ヴァールハイト・プリキュア   作:32期

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ごきげんよう、32期です。今回より、ドキドキ!プリキュア編となります。私のお気に入りの作品であり、私の最推しである”キュアハート”がやっと書けると思うと嬉しい限りです!さて、今回は駆に”恋”をしてもらおうと思っています!前回が種で”愛”だったので今回は駆って感じです。では、お楽しみください!


ドキドキ!プリキュア編
第二十二話:ドキドキ!?”駆の一目惚れ!?追われて、作って、揺らされて?(うふふっ、誰が追うんでしょうね)


プリキュアカーシャ 操縦室

 

side:コルーリ

 

コルーリ「お待たせしました、ココアですよ!」

 

駆「ありがとう。……うん、美味しい!やっぱりこれだね!」

 

コルーリ「ありがとうございます。……カケル、早速ですけど……どうやって”Qaウォッチ”のシステムを書き換えたんですか?もしかして……あの”黒い光”を使ったんじゃないんですか?」

 

私は、ココアを入れて操縦室内のテーブルに座ると、2014年で起こった事を確認するべくカケルに話をする。あの強固なプロテクトとシステムを何故書き換えられたのか、どうやって書き換えたのか、そして……Qaウォッチが放った”黒い光”についてを知るために……!

駆「……そして、僕はQaウォッチのコミュニケーション機能を使って種に話しかけたって訳。……大体こんな感じかな」

 

コルーリ「ザートが……ずっと私を監視していたんですね。そして、”Aqライト”……”世界の修正力”でプログラムを書き換えるなんて……世界に発生した矛盾もなしに。……カケルは……それだけ苦しでいたという事なんですね」

 

私は、カケルが深層意識で体験した事、Qaウォッチを書き換えたこと……そして”黒い光”……”Aqライト”の存在を知る。絶望する度に際限なく強くなる力……その出力が大きすぎて”世界の矛盾”に関係なく書き換えれるなんて……。それはカケルが……それだけの絶望を経験してきたという事。私って……なんて”無力”なんだろう。……私が、あなたの絶望を少しでも一緒に背負えたなら……!

 

駆「……いいよ、コルーリ。そんなに思い詰めた顔しないで。……僕は、笑ってるコルーリの方が”好き”だよ」

 

コルーリ「チチュンッ///!?……はい///」

 

私は、顔を伏せて返事をする。……ダメ!顔が赤いの……バレちゃうチュン!

 

駆「……コルーリ?調子……まだ悪いの?休んだ方が良いよ」

 

種「そうだよ!コルーリが倒れちゃったら、私たち心配しちゃうよ!」

 

コルーリ「カケル……タネ……!……そうですね、私……もう休みます。おやすみなさい」

 

一週間の徹夜による疲労がとれていないのは事実ですし、二人に迷惑は掛けられない。そう思った私は、オートパイロットに切り替えて、二人に休むことを伝え、操縦室を後にする。明日には2013年に着く……少しでも足を引っ張らない様に……私も頑張らないと!

 

 

side:駆

 

駆「……コルーリ、行ったみたいだね」

 

種(うん。……でも、何でコルーリを部屋から出さなくちゃいけなかったの?別にいても良かったんじゃない?)

 

僕たちは、コルーリが部屋を出たことを確認する。それは……今からすることがあるためだ。もしこの場にコルーリがいたら……きっと冷静でいられないし、落ち着いて話もできないと思ったからである。

 

駆「僕なりの気遣いだよ。……それに、きっと嫌がると思ったんだ。僕が……これから”誰”と話すのかを知ったら……ね」

 

僕はQaフォーンを起動すると、通信用プリキュアプリ”プリトークアプリ”をタップする。そして、前回このアプリを使って連絡してきた際の履歴を見つけ、そこに表示されている”人物”に連絡を試みる。数回のコールの後、Qaフォーンからディスプレイが表示され、”僕を眠らせた張本人”の姿が出てきた。

 

クアライト『……君から連絡とは、どうしたのかねクア?タイプT……キュアシード』

 

駆「どうも、クアライト博士。”僕”は……種じゃないですよ?」

 

クアライト『タイプK!?ど、どうやって意識を!?一体……何をしたクア!?』

 

僕がこうして、肉体に戻っていることに驚くクアライト博士。僕を深層意識に閉じ込めるシステムによっぽど自信があったのか……随分と取り乱している。丁度いい……話の主導権を握るのには打って付けだ!

 

駆「落ち着いて下さい。どういう経緯があったのか……説明します」

 

クアライト『・・・・・・』

 

博士が黙ったのを確認し、僕は自分に起こった出来事を話していく。ついでに、”ザート”の存在を話から省かせてもらっている……今僕が話したい内容には不要の情報だし、博士を信頼するかを見極めないといけないからね。

 

クアライト『”Aqライト”……私でも知りえない力クア。タイプK……やはり君は危険クア』

 

駆「……その意見には、僕も賛成です。ですので、僕もこの力を使いたくはありません。……博士、そこでお願いなのですが、”Aqライト”について……調べていただけませんか?種やコルーリ、過去のプリキュアさん達に被害を出さないために……力をお借りしたいんです」

 

僕の話に対し、少し悩むように眉間にしわを寄せる。そして、考えがまとまったらしい博士は、再び僕を見る。

 

クアライト『分かった、その提案を受けよう。ただし……条件がある。”Qaウォッチ”についてだが……一度データを確認したい。アカーシャの操縦室にいるようクアね……操縦席に接続用のプラグ穴がある。そこに、Qaフォーンを接続し、Qaウォッチにスキャンしてくれたまえ。それで確認できるクア』

 

僕はテーブルから操縦席に移動し、それらしきプラグ穴を見つける。以前コルーリがしていたようにQaフォーンから接続用のケーブルを出し接続、Qaウォッチにスキャンする。

 

”Qaウォッチ”……システム・セキュリティスキャン開始……完了。データ転送を開始……完了。

 

クアライト『……これは!?……あり得ない、これほどのデータ量がQaウォッチに搭載できるはずない!?……システムの再構成を実行……何故だ!?受け付けんだと!?』

 

どうやら、僕が書き換えたシステムを再び書き換えようとしたみたいだが……無理だったみたいだ。

 

種「へっへ~ん!どうよ、博士!お兄ちゃんの方がすごいんだからね!お兄ちゃんが考えた”アストラル・シード”の方が100倍かわいいし、強いんだから!勝手に消されたりしないよ~だ!!!べ~~~!!!」

 

クアライト『アストラル・シードだと?……このプログラムか!……なんという完成度クア!?あり得ない……私が想定していたタイプTの出力を遥かに凌駕する性能……タイプK、君と言う存在は一体何なんだクア!!!』

 

駆「さあ……何なんでしょうね。僕の方が……知りたいですよ」

 

今の答えは、僕が本当に思っていることだ。なんで、僕にこれほどの力があるのか……そして、何故この力をベガは強くしようとしていたのか……分からないことが多すぎる。

 

駆「とにかく、”Aqライト”と言う危険な力を理解する必要があるんです。博士、この力を解明できるのはあなただけだ。Qaライトを最も理解しているのは……クアライト博士、あなたなんだから」

 

クアライト博士は苦虫を噛んだように苦しそうな表情をしている。その表情のまま、彼は言葉を発する。

 

クアライト『分かったクア。しかし、プログラムに一部……怪しい点があった。本来Qaライトだけに対応するはずのプログラムが書き換わり、”Aqライトにも対応”するようになってしまっている。使用には……細心の注意を払いたまえ』

 

駆「分かりました」

 

クアライト『それと……コルーリはどうしているかね?……姿が見えないが……』

 

クアライト博士はコルーリを心配しているようだ。コルーリと何かあったのだろうか?

 

駆「僕を助けるために……徹夜でQaウォッチを解析してくれていたんです。今は疲労があるため、さっき休みに入りました」

 

クアライト『……そうか。……タイプK、コルーリに伝言を頼みたいクア。”無理はするな。力が必要なら頼ってくれ”と……伝えてくれたまえ』

 

駆「……承りました。僕からの要望も……よろしくお願いします」

 

クアライト『では……健闘を祈るクア』

 

クアライト博士との通信が終わり、ディスプレイが消える。僕は操縦席のプラグ穴からQaフォーンを取ると、再び自分が座っていた備え付けのソファーに腰を下ろす。

 

種(お兄ちゃん、お疲れ様!見た見た!?あの博士の驚く顔!お兄ちゃんに酷いことしたんだもん!いい気味だよ!)

 

駆「あまりひどいことを言っちゃダメだよ、種。別に……僕は怒ってないし……」

 

種(なんで!?お兄ちゃんを閉じ込めたんだよ!!どうして怒んないの!?)

 

僕が博士に怒りを覚えていないことに不満がある種。話さないと分かってくれないと思った僕は、自分の考えを話す。

 

駆「……クアライト博士が言ってたように、Aqライトは……危険なんだよ。使っていて分かるんだ……この力は”強すぎる”……感覚が麻痺するくらいね」

 

種(どういう事?)

 

駆「プログラムを書き換えた時……すごく”簡単”だったんだ。あっけなくて……この力が危険なものだって……忘れてしまうくらいだった。このまま使い続けたら……僕は、この力を使うことに……抵抗しなくなってしまう様な気がするんだ。だから、博士のやったことは……間違ってはいない。種やコルーリ、プリキュアさん達への危険を考えた”最善手”なんだよ」

 

僕は、あの力の強さを改めて思い出す。ただ自分が考えた通りに、全てを変えてしまう……それも簡単に……危険であるはずなのに……それを感じないくらいに……。初めて自分の意志で使った時ですら、トラウマを我慢して使ったはずなのに……何故、今回はこんなにあっさりと成功したんだろう?……分からない、どちらにしても……これ以上使わない様にしないと。

 

種(……分かったよ、お兄ちゃんがそう言うなら……それでいいよ。疲れちゃった!私たちも寝よう!)

 

駆「ダメ。まだ”アストラル・シード”のスペック……説明しきれてないでしょ?あと少しだから……我慢して」

 

種(ぶ~!もう疲れたよ~!)

 

駆「文句を言わない。僕が能力を制御するって言っても、場合によっては操作を種に譲渡することもあるんだから」

 

種(ぶ~!……分かったよ、ちゃんと覚える!そのかわり……お兄ちゃんのケーキが食べたい!ショートケーキでイチゴがいっぱいのやつね!)

 

種は覚えるかわりに、ケーキを要求してきた。まあ、それくらいで頑張ってくれるのなら……安いものだ。……でも、作るのは明日だな。

 

駆「分かった。最高のを作るから……しっかり覚えよう、種」

 

種(やった~!お兄ちゃん大好き~!!!)

 

そして、僕はコルーリのココアを飲みながら説明を再び始める。確か次は……”スーパーQaライトによる攻撃射程の拡張”からだったかな?……それから、エネルギーの形状変化の候補と、僕の戦い方から何個かレクチャーしないといけないし……今日、寝れるかな?

 

 

プリキュアカーシャ コルーリの部屋

 

side:コルーリ

 

コルーリ「休むと言いましたが……やっぱり、寝れません。そうです!せっかくですし……あれを読んでみましょう!」

 

私は2014年で少し寝すぎてしまったらしく、全く眠くなりません。こういう時こそ、私がアカシック王国から持ってきた”あの本”を読むのに丁度いいかもです!

 

コルーリ「遂に、これを読む時が来ました!”意中の雄鳥を落とす10の方法”……カケルは雄鳥ではないですが、男性です!きっと……私の恋に役立ちますよね!」

 

恋愛教本”意中の雄鳥を落とす10の方法”……アカシック王国女子に10万部売れたベストセラー本で、私もいつか恋をした時に読もうと思っていました。さっそく……読んでみます!

 

コルーリ「……ッ!?こ、こんなに大胆に攻めるんですか!?……へっ!?む、無理です……こんな……こんなの出来ないチュン……!」

 

そこに書かれていた内容は……すごすぎるチュン!ここまでしないと……男性は落ちないんでしょうか?こんなの……私には無理チュン!

 

コルーリ「……もっと寝れなくなっちゃいました。……カケルは、私にこんな事されたら……ッ!?考えちゃダメチュン!寝れなくても……寝るチュン!」

 

私は無理やりベッドへ横になり毛布を被る。しかし、本の内容に興奮してしまった私は……一睡もできませんでした。

 

 

side:ネツゾーン

 

ベガ「あ~ら!無様に逃げ帰ってきたマーネルじゃない!どうしたの、怖い顔して?」

 

マーネル「ベガ!あんた……私に”はずれの情報”を掴ませたわね!!!」

 

ベガ「私は、”神ブルー”をガンサークにすればハピネスチャージプリキュアが消える事と、地球に長くいる神だからこそ、歴史から切り離された時に大きな力になる事……全部事実だったじゃない。結局はあんたの実力不足……でしょ、”負け犬”さん?」

 

マーネル「お前!!!」

 

私は、2014年いるマーネルに少しだけ助言をしてあげた。神ブルーをガンサークにすることで有利になるって情報……私のアルタイルへの試練として丁度いいと思ったのだけど……役不足だったみたいね。でも、Gサイアークを倒したのは”不純物”の方だった…まあ、それは仕方ない。しかし、ついに”Aqライト”を意識的に使った!これで……彼をもっと絶望させることが出来る!

 

ベガ「怒らないでくれるかしら……ただでさえ、ひどい顔がもっとひどくなるわよ。うふふっ!……そうだ、カイザーン様からの命令よ。2011年に向かいなさい……それと伝言があるわ。”これ以上の失態は……許されない”……だそうよ、マーネル。ご愁傷様♡」

 

マーネル「ッ!?……そんな!?くっ!!キュアシードぉ……あいつのせいで!私に”逃げろ”なんて言いやがって……!」

 

ベガ「その怒り……キュアシードにしっかりぶつけなさい。ほら、さっさと行きなさいな……うふふっ!」

 

マーネル「……チッ!」

 

マーネルは私の言葉に舌打ちをすると日傘で次元の穴を開き、その中へと入り2011年に向かう。

 

ベガ「……く~~~!さいっこう!マーネルが悔しがる顔……最高よ!フェイクが苦しむ顔!マーネルが怯える顔!!インペイルの怒りに歪む顔!!!もっと……彼らを苦しめなさい”トキオ カケル”……それはあなたのためであり、私のためにもなるんだから……ねえ、”カイザーン様”!」

 

カイザーン『そう……全ては”私たち”のために……!はっはっはっはっは!!!!!』

 

カイザーンとベガの二人しかいない空間に……二人の笑い声が響く。この二人の考えを知る者は……いない。

 

 

2013年 大貝町某所の屋敷

 

side:?

 

執事の男「お嬢様、先ほど大貝町近辺の森に、謎の飛行物体が目撃されたそうです。付近にいた者を向かわせましたが……そのような物の痕跡は一切発見できませんでした。しかし……付近の監視カメラに、森から出てくる中学生くらいの男女二名が発見されております。こちらが……拡大した二名の顔写真です」

 

お嬢様?「……見たところ、”ジコチュー”の様ではありませんわね。しかし、飛行物体と彼ら……無関係とは思えません。セバスチャン、彼らは大貝町に向かっているんですね?」

 

セバスチャン「はい。監視カメラの映像によれば、二名は大貝町に向けて真っ直ぐに進んでおります」

 

お嬢様「……分かりましたわ。セバスチャン、すぐ彼らに監視の者を付けなさい。監視カメラによる監視も継続ですわ」

 

セバスチャン「かしこまりました、ありすお嬢様」

 

ありす「この顔……どこかで……」

 

私は、二枚の顔写真を交互に確認する。そのうちの一枚”男の子の顔写真”に私は目を止める。

 

……お姉さん、だれ?

 

ありす「ッ!?……まさか」

 

黄色い妖精「ありすぅ~、どうしたでランス?」

 

ありす「大丈夫ですわ、ランスちゃん。少しだけ……考え事をしていただけですから」

 

他人の空似でしょうか?しかし、”あの時の子”だとしたら……年齢が合いません。……これは一体、どういうことなのでしょう?

 

 

2013年 大貝町

 

side:駆

 

駆「大貝町……ここに、この時代のプリキュアさんがいるんだね。初めて見たけど……あれが”東京クローバータワー”か!」

 

種(全長999メートル!世界で一番大きな建物なんだよね!う~~~!登ってみたいな~!!!)

 

コルーリ「この時代のプリキュアは、ドキドキ!プリキュアですね。めぐみさんが言っていた”マナさん”を探す予定ですけど……」

 

駆「うん、その予定。それから、プリキュアの目撃情報を聞いて回ろう。人が集まりそうな施設とかを中心に回る……いいかな、コルーリ?……ん?」

 

コルーリ「カケル、どうかしましたか?」

 

今一瞬、建物の物陰に人影が見えた。身長からして”大人”……黒いスーツにサングラスを身に着けていた。なんか……怪しいな。

 

駆「……コルーリ、少し近づいてくれる?」

 

コルーリ「?……分かりました」

 

コルーリを僕の近くに寄せると、周りに聞こえない様にコルーリの耳元へ顔を寄せる。

 

コルーリ「ッ///!?カケル……顔が///」

 

駆「シッ!……振り向かないで聞いてね。僕たちの後ろの建物に、僕たちを見てる大人の人がいるんだ。少し不振だから気になる……このまま通りまで行く。そこで一度止まって、もう一回確認させて」

 

コルーリ「ッ!……分かりました」

 

駆(種、悪いんだけどそっちも警戒してくれる?)

 

種(りょ~かい!でも……本当に怪しいの?)

 

種の疑問は最もだ。それに僕の勘違いならそれで良い。でも、なんか気になるんだ……なんか、嫌な感じがする。

 

駆(とりあえず警戒ってだけだよ。何もないなら……それで良い)

 

種(おっけ~!お兄ちゃん、任せて!)

 

駆「……よし、行こうコルーリ」

 

コルーリ「……はい」

 

僕は目的の通りに向かって進んでいく。コルーリにはそこで確認すると言ったけど、実際は違う。僕は道路反射鏡や店のガラスなどに反射して映る後ろの様子を確認していた。……どうやら、例の人物は”僕たちを付けている”ので間違いない。もうすぐ、目的の場所に着く……そこからが正念場だ!

 

コルーリ「カケル……着きましたね」

 

今だ!

 

駆「コルーリ、走って!!!」

 

コルーリ「へっ!?は、はい!!!」

 

追跡者「ッ!?……!!!」

 

やっぱり追って来てる!どこかに隠れるか?あっちは大人……体格差があるし、振り切るのは困難だろう。どうする!?……ん?

 

CDショップ店員「剣崎真琴のニューシングル”こころをこめて”……最後尾はこちらです!」

 

CD購入のための行列……いいこと思いついた!

 

駆「コルーリ、こっち!」

 

コルーリ「は、はい!」

 

僕たちは行列に集まる人たちの間を通らせてもらい、人ごみの中へ隠れる。

 

追跡者「……ッ!?……くっ!ターゲットをロスト!周辺を探す!」

 

どうやら……撒けたみたいだ。しかし……ターゲットって……どうして僕たちを追跡するんだ?そもそも、どの時点で監視していたんだ?……分からない、情報が無さすぎる。考えるのは……もう少し後だな。

 

コルーリ「……一体、なんだったんでしょうか?何故、私たちが……」

 

駆「分からない。でも、僕たちを付ける”理由”がきっと……」ぐう~!

 

種(お兄ちゃん、お腹空いた~!)

 

駆「僕もお腹が空いたよ。……一応、朝ごはん食べてきたけど、大貝町に来るまで歩き続けだったし……仕方ないかな」

 

種の暴食によるバックファイア……それは、胃の拡張により”お腹が減りやすくなること”。普段、僕はそこまで食べなくて済むのに……いつも種が大食いするとこうなってします。……三日くらいで直ればいいけど、長ければ一週間は続くんだよね……これ。

 

コルーリ「カケル、タネ、どこかで食事にしますか?店員さんに情報も聞けますし、一石二鳥です」

 

種「さんせ~!どこか良いお店探そう!」

 

駆(……警戒は怠らないでよ、種。……だめだ、聞いてない)

 

僕たちは腹ごしらえと情報収集のために飲食店を探し始める。主導権は変えなくていいか……走り疲れたし種に任せよう。それなら僕だけでも、警戒しておくか。

 

 

大貝町 住宅街

 

種「開けたところから少し遠くに来ちゃったね~!きっとこう言うところにこそ、”隠れた名店”があるに違いないよ!ワクワクもんだよ~!」

 

駆(おかしい、追跡の気配がない……どうして?)

 

種「ちゃんと撒けたって事だよ!あ~!あのお店とかいいかも!」

 

コルーリ「確かにお店ですね。店名は……”ぶたのしっぽ亭”と書いてあります」

 

ぶたのしっぽ亭……豚肉専門店かな?何とも意味が分からない店名だが、料理の出来には関係ない。お客さんも入っているようだし、常連客がいるのだろう。それだけ人が集まる味を出せるって証拠だ。気になるな……。

 

駆(……入ってみよう)

 

種「さんせ~!それでは……オープン!」

 

種は力強くお店のドアを開けるとベルの音が鳴り、その音に気付いて”一人の少女”がやってくる。

 

 

レストラン”ぶたのしっぽ亭” 

 

side:種

 

ピンク髪の少女「いらっしゃいませ!何名様ですか?」

 

種「二人です!」

 

私たちの前にやってきたのは、マゼンタ色の髪で、後ろ髪が少しカールしたハーフアップポニーをしている女の子。元気な声でお出迎えしてくれたけど……私たちと同い年くらいだし、お店の子供でお手伝いしてるのかな?でも……とっても可愛い!プリキュアの子達を結構見てきたけど、引けを取らない可愛い子だよ!

 

ピンク髪の少女「かしこまりました!二名様ご案内します!」

 

私たちはカウンター席に案内されて席に着くと、案内してくれた子がメニューとお冷を持ってきてくれた。

 

ピンク髪の少女「お冷と、こちら当店自慢のメニューになります!お決まりになりましたらお申し付けください!」

 

コルーリ「ありがとうございます」

 

種「可愛い子だね!私たちと同い年くらいかな、お兄ちゃん?……お兄ちゃん?」

 

お兄ちゃんが全く反応しない。……どうしたのかな?リンクを使ってお兄ちゃんの声を聞いてみよう!

 

駆(……何だろう。……胸がドキドキする。良い笑顔……だったな)

 

種(お兄ちゃん、どうしたの?)

 

駆(ッ!?種!!びっくりするだろ!!話しかけるなら一言掛けてよ!!)

 

種(掛けたよ!お兄ちゃんがずっと黙りこくってたから話しかけたんだよ!……どうしたの?)

 

最初の方の声は小さくて聞こえなかったけど……お兄ちゃんの声は、なんか興奮したように大きなものになっていた。普段落ち着いているお兄ちゃんらしくない……お兄ちゃん、どうかしたのかな?

 

駆(えっ?……別に何もないけど)

 

種(……そう?じゃあ、メニュー決めるから一緒に考えよ!)

 

駆(了解。種、僕と変わってくれる?)

 

種(うん!美味しいのお願いね、お兄ちゃん!)

 

私は”主導権”をお兄ちゃんに渡す。やっぱり美味しい料理の事は、お兄ちゃんの方が分かってるもんね!

 

 

side:駆

 

駆「ふぅ~……よし、早速メニューを確認しよう」

 

僕は、さっき見た少女の笑顔に……何故か”ドキドキ”してしまった。きっと……気のせいだろう。そう思って一度深呼吸し、冷静さを取り戻そうとする。何とか頭の中を切り替える事が出来た僕は、メニュー表を開いて料理を確認する。

 

駆「オムライス……ハンバーグ……洋食の定番に、ランチメニューもあるのか。……テイクアウトに”桃まん”と”和菓子”!?……このお店、洋食屋さんだよね?」

 

メニュー表をしっかりと確認していくと、なんとも信じがたい料理の名前が載っている。メニューの構成が分からな過ぎて、どれにしようか決められない。……仕方ない、こういう時こそ店員さんに聞いてみよう。

 

駆「すいません!ちょっと……」

 

ピンク髪の少女「はい!ご注文お決まりですか?」

 

駆「ッ///!?……えっと、おすすめを……知りたくて///」(ドキッ!ドキッ!)

 

厨房にいた大人の女性店員さんを呼ぼうとしたら、先ほどの少女が来る。何でだ!この子の顔を見た途端……胸の鼓動が一気に早くなる!落ち着け!落ち着け……僕!!!

 

コルーリ「カケル、お顔真っ赤ですよ。大丈夫ですか?」

 

ピンク髪の少女「うわっ!本当だ!大丈夫!?熱とかあるんじゃない?」

 

少女は僕を心配したようで、僕のおでこに手を当てて熱を確認する。

 

駆「ウェッ!?だ、大丈夫でしゅ///!ちょ、ちょっと熱いせいですから///!!んっ!……プハ~!お冷のおかわりを下さい!!!」

 

ピンク髪の少女「ほ、本当?あっ!はい、お冷のおかわり」

 

少女の手が触れた瞬間、体中が一気に熱くなった。何とか誤魔化すためにお冷を一気飲みしたが……ヤバイ、本気でおかしくなったんじゃないか……僕。

 

ピンク髪の少女「そうだ!おすすめのこと聞いてたんだよね!お料理全部おすすめだけど……それなら”オムライス”がいいよ!なんたって、あの”まこぴー”が作ったこともある当店自慢の一品だからね~!」

 

駆「お、オムライスを二つ下さい!」

 

コルーリ「か、カケル!?わ、私は食べませんよ!?」

 

ピンク髪の少女「かしこまりました!パパ―!オムライス二つね~!」

 

コックさん(パパさん?)「了解、”マナ”!」

 

ん?今……すごい重要な事言ってなかった?今……”マナ”って……言った!?

 

駆「えっ!?い、いま”マナ”っていいましたぁ!?」

 

マナ「えっ?うん、そうだよ。あたし、相田 マナ!あたしの名前なんだ!」

 

コルーリ「という事は……あなたが!?」

 

マナ「ん?あたしがどうかしたの?」

 

ようやく見つけた!ドキドキ!プリキュアさんのメンバー!めぐみさんが言っていた”幸せの王子”!……がその時。

 

ドンガラガッシャ―ン!!!

 

コックさん「ぐへっ!!」

 

マナ「パパ!」

 

女性店員「パパ、大丈夫!?」

 

コックさん「すまない……上の棚に置いておいた鍋を取ろうとしたら、他の器具まで落ちてきて……痛っ!?」

 

駆「ッ!?……見せてください」

 

目の前でコックさんが倒れ、マナさんや他の店員さんが集まっていく。この状況に僕は気持ちを切り替えて厨房の中へ入り、コックさんの身体を視診する。……打ったのは腰のあたりみたいだ。手に異常はない……申し訳ないけど、触診もしておこう。

 

駆「すいません、ちょっと押しますよ」ぐいっ!

 

コックさん「イッタ痛たたたた!!!」

 

駆「……腰を打ったので間違いないですね。……立てますか?」

 

コックさん「あ、ああ。だいじょうぶっ!?」グキッ!

 

駆「……すいません、どなたか運ぶのを手伝ってもらえませんか?」

 

女性店員さん改め、コック”相田 健太郎”さんの奥さんでマナさんのお母さん”相田 あゆみ”さんの協力のもと、何とかご自宅のスペースまで運ぶことが出来た。自宅スペースにはマナさんの祖父である”坂東 宗吉”さんがおり、湿布を用意して健太郎さんに貼ってくれた。……あんな叩く様に貼らなくてもいいのに。

 

 

相田家 リビング

 

健太郎「う~、面目ない」

 

マナ「パパ、どうするの?お客さんまだいるよ?」

 

あゆみ「仕方ないわね。一旦、お店を閉めましょう」

 

駆「あ、あの!」

 

僕は、相田家の大事な話の途中に割り込みを掛ける。困っている時に……何もしないなんて嫌だし、それに……!

 

マナ「えっ……?」

 

何でか分からないけど……マナさんが悲しそうなのは”絶対に嫌だ”!!!

 

駆「ぼ、僕に料理を作るのを……お手伝いさせてください!」

 

あゆみ「えっ!?だ、だめよ!別にそんなことしなくったって大丈夫だから……ね?」

 

宗吉「……少年。作り切ることが……出来るんじゃな?」

 

駆「は、はい!」

 

僕は宗吉さんの目を逸らすことなく見つめる。僕の気持ちを伝えなくちゃ!!

 

宗吉「良い目じゃ!良かろう!マナ、メニューのレシピがあったじゃろ。持ってきてくれ」

 

マナ「うん、分かった!」

 

マナさんはどこかへ走っていくと、すぐに戻って来た。手には何やらノートの様なものが数冊あり、あれがレジピなのだろう。

 

マナ「はい、これ!」

 

駆「ありがとうございます。早速拝見しても良いですか?」

 

宗吉「時間がない、すぐに見ろ」

 

駆「はい!」

 

僕は数冊の内の一冊目を開き、内容を読み込んでいく。時間がないんだ……全力で読み込む!!!

 

 

ぶたのしっぽ亭 店内

 

side:コルーリ

 

コルーリ「カケル……遅いですね」

 

カケルはマナさん、他の店員さんと一緒に怪我をしてしまったコックさんを運びに行った。もう10分は立っているが……大丈夫でしょうか?

 

駆「・・・・・・」

 

コルーリ「カケル!……なんでエプロンをしてるんですか?」

 

カケルは奥の部屋からエプロンをした姿で出てきた。それに続いてマナさんに店員さんも出てくる。

 

駆「ふう~~~……はあ~~~!……よし!マナさん、あゆみさん!注文をお願いします!」

 

マナ「オッケー!任せて!」

 

あゆみ「わかったわ」

 

カケルは厨房内の冷蔵庫や棚、注文票を確認し始め、マナさん達は注文を取り始める。まさか……カケルがコックさんの代わりに料理を作るんですか!?

 

マナ「駆くん!3番さんにハンバーグランチ三つね!」

 

駆「分かりました!」

 

カケルはいつも間にかコンロに火を入れ始め、フライパンを三つを用意する。よく見たら熱した鉄板も用意しているし……もうハンバーグはグリルに入っていた。あっ!卵をかき混ぜています……オムライスでしょうか?

 

駆「6番さんのオムライス一つ、お願いします!」

 

マナ「オッケー!お待たせしました!」

 

なんと素早い連携なんでしょう……あっという間に注文を捌いきっていくカケルと、素早く注文を受けて料理を運ぶマナさん。……なんだか、とても相性のいい”夫婦”の様な……。

 

コルーリ「……なんか、嫌チュン」

 

私は、心の中に浮かんだ気持ちを……小さな声で呟いた。

 

 

side:ドキドキ!プリキュア

 

ありす「わかりましたわ。ありがとう、セバスチャン」ピッ!

 

六花「本当なの?謎の二人組がマナの所にいるって?」

 

ありす「そうですわ、六花ちゃん。監視カメラの映像に、セバスチャンが現場で確認していますから……間違いありませんわ」

 

真琴「マナが危ないわ!すぐに向かいましょう!」

 

亜久里「マナなら大丈夫と思いますが、油断は禁物ですわ」

 

ぶたのしっぽ亭へと向かう4人と、その内三人のバックに隠れている”妖精”が三人、茶髪の少女が抱っこする赤ん坊が一人……そう、彼女たちこそ”ドキドキ!プリキュア”の残りのメンバー4人である。

 

六花「ありす、でもさっき言ってなかった?男の子?……の方は会ったことがあるって?」

 

ありす「はい。私の記憶が正しければ、一度お会いしていますの。亜久里ちゃんよりもまだ小さかったですけどね。確か……5歳だったと思いますわ。と言っても、彼は私のお名前も知らないと思いますけどね。……あのとき……二年前の私は、四葉財閥の仕事で”病院”に卸す医療器具の契約に言っていただけでしたから」

 

亜久里「でも、何故ありすは”彼”の事を知っているのですか?」

 

ありす「”彼”を知っているのではなく、”彼のお父様”を知っているのですわ。政界のパーティーでお会いしたことがあり、その時に入院していた”彼”……息子さんのお話を聞いたのです」

 

真琴「でも、何でその子がマナの所へ向かうの?」

 

ありすが言う少年の事……まだ分からないことが多すぎる。敵なのか?味方なのか?不安を感じる3人の中……ありすだけは……にこやかに笑っていた。

 

 

ぶたのしっぽ亭 店内 ー昼休憩ー

 

side:駆

 

駆「お疲れ様でした」

 

マナ「お疲れ様!すごいね、駆君!カッコよかったよ!胸がキュンキュンしちゃった!」

 

駆「ッ!?……困っている時は、助け合いですから。……当たり前の事です///」

 

なんとか、無事に昼の営業を終えることが出来た。今日ほど”物覚えが良い”事を喜んだことはないだろう。……忘れられないって、結構辛いからな。それに……マナさんの笑顔を守れたし、まあ……いいかな。

 

宗吉「お~!お疲れさん、少年。若造にしては、中々やりよるわい!」

 

駆「お疲れ様でした。あの……健太郎さんは?」

 

あゆみ「ただ、腰を強く打っただけみたい。夜には大丈夫だって」

 

駆「そうですか……!良かった」

 

健太郎さんの無事も分かり、お仕事も終わって一安心……ん?僕、なんか忘れてないかな?

 

コルーリ「カケル!私を忘れていましたね!!」

 

駆「こ、コルーリ!?あ、ゴメン……完全に忘れてた」

 

コルーリ「カケルの……バカ~~~~~!!!」

 

コルーリが僕の身体を容赦なく揺さぶる。待って!疲れてるから!!待って!!!……そう思った時、店のドアが力強く開かれる。そこにいたのは……そう言うのに疎い僕でも知っている”アイドル”と、見知らぬ3人でした。

 

剣崎 真琴「マナ、大丈夫!?」

 

コルーリ「バ~カ~!カケルのバ~~~カ~~~!!!」

 

青い髪の少女「これは……どういう状況?」

 

茶髪の小さい子「なんと言いますか……」

 

二つシニヨンの少女「楽しそうですわね~」

 

どうなってるんだ?剣崎 真琴が来たり……コルーリが強く身体を揺すったり……人に追われたり……あ~~~!もう限界!!!

 

ぐう~~~~~!!!!!

 

マナ「……何の音?……六花、聞こえた?」

 

六花?「聞こえたけど……どこから?ありす、分かる?」

 

ありす?「はて……?真琴さんはいかがですか?」

 

剣崎 真琴「えっ!?……分からない。亜久里ちゃんは?」

 

亜久里?「わたくし、聞きましたわ!音の出処は……あそこです!」

 

そう言って亜久里が指さしたのは……!

 

駆「お腹……空いた……」ぐう~~~~~!!!!!

 

疲れと緊張、ストレスで空腹がMAXになってしまった……”僕”でした。

 

 

To Be Continued……




いかがだったでしょうか?私としては、四葉財閥ならこれくらい出来ると思ったので書いていて……今までこんなこと出来そうなのやっぱ四葉だけだなと再確認しました(笑)。次回は、大きなお屋敷で自己紹介!そんな中に現れるフェイク!理由が分からぬ鼓動の正体に…駆は気付くことが出来るのか!?乞うご期待ください!

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