雨月目線
「光の呼吸・鬼術・雪華!」
雪の華が咲き誇り、ツタが刀身に絡みつく
間合いの内側が寒い
水も少しばかり氷だした
「胡蝶、嘴平、栗花落、下がれ!!」
高火力で空気の温度を温める紅蓮
次の瞬間、爆発が起きた
爆風で飛ばされた先には、花の入った壺がある
派手な装飾で、宇髄が居たら欲しがりそうなほど
この壺はどこかで見た事がある
もしかして・・・
壺の中に入っていた花を掴み取ると水の中に落ちた
一か八かとはまさにこの事
違ったら俺が瀕死の状態になるだけ
成功なら、上弦の花を殺せる
血鬼術・閉ざされ氷柱
水面から尖った氷柱のような物が生えてくる
そして、水は一気に凍りつき俺も一瞬、凍りつく
次の瞬間、炎の熱により池の氷が溶け息を吹き返す
花は粉々に割れて壊れた
上弦の花の正体はこの花だったのだ
無惨の血は人間に与えると鬼になる
ただ、例外もあるのだろう
急所を切っても死なない鬼も居るが、この鬼は花が急所
それを持ち歩く事によっての移動が可能だった
こう推測をしつつ、爆発の原因の男の元へと急ぐ
「影御前!!死んでるのか!?死んでいてくれたらありがたいが、先へ進みたい!出て来い!!」
虚しくも響く声
砂煙がまあ荒れる中、ゆっくりと立ち上がったのは“鬼”だった
何故、どうして?
それが何故なのか意味がわからなかった
さっきまで、紅蓮は人間だったはず
「◾️◾️◾️◾️◾️◾️◾️◾️!!」
胡蝶、嘴平、栗花落がいないのが幸いだろう
突然、目の前から紅蓮が消えると背中に猛烈な痛みが走る
「かはっ!」
柱に体を叩きつけられたのだ
何が起きたのかなんて理解はできないが、目の前の紅蓮が恐怖の対象なのは間違いない
体が震えて足が竦む
嫌な汗が体から吹き出し、傷の回復も望めない
ここで、回復したら俺はもう、動く体力すらもなくなってしまう
襖が開くような音
金属を引きずるような乾いた不気味な音
柱の後ろ側には上弦の狂気が立っていた
いくらなんでも状況が悪い
刃こぼれした鎌を持つ狂気はまさしく、死神といえよう
「やっと見つけたぞ。ん?鬼になってやがるな・・・そうか、鬼に・・・!これで永遠に遊べる玩具の完」
完成
その言葉を言おうとした上弦の狂気の言葉は紅蓮によって遮られた
元々、剣士であり全集中・常中の会得をしていた上に人間らしからぬ能力も持っていたからだろう
狂気の胸に紅蓮の腕が突っ込まれている
脈打つ心臓を取り出し、潰すと吹き出る血飛沫
それを楽しそうに浴びてから心臓を食べる紅蓮は
他の鬼とは明らかに違う、スピードにパワー
「なんだぁ、これは?面白ろい、このままぶっ壊してやる!!!血鬼術・凝血界
鎌で自分の腕を切り落とした狂気の腕から血が吹き出たと思うと周りに広がり、まるで俺たち3人を囲むように作られた
まるで、籠の中の鳥のような気分
「散血刃!!」
突然、籠のような部分から雪のように降り注ぐ血の刃
こんな技を持っていたのか
いや、とにかく今は体力の回復を優先しろ
恐らく、この戦いは紅蓮が勝つ
そう思えるのは紅蓮はまだ血鬼術を使っていないから
だが、もし使えないのなら?
良くない事を考えるよりも勝利の道を掴みとるんだ
目が覚めると、狂気の姿はどこにもなかった
その代わりに紅蓮の姿もない
「一体、どこに?」
「ここだ」
後ろから声がする
振り返って確認するも、いない
次、目の前を見ると返り血を浴びて白銀の髪が赤黒く染まった紅蓮が目の前に居る
瞳の色は赤から青へと変わり、牙も生え、爪も長い
右の額から生えた一本の角
そして、前からあった痣が前よりも濃くなっている
一言、言ってイイだろうか
こんなの、乙葉が見たら絶対に惚れ直す
それは嫌だ
なんとも気の抜ける状況だが相手は鬼
「光の呼吸「端的に言うぞ」
呼吸の名前を言おうとした途端に言われた言葉
何を言うんだ?
無惨の力の特徴とかならばありがたい
「俺は鬼になった」
「見ればわかる」
この男は俺に喧嘩を売っているのだろうか
今すぐ殺したいが理性もあるようなので話くらい聞いてやる
遺言くらい残して死ね
「俺の頸を落とせ」「は?」
要するに死んでほしい相手に殺してくれと言われているのだ
しばらくの沈黙が訪れる
「ふざけんなテメェ!!」
この静寂を無かったかのようにする罵声を発したのは自分だった
なんでなのかはわからないし理解もしたくない
ただ、言わなければならない
そう思ってしまった
紅蓮の左頬を殴ると、威力があったのか口が切れて頬が腫れる紅蓮
これくらいはしないと意味がない
体に炎が付いて、傷を塞いでいくので、馬乗りになって殴り続ける
「テメェが鬼になったのは対して重要な事じゃねぇんだよ!お前は・・・!お前は時透達どうすんだよ!?」
ばつが悪そうに目を晒し、虚空を眺める紅蓮の胸ぐらを掴んで揺さぶる
「俺らじゃあいつらの面倒なんて見れねぇぞ!!お前みたいに無駄に完璧なやつじゃねぇとダ」
ダメなんだよ
そう言おうとすると、口の中に血の味が広がった
紅蓮に殴られたのだ
「ふざけんな・・・・誰が完璧だ!!完璧な人間なんて居ねぇんだよ!神様ってのは適当な欠点を与えてくるもんなんだよ!!」
何故か、紅蓮に言われると説得力を感じる言葉
戦闘の才能もある、家庭的なのか家事一般は出来ている
金持ちで眉目秀麗・・・
ほら、欠点なんてないじゃないか
「眉目秀麗で家事一般や戦闘の才能のあるお前が何言ってやがる!!凡人を馬鹿にしたいのかよ!?」
走り出すと、紅蓮の腹に飛び膝蹴りを喰らわせる
流石に鬼でも内臓まで響くらしく吐血する紅蓮
「努力で得た結果だ!!」
「結局全部出来てるから完璧じゃねぇか!!何言ってやがる!?」
「そもそもお前、俺を殺せという話からなんでこの話になったんだ!?早く俺を殺せよ!」
「嫌だね!!せいぜい、愛しの時透達に抱き殺されろ!」
「っ!何言いやがるんだこの監禁男/////!!」
「監禁してるんじゃねぇよ!?ってかなんでお前が俺の屋敷に乙葉が居て、どうやって管理してるか知ってんの////!?」
「だいたい想像だ馬鹿!というか本当にやってたの!?そして照れるんじゃねぇよ!!褒めてねぇんだよ馬鹿!」
「「あぁ、もうめんどくせぇ!!」」
長い間の口論が終わる言葉
まさか、2人とも同時に言い出す言葉が一致するとは
「あぁ!もう良い!」
日輪刀を手にとり、自分の首に刃を向けた紅蓮
そして、首を切り落とした
だが、何故か消滅しない
炎で再生し出しているからだ
「光の呼吸・鬼術・雪華」
呼吸を使って再び切り落とす
散々嫌だと言っていた割にはすぐに殺せるものなんだな
自分に呆れてしまう
「すまない・・・・ありがとな」
消滅していく、紅蓮を眺める目が、視界が歪んでいる
そうだ、俺が泣いているのだ
なんだかんだで俺はまぁ、こいつの事は嫌いでは無かった
「上弦ノ狂気討伐!!鬼ニナリ影御前・荒神 紅蓮死亡!!光御前・滝瀬 雨月ガ討チ取ッタ!!」
こう聞こえる声ももはや興味がない
上弦を滅ぼしたのはもはや名誉のはずなのに
自害を選んだ紅蓮を俺の手で殺した
今まで何気なくやっていた行動が何故か、その感覚が体にこびりついて離れない
「罪作りな男だよな」
そう言って、紅蓮の日輪刀を持って他の鬼を狩りに行く
戦いの代償は大きかった
無惨は討伐完了したがその代わりに大切な者の命が大量に消えた
乙葉もこの戦いに参加しており、死亡した
時透姉妹も何故か飛ばされており、上弦の壱との戦いで死亡
何も良い事がないじゃないか
こんなのでどう生活しろっていうんだよ