頂点にして原点   作:赤いラムネ

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すみません。いろいろと書き方を模索していたら、更新が遅くなってしまいました。


第2話

……はい。

とうとう峰崎さんが来たんですが。俺は今ひじょーーに機嫌が悪い。いや、ある意味では嬉しいんだが。

 

「私の名前は織斑千冬だ。あの時は世話になったな。改めて礼を言う。」

 

「……篠ノ之束。」

 

突然だが、この二人、美少女である。織斑千冬さんはスタイルの良いモデルのような黒髪美少女。篠ノ之束さんもこれまた可愛らしいお顔である。だがそんなことはこの際どうでもいい。俺が怒っているのはそう、お前だ峰崎!!

なんでこんな美少女達と知り合いなんだよ!いつも男一人の俺の家にくるような非モテ野郎だと思っていたのにい!とんだ詐欺師じゃねえかこの野郎!あれか?長年生きているけど彼女いない歴=年齢の俺へのみせつけか!許せねえ。この裏切り者め!日本よ!これが童貞の嫉妬だ!

 

「ああ、俺は佐々木紅蓮だ。というか、いきなりお礼とか言われてもこまるんだが。」

 

「?ああ、そういうことか。あの時は私は顔を隠していたしな。束に至っては音声のみ且つ佐々木には聞こえていなかったな。つまりは事実上は初対面か。」

 

「そういうことか。」

 

え?何か適当に答えちゃったけれど、あったことあるのに初対面?なにそれ怖い。

あ!もしかして俺があの時気絶してた時に助けてくれた警察だか救助隊的な人達なのかな?うん、きっとそうだ。だってこの織斑千冬さんって人、めっちゃ強そうだもん。強者のオーラでてるもん。それにこの妙に緊張して強張ってる篠ノ之束さんは音声っていってたし、現場にインカムで指示でも出してたってところか。大抵そういう人は屋内勤務だし、人と話すのに慣れてないんだろう、この人は。だから緊張してるのかな。ああ、それなら峰崎さんのような非モテ野郎にもこんな可愛い子達と知り合いだったことにも、その子達を連れて来たことにも合点がいくわ。

まあ、いきなりお礼を言われたことは驚いたけど、せっかくの美人からのお礼だ。身に覚えがあろうが無かろうが貰っておくのが男ってもんだろう?

 

つまり、あの事件に巻き込まれた俺への事情聴取ってところかな?峰崎さんも一応は政府の役人らしいし、偶々俺と知り合いだったから彼に白羽の矢が立ったってところか。

何かそう考えると峰崎さんへの怒りがおさまってきた。彼何か顔色悪いな…。ごめんよ、峰崎さん。同志である君を疑った僕を許しておくれ。

 

「まあ織斑さん達の迅速な行動で助かったんだ、俺も感謝してるよ。」

 

「…そうか。優しいんだな、佐々木は。あと私のことは千冬で構わない。無論、束もだ。」

 

「ええー!?私まだ何にも言ってないのに勝手にひどいよ!ってことで束さんも君のことぐーくんって呼ぼうっと!」

 

助けて貰った御礼をしたら名前で呼ぶことを許されたでござる。あと、束さん?そのぐーちゃんってのやめてくれませんか?あ、いえダメならいいんです。しかし、急に元気になったな笑顔が可愛いのでむしろ俺としては嬉しいんだが。相方の千冬さんが俺と話しているのを見て警戒を解いたのかな?

 

「それでは、御三方の自己紹介も済んだ事ですし、そろそろ本題に入らせていただきます。皆さんご存知の通り、ISの台頭によって従来の軍事バランスが崩れ世界はIS中心に物事を考えことを余儀無くされました。そこで…」

 

ここからの話はほとんど理解不能だったので聞き流していたが、ようやくすると、何かISのパイロット育成機関作るから協力しろって事らしい。なんで俺なんだ。ISは女性しか動かせねんだぞ常識ですよ峰崎さん(笑)とか思ってたら、俺は教師枠として入る事になるらしい。

なんでも、俺は元軍人だし、戦争経験もあるのでそれを活かして戦闘訓練を訓練生に教えてくれってことらしい。

 

「ちなみに拒否権は無いの?」

 

「いやですねえ紅蓮さん。拒否権もなにも、人類皆平等ですよ?すべては貴方の意思次第です。我々の意見など気にする必要など最初からないんですよ。」

 

あるんかい!こういうのは『無いです』って即答されて『ですよねー』って苦笑いしながら答えるのが定型文だろう。まあ、あるにこしたことは無いんだけどね。あとそのオーバーリアクション一々ウザいな。毎回やるけど。

 

「ならやらせて貰うことにするよ、あんなロボットを真近で見られる機会なんてそうそうないしね。」

 

「そうですか!ありがとうございます!私、これでも結構な立場なので、できる限り仕事環境は良くするよう取り計らわさせていただきます。」

 

べっ別に合法的に女の子と戯れられるからやるんじゃないんだからねっ!勘違いしないでよね。ただロボットが見たいだけなんだから!

…それと俺今政府から生活費もらってるからもし断ったらお金もらえくなりそうだから…。

 

「では、私達はこれから佐々木の教え子ということになるな。よろしく、紅蓮先生?」

 

「よろしくね~って言っても束さんはちーちゃんみたいに肉体派じゃないから、遊びに行くだけだけどね~」

 

「そうか、なら私の握力と貴様の頭、どちらが強いか試してみようか。」

 

「痛い痛いいたーーーい!頭って物理的にじゃないかーーー!」

 

千冬さん…俺が教えること何もないくらい強そうなんすけど…。

 

 

◇◆◇◆

 

峰崎とか言うどうみても怪しい男に連れられて、私と束は例の謎の青年の家に来ていた。

どこにでもあるようなごく普通の一軒家。しかし私にはわかる。この周囲の家の人々は全て政府の監視の為に派遣されている者達だ。明らかに雰囲気が常人のそれでは無い。

そんな風に視線を周囲に向けていると峰崎さんが扉を開けて中に入って行ったので慌てて追いかける。…勝手に入っていいのだろうか。

束め。一言くらい声をかけてくれてもいいだろうに。

まあ、あいつも謎の青年に興味津々だったみたいだし、無理も無いか。あいつは興味があるものとないものでは態度がまるで違うからな。

 

「紅蓮さーん。客人を二名ほど連れて来ましたよー。」

 

「今いくから待っててくれ。」

 

峰崎さんが少し大きな声で呼びかけると、すぐに返事が帰ってきた。おそらく二階にいるのだろう。今私達がいる居間には大きめのテレビと高そうな黒革のソファーが二つあった。

 

「ッ!?」

 

突然部屋を満たした重圧感に私は身を強張らせる。峰崎さんは相変わらず胡散臭い笑みを崩してはいないものの、顔を蒼くしていた。

何だこの殺気は。私はまだ武術をやっていたころに、師範に扱かれた経験があるので何とかなるが、束は完全に萎縮してしまっている。

 

「峰崎さん…この人達、誰ですか?」

 

気配もなく目の前に現れた青年が、峰崎さんに問う。その声音には警戒心が強く含まれているように感じた。

正直逃げ出したいと思ってしまった。それほどまでに濃密な殺気だった。

 

「え…ええ。ですから…以前申し上げた通り、御客人です…。」

 

そうか、と呟く青年。何やらひどく私達を警戒しているようだが、とりあえず自己紹介をすることにした。

 

「私の名前は織斑千冬だ。あの時は世話になったな。改めて礼を言う。」

 

「……篠ノ之束。」

 

完全に萎縮してしまっている束は声を出すのがやっとというところだろう。私も普段通り振舞っているんだ、貴様も我慢しろ。

 

「ああ、俺は佐々木紅蓮だ。というか、いきなりお礼とか言われてもこまるんだが。」

 

成る程。この青年は佐々木紅蓮というのか。覚えておこう。

御礼を言われても困る、というのはどういうことだ?そういえば私と出会った時、私はフルスキンだったから、顔をみてないのか。

ということは彼はまだ私をあの時のISだと気づいていないということか。

 

「?ああ、そういうことか。あの時は私は顔を隠していたしな。束に至っては音声のみ且つ佐々木には聞こえていなかったな。つまりは事実上は初対面か。」

 

「そういうことか。」

 

そういって佐々木は殺気を解いた。一気に身体の力が抜けるのがわかる。束も峰崎さんもようやく落ち着くことができた様だ。

全く、ミサイルを生身で撃破したり、佐々木は本当に人間なのか。

というか、100年も前から生きているのだから、人間というよりはむしろ化け物か。

 

「まあ織斑さん達の迅速な行動で助かったんだ、俺も感謝してるよ。」

 

助かった、とは勿論一般人の事をいっているのだろう。

普通なら佐々木が助かったと受け取ってしまうところだが、私達は彼の強さを知っている。あれだけの力を持ちながら、一般人の事を気にかけていたとは…。佐々木の事を化け物扱いしていた私が恥ずかしい。私は愚か者だ…。

 

「…そうか。優しいんだな、佐々木は。あと私のことは千冬で構わない。無論、束もだ。」

 

「ええー!?私まだ何にも言ってないのに勝手にひどいよ!ってことで束さんも君のことぐーくんって呼ぼうっと!」

 

束も殺気が解かれたのでいつもの調子を取り戻した様だ。というかぐーくんって、相変わらず貴様のネーミングセンスは皆無だな。

私も千冬の名前の頭文字からちーちゃんなどと呼ばれているが、あまり好いているあだ名ではない。

しかしまあ、こいつも一応は親友…だからな。認めてやらん事もないが。

というか峰崎さん、どんだけ喋るんですか。長すぎませんか。

佐々木も退屈してるだろうに。束に至ってはPCを弄くり始めたぞ。

それにしても、IS学園か。

私達も生徒として入学することになっているわけだが、束ってIS製作者なのにはいる必要ないのではないか?まあ、本人は『束さんは適当にちーちゃんと紅蓮君の活躍みたら雲隠れしちゃうから平気平気~!』と言っているので、後から大騒ぎになることは確実だ。

この事を教えてやってもいいのだが、親友を最初はバカにしていていたくせに手のひらを返してきた日本政府に対するせめてもの意趣返しとさせてもらおうではないか。

 

 

◇◆◇◆

 

佐々木との話が終わった後、私達は行きと同じ様に車の中で峰崎さんと会話をしていた。

 

「で?どうでした、紅蓮さんは。」

 

「最初はどうなる事かと思ったが、話してみると案外気さくなやつだったな。あれだけの力を持っていてなお、優しさも兼ね備えいるとは恐れ入る。」

 

「最初はとーーっても怖かったぁ~!!ちーちゃんよく平気だったねあれ。」

 

平気だと?とんでもない。内心は冷や汗ダラダラだったさ。

 

「そうですか。いやあ、最初は私も焦りましたよ。ですが彼は一応、私の大切な友人ですので、気に入ってもらえてなによりです。」

 

「その大切な友人を、IS学園に教師として働かせるんだ。…ねえ、もしかしなくても紅蓮君をりようしてるでしょ?」

 

「まさか!そのような事するわけないじゃないですか!彼は友人ですよ?私、友達は大事にする主義です。」

 

結局それからはたいして話す事もなく、家に着いた。

束も気づいていたようだが、峰崎さん、いや日本政府は確実に佐々木を利用しているな。

わざわざ佐々木を雇わなくても、近接戦闘くらいその道の専門家に鍛えさせればいい。それをしないのはやはり…。

 

「そうだね。日本政府はIS学園に佐々木紅蓮という人間兵器を投入する事で、抑止力としようとしている。アラスカ条約で若干日本が不利になった分、他の世界各国がこれ以上調子に乗らないようにするためだろうね。」

 

「やはりそうか。しかし、いいのか?佐々木の存在はトップシークレットなのだろう?近接戦闘を教えるとなれば嫌でも奴の人間離れした力をみることになるだろう。」

 

「んー。IS学園の卒業生は大抵国家代表とか研究者への道を進むし、女尊男卑のこのご時世だし、少なくとも気軽に口を開ける立場ではなくなるだろうし平気だと思うよ。閉口令的なものも敷かれるだろうしね。」

 

これから私達はIS学園に入学することになるのだが、束はわずか二ヶ月ほどで姿をくらましてしまった。

 




少し量少なめです。

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