哀サイド
「…ここね」
そう呟いた私の目の前には、大きな鳥居がある。
以前、この町…バサラ町に来た時、少し気になったことがあったのだ。
この町、お地蔵様と神社が多い。
何しろ地図を広げて目についただけでも神社が4つ、歩いて見つけたお地蔵様は5つ。六地蔵のように固まっておいてあるわけでもないのに、少し歩くだけで見つかるのだ。そんなに大きくない町だというのに。
幽霊屋敷で出会った彼女が言ったこともあり、気になってしまって調べてみたところ、ある神社を見つけた。
夢見神社。ご祭神はコノハナノサクヤビメとされているけれど、真偽は不明。本来は氏神をまつる神社だったのが、桜という共通点があるから、途中でコノハナノサクヤビメと混ざったのだろうと言われているらしい。夢見なんてかわいい名前がついているなと思ったら、どうやら桜のことらしい。
どんな神社なんだろう、と思ってそのページ(観光サイト)を読み進め、ご利益の欄を見た瞬間に、手が止まった。
会いたい誰かに会わせてくれる。それが、夢見神社の御利益だった。
縁結びとはまた違うようで、この神社は再会に特化しているらしい。口コミの部分には、「長いこと会えなかった旧友と会えた」、「家出していた兄が戻ってきた」、果ては「死んだ祖母が夢枕に立って、たくさん話ができた」というものまであった。
神や仏を信じるような性質では、ないけど。
少しだけ、縋りたくなってしまったのだ。
鳥居をくぐると、たくさんの桜が出迎えてくれた。
半分葉桜になりかけている、はっきりしたピンク色の物や、同じような色合いだけれど大輪で、まだ葉が出てきていないもの、赤に近いピンクの物、つぼみが膨らみだしているものなど様々だ。ひときわ大きなものには柵が設けられていて、説明文が書かれた立て看板が設置されている。
「こんにちは」
「!?」
突然、背後から声をかけられた。
振り向くと、そこには1人の少女が立っていた。
桜みたいな白い髪に、濃いピンクの瞳。頭に動物の耳のような飾りをつけていて、白いワンピースを着ている。とても綺麗だ。
「参拝に来たの?」
「え、ええ…そうなの」
「そう。絵馬も買う?」
「そのつもりだけど…」
私がそういうと、少女は笑ってこう言った。
「そんなに警戒しなくていいよ、私はここの住人だから」
「住人?」
巫女、とかではなく、住人。どういうことだろう。
彼女の話によると、彼女の名前は「柊桜子」。元々はこの神社の神主の家の分家であり、本家が絶えた後、いろいろあってこちらに移住してきたとのこと。ただ住んでいるだけだから巫女ではないが、何もしないのはさすがにまずいということで巫女替わりをしている…らしい。
絵馬持ってくるからちょっと待ってて、と言ってどこかへ駆けていく彼女を見送った後、手水舎に向かって手水を使い、賽銭箱の前へ。
鈴を鳴らして、5円玉を賽銭箱に入れ、二礼二拍手一礼。お姉ちゃんに会えますように、と念じるのも忘れずに。
そこまで終わらせると、桜子が帰ってきた。
「はい、絵馬。500円ね」
そういって桜子が差し出したのは、かわいらしい桜の形の絵馬。
500円払って絵馬を受け取り、書くためのスペースへ移動する。テーブルの上に置かれたペンで、「お姉ちゃんに会えますように」と書き込んで、奉納。
帰ろうとした、その時。
「桜~」
聞き覚えのある声がして、そちらを見ると。
そこには、幽霊と勘違いされた、あの少女がいた。
××××
あやめサイド
なんでここに哀ちゃんがいるんや。
「…あなたは」
「また会ったね」
怪しまれないように、必要以上の接触は避ける。大して親しくもないのだ、これくらいで十分だろう。
「あやめ、遊びに来たの?」
「うん」
桜こと、桜子とは、割と仲がいい。協力関係、と言ったほうが近いかもしれないが。
「じゃあ、こっちに」
さて、やりますか。
今日は、マチビト馬のウワサにでもしてもらおうかな…
さみしくなった天才少女
…あの人、着物以外も着てるのね。
ご利益があったかどうかはまた別のお話。
柊桜子
万年桜のウワサ。
その正体は、夢見神社のご神木にしてご神体、万年桜。バサラ町であればどこにでも目が届き、そのすべてを記録している。
神主の家系が途絶えたことに危機感を感じ、この姿で顕現。今の名前はあやめがつけた。
ちょい役オリ主
時々、桜子に頼んで、記録したウワサを再現してもらい、修行していたりする。
得物はバールと鉄パイプ。