアさん、後ろっ!?!?」

 

『むっ!? うおおおおおっっ!?!?』

 

 

 そんな師弟のやり取りの最中、間の悪いことにカレン達に対して背を向けていたドロテアに対し、コーネリアのランスをもろに受けたカレンの紅蓮が二人の元へとはじき飛ばされてきていた。

 咄嗟にスラッシュハーケンを瓦礫に突き立てて威力を殺したカレンと瞬時のこととは言え、衝撃をいなしつつ紅蓮を受け止めたドロテアの操縦技能が無ければ両機ともに大破していた可能性もあった。

 

 

『紅月、無事かっ!?』

 

『おかげさまで。やるわねあのおばさん』

 

『さすがにそれは失礼だと思うぞ?』

 

「ドロテアさんの方が年上ですもんね」

 

『…………リヴァル、後で覚えておけ』

 

「げっ!?」

 

 

 お互いに損傷は軽微であったためか軽口を叩く両者。

 それに感化されてか、リヴァルも余計なことを口走り、生きて帰ったとしても彼の“死刑”はほぼ確定したと言える。

 とはいえ、現状は目の前の状況から生き残らねばならなかったのだが。

 

 

『小娘の次は裏切り者と小僧か……。良いだろう、まとめて相手をしてやるっ!!』

 

『ふ、息が上がっておられますよ? 殿下』

 

 

 カレンを突き飛ばして一息付けた様子のコーネリアは眼光鋭くリヴァル達を睨むも、さすがにカレンとの戦闘で消耗している様子は見受けられる。

 もっとも、彼女ほどの戦士ともなればいくら疲弊していたとしてもその技量に鈍りは見えない。

 それ故に、ドロテアの言は売り言葉に買い言葉の挑発だったが、共にブリタニア最強の座を争う立場にある女傑同士。

 これが戦争では無く、スポーツの類いであったのならば、史上最高の対戦カードと言うべきものであったのかも知れない。

 

 

『ちょっとっ!! 私はまだ負けていないわっ』

 

『ほざけ。貴様等が万に一つも勝つためには私を倒すのみ。今更小娘に児戯に付き合う気は無い』

 

 

 そんな様子で、すぐにでも戦いを始めそうなコーネリアとドロテアに対し、カレンが紅蓮を二人の間へと割り込ませる。

 とはいえ、コーネリアからすれば騎士団唯一の勝利の可能性は自らを討つ事であり、カレンではそれが果たせなかったと言う事になる。

 コーネリアからすれば、互角かやや優勢という形であるカレンよりも、余力がある間に自身と同等のドロテアを討つべく行動するのは必然でもあった。

 その性格上、カレンがドロテアとの戦いに割って入るような真似をすることは無いのも読み取っているのだ。

 

 

『残念ですが、お相手はいたしかねますよ。殿下』

 

『臆病風にでも吹かれたか? 逃がしはせんぞ?』

 

『そうではありません。貴方が自信の芸術に酔いしれている間に、ゼロが放った矢が届こうとしているのですよ』

 

 

 しかし、コーネリアからの一騎討ちをドロテアはやんわりと退け、彼女にしては珍しい不敵な笑みを浮かべる。

 

 

 ゼロが放った矢。

 

 

 それを証明するかのように、ドロテアの言と同時に、上空より滑空してきたシャーリーが、コーネリアに対し、狙撃用の大型ライフルを放つ。

 奇襲という形にはなったモノの、コーネリアにそんな安易な攻撃が通用するはずも無く、シャーリーが放った砲弾はコーネリアのランスによって斬り伏せられる。

 

 

『小賢しいことをっ!! むっ!?』

 

 

 一騎討ちを断られたことや安易な奇襲に対し、激発しかけるコーネリア。しかし、彼女が破壊した砲弾はその場で炸裂することも無く、コーネリアの機体とその周辺を鮮やかに染め上げると、ほどなく熱を発して、色の付いた煙を放ちはじめる。

 

 

『なんの…………、』

 

 

 突然の状況に、一瞬の戸惑いを見せるコーネリア。

 もっとも、それは彼女だけでは無く、カレンやリヴァル。そして、その周囲で戦っていた両軍のKMF達も同様であった。

 

 

「おいおい、運動会でもやる気か?」

 

『ふ、答えはすぐだ』

 

 

 そんなリヴァルの疑問に、この場に置いてただ一人、ゼロの最後の策を言い含められいたドロテアが口を開く。

 

 そんな彼女に対し、コーネリアとカレンが問いただそうと口を開き駆けたその時、戦域全体へと開かれた回線から、叫び声が周囲に響き渡る。

 

 

 

『敵機っ!? 直上っ!! 急降下っ!!』

 

 

 

◇◆◇◆◇

 

 

 周囲の状況に立ちすくむのは自分だけでは無かった。

 

 

『姫様っ!!』

 

『総督、ご無事ですかっ!?』

 

 

 そして、そんな様子のコーネリアに対し、二機のグロースター、ギルフォードとクラウディオが駆け寄ってくる。

 後方の藤堂隊との戦いはダールトンがそのまま指揮を取っているのであろうが、そちらの味方を示すマーカーは半数近く討ち減らされている。

 

 

「ギルフォード……、クラウディオ。私は何を間違えた?」

 

 

 そんな二人に対し、コーネリアは空を見上げながらそう呟くしか無かった。

 

 カレン・シュタットフェルトとの交戦中、曇天の中から差し込んだ陽光とそれに導かれるように現れた白き機体。

 

 カレンの乗る紅蓮やブラック・ウィドウと同型の機体で有り、おそらくはカレンに成り済ましていたパイロットの乗る機体であろうが、その“天使”を思わせる白き姿に導かれるように上空より現れたのは……、8年前に壊滅したはずの旧日本海軍の航空部隊であった。

 KMFの登場により、多くの兵器が主役の座から退く中で、空を飛ぶことが出来るKMFが例外を除いて存在しない今、制空権の確保はKMF戦においても重要な要素。

 コーネリアも当然それを理解していたからこそ、ガウェインと同型の機体(蜃気楼)という強力な航空戦力を得た黒の騎士団に対し、エリュティアや基地航空隊を差し向けて居たのだ。

 騎士団の航空戦力に関しては、キュウシュウ戦役にて中華連邦海軍を迎撃したフロートユニットの存在が合った。

 そして、蜃気楼を就役させ、フロートユニットを搭載した機体を二機投入してきたのである。

 トウキョウ租界防衛を単艦でも担えるであろうエリュティアを割くだけの価値はあると判断していたのだ。

 

 しかし、曇天の中から現れた急降下爆撃隊は騎士団を包囲していた火砲戦力をあっさりと壊滅させ、突然の事態に混乱したKMF部隊は後続の戦闘機隊の機銃掃射に気を取られたところを反撃に出た騎士団KMF(ドロテア麾下の近衛騎士達)と自由の身になった火砲部隊の攻撃によって次々と撃破されている。

 

 さらに、一部の精鋭機は地表すれすれまで降り、KMFの砲撃を嘲笑うかのようにミサイルの斉射をもってKMFや火砲戦力を返り討ちにしたコーネリア親衛隊機をも撃破して見せた。

 航空機が戦いの主役となって以降、制空権無き戦場に勝機は無い。如何に密な対空砲火を持ってしても、地上戦力が空を自由に翔る航空機を落とすことは困難。

 さらに、日本機は撃墜された機体はそのままこちらの機体へと突撃し、数機が道連れにされている。

 

 

『先ほど、房総半島沖に展開する所属不明の艦隊を補足したとの連絡がございました。ですが……』

 

「ECM妨害によって、こちらの補足が遅れていたと言う事か……」

 

 

 豪雪に伴い、航空戦力の出撃は不可能に近い。

 

 現に、サイタマゲットーでの攻防の際に蜃気楼と交戦していたブリタニア航空機は出撃できていない。となれば、空の守りはエリュティアのみに託されたのだが、現状を考えればエリュティアも撃破されたか、無力化されたと見るべきだろう。

 豪雪の有無を問わずとも、エリュティアがトウキョウに居なければ、ブリタニアの防空網は突破出来るとの確証があり、この地にあってもエリュティアを無力化できれば急降下爆撃による奇襲は成る。

 

 先ほどの白き機体の航跡がそのままブリタニア側の包囲網に沿っており、熟練の航空隊にとっては地上にて膠着する戦力は良い的でしか無い。

 コーネリア機に向けられたテクニカラー砲弾が地上の目印となり、空では先ほどの機体が身をもって管制をする。

 

 ゼロがフロートユニットを装備させただけの事はあり、あの白き機体のパイロットは指揮管制にも優れていたのであろうか……。

 いずれにしろ、高い操縦技量を誇る海軍パイロットにとっては的が用意されたに等しい状況だったのだ。

 

 

「ギルフォード。ダールトン、バート、デヴィッド、エドガーに伝令。即時戦闘を中断し、トウキョウ租界へと撤退せよ」

 

『なっ!? 姫様?』

 

「クラウディオは本隊を指揮し、後退の殿を取れ。シュタットフェルトの釣り出しに続き、困難な任務であるが、父や兄弟を守れ」

 

 

 そこまで考えたコーネリアであったが、一瞬瞑目するとそこまでの韜晦を断ち、自身に視線を向けてきている騎士や部下達へと矢継ぎ早に指示を出す。

 そして、双方共にその指示の意味するところが分からぬような愚か者でも無い。

 

 

「シュタットフェルトはまだまだ未熟。私が居る以上、私の首を取りに来る。なれば、私が直々にヤツの首を刎ねてやろう……。それには、私一人で十分だ」

 

 

 包囲が完成しつつある中で、脇目も振らずに自分の下へと突撃してきたこと。

 

 藤堂達の存在を含めて、正面を突破することこそがあの状況下では正解であり、それを導き出した事は天賦の才だろう。

 加えて、崩壊しかけたKMF部隊をその存在一つでまとめ上げ、全面崩壊を防いでいる。

 

 勇将の下に弱卒無しとはコーネリア自身の信条でもあったが、ゼロ一人に手を焼く現状で、もう一人の英雄的存在を生み出すわけには行かなかった。

 もっとも、傍らにドロテアが居る以上、目的を成せたとしてもコーネリアの運命は決まっていたが。

 

 先ほどまでは両者をも相手取ってやろうと意気盛んであったコーネリアも“敗北”と言う現実が目の前に迫った今となっては冷静に戦場を見るしかなかった。

 

 

『彼のモノの首は私にお任せを。姫様はトウキョウにお戻りになり、捲土重来を』

 

「今回の戦いは、万死に値する失態である。犠牲になった兵達には私自ら報いねばならぬ」

 

『シャルル陛下も政争によって御家族を失い、自身を守るべき騎士達の裏切りすらも乗り越えて世界帝国を築かれました。一度の敗戦等は自身の糧にしか成りませぬぞっ!!』

 

「ギルフォード。私は誰だ?」

 

『コーネリア・リ・ブリタニア様にございます。なればっ!!』

 

「そう。私はブリタニアの魔女。そして、ブリタニアに敗北は許されぬ」

 

 

 不敵に笑い、画面越しにカレン等黒の騎士団のKMF達を見据えるコーネリア。

 戦力差を考えれば負けるはずのない戦いであり、ゼロ等の策を見抜けず、無様に敗北した形である。

 

 一軍の将帥でもあれば捲土重来の機会も与えられるであろうが、コーネリアは皇族で有り、ブリタニアの威信を身をもって体現せねばならぬ立場。

 そして、自ら戦場に立つ事でブリタニアに勝利をもたらし続けていたからこそ、女の身で有りながら皇位継承者争いにも加われたとも言える。

 政治や謀略が主戦場であるオデュッセウスやシュナイゼルであれば、戦場での責任は現場指揮官達の責任であり、皇族に対する敗戦の責任を問われぬ為にも、その指揮官達にも挽回の機会が与えられる。

 しかし、コーネリアは戦場での勝利をもって彼等に対抗してきた身であり、自身が戦場に立っていたからこそ、敗北という事実を責任の所在でお茶を濁す事が出来ない。

 

 それ故に、敗北は自身の未来が閉ざされることも意味している。

 

 ギネヴィア等が戦場に立つコーネリアに眉をひそめて居たのは、蛮勇というあざけりと同時に、敗北が即座に彼女の地位を脅かすと言うブリタニアの現実を知っていたからでもあるのだ。

 今のコーネリアに出来ることは、トウキョウ租界防衛の戦力を残した上で、騎士団に最大限のダメージを与える事で時間を稼ぐしか無い。

 ギルフォード達が生き残れば、本国にあるであろうユーフェミアが持ちうる武力を残すことにも繋がるのである。

 

 本国の状況が分からぬとは言え、コーネリア自身も来たるべき未来を見据える必要があったのだ。

 

 

『ギルフォード、そのぐらいにしておけ。姫様の気持ちが分からぬでは無いだろう?』

 

「ダールトン? 藤堂等はどうしたっ?」

 

『蹴散らして参りました。おそらく、騎士団側への毒はまだ機能している様子』

 

 

 そんな時、後方にて交戦中であるはずのダールトンがコーネリア等の会話に割って入る。

 

 戦域モニターを見れば、ダールトン達と交戦していた藤堂隊は彼等と距離を取っている。ダールトンの言う、“蹴散らした”には該当しないが、藤堂は攻めきれない事を悟って後退したのだろう。

 この辺りが、シュタットフェルトと異なり、クロヴィスにすら勝てなかった点であるとコーネリアは思ったが、敗軍の将は兵を語らず。そんな思考を彼女は恥じつつ、状況をしっかり作ってきた忠臣に対して笑みを作る。

 

 

「よかろう。ダールトン、貴様ならば成すべき事が分かるであろう?」

 

『はっ。ですが、総督。我らの撤退路は一つですぞ』

 

「なに?」

 

 

 そう言って笑みを返してきたダールトンより送られてきたデータ。

 

 彼が示した撤退路は、まさに眼前の黒の騎士団中央を突破するルート。

 何を馬鹿なと言いかけたコーネリアであったが、考えて見ればこちらの撤退路を三重の罠を仕掛けてきたゼロが読まぬはずは無く、逆に黒の騎士団の進撃路は妨害工作を用意する時間があるとは考えがたい。

 また、G1ベースが後方に待機していることで、指揮系統の遮断を嫌ってこちらへの追撃よりもG1ベースの護衛を優先する可能性が高い。

 

 

『また、ヤツ等のフロートユニットですが、キュウシュウ戦役での稼働時間を鑑みれば、まもなく限界を迎える公算が高い。ハドロン砲による追撃を受けたとしても、せいぜい1発が限界でしょう』

 

 

 そして、エリュティアが無力化されたであろう事を前提とすると、最も脅威となるのは言うまでも無く蜃気楼以下の航空戦力。

 

 だが、敵航空隊は天候の回復を待って駆け付けてくるであろう基地航空隊から逃れるのを優先するであろうし、3機のKMFは時間的な稼働限界を迎えると言う事はすでにダールトンは計算済みである。

 

 ギルフォードが騎士としての立場から彼女の玉砕を止めようとしたことに対し、戦略と戦術の公算をもって止めに入るダールトンはさすがに謀略も担えるだけのことはあった。

 とは言え、主君の玉砕に同行するために己の知慧を駆使したことに対しては苦笑するしか無かったが。

 

 

「ふん、馬鹿どもが。だが、よかろう。生きて、ユフィと顔を合わせねばならんしな」

 

『我ら一同、最後までお供いたしますっ!!』

 

『右に同じく。 バート、デヴィッド、エドガーっ!! 聞いていたな。貴様等も、己が役目を果たせっ!!』

 

『了解っ!!』

 

 

 

 敗戦の責任。

 

 それは、コーネリアにとってははじめてとも言える屈辱で有り、一時は彼女ですらも希死へと飲み込まれようとしていた。

 しかし、戦場を自身の芸術で彩った名将が、未来と生への希望を見出した時、その軍は再び一頭の獣として息を吹き返す。

 

 歴戦の指揮官達の采配の元、生き残った者達はゆっくりと、瓦解した包囲を整え、それが横へと広がり、鶴が翼を広げた形へと変化していったかと思えば、中央へとまとまり、一つの鱗のような形へと姿を変えていく。

 

 ドロテア麾下の近衛騎士と一部のパイロット達は交戦していたバート、デヴィッド隊の生き残り達の追撃を開始し、彼等を前へ前と押して行く。

 しかし、先ほどのように崩れたまま撃破される機体は無くなり、単純に自分達の勢いを分散されている事に気付きはじめる。

 そして、それが誘いである事に気付いたときには、カレン、ドロテア、リヴァルの3名がコーネリア等と交戦を再開しており、彼等の続く部隊の後方には大きな空白が出来上がっていた。

 

 

 それは、決壊寸前のダムに、小さな穴が穿たれるまさにその直前の状況であった。

 

 

◇◆◇◆◇

 

 

 一瞬にして覆った戦況。

 

 それは、かつて戦場を支配していた者達の意地。そして、それは不可能を可能とした勝利を呼び寄せた。

 しかし、彼等が作り出した一瞬の静寂は、コーネリア・リ・ブリタニアというブリタニアの魔女に、完全な敗北から脱する時間を与える結果にもなっていたのだった。




体調不良で更新が遅れてしまい大変申し訳ありません。


分かりづらかったかも知れませんが、コーネリア軍を壊滅させた切り札は、『キョウト(公方院)が隠していた機動部隊の生き残り達』です。
カレンのための贄になった事に対する種明かしは後々描写しますが、R2のようにKMFが空を飛び回る状況では無い以上、航空機にKMFが勝つのは難しいだろうと言う事でこんな結果を用意してみました。

彼等が壊滅していない理由は、「第一次太平洋戦争から海の戦いは基本が大艦巨砲主義のまま」という設定にしてあります。
第一次太平洋戦争の詳細が分からないのと、50年以上も時間があったら戦術も変わるかも知れないと言う点は都合良くスルーしてしまっています。

一応、今回の航空隊の練度は「ネタ込みの全盛期南雲機動部隊」ぐらいだと思ってもらえればと思います。


感想をくれた方の意見を参考に、後書きで描写不足に感じた面を補足してみました。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。