そんな訳で、スマイルプリキュア編、お泊り企画最後の一軒”青木家”をお送りします。最後なので多めにしてしまったのも悪かったのかもしれませんが……では、お楽しみください!
すごく遅くなってしまったけど、キュアジェラートこと”立神 あおい”ちゃんがお誕生日でしたね。あおちゃんの性格は青キュアでは珍しいタイプですよね~。でも、バイオリン・ギターなどの弦楽器演奏者で、お嬢様と言う青キュアの属性をしっかり持ってるんですけどね……それでいてしっかりマナーも出来るとか……最高かよ。まあ、それはそれとして……お誕生日おめでとう、遅くなってごめんなさい。
青木家
side:駆
れいか「ただいま戻りました。では、お二人もどうぞ」
駆・種・コルーリ「「「お邪魔します(ま~す!)」」」
僕たちは、れいかさんのご厚意に甘え”青木家”にお泊りすることにした。理由としては、客間などもあるという事で一番迷惑にならないと判断したためである……それにしても随分と大きな日本家屋だな。こんな家に住んでいる人は知らないが……何か武道や伝統工芸とかでもしているのだろうか?
静子「お帰りなさい、れいか。……あら、そちらのお二人が電話で話していた子達ね。初めまして、れいかの母、”青木 静子”と申します……れいかがいつもお世話になっております」
駆「これはどうもご丁寧に……えっと、時生 駆と申します。こちらこそ、れいかさんにお世話になっているので本当に助かっています。本日も急な泊まりを了承していただいて、本当にありがとうございます」
コルーリ「コルーリと申します。よろしくお願いいたします」
静子「うふふっ……れいかがお友達をお家に招待するなんて、なおちゃん以外だと初めてですからね。それも男の子だなんて……今日はお赤飯かしら」
れいか「うふふっ!お母様ったら、駆君はただのお友達ですよ」
お母さんである静子さんの話に軽く返答を返すれいかさん。なんと言うかこの落ち着いた感じはこの家庭環境から出来ているんだろうと伺える……だってみゆきさん、やよいさん、なおさんはお母様方によるこの手の冗談で動揺が見られた……あれ?僕、れいかさんのお家にしか泊まって……いや、これから泊まるのに何で、他のスマイルプリキュアさんの家に泊まった記憶があるんだろう?変だな?
静子「まあ立ち話もなんですから、どうぞ上がってください」
駆「は、はい、お邪魔します」
コルーリ「お邪魔いたします」
静子さんの指示に従い、僕らは青木家へとお邪魔する……内装は”ザ・日本家屋”って感じで、なんと黒電話があった。現代で”存在”こそ知られているが殆ど本物がない現状……今だ使われていると言うだけで珍しいだろう……そして、至る所に掛けられている”掛け軸”もだ。”道”……その一文字が書かれた掛け軸が眺める部屋と言う部屋に掛けられている……何かのこだわりかな?そんなこんなで、僕らは自分たちの客間へと案内された……もちろん”道”の掛け軸は掛けられていた。
青木家 れいかの部屋
静子「お待たせしました、頂いた羊羹ですが……駆君とコルーリさんは平気ですか?」
駆「は、はい……大好きです」
コルーリ「はい、いただきます」
静子「そうですか。では、ごゆっくり……お食事が出来たらお呼びしますね」
駆「あっ!あの僕もお手伝い……いってしまった」
静子さんは僕たちに羊羹とお茶を届けるや否や、伝える事だけ伝えてすぐにいなくなってしまう。まさかのお手伝いするという事を伝え損なってしまった……これでは、なんと厚かましい客人だと思われてしまうかもしれない……食器を戻しに行くときに、お手伝いするという事を改めて伝えることにしよう。
種「わ~い!羊羹だ~!あ~~~む!ん~~~!!!ほんのりと甘い餡子がお口いっぱいに広がる!餡子がみっちりと詰まってて、しかも漉し餡!皮を残さないこだわり様……一流の職人の一品ですな!」
駆『種、僕にも取っておいてよ』
種「分かってるって!あ~~~~む!ん~~~!!!サイコ~~~!!!」
主導権をいきなり奪ったと思ったら一人で羊羹を食べ始める種。一口で三切れある羊羹の一切れを食べてしまう……これは残らないな。仕方ないから、僕はれいかさんに何か質問でもしてみるか……何が良いかな?……そうだ!
駆『れいかさん、お家の至る所に”道”って掛け軸があるじゃないですか……あれって何なんですか?』
れいか「あれは、おじい様が書いたものです。おじい様は書道をなさっているんですよ、そして……ここに書かれる”道”とは人生、人の在り方を現したものであり、全ての人が築くべき”歴史”である……とおじい様は仰っていました。おじい様が特に関心を持っている文字で、わたくしもおじい様の教えがあってか……よく使わせていただいています」
コルーリ「”道”……でふか」モグ……モグ……
駆『”道”……ですか、一文字の漢字ですけど……奥深いですね』
れいか「ええ……わたくしもまだちゃんと分っている訳ではありません。自分が今歩む”道”は正しいのか……それが何時か分かる時が来るのかどうか……私にはまだ見えません」
僕がしている事も、言うなればプリキュア達が築いた歴史と言う名の”道”を正すことだ。僕たちヴァールハイト・プリキュアが今を戦えているのは”過去”のプリキュアさん達があればこそだ……そういう意味では、僕も”道”についてもっと考えるべきだろう……もちろん”過去”だけでなく、”未来”という”見えない道”についてもだ。
淳之介「れいか、帰っているかい?おっ!いるようだね……おや?れいかが男の子を連れてくるなんて驚いたな!いらっしゃい、僕はれいかの兄で”青木 淳之介”です……良かったら、君の名前を教えてくれるかな?」
駆「申し遅れました、僕は時生 駆と言います。れいかさんには大変いつもお世話になっております」
コルーリ「えっと……私は、コルーリと申します。同じくれいかさんの友達です。本日はれいかさんのご厚意で泊めていただくことになりました……報告が遅れてしまって申し訳ありませんが、よろしくお願いいたします」
淳之介「はははっ!そんなに畏まらないでくれ。れいか、明日は柔道の稽古が入ったからランニングは無しだ。それを伝えようと思ってね」
れいか「分かりました、お兄様」
れいかさんのお兄さんである”淳之介”さん。どうやら柔道をしているらしい……確かにどこか落ち着いた雰囲気の中に武道家特有の”闘気”の様なものを感じる……相当な実力者なのは間違いないだろう。
淳之介「それじゃあ二人共、今日はゆっくりしていってくれ。……そうだ駆君、ちょっといいかな?」
駆「は、はい」
僕は淳之介さんに呼ばれ廊下へと出ると、れいかさんの部屋から少し離れたところまで連れて来られる……一体なんだろう?
淳之介「駆君、れいかの事なんだけどね……」
駆「……はい」
種(なになに!?もしかして……お兄ちゃんに何かする気!?)
淳之介「れいかはね……ああ見えて少し抜けてるところがあるんだ」
駆・種「「……はい?」」
えっ……いきなり何?なんで僕、れいかさんの性格の事を伝えられてるの?
淳之介「だからね、れいかに遠回しなアプローチは伝わらないんだ……だから、真正面から”直球”で気持ちを伝えるのが良いと思うよ」
種(お兄ちゃん……これって……)
駆(うん……多分、”恋のアドバイス”ってやつ……かな)
ああ……淳之介さん、もしかして僕がれいかさんに”気がある”って勘違いしてるのかな?なんと言うか……申し訳ないのだがそんなことを考えたことはない……いや、綺麗な長い髪は素敵だと思ったけど。
淳之介「まあ、そういう訳だから頑張って。僕は君を応援するよ、じゃあね」
駆「えっと……ありがとうございます?」
淳之介さんは僕の肩を一度叩くと、そのまま廊下の奥へと消えてしまった……まあ、いい人なんだろうけど……どことなく抜けてるところがあるのは”兄妹”どっちにも言えると僕は思った。……れいかさん達の部屋に戻ろう……そう思って僕はれいかさん達のもとへと戻る。
コルーリ「カケル、淳之介さんと何を話していたんですか?」
駆「えっと……れいかさんと仲良くしてくれって感じの内容だったよ」
れいか「ふふっ!お兄様ったら……そんなに気を使っていただかなくてもいいのに」
言えない……れいかさんにとって淳之介さんが頼れるお兄さんだとすれば、妹を口説くお手伝いをしようとしたなんて……僕も妹がいる兄として、淳之介さんの評価を下げることは出来ない!……この事は、心の中に留めておこう。
青木家 リビング
静子「お待たせしました」
駆「あ、ありがとうございます……すいません、何もお手伝いせずに……」
静子「いいえ、気にしなくて結構ですよ」
食事はいつの間にか静子さんが完成させてしまっていて、お手伝いするタイミングがもはやなかった。……しかし、出来上がった食事はとてもおいしそうだ……炊き立てのご飯、大根とわかめの味噌汁、焼き鮭、小松菜のお浸し、おしんこ……”ザ・和食”と言う献立がこのお屋敷とベストマッチしている。ついでに、僕は淳之介さんの勧めでれいかさんの隣、コルーリは僕の隣となっている。現在は、れいかさんのおじい様である”青木 曾太郎”さんを待っている所……れいかさんのお父様は日本画家の個展のためお留守らしいので今はいないらしい……おっと、誰か入ってきた。
曾太郎「待たせたな……ん?おお、君がれいかの言っていたご友人か……今日はゆっくりしていきなさい」
コルーリ「ッ!?」
駆「コルーリ?」
曾太郎「おや?すまない、驚かせてしまったかな?」
なんだ?コルーリが曾太郎さんの声を聞いた瞬間に、まるで敵でも見つけたように警戒し始めた……一体、どうしたと言うんだ?
曾太郎「では、いただきます」
静子・淳之介・れいか「「「いただきます」」」
駆・種「「いただきます(ま~す!)」」
コルーリ「……いただきます」
料理はとても美味しい……しかし、コルーリはずっと黙ったまま食事を続けている。曾太郎さんの声を聞いてからずっとだ……本当にどうしたのだろう?たしかに怖い声ではあると思うけど……そう言えば、曾太郎さんの声……ウィザードに出ていた”キマイラ”に似ている……流石に声真似してくださいとは言えないな……。
駆「……コルーリ、どうしたの?さっきから……少し怖いよ?」
コルーリ「……えっ?あ……すいません……あの、曾太郎さんの声を聞いたら……思い出してしまって」
駆「”思い出す”?……何を?」
コルーリ「……総統メビウス。かつてアカシック王国を滅ぼした……ラビリンスの総統です」
皆さんに聞こえない声でコルーリは簡単に話してくれた。2009年のクリスマス・イブに起こった”管理国家ラビリンス”と言うパラレルワールドによる、他のパラレルワールドへの侵略と言う名の”管理”が行われた。パラレルワールドは一度、完全に管理されたのだが……それを止める者が現れた。それこそが……”プリキュア”だった。その後プリキュアの活躍によってメビウスは倒され、ラビリンスも立て直された……そして、その光景を見たアカシック王国は……そんな彼女たち(プリキュア)への感謝を込めて、彼女たちに危険が迫った時、彼女たちプリキュアを救うプリキュア……”アカシックのプリキュア”を生み出したらしい。
駆「そんなことが……」
コルーリ「今でも思い出すんです……あの時、私たちの世界が全て”機械”にされていく光景を……総統メビウスの姿と……あの声を……」
駆「……コルーリ、大丈夫だよ。曾太郎さんはメビウスでもないし、世界は機械になんてなっていない……それに、もしそのメビウスが出たら……」
コルーリ「……カケル?」
駆・種「「僕たち(私たち)が……倒しちゃうからね!」」
僕と種の励ましが通じたのか、やっとコルーリの顔が笑顔になった……やっぱりコルーリには”笑顔”が一番だね。
コルーリ「カケル!……タネ!……はい!」
種(やったね、お兄ちゃん!)
駆(うん……バッチリだよ!……ん?)
曾太郎「・・・・・・」
僕は心の中で種と話していると、強い視線を感じたためその方向を向く。すると、曾太郎さんが僕の元を見つめていた……目線を逸らすことなく、僕の目を真っ直ぐと……まるで僕の”本質”を見抜こうとしているようだ。
れいか「おじい様?どうかなさいましたか?」
曾太郎「いや……少年、この後に時間はあるかね?」
駆「えっ?……はい、特に何もありませんが……」
曾太郎「そうか、ならば儂の部屋に来て欲しい……れいか、後で案内してあげなさい」
れいか「はい、おじい様」
結局、そのあとは楽しい食事と言う感じではなかった。何故、曾太郎さんが僕を見ていたのか……気になってしまったのもそうだが、僕は怖かったのだ、曾太郎さんの”目”が……僕を見透かそうとしているようだったから……。食事が終わると、少し前に食事を終えていた曾太郎さんの部屋へとれいかさんが案内してくれた……一体、何を話すのだろう?
青木家 曾太郎の部屋
れいか「こちらです……おじい様、失礼します」
曾太郎「うむ……入れ」
襖越しに聞こえる曾太郎さんの声に従い、れいかさんが襖を開ける。開けられた襖の間から見えるのは、畳の和室とそこで書道筆を使い何かを書いている曾太郎さん……僕はその和室へと足を踏み入れるが、れいかさんは中へと入ってこない。どうやら、用があるのは”僕”だけの様だ。
曾太郎「れいか、もう良い……下がりなさい」
れいか「はい……駆君、どうかご無礼のなきよう……失礼いたしました」
れいかさんはそう言い残すとゆっくりと襖を閉める。これで……完全に”僕”と曾太郎さんの二人のみ……いや、種も入れて三人のみだ。
曾太郎「まあ少年……そんなところに立っているのもなんだ。腰を下ろしなさい」
駆「……はい」
僕は歩を進め、曾太郎さんの対面に座る。静かに感じる曾太郎さんの雰囲気は、感情を露にする”獣”とは違う……例えるなら獲物を狙う”狩人”に近い……正直、この人の前にいたくない……それだけ積み上げてきた……”重み”を……”歴史”を感じる。そう思っていると、先に曾太郎さんが静かに口を開いた。
曾太郎「少年……君は”正しき道”とは何だと思うかね?」
駆「正しき道……ですか?」
曾太郎「そうだ。”道”とは人の数だけ存在する……そして人一人にもまた無数に存在するのだ。正しき道と言っても同様だ……ならば、君は……何が正しい道と思う?」
実に哲学的な質問だ……難しいな。……しかし、答えるほかないだろう。
駆「僕が考える”正しい道”とは……”生きる事”……だと思います」
曾太郎「生きる……何故、そう思うのかね?」
駆「道とは……自分が歩み、刻んでいく歴史の事だと思うんです。歴史は人が生きた証であり、生きていることの証明です……ならば、生きる事こそが……正しい道を歩むために必要な事……正しい道そのものではないでしょうか」
曾太郎「……それが、君の”道”か?」
駆「……僕は、そう考えます」
僕の考えを聞きながら、曾太郎さんは紙に字を書いていく。そこに書かれたのは、”道”と言うにはあまりにも形が崩れた……”道”の文字。その紙を僕に見せて、曾太郎さんは……僕に言った。
曾太郎「ならば少年……何故、その”生”を正しいと考える君の瞳の奥では……”滅び”が渦巻いているのかね?」
駆「・・・・・・」
曾太郎「儂が書いたこの”道”は……少年、君の瞳の奥から見えたものを筆に乗せて書いたものだ。道ではあれど……あまりにも”歪”、己の中にある正しさが既に歪んでいるようだ」
駆はその言葉を聞きながら、ただ曾太郎を見つめる。
曾太郎「少年、君の目指す先へ……どのような”道”を歩もうと思う?」
駆「ふふっ……そんなの……決まってるじゃないですか」
駆は小さな笑い声を漏らすと、曾太郎の目を真っ直ぐに見つめて……答えた。
駆「僕が歩もうとするのは……正しき真実が待つ”正道”です……でも」
駆は一度顔を下に向け、表情を見えなくすると……再び顔を上げて曾太郎に答えた。
駆「”僕たち”の邪魔を……僕から大切なものを奪おうとする奴がいたら……僕は容赦しない。そいつらを”消す”ためなら……僕は”邪道”でも”外道”でも進みますよ!」
そう語る駆の表情は……満面の笑みだった。
駆「それでは……失礼します」
そう言い残すと、駆はそのまま自身の後ろを向き部屋を後にする。その光景を見た曾太郎は駆を止めようとはしなかった。
曾太郎「……れいかと年も変わらん少年の”心”を……どうすればあそこまで蝕めようか。どれ程までの苦行、苦悩を受ければ……ああなってしまうのか」
曾太郎は、駆の事を考えもう一度”道”の字を紙に書いていく……一画、一画、筆で心を込めて……”道”を完成させる。
曾太郎「……どうか、少年の道が……彼の信ずる”正道”へと至らんことを」
曾太郎のこの言葉が……彼に届くかは分からない。しかし、完成した文字は誰が見ても素晴らしいと分かる……確かな”道”だった。
青木家 浴室
side:コルーリ
コルーリ「わあ~……この香りは”木の香り”ですか?」
れいか「檜の香りですよ……と言っても、私はもう慣れてしまいましたがね」
コルーリ「とても落ち着く香りです。そうです、私にお背中を流させてください」
れいか「よろしいのですか?では、お願いしますね」
コルーリ「はい!」
私は、れいかさんの背中を流し始める。そうしながら今、あの恐ろしい声を持つ曾太郎さんと話しているであろうカケルの事を考える……きっとカケルなら大丈夫だと思うけれど。
れいか「コルーリ、もしかして駆君の事を考えているんですか?」
コルーリ「……はい」
れいか「大丈夫ですよ、おじい様は厳しい方ですが、とても聡明な方です。駆君を呼んだのも何か確かな理由があるからだと思いますよ」
コルーリ「……分かっています。でも……」
当時5歳だった私の脳裏に刻み付けられている……あの光景を思い出してしまった。お父様もおらず、多くの国民と共に避難所で……アカシック王国が滅ぶさまを見た。恐怖と絶望だけが渦巻いていた……あの時の事を……あの声を聞いた瞬間から……カケルが危険な気がして……嫌なんです。
れいか「……良かったら、私もお背中を流させていただけませんか?」
コルーリ「……お願いします」
拭えない不安のまま、私はれいかさんに背中を流せてもらう。背中を流し終わった私たちは、大きな湯舟の中へ浸かる。温かいお風呂と、落ち着く檜の香り……それがあっても、不安でならない。
れいか「コルーリ……あなたは駆君の事をとても思っているのですね」
コルーリ「……カケルは私にとって”希望”ですから」
れいか「コルーリ、もしかして……」
コルーリ「……私は、もう彼が泣く姿を……感情を書き換えてしまう瞬間も……見たくありません」
れいか「……辛い戦いを越えてきたのですね。駆君と種さん、コルーリ……三人の進んできた”道”はきっと……大変なものだったのですね」
私はれいかさんの言葉に頷く。前回の戦いで見せたカケルの”Aqライト”……あの力が発現してからカケルは変わっている。カケルの心が少しずつ擦り減っていくように……このまま戦い続けていったらどうなってもおかしくない。
コルーリ「カケルをこのまま戦わせてしまったら……カケルは心を無くしてしまう」
れいか「……そのようには見えませんでしたが」
コルーリ「それでも……です」
れいか「……少し浸かり過ぎてしまいましたね、そろそろ上がりましょうか」
れいかさんの言葉で私たちは湯舟から上がり、脱衣所へ移動する……その時。
……ガラガラ!
駆「……あれ?」
コルーリ「……へっ!?きゃあ!?」
れいか「……ッ!?」
な、何でカケルがここに!?い、いや!見ないで下さい!?
種『お兄ちゃんの記憶を!!!メモリブレイク~~~~~!!!!!』
駆「がっ!?……あれ?星が付いたり消えたりしてる……ぐぇっ!!!」
タネの声がQaウォッチから発せられると、いきなりカケルの左腕が動き出す。すると、その拳は見事に駆の顎を捉え……カケルの身体が空へ舞った。その後、カケルは床に頭から落ちると……どうやら気絶してしまったみたいだ……良かった。そう思った時、カケルは目を瞑ったまま身体を起こす。
種「いたた~……ふぅ~!大丈夫、二人共?」
コルーリ「タネ……ですか?あの……ありがとうございます」
種「いいよ!れいかちゃんもゴメンね……お兄ちゃん、わざと入ったんじゃないの!お部屋間違っちゃっただけだから……本当にごめんなさい!」
れいか「い……いえ、それはよろしいのですが。その……痛くないのですか?」
種「すっっっっっごく痛い!けど……お兄ちゃんに女の子の裸なんか見せたくないからね~」
タネは両手で目隠しをしながら、私たちの心配をしてくれる。種の咄嗟の判断で……本当に助かった。
種「じゃあ私、もう行くね……あっ!」
コルーリ「ど、どうしたんですか?」
種「……お兄ちゃんに任せきりで、お部屋の場所……わかんない」
れいか「あはは……でしたら今から着替えますので、少し待っていてください」
種「うん!ありがとう、れいかちゃん!……出来るだけ早くお願いね!」
私たちは素早く着替えると、廊下で待っていたタネと共にお部屋に戻った。
青木家 れいかの部屋
コルーリ「あの……タネ、カケルは?」
種「大丈夫!バッチリ寝てるよ!」
れいか「あの……あれは少しやり過ぎでは……」
種「平気平気!本当なら変身して殴ってやりたいの我慢してあげたんだもん!十分手加減だよ!」
コルーリ「……そうでしょうか?」
タネの言った通りなら、カケルは気絶しているらしい。つまり、今ここには女の子しかいない……それを分かってかタネは満面の笑みで口を開いた。
種「と、いう訳で!女の子だけのパジャマパーティー!!イエーイ!!!」
れいか・コルーリ「「い、いえ~い……」」
急遽タネによって始まったパジャマパーティー。タネは微笑んだままこれから何をしようかを考えている
種「それじゃあね……”恋バナ”をしよう!まずは……れいかちゃんから!どうぞ!!」
れいか「わ、私からですか?えっと……私はまだ人として未熟ですし、経験も少ないです。そもそも……殿方とその……手だって繋いだことがありませんし……///」
種「ん~~~~~!可愛い!!れいかちゃん、初心だね~!!!」
れいかさんは……確かにそう言った事の経験はないように感じる。
種「はいは~い!次は私ね!わ・た・し・は~……”お兄ちゃん”が好き~~~!!!きゃあ~~~!!!」
コルーリ「タネ、相変わらずですね。みらいさんの家にお泊りした時も、累さんのホテルの時もそう答えていましたし」
種「だって!ホントの事だも~ん!」
れいか「うふふっ!本当に仲がよろしいんですね」
種「もっちろん!私以上にお兄ちゃんが好きな子なんている訳ないよ!」
タネのカケル好きは相変わらずですね。それだけ二人が強く繋がっているからこそ”キュアシード”として戦っていけるのでしょう。……しかし、このままでは私に順番が回ってしまう……どうしましょう?
種「そうだ!私、気になってたことがあるんだ!」
コルーリ「気になっていた事?」
種「うん、お兄ちゃんが……どうしてマナちゃんを好きになったのか。変なんだよ、お兄ちゃんの好きな女の人の好みと全然違うんだもん」
れいか「駆君の……女性の好みですか?」
種「そう……おかしいんだよね。お兄ちゃんが”初めて好きになった人”と……全然違うのにさ……」
カケルが初めて好きになった人……カケルはマナさんが初めてではなかったんだ。それに……好きな女性の好みまであるなんて……少し以外の様な……複雑な感じがする。
コルーリ「タネ、カケルの女性の好みって……どんな人なんですか?」
種「あれ~!気になっちゃう?ふっふっふ……仕方ないな~!教えて進ぜよう!」
コルーリ・れいか「「……ごくりっ!」」
種「お兄ちゃんはね、”髪の長い”人が好きなんだ。その上、色にもこだわりがあるの!お兄ちゃんのお気に入りは”黒髪”!青みがかった黒とか、紫がかった黒でも良いんだけど……一番は何も混じらない”黒”なんだよ!」
コルーリ「……”黒髪”……ですか」
私はその話を聞きながら、自分の髪を弄る。
れいか「しかし、なぜそれほど”黒髪”がお好きなんですか?」
種「それは、お兄ちゃんが初めて好きになった人の影響だと思う。確か、黒い髪だったと思うし……」
コルーリ「……どんな人、だったんですか?」
種「えっとねえ……」
カケルが好きになった初めての人……一体、どんな人なのでしょう?
種「黒い髪をした笑顔の素敵な人で……」
コルーリ「はい……」
種「公務員で……」
れいか「公務員?成人された方なのですか?」
種「それから……」
カケルの初恋は”大人の女性”だったのですか……きっと素敵な人なんでしょうね。
種「結婚して子供がいる!”英志”って言ってね……」
コルーリ「ご結婚してるんですね……」
種「未来からお父さんの”泊 進ノ介”をやっつけに来るの!」
コルーリ「そうですか……未来から……”未来”!?」
種「そう!お兄ちゃんの初恋の相手は……仮面ライダードライブのヒロイン”詩島 霧子”さん!彼女を初めて見た時のお兄ちゃんは、もうすっごく可愛いかったんだから!でも、お兄ちゃん、”進ノ介さんには敵わない”って言ってすぐに諦めちゃったけどね~」
カケルがやよいさんと話していた”かめんらいだー”と言う特撮の登場人物……と言うことでしょうか?カケルの初恋は……大人の女性に憧れる、意外と子供らしい恋だったのですね。
種「あっ!それからね~……内緒だけど、お兄ちゃんは好きな体型があって……オヨッ!?」
駆『それ以上、しゃべるな』
コルーリ「カケル……起きたんですか?」
話そうとしたタネの口を塞いだのは……タネの左手。その手首に光る”Qaウォッチ”から聞こえるのは……信じられないほどの”怒り”が籠ったカケルの声だった。
駆『種……話していい事と、悪いことがあるよね?』
種「は……はい!」
駆『やられて嫌な事を人にやるなんて……ひどいよね?』
種「……はい」
駆『だから……僕も”種の秘密”を話そう……あの”お嫁さん事件”をね!!!』
カケルが”お嫁さん事件”と言うワードを口にした途端、タネの顔がみるみる赤くなっていく……一体、なんなんでしょう……お嫁さん事件とは?
駆『そう……あれは僕らがまだ4歳の時。僕の病室でのことだった……』
種「お兄ちゃん、言っちゃダメ~~~~~!!!」
駆『僕の両親と種がお見舞いに来た時に、種が自分の”夢”を教えてくれたんだ……”お嫁さんになりたい”って言う実に可愛らしい夢だったんだけどね……その”相手”が問題だった。その相手が……なんと”僕”でね、”いつかお兄ちゃんのお嫁さんになるの~!”ってそれはそれは元気に話してくれたんだよ』
種「や~め~~~て~~~~~!!!」
駆『それで僕が”兄妹じゃ結婚できないんだよ”って教えてあげたら……その後はもう大変!”お兄ちゃんのお嫁さんになれないなんてヤダ~~~!!!”って病院中に響く声で泣き出しちゃってね……それで患者さんは大混乱、転倒して怪我する人まで出した……これが、種の”お嫁さん事件”……ご清聴、ありがとうございました』
なんと言うか……とても可愛らしいお話で少しほっこりしてしまった。しかし、当事者のタネは身体をプルプルと振るわせ、両手で顔を隠して蹲っている。
種「お兄ちゃん酷い!無理やりお兄ちゃんに凌辱された!鬼畜!外道!!!」
駆『失礼だな、僕の事を勝手に話してたんだからお相子だよ』
種「お相子じゃな~い!もう怒った!こうなったら……お兄ちゃんに身体をベタベタ触られた時の事を話しちゃうんだから!」
駆『いや、あれ……僕が退院した後で一緒にお風呂に入って背中を流しただけの話だよ?」
種「ぐっ!?そ、それなら……えっと……」
その後、タネの話そうとする秘密は全てカケルの説明により看破され続け、パジャマパーティーの”恋バナ”改め、二人による”秘密暴露大会”は無事?終了した。これにより、何とか私の”恋バナ”は回避され……私の気持ちがカケルにバレる心配もなくなった。しかし、カケルの好みの体型とは……どんなものなのだろう?やはり……ハートフル王国の人達の様な”大きな胸部(脂肪)”が好きなのだろうか?……仕方ない、部屋に戻ったら”豊胸体操”をしよう……。
種「ん~~~!!!……ん?」
れいか「ん?種さん、私がどうかしました?」
タネはカケルに口論で勝てず床に畳に転がって悔しがっていると、視線がれいかさんを捉えた途端に、観察する様にじっとれいかさんを見つめる。
種「れいかちゃん、スタイル良いよね?」
れいか「えっ?そ、そうでしょうか?」
種「うん、程よく出てる所は出てて、引っ込む所は引っ込んでる……お兄ちゃん好みの体型」
駆『ッ!?……種!』
種「えっへっへ!お兄ちゃん、油断したね!」
つまりカケルの好みの体型は……程よく出ていて、程よく引き締まっている”真ん中位”が好きと言うことらしい。確かに、れいかさんは身長もそれなりにあり、タネが言ったように出ているところは出ているし、弓道やランニングなどスポーツもしていて引き締まっている……その上、髪もサラサラで素敵なロングヘアー……髪色を除けば、ほぼカケルの好きな女性像そのものだ。
れいか「……あ、あまり見ないで下さい///」
プルルンッ!
コルーリ「……いいな」
パジャマの上からでも分かる膨らみ……年相応の少女らしさの中に、これからより女性的に成長していく事が感じられる。”カケルの好みの女性像”に、”女性らしい身体”……全てを持っているれいかさんを見て、私は誰にも聞こえないくらい小さい声で……呟く。
駆『別に……全部揃っていればいいって訳じゃないから。それにロングヘアーって言っても”腰ぐらい”ある方が良いし、マナさんの時はそんなの関係なく好きになってたと……思うし……って何言ってるんだろう』
種「ホントにね……どうして好きになったんだろう?ま、今となっては”どうでもいい事”だよね」
駆『そうだね』
あれ?……何か今、違和感があったような……。
種「あ、もう遅いね!そろそろ寝ようか!コルーリ、今日は見逃してあげる……お兄ちゃんが起きちゃったからね~」
コルーリ「ッ!?……知ってたんですか?」
種「バレてないと思ってたの?コルーリ、意外とお間向けさんだな~!そういう所が可愛いけどね!」
駆『何の話してるの?』
タネは……私の気持ちを知っていた。それを分かっていて……カケルが起きるであろうことまで分かった上で私に話を振らなかったのだろうか?……タネは、私が今まで関わってきた限り、あまり頭が良い方ではない……そう思っていたが、もしかして……わざと”そのような性格”を演じているのでしょうか?
種「それじゃあ、お部屋に戻るね!お休み~!」
駆『おやすみなさい……コルーリ、行くよ』
コルーリ「は、はい。れいかさん、おやすみなさい」
れいか「はい、おやすみなさい」
私たちは、れいかさんのお部屋を後にすると私たちの客間に着く。カケル達は私の隣部屋に入り、私も自身の部屋に入った。
客間 コルーリの部屋
コルーリ「豊胸体操……終わり」
私は部屋に戻った後、日課のフェザーケアと豊胸体操を終わらせ布団に入る。
コルーリ「カケル……腰までの長さのある髪が好きなんだ……もっと伸ばそうかな。身体は……きっと、もうすぐ大きくなるし、後は……どうやって気を引いたら……良いんでしょうか?」
我ながら、任務以外になると上手くいかない。普通の女の子なら……どうするのだろう?MAB先生の本は……私にはハードルが高かったし、もっと簡単なのが良い。例えば……アクセサリーを付けるとか……そうだ!
コルーリ「ソリティアの店主さんに頂いた”指輪”……せっかくですし、少しつけてみましょうか」
私は左手に中指に指輪を付けてみる……サイズは問題ない、真ん中に光る虹色の宝石も美しいし、とても綺麗である。
コルーリ「素敵……初めて付けましたが、良く似合っているかもです……チュン?あれ、宝石が……!?」
私は驚いた。何故なら、私が付けた指輪に光る宝石がいきなり”黄色”の光を放ったからだ。
コルーリ「ど、どうして!?……あれ、光が消えた……何だったんでしょう?」
宝石の”黄色い光”は、少しすると消えてしまった。これは、どんな仕掛けなのだろう?別に私の身体に異常が出た訳でもないようだし……本当に何なんだろうか?それに、急に光るようでは……普通のアクセサリーとして付けることは出来ない。”悲しい”けど、この指輪は……あれ?
コルーリ「また……今度は”青色”に光ってる」
指輪は宝石を青色に光らせる。なぜこのような現象が起こるのかは分からないけれど……この青色を見ていると、少し”悲しい”気持ちになってしまう……”悲しい”?もしかして……。
コルーリ「もしかして、この指輪は”私の気持ち”に反応して光っているのでしょうか?」
もしそうだとしたら……。
コルーリ「例えば……カケルのバカ」
私はカケルが累さんの胸を鷲掴みにしていた時のことを思い出す。あの時に抱いていた”怒り”の気持ち……その感情をイメージした瞬間、宝石は”赤い”光を出した。
コルーリ「やっぱり……私の”感情”で光が変わる。変わった宝石ですね……少なくともこの世界の鉱石ではないようですし……一体、なんでしょうか?」
分からない……それに、これ以上ここで考えていても分からないことに変わりないだろうし……改めて調べてみよう。
コルーリ「指輪は外しましょう。……そろそろ、寝ないと……ですね」
私は、毛布を被け直し目を閉じる。そして、隣の部屋から抜け出していく物音に気付くことなく……私は夢の中へと落ちていった。
√ビューティ out……
いかがだったでしょうか?よくよく考えたら、れいかちゃんのおじいさんは”メビウス様”だし、私が初期から考えてたアカシック王国がプリキュアを作った理由とマッチしてるの忘れていましたよ。さあ、次回から待ちに待った29話です。次回は、駆と種、スマイルプリキュア達の前に現れるインペイルと……ジョーカー!そして、二人によって生み出されたゲンサークの姿は……駆!?ピンチの状況であるみんなの前に現れたのは、黒のリボンと衣装を纏う”彼女(プリキュア)”だった!乞うご期待ください!