頭 バニル仮面
体 東国
腕 影
足 影
です。
ステータスは考えてません。まぁ技量40以上は確定ですが。
私は火の無い灰である。名前はホーク。無論偽名である。
あの無駄に強い心折れ野郎より拝借したが、まぁ許してくれるだろう。
ギルドで名前を書けと言われた時は数秒固まって怪しまれてしまったものだ。
何故こんなことを考えているかといえば、明らかに強大なソウル、それも神の如きソウルを持った女が金を恵んでくれと物乞いをするという予想外の光景に出くわし少し思考を逸らしていたからである。
誓約の上司の首なしに監視の任とか言われてここアクセルという街に送られたのが、たぶん三年ぐらい前の事で。そこで上司の同僚の不死の店に世話になりながら、街にやってくるニホンジンという人種の情報を上司に送っていたのだ。
そうしてギルドの酒場でいつものように呆けていたら、ニホンジンと一緒にソウルの持ち主がやってきたのだ。冒険者になるための費用すらないとは、今度のニホンジンはとてつもなく貧乏らしい。今までのニホンジンは最低でも二千エリスは持っていたのに。
ニホンジンはどいつもこいつも強い異能や武器を携えている、彼ら曰くチート。あの見るからに貧弱そうなニホンジンの少年もチートを持っているのだろう。あるいはあのソウルの持ち主がそれか。いずれにせよ彼らの今後が楽しみである。
彼らは聖職者共から金を恵んでもらい、冒険者になることに成功したらしい。
サトウカズマとアクアという名前らしい。あの女、もしやあのアクシズ教とかいう積む者達が信仰している水の女神アクアであろうか。だとすればソウルの強さも納得できる。神の如き、ではなく神そのものだったか。彼女のソウルからはどのような物が錬成できるのだろう?錬成炉がない為手に入れても錬成はできないが。
そんなことを考えながら席を立ちギルドを出る。あの首なし上司に感謝と報告をせねばなるまい。女神などというレア物がこんなに近くにいるのだから。
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ここ二週間程観察していたのだが、あの二人は本当にチートを持っているのだろうか?未だ依頼一つ受けず土木作業で金を稼いでいるニホンジンなど見かけたことがないのだが。
剣やタリスマンでも恵んでやろうかと思っていれば、ギルドに入ってきた二人。サトウカズマの腰にはショートソードが据えられている。そしてそのまま掲示板の方へ。
ようやく依頼を受けるらしい。上司の同僚の悪魔に貰った仮面の下で微笑を浮かべながら彼らに近づく。笑っていればニホンジン達はあまり警戒しないからな。あと刀に目が行く特徴がある。
「おいあの人こっち来るぞ。見るからに強そうだし退いた方が良いんじゃないか?」
「先に居たのは私達なんだから大丈夫よ...きっと」
「おい...というか何か日本風じゃないかあの人?刀とか持ってるし」
「あら本当ね。もしかして転生者かしら?だとしたら私に挨拶しに来たのね!...あの仮面、なんか見覚えあるわね」
「だとしたらあの人もチート持ちかよ。刀かっけぇなぁ」
何やらこそこそ話し始めたが気にせず話しかける。
「貴公等は依頼を受けるのは初めてだろう?もし良ければいろいろと教えようと思っているんだが、どうかな?」
いままでこれを断ってきたニホンジンはいない。
いたとしても不慮の事故によりこの世界からいなくなる。
「いいんですか!?よろしくおねがいします!」
「了解した。私はホークだ。ここでは邪魔になる故椅子に座ろうか」
近くの椅子に座らせついでに水を頼んでおく。
「ではまず二人の名前と職業を教えてくれ」
既に名前は把握しているが改めて聞いておいた方がいいだろう。
「俺がカズマで冒険者、こいつがアクアでアークプリーストです」
「カズマにアクアだな」
うつむくサトウカズマとドヤ顔で腕を組むアクア。反応からしてサトウカズマが冒険者でアクアがアークプリーストだろう。冒険者を恥じることはないというのに。
それにしても異様にスズメスタブしたくなるドヤ顔である。
「成程、ではまずカズマのレベルを上げたほうがいいだろう。アークプリースト等の上級職は基本的にステータスが高いものがなるからな」
「そういやお前知力以外は軒並み高かったな」
「私は女神よ、そんなの高くて当たり前でしょう?」
本人の口から出た以上やはり女神なのだろう。
ソウルを奪い取る瞬間がたのしみである。
「初心者は基本的にはジャイアントトード討伐の依頼を受ける。名前の通りデカいカエルだ、一匹五千エリス。これを受けてもらおうと考えている。何か質問や意見はあるか?」
そう問うと即座に手を挙げるアクア。別に手を挙げろとは言っていなのにな。
「じゃあ聞くわね!あなたは転生者かしら?」
「違うぞ」
簡潔に答えてやればすこし沈んだ顔で席に着いた。
それと同時にサトウカズマが手を挙げる。
「えっと、ホークさんの職業ってなんですか?やっぱ上級職ですか?」
「私は冒険者だよ。他の職にもつけるが一番冒険者が便利でね」
スキルを全部覚えられるというのが魅力的すぎる。
サトウカズマも席に着き手は挙がらない。
「質問はないかな?では狩りに行こうじゃないか」
腰の綻び刀と混沌の刃に触れながら立ち上がる。
受付嬢に依頼を伝えカエルの住処の草原へ向かう。
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草原につき、丘へ登るとと数匹のカエルが見える。
やはりデカい。バジリスクとは比べ物にはならない。人一人を丸のみにできるほどデカいバジリスクなんて相手にしたくないものだ。そんなものを相手にするなどよっぽど頭が積むものか求道者だろう。
「さて、ここらに見えるあのデカいカエルがジャイアントトードだ。私の手助けなしであれを三匹倒してもらう」
そう言えばサトウカズマの目が曇る。
まぁ頑張ってくれ。
「畜生やってやらぁ!」
そう言って飛び出すもすぐにカエルに気づかれ悲鳴を上げながら逃げ出すサトウカズマ。
「あああああ!待って!食われる!」
「プークスクス!カズマったら必死ねぇ!超うけるんですけど!」
「アクアー!お前安全地帯でわらってんじゃねぇ!助けろよおおおお!」
「安心しなさいカズマ!私はこの人に守ってもらうから!」
「何を言っているんだ?貴公も行くのだぞ」
えっ?という声をあげ、ギギギとブリキ人形のような音を出しながら首をこちらに向けようとするアクアの背中をパッチのように蹴る。悲鳴を上げ涙をまき散らしながら転がっていくアクアはやがてサトウカズマを追っていたカエルにぶつかった。そうしてそのままカエルの口に収まった。
あのまま死んだらソウルはカエルに取り込まれるのだろうか?
まぁ取り込まれ変質したとしても強大なソウルを得たカエルがどうなるのか気になるしいいか。
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結局サトウカズマに助けられたアクアは、もう一度カエルに食われた後私にゴッドブローなる拳を決めようとしてきた。居合でパリィしようとも思ったが、何か嫌な予感がしたのでやめてローリングで回避した。背中を蹴られたり扉を閉められたり橋を降ろされたりするのはよくある事なので高い授業料を払ったとおもってほしい。
食事を奢ることで不問にすると言われたので一応奢ったが。免罪は大事。
彼らは仲間を募集することにしたらしい。私は誰も来なければ力になると言っておいた。
まぁよほどの選り好みか怪文書のような求人票でなければ一人や二人は集まるだろう。
この街には変わり者ばかりだからな。ロスリックには劣るが。
席を立つついでに一撃熊の依頼を受けておく。エリスはいくらあっても足りない。
世話になっている妙にぽわぽわした不死、ウィズが店に納めたエリスを使い果たすのだ。
まさか街の近くの廃城に隠した財宝と同額くらいのエリスを一日で使い果たされるとは思わなかった。
上司の首なしセクハラ野郎には感謝しているがこればっかりは恨んでいる。今度会ったら首の断面に糞団子を塗り込んで女神の祝福を全身にぶっかけてやろうと思うぐらいには。
今日一日でどれだけ売り上げが出たのだろうと考えながら街の門をくぐる。
草原の緑が目にやさしい。まったくもって素晴らしい世界である。
刀使ってないけどまだ一話だしね。
アルトリコスで無名の王に勝つまで更新はないです