ヴァールハイト・プリキュア   作:32期

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スマイルプリキュア編、今回はお泊り企画第一弾”緑川家”をお送りします。今回から各スマイルプリキュアメンバーのお家にお泊りさせていきます。一応、今回の緑川家√が本筋で、これ以降は別√と言う感じにします。では、お楽しみください!

遅れましたが、シエルちゃん、リオくん、お誕生日おめでとう!ミルクから始まった妖精プリキュアの一人であり、中の人も人気のすごいキャラですよね。私としては中の人の印象的なキャラはシンフォギアシリーズのキャロルですね。もう歌なんか印象的で……耳から離れませんよ。そして私の最推し、相田マナちゃん!8/4に誕生日ですからね、先に祝っておきます……お誕生日おめでとう、マナちゃん!みんなのために頑張れる君が私は大好きです!


第二十八話:初めての経験!大家族の愛情!

緑川家

 

side:駆

 

なお「さあ、上がって!」

 

駆・コルーリ「「お邪魔します」」

 

 僕たちは、なおさんのお家に泊まることにした。いろいろ考えたんだけど……結果として人が多くて”何かの間違い”が起こる余地のない環境を選んだ。なんでもご兄弟が多いらしい……ん?玄関にある靴……ぱっと見だけど……子供用の靴が”5種類”くらいある……しかも、デザインが男の子用や女の子用、サイズもバラバラである……何人兄弟なんだろ?

 

「「「「「なお姉(お姉ちゃん)、おかえり!」」」」」

 

なお「ただいま!けいた、はる、ひな、ゆうた、こうた!今日はお客さんが来てくれたよ、家に泊まっていく”時生 駆”お兄ちゃんと”コルーリ”お姉ちゃん!みんな、仲良くするんだよ!」

 

駆「よ、よろしくね……えっと、けいた君とはるちゃんに……ひなちゃんと……ゆうた君にこうた君だね。僕は時生 駆と言います、今日はよろしくね」

 

コルーリ「私は、コルーリと言います。よろしくお願いしますね」

 

けいた「なお姉、外人のお友達なんかいたの!?すげー!」

 

 どうやら、コルーリの事を”外国人”と思っているみたいだ。まあ……確かに”コルーリ”って名前だけじゃそう思うのも無理ないか。

 

とも子「なお、おかえり。その子たちが電話で話してた子ね、なおの母のとも子です。狭い家だけど今日はゆっくりしていってね」

 

駆「急なお願いをありがとうございます!何かお手伝い出来ることがありましたら、遠慮なく言ってください!」

 

コルーリ「私も何かあれば……あれ?あの……そのお腹……もしかして」

 

 コルーリの一言で、僕もとも子さんのお腹に視線を向ける。体系としてはふくよかな感じではあるが、少しだけおかしい……ヘソ下あたりがやや盛り上がっている……これって……まさか!

 

駆「妊娠……してるんですか?」

 

とも子「あら、よく分かったわね!生まれるのは12月の予定なのよ」

 

なお「こうたも”お兄ちゃん”になるんだよね」

 

こうた「うん!」

 

駆「・・・・・・」

 

新しい命が……母親の中に宿っている……誰かに”生まれる”事を期待されている……か。

 

果実『あんた達なんて!!!生まなきゃよかったのよ!!!!!』

 

駆「ッ!?……何考えてるんだ」

 

コルーリ「カケル、大丈夫ですか?」

 

駆「うん……ちょっと考え事……しただけだから」

 

種(お兄ちゃん、お母さんの事……今は忘れよう……そうしないと……辛くなっちゃうよ。タネも……ちょっと思い出しちゃったし……ね?)

 

駆(……そうだね)

 

 お母さんの言葉を思い出してしまったことに後悔する。でも……この事は”忘れちゃいけない”……それに……お母さんの”笑顔”を僕は思い出した……だから、大丈夫だ。

 

源次「なお、帰ったか。……そいつか……なおが言ってた今日家に泊まる”坊主”ってヤツは……」

 

駆「ッ!?」(……これは、とてつもない”敵意”と”怒り”!)

 

源次「女連れとは恐れ入った……なおとはどういう関係なんだ?」

 

目を離すな……離した瞬間に……”首を取られる”!

 

駆「……お友達です。そして、こちらのコルーリも……お友達です」

 

源次「……女友達が多いんだな……女には困らないんじゃねえか?」

 

駆「……男友達も……います。それから、なおさんとは……”お父様”が考えているようなことはありません」

 

源次「ッ!!お前みてぇなどこの”馬の骨”とも分からねえヤツに”父親”と呼ばれる筋合いはねえ!」

 

しまった……これは間違ったやつだ……最悪だ!

 

とも子「あんた、そこまで。ごめんなさいね、駆君……うちのお父ちゃん、ちょっと喧嘩っ早くてね」

 

源次「お、オイ!俺はなおの事を思ってだな……」

 

なお「お父ちゃん、それこそ大きなお世話だから!人様に迷惑かけてどうするの!」

 

源次「ぐっ……けっ!」

 

なお「全く……あたしからもゴメンね!お父ちゃん悪い人じゃないから、怒らないでくれると助かるよ」

 

 あの怒り方は……自分の子供の事を”大切に思っている”って事……それだけ”愛してる”って事だ……それを……怒る訳がない。

 

駆「……素敵なお父様ですね……とっても羨ましいです」

 

なお「えっ?そ、そうかな?」

 

駆「そうですよ……素敵です……本当に……」

 

種(……お兄ちゃん)

 

コルーリ「カケル……あら?」

 

 僕を心配したコルーリの手を誰かが引っ張る。よく見ると僕の手も誰かに引かれていた……その正体は、僕の方が”けいた君”、コルーリの方が”はるちゃん”で満面の笑みで僕らを見る。その目はまるで……”新しいおもちゃを見つけた時の子供”の様である。

 

けいた「お兄ちゃん!一緒に遊ぼうぜ!サッカーできる?」

 

駆「えっと……スポーツ系はちょっと……って、うわっ!?」

 

はる「お姉ちゃんも一緒に遊ぼう!おままごとしよ?」

 

コルーリ「えっ?は、はい……良いですよ~~~~~!?」

 

 僕たちは子供たちに引っ張られるようにして家の中へと連れていかれる。ちょっ!?何この力……この子達どんだけ力強いんだ!?待って!?チョッドマッデクダサイヨ!!!

 

 

緑川家 リビング

 

駆「違う!”フォーゼ”の変身は3、2、1からの……こう!けいた君、その程度で満足するな!もっと腰を入れて!!手は宇宙を掴むくらい高く!!!」

 

けいた「お、おう!!」

 

ゆうた・こうた「「お~!」」

 

駆「そう!その角度だよ!!よし……次は”オーズ”だ!僕が最終回のタジャドルを再現するから……瞬きせずにしっかり見るんだ……良いね?……返事!!!」

 

けいた・ゆうた・こうた「「「は、はい(は~い)!」」」

 

 僕は今、けいた君とゆうた君、こうた君に2012年までのライダー変身ポーズをレクチャーしている。全く……この時代の子は”ロボッター”と言うアニメに現を抜かして……弛んでいる……僕が真の特撮をしっかりと”継承”してあげなくては……サッカー?そんなもん無しだ!今は特撮だ!!!サッカーは終わった後でやるからいいんだ!!!!!

 

はる「コルお姉ちゃんの髪、とっても綺麗!お姫様みたい!」

 

コルーリ「えっ///!?そ、そうですか?」

 

ひな「綺麗な青色で……れいかお姉ちゃんみたい!」

 

コルーリ「私はあんなに……ううん、はるちゃんにひなちゃんも、とっても可愛いですよ!」

 

はる・ひな「「やった~~~!!!」」

 

 コルーリも何とか上手くいってるみたいだ……おっと、そろそろ平成二期が終わるな……ここからが本番、平成一期のターンだ!

 

とも子「なお、少し手伝ってくれる?」

 

なお「うん、今行くよ」

 

 とも子さんがなおさんをキッチンの方へと呼ぶ。きっと、何かのお手伝いに呼んだのだろう……料理なら僕も何かお手伝い出来るかもしれない!

 

駆「あ、あの!僕も何かお手伝いします!僕、料理には自信あるんで……」

 

源次「男が台所に立つもんじゃねえ!男はなぁ……仕事場と家族の前でしっかりと立ってればいいんだ!男が女の仕事場に入るんじゃあねえ!」

 

なお「お父ちゃん!」

 

駆「なおさん……大丈夫ですから」

 

種(この頑固親父……!む~~~!!!お兄ちゃん変わって!!!私が……一発お見舞いするから!!!)

 

 止めるんだ、種。それに……お父様にもいろいろな考えがあっての事だ。それを否定して、その上”暴力”まで使ったら駄目だから……ついでにあの体格差じゃ、まず勝てないから。

 

とも子「お父ちゃん、それなら台所は私の仕事場だね……だったら駆君も手伝ってくれるかい?私がお願いするんだったら、お父ちゃんも文句ないだろ?」

 

源次「……勝手にしろ」

 

そう言うと、座布団に座っているお父様は再び新聞を読み始める。

 

とも子「と、いう訳だ。なお、駆君、お手伝いお願いね」

 

なお「うん」

 

駆「はい!あ、コルーリ、けいた君とゆうた君、こうた君の事もお願いね」

 

僕は台所に向かいながら、コルーリに弟君たち三人をお願いする。

 

コルーリ「えっ?は、はい……うえっ!?せ、背中に何か乗りました!?……こ、こうた君?な、なんですか?」

 

こうた「コルお姉ちゃん!あそぼ~!」

 

ゆうた「あそぼ~!!」

 

けいた・はる・ひな「「「遊ぼ~~~!!!」」」

 

コルーリ「は……はわわわわ……お、お手柔らかに……」

 

チュチュ~~~~~~~ン!!!!!

 

 コルーリの悲鳴が僕の後ろから聞こえる……”ゴメン、コルーリ”……僕はそう思いながら、なおさんの背中を追いかけて台所へと向かった。

 

 

緑川家 台所

 

とも子「それじゃあ、なおと駆君には野菜を切ってもらおうかしら」

 

なお「任せて、お母ちゃん」

 

駆「分かりました……キャベツは千切りでいいですか?」

 

とも子「そうね、難しかったら私に言いな!変わるからね!」

 

駆「お気遣い、ありがとうございます……では、切っていきますね」

 

 今日の晩御飯は”コロッケ”だそうで、とてつもない量のジャガイモが用意されている。僕の作業はその付け合わせのキャベツを切る事で、僕は普段している通りにキャベツを千切りにしていく。

 

とも子「あら!駆君上手だね~!お料理、よくお母さんのお手伝いするのかい?」

 

駆「いいえ、両親が家にほとんどいないので……自炊は一通り出来るようになったんです」

 

なお「えっ?お父さんとお母さん……お仕事が忙しいの?」

 

駆「母はパティシエ……お菓子作りをする人で、世界中を飛び回ってるんです。父も政治関係の人で……外泊の方が多いですね」

 

とも子「そうなのかい?じゃあ、兄弟はいるの?」

 

 あまり聞かれたくない家族の質問が続く。父さんの知名度を考えて誤魔化したりしているのだが……ボロを出さないように気を付けないと……。僕は話してもよいと思う内容をセレクトして質問に返答する。

 

駆「えっと……双子の妹が一人います。それ以外だと……兄も姉も弟もいないですね」

 

なお「そうなんだ……それじゃあ、”寂しくない”の?」

 

なおさんは、種の事を話したから知っている……それを理解した上で僕に”寂しいか”を聞いて来た。

 

駆「寂しくはないですよ……どんな時でも……種が一緒ですから。……あっ!”種”って言うのは妹の名前で……今日は、晩御飯作って来たので……心配はご無用です」

 

とも子「妹さんのために晩御飯作ってくるなんて、いいお兄さんね!ウチのけいたにも見習わせたいわ!それに千切りも上手!もしかしたら、なおより上手かもしれないねえ」

 

なお「えっ!?ホントだ……何か自信なくすな」

 

駆「そんなことないですよ。なおさんの手際、とても丁寧ですし、将来は”素敵なお嫁さん”になれますよ」

 

なお「えっ///!?い、いやっ!?あたしはそんなガラじゃないし///!」

 

 あれ?僕、変な事言ったかな?とも子さんは、すごい”笑顔”でなおさんと僕の事を見てるけど……僕は思った事を言っただけなんだけどな……。そう考えていると、とも子さんから意外な一言が飛んでくる。

 

とも子「だったら、駆君”が”お嫁さんにしてあげてもいいんだけどねぇ」

 

なお「お、お母ちゃん///!?駆君とはそんなんじゃないから!!」

 

駆「そうですよ。僕なんかに……なおさんみたいな”素敵な人”は勿体ないです」

 

種(お兄ちゃん……そういうトコだよ!ちょっとはマナちゃんの所で学んだんじゃないの!?)

 

駆(……どんなこと”マナさん”に感じていたのかなんて……覚えてないよ)

 

 そんなこんなで、無事に千切りキャベツが切り終わり、とも子さんもコロッケを上げ終える……本当にすごい量だな。僕となおさんもコロッケ作りを手伝ったけど、こんな量を作ったことないよ。

 

種(ハピチャのみんなが作ってくれたやつを思い出すよ~!食べ足りなかったけど……)

 

種……それのせいで大変だったんだからね……今はだいぶ落ち着いたけど……。

 

とも子「さあ、テーブルに運びましょう」

 

駆「僕も運ぶの手伝います」

 

なお「それじゃあ、あたしがご飯よそるね」

 

 僕はテーブルの方へコロッケの乗った皿を運んでいくと……リビングには緑川家の子供たちによって見るも無残な姿になったコルーリが……床に倒れていた……大丈夫かな?

 

 

源次「いただきます」

 

緑川家の皆さん「「「「「「「いただきます!」」」」」」」

 

駆・種・コルーリ「「「いただきます(ま~す!)」」」

 

僕は大皿に乗るコロッケを小皿に移し、ソースをかけて口に運ぶ。

 

駆「ッ!?……美味しい」

 

とも子「本当?それならよかった」

 

けいた「お母ちゃんのコロッケは日本一なんだ!」

 

なお「こら、けいた!静かに食べな!」

 

 家族全員で囲む食事、兄弟と話して、楽しい喧嘩をしたりする……うるさいような、騒がしいような……家族の揃った食事って……こんなだったかな?僕が家族そろって食べた食事なんて……両手の指で足りるくらいしか回数はない……あの事件の後から僕は、”二人”だけど……”一人”の食事しかしたことない。……この光景は……こんなにも眩しいものだっただろうか?コロッケだって……特に代わり映えのない”普通のコロッケ”なのに、信じられないくらい美味しい……”お母さん”の作ったコロッケって……こんな感じなのかな?……分からない事……ばっかりだな。

 

はる「駆お兄ちゃん、どうしたの?」

 

駆「えっ?」

 

ひな「悲しそうな顔してるよ?お母ちゃんのコロッケ……美味しくなかったの?」

 

 僕は、いつの間にか”苦しい表情”をしていたらしい。子供たちにも分かるくらい……そんな表情をするなんて、ダメだな……早く誤魔化さないと。

 

駆「ち、違うよ。ウスターソース……かけ過ぎちゃったみたいで……ちょっと辛かっただけだから。コロッケはとっても美味しいよ!もう、何個でも食べられちゃいそうなくらい!」

 

はる・ひな「「でしょ~!」」

 

駆「うん!あむっ!よ~し、もう一個おかわりしようかな!」

 

けいた「あ!駆兄ちゃんズリ~!俺も!」

 

なお「ちょっと!?あたしの分まで取らないでよ~!よ~し!あたしも!!」

 

 楽しい食事の時間は、すぐに終わってしまった。もう少し続いてほしいような……早く終わって欲しいような……自分の知る”家族の食事”とはあまりにもかけ離れていたから、どうしようもない複雑な気分だった。

 

 

side:コルーリ

 

駆「お風呂、ありがとうございました」

 

なお「うん。駆君ごめんね、弟たちのこと見てもらっちゃって」

 

駆「いいえ、ああいうのも良いですね……すいません、僕、お父様に呼ばれているんで失礼しますね。仕事場って……この奥ですか?」

 

なお「そうだよ。そこを真っ直ぐ行ったら、お父ちゃんいると思う。でも……お父ちゃん、駆君と何を話すんだろう?」

 

駆「さあ?取り合えず行ってきますね」

 

 カケルは弟さんたちとお風呂から出てくると、なおさんのお父様に呼ばれているらしく、そのまま彼の待つ仕事場へと向かう。……なおさんのお父様は、カケルに対して”敵意”の様なものを向けていました……何もないと良いのですが……。

 

なお「それじゃあ、あたしたちも入ろうか!はる、ひな、準備して!コルーリもね!」

 

コルーリ「あ、はい……えっ!?私もですか!?」

 

はる「コルお姉ちゃんも入ろ~!」

 

ひな「入ろ~!」

 

コルーリ「うぅ~……はい」

 

 小さな子供たちの可愛らしい眼差しに負け、私はお風呂に一緒に入ることを了承する。……他の人とお風呂に入るなんて……初めてなので緊張します。

 

 

緑川家 風呂場

 

コルーリ「……準備完了、いきますチュン」

 

 私は、着ている服と下着をすべて外し、何も纏わぬ姿になる。なおさん達は先に身体を洗うためにお風呂場に入っている……この扉の向こうは私にとって”未知の領域”……そう覚悟しながら私はお風呂場に入る。

 

なお「おっ!コルーリ遅かったね。はる達は身体洗い終わってるから、すぐに洗えるよ」

 

コルーリ「・・・・・・」じ~~~!

 

なお「な、なに?」

 

すと~ん

 

コルーリ「・・・・・・」

 

ペタッ

 

・・・・・・勝ったチュン!

 

なお「こ、コルーリ!?今、なんか失礼な事考えなかった!?」

 

コルーリ「考えてませんよ。では、身体を洗わせてもらいますね」

 

なお「コルーリ!?な、何か誤魔化したでしょ!?」

 

コルーリ「誤魔化してないです……何にも」

 

なお「何なの!?その憐れむような笑顔!?」

 

 この世界には……私よりも”持たざる者”がいる事を……私は今日、初めて知りました。……意外と他の誰かと入るのも悪くないかもしれないチュン……場合によっては心が折れてしまうかもしれませんがね。私はそう思いながら、身体を洗い始めた。

 

 

緑川家 源次の仕事場

 

side:駆

 

駆「失礼します」

 

源次「おう、入んな」

 

 お父様の許可が出たため、仕事場の中へと入る。周囲にあるのは……角材だろうか?その他にもトンカチやカンナなど大工が使うような道具が置かれている。

 

源次「悪りぃな、こんなところで……明日の準備もあってよ」

 

駆「いえ……えっと……お父様は”大工”さんなんですか?」

 

源次「ほう……分かるか、坊主。まあ、見ての通りだ……お前さんの言う通り”大工”をやってる。それと……”お父様”ってのはやめてくれ!むず痒くて仕方ねえや!そうさな……”親父さん”くらいにしてくれ!」

 

駆「すいません、お名前を伺ってなかったので。……えっと、親父さん、僕に何の御用でしょうか?」

 

 僕は、何故親父さんが僕を仕事場に呼んだのかを訪ねる。……出来れば、取っ組み合いの喧嘩とか、拳が飛んでくるものは遠慮したい。

 

源次「……お前さんに、きつく言っちまっただろ……すまんかったな。その……娘の事となると、ついカッとなっちまうんだよ」

 

駆「い、いえ!家族の事なんですし、心配して当たり前ですよ!」

 

源次「……なあ坊主、お前はなおのどこに惚れたんだ?」

 

駆「……えっ?」

 

源次「あいつはな……俺たちの最初の子でよ、真っ直ぐに育って欲しい持って”直(なお)”って名前を付けたんだ……贔屓目もあると思うがな、あいつはお母ちゃんに似て美人な方だ……他の弟妹の面倒もしっかりみれる……俺には勿体ないくらいの良い娘だ。お前は……なおのどこに引かれた?……正直に答えてみろ」

 

 これ……なんかヤバくない?答えを間違えたら……間違いなく拳が飛んでこない?だとしても……ここは、正直にいこう!直球勝負で……真っ向勝負だ!

 

駆「……では、まず……訂正をさせていただきます。僕となおさんは……そういう関係ではありません。ですけど……人として引かれたと言う意味でしたら、”笑顔”……でしょうか」

 

源次「”笑顔”?」

 

駆「はい。……まだ会って間もないですけど、家族といる時の笑顔とか……とっても素敵だと思いました。それだけ、家族の事を思っている……親父さんが考えていることを、きっとなおさんも感じている……家族の絆を……強く感じました」

 

源次「……何を当たり前のこと言ってんだ?家族ってのは……そういうもんだ」

 

 家族とはそういうもの……その言葉が僕の胸に重くのしかかる。なら……僕の家族はどうなのだろう?僕は……どうだと言うのだろう?

 

駆「……羨ましいです、なおさんが」

 

源次「……なんでだ?」

 

駆「こんなに素敵な両親がいて……弟妹がいて……支え合っていて……”僕にないもの”ばかりで」

 

源次「……あのとき話してた”両親”の事か?」

 

 親父さんは、どうやらとも子さん達に話した内容を聞いていたらしく、”両親”と言うワードが出てくる。僕はその質問に対し頷いて肯定する。

 

駆「僕は……”僕たち”は、お父さんにも……お母さんにも……愛されてはいません。家族揃った食事なんて殆どないし、二人共……僕らをいらないって……」

 

源次「……お前さんがどんな経験をしてきたかは聞かねえ。だがな、自分の子供を愛さない親なんてな……滅多にいねえ!どんな奴にだって……親になるための強い覚悟がある……お前の親だってそのはずだ」

 

駆「……そうでしょうか?」

 

源次「当たり前よ!もし、お前の親がそうじゃねえなら……遠慮はいらねえ!また家に来な!ここをお前の家だと思ったって構わねえ!」

 

駆「親父さん……!」

 

 お父さんとお母さんは……今でも僕たちに、”愛情”なんて向けてくれるだろうか?知るのは……怖い……でも、親父さんの言葉を……僕は信じたいと思った。

 

源次「あっ!言っとくが、”なお”はまだやらんぞ!もし手を出してみろ……どうなるか分かるな?それと、お前も”僕”って言うのはやめろ!なよなよした感じがしやがる!男らしく”俺”って言ってみろ!強い男になりたいなら……そうする方が良い!」

 

駆「……親父さん、僕らは付き合ってないんで……本当にそういう事は無いですから。あと、”俺”と言う呼び方は、ちょっと僕には無理がありますよ」

 

 僕と親父さんの話し合いは、その後お風呂から出て来たなおさんにより止められた。なんでも親父さん明日は仕事が早くから入ってるらしい……そんな中でお時間を割いていただいて……本当にありがとうございます。

 

 

緑川家 寝室

 

駆(……これは”川の字”ってヤツなのかな?)

 

種(どっちかと言うと……”州”ぐらいあると思うよ、お兄ちゃん)

 

 僕とコルーリは、子供たちと同じ部屋でお布団を一枚借りている状態……絶賛”川の字”で……いや、人数多いから種が言った通り”州の字”と言うのが近い状態である。ついでに、コルーリの両サイドにはるちゃん、ひなちゃんが、僕の両サイドにはゆうた君、こうた君がいる。こんな人数で寝る経験自体がない僕にとって、これはすごい経験である。

 

駆「コルーリ……起きてる?」

 

コルーリ「クー……クー……」

 

どうやら眠ってしまったらしい……僕も疲れているし早く寝よう……そう思った時、何かの”音”が僕の耳にとまる。

 

ラ~ラ~~~ララ~~~ララ~~~ララ……ラ~~~ララ~~~ララ……

 

これは……”歌”?それも……どこかで聞いたことがあるような?

 

種(お兄ちゃん、この歌……私が考えた”お星さまの歌”だよ……何でこの歌が……)

 

駆(外から聞こえてくる……行ってみようか?)

 

種(りょうかい)

 

 僕は寝ているみんなを起こさない様に、静かに部屋を出て玄関から外へ向かう。時間は既に”11時”を過ぎた頃……人々が寝静まる中、”見覚えのある少女”が河川敷の所で歌を口ずさんでいた。

 

駆「……旭さん?」

 

旭「えっ?……駆君、こんな時間に散歩?それとも天体観測?」

 

駆「なんで君がこの時代に……もしかして、僕たちを見守りに来てくれたの?」

 

旭「……前回、2013年では……私、何もできなかったから……駆君の事、助けられなかった……だから……今回は近くで見守ろうと思ったの」

 

駆「そうですか。……あの、今の歌は……何?」

 

 僕は旭さんの隣まで行くと、河川敷に僕らは腰を下ろし、今歌っていた歌について聞いてみる。なんで、旭さんが”種の歌”を知っているのかを知りたいからである。

 

旭「この歌はね……”星の歌”って言うの。私が駆君から……”私たちの世界”の駆君から教えてもらったの」

 

駆「パラレルワールドの……”僕”から?」

 

旭「そう……”天体観測同好会”で一緒に星を見た時に教えてくれたの……とっても素敵な曲でしょ?」

 

駆「”天体観測同好会”?僕、部活とかには入ってないけど……」

 

旭「そうか……そういう所は違うんだね。私とオリヒメちゃんは、天体観測同好会の部室で……駆君に初めて会ったんだ。あの時は大変だったな~!オリヒメちゃんがアイドルでね、一緒の日に転校して来たんだけど、クラスの子に追い掛け回されちゃってさ!私もそれに巻き込まれちゃって、その時に逃げ込んだ教室が”天体観測同好会の部室だったの……懐かしいな」

 

 旭さんは、僕の知らない”僕”との出会いを話していく。僕は部活になんか入っていないし、旭さんは多少面識はあるけど、ベガとは面識はない……僕の知らない世界の話を僕は聞いていく。

 

旭「駆君は私たちを助ける代わりに”部員として名前を貸せ”って言ったんだ。幽霊部員でも良いって言ってたんだけどね、オリヒメちゃんが駆君の事を気に入っちゃって、入りびたるようになったんだ……それから色々あったんだよ……特に思い出深いのが……私と駆君、二人で見た天体観測……私のかけがえのない思い出なんだ」

 

駆「その時に……歌を教わったんですよね……”種が考えた歌”を?」

 

旭「えっ?……そうだったんだ、この歌は……”駆君の曲”じゃ……ないんだね」

 

駆「……少なくとも僕は……そんな曲を考えられませんし、今日”種が考えた”って聞きましたから」

 

旭「……そっか」

 

 そう言うと、座っていた旭さんは腰を上げて僕の方をみる。しかし、その瞳が見つめるのは……”僕”ではない。

 

旭「聞いてるんだよね……妹さん?」

 

 やはり……旭さんは僕ではなく、”種”に対して話しかけ始めた。彼女が今語り掛けているのは……”種”の方だ。僕は種に主導権を移し、話せるようにする。

 

種「うん……聞いてたけど……もしかして……”怒る”?」

 

 パラレルワールドの旭さんに敵視されていることを理解している種は、彼女を怒らせてしまったと考えて、怒っているかを確認する……しかし、その質問に帰ってきた返事は、予想外のモノだった。

 

旭「……ううん、素敵な歌ね……あなたの歌」

 

種「えっ?……本当?」

 

 旭さんは”僕の教えた歌”ではなく”種の考えた歌”として、この曲をしっかりと評価した。それに驚き種が再度確認する。

 

旭「ええ。ごめんなさい……私はもう行くわ。また、ネツゾーンが来た時は……駆君、あなたに協力するよ……不本意だけど、妹さんにもね」

 

種「ッ!?う、うん!ありがとう!」

 

旭「……それじゃあね、駆君」

 

駆「旭さん!」

 

旭「……何?」

 

 僕は主導権を戻し、旭さんに伝えたかった事を伝える。

 

駆「……閉じ込められていた時のお礼……今度は現実の世界でするって言ったでしょ?……ありがとう!あの時は……本当に助かりました!」

 

旭「……そういう所はやっぱり……”駆君”だ。でも……私の知ってる”駆君”じゃ……ないんだね……ありがとう!……またね」

 

 旭さんは、少し悲しそうな表情をした後に……”笑顔”でお別れを言った。そして、Aqライトで作られたと思わしき”黒い穴”の中へと消えていく。

 

駆「……うん、またね」

 

種『お兄ちゃん、旭ちゃん……”向こう”のお兄ちゃんの事が本当に好きだったんだね』

 

駆「そうみたいだね。旭さんは僕の事よりも……”向こうの僕”を”僕”に重ねてみているみたいだった。それに……彼女がAqライトを使えるのも”絶望”したからなんだよね……”世界が間違っている”って思うくらいの”絶望”を……」

 

種『向こうのお兄ちゃんが……カイザーンに消されちゃった事……かな?』

 

駆「ベガ……オリヒメがカイザーンに連れ去られた事も……原因の一つなのかもしれない」

 

 いつか……君の心も……”救われる”日が来るのだろうか?いや……出来るなら”僕”の手で”救いたい”。”向こうの僕”なら……そうするのかな?

 

種『お兄ちゃん、そこは”僕”じゃなくて”僕たち”……でしょ?旭ちゃんはタネの事が嫌いだし、タネの知らない旭ちゃんだけど……それでも友達だもん!私も……旭ちゃんを助けたいよ!』

 

駆「……そうだね。それじゃあ、救えるように頑張ろうか……”僕たち”で……ね」

 

種『うん!……あっ!お兄ちゃん、もう遅いよ!そろそろ寝よう!』

 

駆「そうだね……戻ろうか」

 

種『うん!』

 

 僕たちは緑川家に向かって歩き出し、戻った後に”手洗い”と”うがい”をして、僕は布団の中へとはいる。あれ?僕が寝てた隙間って……ここだったっけ?……まあいいか、もう眠いし……ここで……。

 

駆「おやすみ……種……zzZ」

 

種(おやすみ、お兄ちゃん)

 

 明日もプリキュアさん達を救うために、旭さんとベガ……二人を救う日のために、僕たちは身体を癒すために、深い眠りについた。

 

 

2012年 多田織市 

 

side:バッドエンド王国

 

ジョーカー「あの子供ですか~!」

 

 バッドエンド王国の道化師……ジョーカー。この男はある町に来ていた……後にプリキュア達を救い始める”特異点”が住む町、そして時代を消滅させるほどの”絶望”を抱えて生きる少年がいる町……多田織市。ジョーカーは夜の町を歩くある”少年”を見つめていた。

 

少年「……また、お弁当なの?”お兄ちゃん”、ずっとお弁当だと……身体壊しちゃうよ?」

 

少年「……”種”は、僕の料理が……食べたいの?」

 

少年「うん。その方が……いいよ」

 

少年「……分かった。ご本を読んで……何とかしてみる」

 

 その光景は”異様”だった。何故なら少年は、”一人”で会話を行っていたからである……本来なら異様な光景だが、それは彼にとっては異様ではない。何故なら彼は……”二人”で会話しているのだから……。

 

ジョーカー「そこの坊や、ちょっといいですか~?」

 

少年「……ピエロの……変質者?」

 

 少年は人気のない道でいきなり現れた謎の男を警戒する様に、身体を低くしてジョーカーを睨む。

 

ジョーカー「おや?警戒しているようですね~……では、自己紹介をしましょう!私は”ジョーカー”、通りすがりの道化師とでも……思っていただきましょうか」

 

少年「……道化師は通りすがらないよ?」

 

ジョーカー「まあ、私も大したことをお願いしたいんじゃないんですよ~!ちょっと君の……”絶望”をお借りしたいだけでしてね~!」

 

少年「ぐっ!?」

 

ジョーカー「未来から来たプリキュアの過去である君……ネツゾーンの彼と手を組むのに手土産が必要かと思って調べて来てみましたが、とんだ掘り出し物ですよ!……これは素晴らしい!!最高のバットエナジーです!!!」

 

 ジョーカーは少年の胸元を掴んで宙吊りにすると白い正方形状の紙を取り出し、それを少年の頭に当てる。すると、その紙は見る見るうちに”黒”に染まっていく……それはバッドエンド王国が持つ”闇の黒い絵の具”よりもどす黒い……”絶望”の色だった。そして、身体から黒い光を抜かれた少年は気を失ってしまう。

 

ジョーカー「素晴らしい!これほどの”絶望”を取り出したと言うのに……まだまだ出てくるではないですか~!!せっかくですし……もう少し頂いていきましょうか」

 

少年「ハグッ!!!」

 

ジョーカー「イッタ!?な、なんですって!?」

 

少年?「べ~!!!お兄ちゃんに酷い事して……絶対許さない!……もし今度会ったら……”消す”からね!!あんたの顔……もう”忘れない”から!!!」

 

 少年は気を失ったフリをしていたのだろうか?少年はいきなりジョーカーの手に噛み付き、捨て台詞をはいて走って逃げていった。

 

ジョーカー「……まあいいでしょう。必要な分は手に入りましたし……では、早速ネツゾーンの彼を探しましょうか……面白くなりそうですね~!私、今から”笑い”が止まりません!」

 

 人通りのない静かな道に、道化師の笑いが響く……それはこの時代を”絶望”に導く最低最悪の”笑顔”だった。

 

 

To Be Continued……




いかがだったでしょうか?ジョーカーは私の中でもお気に入りの悪役です。あの人間の心理を付いた人々を”絶望”させる様は……とても引き込まれる魅力がありますからね。ぜひ、カケルの事を更に”絶望”させてもらおうと思います。次回は……”星空家”にしようと思います!乞うご期待ください!

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