ヴァールハイト・プリキュア   作:32期

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スイートプリキュア編、今回は駆達とスイートプリキュアのメンバーでチョットした観光をしてもらいたいと思います。って、言ってもほとんど学校だと思いますけどね……まあ、学校に待つあの”先輩方”との絡みもあります。では、お楽しみください!


第三十二話:謎の見学者?アリア学園に現れた美少年と美少女(えへへっ!美少女だって!!そんな事……あるけど~!!!)

加音町 北条家

 

side:駆

 

種『お……大きいお家だね』

 

駆「思い出したんだけど、名字が”北条”で”音楽”って言ったら……ヴァイオリニストの”北条 まりあ”さん、音楽家の”北条 団”さん、僕たちのいた2019年で響さんはピアニストだった……もっと早く思い出すべきだったよ」

 

 現在、僕たちヴァールハイト・プリキュアは響さんのご自宅の前にいる。今日を加音町の観光に当ててくれたスイートプリキュアさん達が集合場所をそこに設定した事、そして響さんのお父様が観光の際に立ち寄る”私立アリア学園中学校”の音楽教師をしているため、見学の許可をお願いするためと言うのが理由である。

 

旭「あっ!見て、あれ……奏ちゃん達みたいだよ」

 

コルーリ「皆さ~ん!こっちです!!」

 

奏「あっ!駆君、おはよう!!」

 

エレン「みんな、おはよう!早いわね……響はまだみたいだけど……」

 

アコ「響の事だから最悪……まだ寝てるんじゃないかしら」

 

 奏さん、エレンさん、アコちゃん……響さんを除く3人が揃い、一先ずこれで揃った事になる。さて……そろそろチャイムを押して響さんを呼ぼう。ただ……アコちゃん曰く、最悪まだ寝ているらしい……大丈夫だよね。

 

ピンポーン!

 

は~い!今行くよ~!!

 

響「いらっしゃい!みんな揃ってるね!!」

 

駆「おはようございます、響さん」

 

種『おはよう、響ちゃん!今日はよろしくね~!』

 

団「お~!いらっしゃい、南野さん!君が今回見学したいって言う男の子だね……名前を聞いてもいいかい?」

 

駆「はい、時生 駆と言います」

 

 チャイムを鳴らすと響さんが玄関からやってくる。そしてその後ろから響さんのお父様”北条 団”さんもやってきたため、僕は自己紹介をすると驚いたような顔をする……もしかして……!

 

団「……失礼かもしれないが、君は……”時生 進武”氏の親戚かい?」

 

駆「えっと……はい、一応は」

 

団「そうか!いや~!僕も進武さんには大変お世話になってね~!!妻もお世話になったほどだ!!」

 

駆「そうなんですか……」

 

種(おじいちゃん、そんなにすごい人だったんだ……)

 

 どうやら、おじいちゃんは音楽界ではよく知られた人みたいだ……しかし、団さんはその後に気になることを言う。

 

団「しかし、今はどうしているのか……君は知っているかい?十年ほど前に突如として音楽界から姿を消してしまったんだが……」

 

駆「十年前に……いなくなった?」

 

 おじいちゃんは、ずっと調律師していた訳ではないのか?十年前に何かあり、音楽界から消えてしまった……一体何があったんだ?

 

駆「あの……”時生 廻”は……」

 

団「ああ……そう言えば彼女も2005年を最後に目立った舞台には出ていないな。素晴らしいピアニストだったんだがね……」

 

駆「二人は……2005年に事故で……もう……いないんです」

 

団「……そうか。でも、君がいるじゃないか」

 

駆「えっ?」

 

 僕がいる……どういう事だ?

 

団「僕の目はごまかせないぞ~、君の顔は進武さんにそっくりだからね!……それにね、音楽は消えないんだよ。一度でも心に響いたら、それは誰かの”心”に残り、”世界”に残り、”歴史”に残る……素晴らしい音楽家の曲がそうであるようにね。人も一緒さ……自分達の生きた証、”子供”……”孫”……いろいろな形で残っていくだろう?進武さんと廻さんの息子さんである君が……その証なんだ」

 

駆「……僕が……生きた証?」

 

団「そうだとも……それではアリア学園で待っているよ~!素晴らしい学園だから、きっと君も音楽がもっと好きになるぞ~!それから、駆君のお友達……えっと……」

 

旭「麻琴 旭です」

 

コルーリ「コルーリと申します」

 

団「うん!君たちも待っているよ!それじゃあ、僕は今度の演奏会の練習を見てくるから!ではまた~!」

 

 団さんはそう言い残すと、どこかへいってしまった……多分、アリア学園と言う所で音楽隊の練習を見に行ったのだろう。でも……僕が”生きた証”か……どうなのだろう?おじいちゃんは僕が生まれる前にいないし、お父さんもお母さんも……僕をそんなふうに……思うだろうか?

 

響「駆君!」

 

駆「えっ?あ、はい……」

 

響「何ボーっとしてるの!さあ、私たちも出発するよ!」

 

奏「そうそう!せっかく観光するんだもん!時間が勿体ないわ!」

 

駆「は、はい!分かりました!」

 

 そうだ……今はそんな暗い事を考えてちゃいけない。せっかく皆さんが誘ってくれたんだ……楽しまないとな。

 

種『よ~し!それじゃあ……しゅっぱ~つ!!』

 

響・奏・エレン・ハミィ「「「「お~~~っ(ニャ)!!!」」」」

 

アコ「……子供っぽい」

 

コルーリ「あはは……そ、そんなことないですよ。い、いきます……お、お~~~!」

 

旭「うふふっ!お~~~♪ほら、駆君も」

 

駆「う、うん……おーーーっ!」

 

 何とも締まらないが……これより、僕たちの観光が始まる……何ともないと良いけどな。

 

 

加音町 ケーキ店〈Lucky Spoon(ラッキースプーン)〉

 

奏「はい!ここが私のお家!”Lucky Spoon(ラッキースプーン)”よ!」

 

アコ「……昨日来たからもう知ってるでしょ?」

 

奏太「おう、アコ!あっ!太陽マンの兄ちゃん!!」

 

アコ「ッ///!?そ、奏太っ///!」

 

駆「奏太君、昨日ぶりだね。僕があげた太陽マンの小説、気に入ってもらえた?」

 

 僕たちが最初に訪れたのは奏さんのお家、ケーキ屋さん”Lucky Spoon(ラッキースプーン)”。つい昨日訪れたばかりの場所なのだが……奏さん曰く、”観光名所と言っても差し支えない”そうだ。そして、やってきた僕らを出迎えてくれたのは、奏さんの弟である”南野 奏太”君。昨日訪れた時に太陽マンの話で盛り上がり、気に入られたので”太陽マンの兄ちゃん”と言う僕には大変喜ばしい呼び方をしてくれている。そう言ってくれたお礼に、スマイルプリキュアさんの時代で手に入れた”太陽マンの書籍”をプレゼントした。僕はもう内容を読んで覚えているし、せっかく太陽マンが好きならもっと好きになって欲しいからだ。それにしても……アコちゃん、奏太君は仲が良いな……いつか”お互いを大切に出来る関係”にでもなっていて欲しいものだ。

 

奏太「おう!テレビで見るのと違うところもあるし、それに本で読むって言うのも面白いよ!」

 

駆「そう思ってくれてよかった。これからも太陽マンと特撮を好きでいてね」

 

奏太「うん!そうだ!太陽マンの兄ちゃん、昨日やってた”旗を二本使った戦い方”をもう一回見せてくれよ!」

 

駆「う~ん……分かった!それじゃあ、持ってきてくれるかな?」

 

奏太「よっしゃ~!!」

 

 奏さんに何かを言われながら、奏太君は店の前にある”旗”を二本持ってくる。昨日、偶々奏太君がお店の旗を使って遊んでいたのを見た僕は”鎧武のカチドキアームズ”を思い出し、奏太君に見せてあげたのだ。どうやらそれが気に行ったみたいだが……あれ、結構疲れるんだよね……最近は体力ついてきたけど、基本的にスポーツが苦手なんだよな。

 

奏太「ほい!頼むぜ、兄ちゃん!」

 

駆「よし……いざ出陣!エイエイオー!!」

 

ブンッ!ブンッ!バシュッ!!

 

奏太「おお~!!すげ~~~!!!」

 

駆「はぁ……はぁ……そ、そう?よかった……」

 

種(お兄ちゃん、自分より小さい子に優しくし過ぎだよ)

 

駆(せっかく特撮が好きなら……これ位してあげないとさ……)

 

奏「駆君、大丈夫!?もう、奏太!駆君に無理をさせないの!!」

 

 怒る奏さんに、奏太君を怒らないように言う。実際、やると言ったのは僕なのもあるし……あまり責めないだあげて欲しい。

 

奏介「おお!駆君、いらっしゃいませ!」

 

駆「どうも、奏介さん。昨日に引き続きお邪魔します」

 

奏介「どうぞどうぞ!そうだ!今さっき新作を作ってみたんだが……君の意見を聞かせてくれないかな?」

 

駆「僕で良ければ喜んで!」

 

奏介「ありがとう!他のみんなも是非、感想を聞かせて欲しいな」

 

 僕たちに新作の味見をしてほしいと頼む奏介さん。実は、昨日訪れた際に名乗ったら、僕たちのお母さん”時生 果実”を知っていたため、親戚という事で誤魔化したのだ。この2011年はお母さんが”初めて世界のコンクールに入賞した年”と言うのもあるからか、同じパティシエの奏介さんもお母さんを知っていたのだろう。そのためか、”時生 果実”の親戚という事で味見を求められることになったのだ。昨日なんか、お店で提供する”全メニュー”を食べて長所、改善点、アレンジ案を提供した……たかが中学生の意見ではあるが、役に立ったのならよかったと思う。そして……今また食べることになるのだが……。

 

種(お兄ちゃん、任せて!私が美味しくいただくから!)

 

駆(僕も食べるよ。二人でやらないとだからね……その代わり、デザイン案の事は種に任せるよ。デザインは僕、あんまり得意じゃないからね)

 

種(ふっふっふ!お任せあれ!!)

 

 よし……やるか!!!

 

 

加音町 私立アリア学園中学校

 

コルーリ「ここが、響さん達が通う学校ですか」

 

旭「綺麗な学校だね。校門までの道に生えてたの”桜の木”だよね?きっと……春にはいっぱい咲くんだろうな」

 

 奏介さんの新作を食べ終えて、僕らは次の目的地”私立アリア学園中学校”へとやってきた。綺麗な校舎に、どこからか楽器の演奏が聞こえる……この音はピアノかな?……ん?響さんと奏さん、旭さんが桜の木について話始めると何かを考えだす……どうしたのだろう?

 

響「……”桜の木”か……あの時の事思い出すね、奏」

 

奏「そうね……でも、あの時の誤解もちゃんと解けて、今はこうやって響と一緒に笑っていられる。だから、もう大丈夫だよね、響」

 

エレン「今日は学校が休みだけど、部活で来ている生徒はいるみたいね!」

 

 エレンさんの言う通り、校内にはジャージやユニフォームを着た生徒が結構集まっている。スポーツとかも盛んなのかな?

 

奏「そうだ!駆君、今日私が入部してる”スイーツ部”の活動があってね……良かったら見ていかない?私も作る予定だから是非食べていって!私の気合のレシピみせてあげるから!!」

 

駆「スイーツ部ですか……分かりました。是非、寄っていきましょう!気合のレシピ……みせて下さい!」

 

響「その前に!パパの所へ行こうよ!演奏会の練習って言ってたから……多分、”王子隊”の練習だと思う」

 

駆・種・旭・コルーリ「『「「”王子隊”?」」』」

 

奏「えっ!?お、王子隊!?と、言う事は……今、”王子先輩”が///!?す、すぐに向かいましょう!!!」

 

 なんだ?急に奏さんのテンションが今までで一番変になった。響さんの言った”王子隊”、奏さんの言った”王子先輩”なる人と関係があるのだろうか?……まさか、”王子先輩の音楽隊”だから……”王子隊”なのか!?……奏さんのこのリアクションを見るに、相当人気なのかな?その”王子先輩”なる人は……。

 

種『……ねえ、あの制服がこの学校のやつなの?』

 

エレン「えっ?ええ、そうよ!」

 

アコ「……それがどうかしたの、種?」

 

 種が偶々見つけた女生徒の制服を見た途端、制服の話を始める。……何だろう、なんか嫌な予感がする。

 

種『かわいい……お兄ちゃん、あれ”着よう”!』

 

駆「……制服になれって事?いや……今、あれを”着よう”って言ったな。まさか……僕に女子用を着ろと?」

 

種『うん!それで、私が主導権もらって動かしたい!ねえ、いいでしょ~お兄ちゃん?』

 

駆「……いや、そんなこと出来る訳ないだろう。そもそも制服を用意できないし……」

 

種『プリキュアイテムで着替えられるアイテム出せば用意する手間ないし、お兄ちゃん、ドキドキ!プリキュアの時代でドレス着てたじゃん!お兄ちゃん、別に女物を着るのに抵抗ない癖に!!』

 

 いや、まあ抵抗はないけど……あれはあの部屋だけの格好で合って、今回は不特定多数が多すぎるんだ。どれだけの人の目に触れるか分からないんだぞ。

 

ハート(え~!勿体ないよ!駆君、あの時すっごく可愛かったのに!絶対着た方が良いよ!!)

 

ロゼッタ(そうですわね。あの時の姿、とっても可愛らしかったですわ!)

 

 やめて下さい、マナさん、ありすさん!それ以上言わないで下さい、お願いですから!!それと……ここぞとばかりに出て来ないで下さいよ!!!

 

種「とりゃっ!ふっふっふ……お兄ちゃん、心が乱れてるよ~!主導権、がら空きすぎだよ!」

 

駆(しまった!?やられた!!)

 

 いかん、マナさん達に気を取られてしまったから、主導権を奪われた!これは……ヤベーイ!!

 

種「それじゃあ……これ!!」〈プリチェンミラー…プリブート!〉

 

響「何それ……鏡?」

 

種「うっふっふ!まあ見てて!カードを重ねて……セット!」

 

かわルンルン!

 

種「じゃ~ん!どうかな、似合う?ウィッグもあったからロングヘアーなの!」

 

奏「な、な、な!?」

 

エレン「か、駆が女の子になっちゃった!?」

 

アコ「エレン、よく見なさい。体格はほとんど変わってないし、声も駆のまま……変わったのは見た目だけよ」

 

旭「ねえ……何で私も制服になってるの?」

 

 種のプリチェンミラーの使用により、見事に僕の身体にピッタリなサイズのアリア学園中学校の制服(女子生徒用)が着せられていた。それと、どうやら僕たちのプリチェンミラーの効果は”周囲”にも及ぶらしく、同じアカシックのプリキュアである旭さんも制服になっていた……ああ、もうメチャクチャだよ。

 

種「だって、せっかく知らない学校の制服になれるんだよ!それなら旭ちゃんも一緒に着替えた方が良いかなって思って!」

 

旭「そんな理由なんだ……駆君……」

 

駆『ん?何ですか、旭さん?』

 

旭「えっと……似合ってるかな、この制服?」

 

駆『……はい、良く似合ってますよ』

 

 まあ、旭さんの制服姿は良く似合っている。と、言うか……いい加減、音楽室に行かなくていいのかな?確か待ってるんじゃなかったっけかな、団さん……。

 

コルーリ「あの……着替えも済みましたし、そろそろ団さんの所に行った方が良いのではないでしょうか?」

 

響「そうだった!それじゃあ、音楽室まで案内するよ!みんな、付いてきて!あとハミィ、学校の中じゃ喋っちゃダメだよ!」

 

ハミィ「分かったニャ!任せてニャ!!」

 

種「よ~し!響ちゃん、お願いね!!」

 

駆(はあ……まあいいか、種……楽しそうだし)

 

 そんな訳で、僕は制服(女子生徒用)を身に着けたまま学校の中へと入っていった。

 

 

私立アリア学園中学校 音楽室

 

響「失礼します……あれ?王子先輩、パパはいないんですか?」

 

王子「やあ、響さん!北条先生なら、今席を外しているけど……ん?そちらの方は?見ない顔だけれど……」

 

種「初めまして!私、時生 種って言います!団さんに頼んで練習の見学に来ました!」

 

王子「そうなんだ!是非、見学していってね!それから君は……」

 

旭「麻琴 旭です……こちらはコルーリ。種ちゃんと同じで見学に来ました」

 

 音楽室に入ると、5名の男子生徒たちがそれぞれ楽器の前でいろいろ準備をしていた。その中で、響さんが呼んだ”王子先輩”と言う人はピアノ担当なのだろうか……ピアノを弾いている手を止めてわざわざこちらに来てくれた。……確かに、”王子様”って感じの人だな……あれ?なんか奏さんが変な動きをしている……よっぽど好きなんだな。

 

王子「おっと……まだ名乗っていなかったね。僕は”王子 政宗《おうじ まさむね》”、この”音楽王子隊”のリーダーをしているんだ。そしてメンバーの……」

 

博尺「僕は博尺《はくしゃく》です」

 

馬論「馬論《ばろん》です」

 

無戸「無戸《ないと》です」

 

貴志「貴志《きし》です」

 

 音楽王子隊……なんか皆さん、面白い名前だな。でも、”バロン”ねぇ……バナナアームズを使っていただきたいな……是非。

 

種「あの、王子先輩!早速なんですけど、演奏を聴かせてもらえませんか?」

 

王子「ああ、いいとも!皆、準備はいいかい?」

 

王子隊「「「「ああ!」」」」

 

王子「うん!では……」

 

 王子隊の演奏は実に素晴らしいものだった。あまり音楽に詳しい訳ではないが……とても調和が保たれた、バランスのいい音楽と言う感じがする。

 

奏「きゃあ~~~!!!王子先輩、流石です!!!」

 

王子「ありがとう、南野さん。でも……」

 

種「途中、三か所くらい音がズレてた……」

 

王子「ッ!?君……分かるのかい?」

 

種「うん!私、こう見えても耳が良いの!」

 

 そう、種は意外にも”耳”が良い。種は音の音域を判別できる……俗に言う”絶対音感”を持っているのだ……そのせいで良く僕は、”難聴”とバカにされる……”目”なら勝てるんだけどな……。

 

王子「そうなのかい?もしかして、何か楽器をしているのかな?」

 

種「う~ん……一応?」

 

王子「そうなんだ!どんな楽器をしているんだい?」

 

種「え~と……バイオリン……とか?」

 

王子「ヴァイオリン!?そうなんだ!よかったら……是非、聴いてみたいな」

 

 種……特に弾いたこともないのにバイオリンなんて言って……。まあ、僕だってバイオリンは少しだけしかしたことないけど……キバの影響でさ……。どうするんだ……丁重にお断りした方が……。

 

スカーレット(それでしたら、わたくしがお手伝いしましょうか?)

 

駆(トワさん?……手伝うってどうやって?)

 

スカーレット(わたくしが”駆の身体を使って”演奏します。普段、駆が種にしているのと同じ要領ですわ)

 

駆(……出来るんですか、そんなこと?)

 

スカーレット(駆、貴方に不可能はありませんわ。わたくしを……信じて下さい)

 

 何だか……とんでもないことになって来たな。でも……面白そうだ!それにトワさんの言葉を……疑う訳がない!

 

駆(種……主導権、こっちに渡してくれる?)

 

種(えっ?お兄ちゃん、まさかバイオリン弾くの?私、取り合えずそれっぽい事言っただけで断るつもりだったんだけど……あれ?お兄ちゃん、バイオリン弾けたっけ?確か、キバでバイオリンを見て学校にあった備品のやつ弾いたきりじゃなかったっけ?)

 

駆(いいから……取り合えず主導権を渡してくれ)

 

種(……分かった!お兄ちゃん、頑張ってね!!)

 

 そんな訳で、種から主導権を受け取った僕は王子先輩のオーダーに応えることにした。

 

駆「分かりました。では、バイオリンを取ってまいります……すぐ戻りますので、少々お待ちを……」

 

王子「あ、ああ……」

 

響「奏、種ちゃん、急におとなしくなったね」ヒソッ

 

奏「もしかして……今喋ったの……駆君!?」ヒソッ

 

エレン「バイオリンなんて持ってきてなかったわよ?どうするのかしら?」ヒソッ

 

 音楽室の外に出て、僕はQaフォーンの”プリキュアイテムアプリ”を起動する。そして……”スカーレットバイオリン”をタップしてプリブートし、音楽室に戻る。

 

駆「お待たせしました」

 

アコ「あれ……確か昨日、駆が出してた……」

 

駆「では……」

 

 そうだ……せっかくバイオリンを弾くなら……。

 

駆(トワさん……)

 

スカーレット(ん?何ですか、駆?)

 

駆(ちょっと言って欲しい言葉があるんですけど……)

 

 言ってみたいセリフがあるんだよな……。それじゃあ……トワさん、お願いします!

 

駆(トワ)「コホンッ……わたくしの演奏は一曲10億ドルですわ」

 

王子「えっ?」

 

王子隊「「「「えっ?」」」」

 

響・奏・エレン・アコ「「「「えっ?」」」」

 

コルーリ・旭「「えっ?」」

 

駆(……バッチリです!)

 

 そんな感じで……トワさんに身体を動かしてもらって演奏を開始した。ただ、この感覚は種に主導権を渡すのとは違う……僕の意識とトワさんの意識が同時に身体を動かしているような……種に完全に肉体の制御を渡すのとは違って、僕が弾いてるんだけど、トワさんが本当は弾いている……複雑な状態だとしか表現できない。しかし、別に嫌な感覚ではない……むしろ、心地よいと言うか、温かいと言うか……なんと言うか……悪くない。

 

駆(トワ)「ふう……」

 

スカーレット(駆、終わりましたわ)

 

駆(とても素敵な演奏でした……今度は本当にまた会えた時にでも……)

 

スカーレット(うふふっ……ええ、楽しみにしておきますわ。また何かあれば……いつでも手を貸しますわね、駆)

 

駆「……ありがとう、トワさん」ボソッ

 

 心の中にいるトワさんにお礼を言う。そして、ゆっくりと正面を向くと……皆、まるで止まったような静寂を作り出している。そんな中、最初に音を出したのは”王子先輩”だった。

 

王子「素晴らしいよ!君の様なヴァイオリニストがいたなんて!!まるで……まりあさんの再来の様だ!!!」

 

駆「ふふっ!……ありがとうございます、王子先輩」

 

王子「ッ///!?」

 

 どうやらトワさんの演奏は、あのヴァイオリニスト”北条 まりあ”さんの演奏に匹敵するらしい……それだけ素晴らしいという事なんだろう……良かった。

 

種(お兄ちゃん!すごいよ!!いつの間にあんなに演奏できるようになったの?)

 

駆(……えっと、トワさんに弾いてもらったんだ。種は、僕以外が身体を動かしてるの……分かった?)

 

種(えっ?お兄ちゃん、またそんなこと言って……本当に大丈夫?私の感覚だとお兄ちゃんが身体を動かしてるのと変わらなかったよ)

 

駆(そっか……やっぱり分からないのか)

 

 やはり……どうやっても種に、僕の中にいるプリキュアさん達を”認識できない”みたいだ。心配させるわけにはいかないし……戻ったらもう一回メディカルチェックを受けて、今回以降はこれ以上の事を話さないようにするか……。

 

駆「あっ……そろそろスイーツ部の見学に行かないと……すみません、私はこれで失礼します。行きましょう、皆さん」

 

響「えっ!?う、うん!行こう!!」

 

王子「ま、待って!」

 

駆「すみません、急いでいますので……王子先輩、素敵な演奏……ありがとうございました。演奏会、楽しみにしています」

 

王子「ッ///!?ま、待って、時生さん!!」

 

 僕たちは王子先輩の静止を振り切って、音楽室を後にする。なんでだろう……奏さんがすごい複雑そうな表情をしている……王子先輩達の演奏、もっと聞きたかったのかな?

 

 

side:王子

 

王子「……時生さん」

 

団「皆、待たせてしまったね……どうしたんだい、王子君?」

 

王子「北条先生……あの、時生さんは……」

 

団「ああ!何だもう行ってしまったのかい?どうだった、音楽を気に入ってくれていたかい?」

 

王子「北条先生、時生さんは……天才でした。まりあさんに匹敵すると言って良い程のテクニック……僕も演奏が終わるまで、呼吸を出来ていたか分からない程に……聴き惚れてしまいました」

 

 そう……あのヴァイオリンの音色から伝わる迫力、繊細さ、そして響き……その全てに僕は聴き惚れてしまった。いや、それだけではない……彼女にも美しさにも見惚れてしまった。

 

団「そうか!やはり……素晴らしい音楽を愛する人達の子供だ!是非、僕も聴いてみたかったよ……」

 

王子「はい……北条先生、指導をお願いします!あの演奏に……追いつきたいんです!」

 

団「それ程すごかったのかい?よし、では練習を再開する!楽器を用意したまえ。」

 

王子隊「「「「はい!」」」」

 

王子「はい!」

 

 きっと、この演奏を素晴らしいものにしてみせる。そして……君に相応しい音を奏でられるようになって、そして君と……もう一度……!

 

 

私立アリア学園中学校 調理実習室

 

side:駆

 

駆「はあ……やっぱり、男性用の制服の方が落ち着くよ」

 

種『勿体ないな~……お兄ちゃん、可愛かったのに』

 

 僕はあの後、再びプリチェンミラーを使って新たに男性生徒用の制服に着替え直した。いや、流石にあのままって訳にはいかないし……それに……。

 

奏「王子先輩が顔を赤くしてた……もしかして……!?い、いいえ!そんな訳……そんな訳ないわ!!」

 

 奏さんが色々、すごいことになってしまっているからだ。とても正常という事の出来ない状態だし……それにここまでくる間も、”駆君が、私よりかわいい……王子先輩が、王子先輩がっ!!”とかずっと呟いていたのだ……だから女子用制服でいない方が良いと判断した。

 

響「あっ、着いたよ!……もう!奏、しっかりしてよ!!」

 

奏「はっ!あ、あれ?ここ……もう調理実習室に着いたの!?いつの間に……」

 

アコ「奏がずっと呟いてる間に着いたのよ……はあ……くだらない」

 

奏「くだらなくない!だって……王子先輩がっ!!」

 

ハミィ「また始まったニャ……」

 

 まあ……多分、大丈夫だろう。取り合えず目的地にも着いたし、早速お邪魔しよう。

 

聖歌「あら……南野さん、遅かったわね。まあ、お客さんもいるのね……スイーツ部へようこそ。私は部長の”東山 聖歌”よ」

 

駆「どうも……見学に来ました、時生 駆です。それから友人の……」

 

旭「麻琴 旭です」

 

コルーリ「コルーリと申します」

 

聖歌「”時生”……もしかして、パティシエの”時生 果実”さんの関係者の方?」

 

 やはりスイーツ部と言うだけあって、お母さんの事は知っているか……上手く誤魔化さないと。

 

駆「ええ、正確には親戚のお嫁さんって感じですけど……旧姓は”古城”ですし……」

 

聖歌「そうなんですか……そうだわ!これからケーキを焼くのだけど、良かったら一緒にいかがですか?」

 

響「えっ!?駆君……ケーキ焼けるの?」

 

駆「焼けますよ……そうですね、分かりました。僕も参加させてもらいますね!コルーリ、上着を持っててくれる?」

 

コルーリ「は、はい!」

 

 僕は制服の上着を脱ぎ、コルーリに渡すとエプロンを身に着ける。そしてテーブルに用意された食材を確認する……新鮮な果物に缶詰タイプもある、バターは……結構、高級なものもあるんだな……うん、決まった!

 

駆「作るスイーツは決まりました。……あの、奏さん、そろそろ準備してください。気合のレシピ見せてくれるんじゃなかったんですか?」

 

奏「えっ!?あ、駆君……って、エプロン姿!?……素敵……!」

 

駆「はあ……それでは、始めましょうか」

 

 こうして、僕とスイーツ部の調理が始まった。

 

聖歌「時生君は、何を作る予定なの?」

 

駆「せっかく新鮮な苺が沢山あるので、”イチゴのタルト”を作ろうかと……ミルフィーユも考えたんですけど、苺をいっぱい使いたかったので……」

 

聖歌「へえ……結構作り慣れているんですね」

 

駆「ええ……妹の注文が多いもので……」

 

種(む~~~!お兄ちゃん、私そんなに注文してないよ!!)

 

 いや、特大ホールケーキとか、特大シュークリームとか、難しい物ばかりなんだよ……結構大変なんだぞ、大きくするのって……材料の配分を考えたりしないといけないし……。

 

ホイップ(駆君がスイーツを一から作るの……見るの初めてだね!)

 

カスタード(タルトは生地だけでも種類がありますし、駆さんはどの生地を選ぶんでしょうか?)

 

パルフェ(そうね……フルーツ系のタルトなら”パート・シュクレ(練りパイ)”かしら?それともサクサクの食感を出す”フィユタージュ(折りパイ)”……どっちかしらね?)

 

 それについては、もう決まっている……幸い、まだ午前中だし時間はある……良いバターもあるし……”あれ”をしてもいいだろう。

 

部員1「……ん?せ、聖歌先輩!時生さんの”あれ”……何ですか!?」

 

聖歌「えっ?……それって……!」

 

奏「嘘っ!?バターで生地を包んでる!?」

 

 今回僕が使う生地は”フィユタージュ”と言う所謂、”折りパイ”と言うもので、主に”生地でバターを包んで”少しずつ伸ばして作る物なのだが、僕がやってるのはその”逆”……”バターで生地を包んで”伸ばしていくと言うものだ。

 

聖歌「……”フィユタージュ・アンヴェルセ(逆さ折りパイ)”。通常の折りパイとは違い、バターで生地を包んで伸ばすから、生地とバターの層が逆になる……それによってバターの風味が強くなり、食感も更にサクサクになると言うものよ……どうしてその技術を?」

 

駆「ただのバターでこれをやると、しつこい出来になってしまうんですけど……良いバターがあったので……それに時間もありますから、しっかり休ませながら作れますしね」

 

 フィユタージュ・アンヴェルセはバターが溶けてしまっては意味がない。なので、一工程が合わる度に生地を休ませて、温度管理が必要なのだ。特に難しい包む工程も、氷水で自分の手を冷やし、体温を下げることで何とか終わっている……あと三回くらい生地を伸ばしたら生地を休ませないとな。

 

奏「すごい……駆君、そんなこと出来たんだ」

 

駆「スイーツの教本を良く読み漁ったもので……それにせっかく食べてもらうので、僕も気合のレシピを見せようかと思いまして……」

 

種(お兄ちゃん!がんばれ~!!ここで作り切らないと男が廃るよ~!!)

 

ジェラート(お~し!駆、がんばれよ!!あたし達も応援するからな~!!)

 

マカロン(うふふっ!駆、あなたの実力……見せてあげなさい)

 

ショコラ(おっ!駆君、そろそろ休ませた方が良いんじゃないかな?)

 

 僕は生地を冷蔵庫の中へ入れ寝かせる。さて……次までの時間で出来ることを考えようかな。

 

 

……数時間後

 

駆「……出来上がりです」

 

部員1「な、なにこれ!?」

 

聖歌「これが……イチゴのタルト!?」

 

奏「嘘でしょ!?イチゴが……宝石みたいに輝いてる!ど、どんな方法を使ったの?」

 

駆「えっと……生地を休ませる時間があったので、何か果物にも工夫しようかなと思いまして……ハチミツ漬けにしてみました。まあ、それだけだとつまらないので、ハチミツにイチゴをすり潰して色を付けてみたんです。そうすることで、元々の色がさらに濃くなり、ハチミツの光沢でさらに輝くって寸法です」

 

 こう言った一工夫をすることで、料理やスイーツはより一層輝く……これは僕個人の感想だけど、それは美味しい料理で人を喜ばせる時の基本の様なものだと考えている。

 

聖歌・奏・部員一同「「「・・・・・・」」」

 

駆「まあ、味は良いと思うので……どうぞ、召し上がってください!」

 

 そう言うと、僕は自分が作ったタルトを切ろうと包丁に取り、切り始めようすると……。

 

部員1「あっ!?勿体ない!!あ、あの写真!!写真を撮ります!!」

 

部員2「私、デジカメを取ってくる!!時生さん、まだ……まだ切らないで下さい!!」

 

部員3「あ、あの……こちらのノートにレシピを頂けないでしょうか?」

 

駆「……あの、出来たてを食べて欲しいんですけど……」

 

部員一同「「「ダメですっ!!!」」」

 

 と、いう訳で……僕のタルトは写真を撮られ、僕はレシピを絶賛書き込んでいる……あの、本当に早く食べて欲しいんですけど……。ふう……書き終わった!写真も終わってる!それでは……切りますよ!!せいっ!!!よし……では、取り分けてっと……。

 

駆「では……どうぞ、お召し上がりください!!」

 

響「いっただっきま―――す!はむっ……っ!?おいしーーー!!!」

 

エレン「響、大げさよ!そんなに美味しい訳……はむっ……っ!?美味しいわ、これ!!」

 

アコ「……はむっ……美味しい!」

 

種(うっふっふ!お兄ちゃんに掛かれば、これくらい朝飯前だよ!!……あ、お兄ちゃん、私の分は取っておいてくれた?)

 

 種の分は僕の前にある僕の分として置いてあるから、大丈夫。……と、言うかスイーツ部の面々、一向に動かないんだけど……どうしたのだろう?

 

部員1「お、美味しい……!」

 

部員2「私たちが作ったスイーツより……圧倒的に美味しい!」

 

部員3「奏以上……もしかしたら、聖歌先輩以上かも……」

 

奏「……美味しい。カッコよくて、スイーツも作れて、音楽まで……はっ!だ、だめよ!私には王子先輩がっ!!……でも///……きゃあ~~~!ダメ~~~!!私のために争わないで~~~~~!!!!!」

 

種(奏ちゃん、トリップしてる……大丈夫かな?)

 

 ど、どうかな?……ん?聖歌先輩……どうしたんだろう?一口食べてから黙ったままだ……もしかして、不味かったのかな?

 

駆「あの……聖歌先輩?」

 

聖歌「……美味しい」

 

駆「えっ?」

 

聖歌「とても美味しいわ……すごいのね、時生君」

 

駆「それならよかったです!えっと……これが聖歌先輩のですよね……いただきます」

 

 僕は聖歌先輩の作ったシンプルなショートケーキを食べ始める。スポンジのふんわり感にクリームのまったり感が見事にベストマッチしていて、果物は……白桃かな?ん?待てよ……良く味わってみたらクリームにも白桃の風味がある。クリームにも一工夫入れているとは……しかも、味の統一感を守っており、バランスも申し分ない……なるほど、流石スイーツ部の部長と言うだけあるな。

 

駆「美味しいです、聖歌先輩のケーキ。全体の味がしっかりとまとまっている……そして何より、デザインが良いです。クリームの絞り方、ヘラを使った細かい模様、チョコレートや溶かした飴を使った装飾……これに関しては”僕”では出来ないですね……さすがです」

 

聖歌「うふふっ……お褒めに預かり光栄だわ」

 

部員1「あ、あの……私のも食べて下さい!」

 

奏「あっ!か、駆君!わ、私のも食べてみて!!」

 

響「あ、私も食べる~~~!!!」

 

 と、いう訳で……楽しいケーキ作りは無事に終了。そろそろ学校の外の観光に行かなくては、時間が無くなってしまう……それにしても、ネツゾーンが全くと言って良いほど動いてこない……何だろう、この嫌な感じは……。

 

聖歌「素晴らしいスイーツをありがとう、時生君。あなたは立派なパティシエになれるわ」

 

駆「聖歌先輩のスイーツもとても素晴らしかったです……先輩も素晴らしいパティシエですよ」

 

聖歌「ッ///!?あ……ありがとう///」

 

奏「なっ!?ま、まさか……聖歌先輩までっ!?」

 

駆「えっと……では、失礼しました」

 

 スイーツ部の皆さんにご挨拶をして調理実習室を後にする僕たち。それから……奏さんが言っている事について、何が聖歌先輩までなのだろうか?……僕、何かしたかな?

 

種(お兄ちゃん……相変わらずそういう所だよ)

 

駆(なんだよ……そういう所って……)

 

種(知らない!ふんっ!!)

 

駆(なんだよ……もう……)

 

 

side:聖歌

 

聖歌「時生……駆…君///」

 

 不思議な魅力を持った少年だった。勿論、一人のパティシエとしての腕も申し分ないし、それに変ね……私、年下の男の子にこんなにドキドキするなんて……私らしくないわね。

 

部員1「聖歌先輩……どうしたんですか?」

 

部員2「なんか……時生さんが帰ってからあんな感じなの」

 

部員3「もしかして……一目惚れ!?」

 

部員一同「「「きゃあ~~~///!!!」」」

 

 まったく……女の子はこういうお話が大好きなんだから、うふふっ!

 

聖歌「はい!皆、お片付けするわよ!無駄話はしないの!!」

 

部員一同「「「は、はい!すみません!」」」

 

 そうね……また会えるかしら、”駆君”?もし会えたなら……その時はもっと素晴らしいスイーツを御馳走してあげるわね!

 

 

加音町 広場

 

side:種

 

駆『ねえ、種……いい加減なんで怒ってるのか教えてくれない?』

 

種「知らな~い!お兄ちゃん、自分で考えたら~!」

 

 全く……お兄ちゃんは鈍感さんで困る。そういう所がいけないんだから……いつか私がしっかり……ううん、この旅の間に直してあげないとね。

 

♪~~~♪~~~~~!♪~♪~♪~~~~~!!!

 

種「ん?なんか綺麗な音が聞こえる……何の音?」

 

エレン「ああ、時計塔の音よ!」

 

アコ「人形仕掛けがあって、時報としてそれが鳴るのよ」

 

コルーリ「時計塔……あれでしょうか?」

 

旭「そうみたいね……あれが人形仕掛けかしら?ふふっ!結構可愛いね」

 

 とても楽しい音楽の音色……なんだか心もポカポカするな~!……ん?

 

Ah~Ah~AhAhAhAh~Ah~~~!Ah~Ah~~AhAhAhAh~~~Ah~~~~~!

 

種「何……この身体の奥がぞわってする歌!?」

 

ハミィ「”不幸のメロディ”ニャ!でも……誰の声ニャ?トリオ・ザ・マイナーの声じゃないニャ」

 

 不幸のメロディと言う歌が聞こえてきた途端、周りにいた人たちが一気に倒れだす。ハミィが言うトリオ・ザ・マイナーって言うのは知らないけど……この”女性の声”……聞いたことある!この声は……!

 

種「マーネルッ!どこにいるの!!」

 

マーネル「あら……よく分かったわね、キュアシード!!」

 

響「あの女の子は!」

 

奏「昨日、私たちを襲おうとした……ネツゾーンの!」

 

エレン「何で彼女が、不幸のメロディを歌えるの!?」

 

 確かに……このメロディって、マイナーランドのやつらが音符を集めて作ろうとしてるって奴なんだよね?なのに……何で歌えるの?

 

マーネル「ふふふっ!その答えは……これよ!」

 

アコ「あ、あれは……!」

 

響・奏・エレン・アコ「「「「伝説の楽譜!?」」」」

 

マーネル「大せいか~い!!ちょっとマイナーランドのやつらに借りちゃった♪それから……!」

 

ピ~~~~~!!!

 

アコ「っ!?ピーちゃんっ!!ピーちゃんを離して!!!」

 

マーネル「だ~め♪この子はこれから使うんだから……」

 

種「っ!!さっさと離しなさいよ、この性悪誘拐腰抜けどチビ!!!」

 

マーネル「……安心しろよ、キュアシ~ド……てめえだけは、ここで絶対に消してやるっっっ!!!!!」

 

 マーネルが怒声を挙げた途端、強い衝撃が発生する。しかもそれだけではない……陰で隠れていたフェアリートーンたちが、マーネルの所へと引っ張られて行ってしまった。

 

マーネル「うふふっ!ちょっと借りるわよ~!」

 

フェアリートーン「「「「「「「「わ~~~~!!」」」」」」」」

 

ハミィ「フェアリートーン!あっ!音符が全部取られちゃったニャ!」

 

 嘘!?今、スイートプリキュアさん達が持ってる音符……全部取られちゃったの!?

 

マーネル『それじゃあ、いくわよ!!!いでよ!ネガトーーーーーン!!!』

 

ネガトーン『ネガトーーーン!!!』

 

 さっき見せてきた伝説の楽譜に手足が生えたみたいなネガトーン生まれる。まさか……これをガンサークにするの!?

 

駆『いや……前回の時代で、マーネルは……”あいつ”を持っている!』

 

種「っ!?」

 

マーネル「その通り……デリート!!!」

 

デリート『キャハハハハッ!!!デリ~~~~~~ト!!!!!』バクッ!

 

旭「やっぱり……いるよね」

 

 デリート……あれがいるってことは、ガンサークじゃなくて……あっちが来る!

 

マーネル「それから、この子も……」

 

ピ~~~!!ピ~~~~~!!!

 

アコ「ッ!?やめて……!」

 

マーネル「止めない♪……デリ~ト!」

 

デリート『デリ~~~ト!!!』バクッ!

 

アコ「ピーちゃんっ!!!」

 

種「酷い……なんてことするの!!!」

 

 酷いよ……アコちゃんのお友達を、まだ小さい小鳥を……!!!

 

マーネル『スイートプリキュア♪の歴史を真似て、奪って……消し去りなさい!ゲンサーク!!!』

 

デリート『ン~~~~~!!!……ベッ!!』

 

ゲンサーク?『・・・・・・』

 

 デリートが吐き出したゲンサークは、黒い鳥?みたいだけど……どこか人間みたいにも見える。それに……分かる。あのゲンサーク……バットエンドシードと同じかそれ以上かもしれない!

 

ノイズG『私は……ノイズゲンサーク、世界を静寂に導く者だ』

 

響「あ、あれが……ノイズ?」

 

奏「し、知らないわよ。でも……どうにかしないと!」

 

エレン「ええ!変身し……あれ?そんな……嘘でしょう!?」

 

アコ「モジューレが……ない!?」

 

 もしかして……今回もマーネル、プリキュアさん達のアイテムを消したの!?

 

マーネル「やはり、伝説の楽譜の存在を消せば……ハートのト音記号も消えるか……大正解ね!」

 

ノイズG『……うるさいぞ』

 

マーネル「えっ?があああああああああっ!!!!そんな……何故……?」バタンッ!

 

 ノイズゲンサークと名乗るゲンサークが、”うるさい”と言った瞬間……マーネルに黒い雷が降り注ぐ。そして、その一撃を喰らったマーネルは気を失ってしまったようだ。

 

ノイズG『う~ん……すがすがしい気分だ。まさかこのような形で進化もできるとは……素晴らしい!』

 

駆『何でノイズが出てくるんだ?……不幸のメロディと音符に、あと鳥かな……それが偶々ノイズを形成する要素として作用したのか?』

 

ノイズG『ふむ……まあ、そんなところだ。では……お前たちうるさいプリキュア達には消えてもらおうか?』

 

種「ッ!?皆、下がって!ここは……私たちが何とかするから!!」

 

旭「今まで以上の強敵……みたいだね」

 

 ここで止めないと、きっと大変なことになる!だから……!

 

種「お兄ちゃん!」

 

駆『分かってる……コルーリ、みんなと隠れていて!種、アストラル・シードでいくしかない……やるよ!』

 

種「おっけー!お兄ちゃん、旭ちゃん……いくよ!!!」

 

駆・旭『「うん!」』

 

 私たちは、QaフォーンとAqフォーンを取り出す。絶対この町を、音楽が大好きなみんながいる町を、おじいちゃんとおばあちゃんの思い出がある町を……静寂なんかにさせないんだから!!!

 

 

To Be Continued……




いかがだったでしょうか?スイーツ部の部分で駆が使った”フィユタージュ・アンヴェルセ”と言う技術ですが、なんと”思い出のミルフィーユ”で、シエルがミルフィーユを作る際に使った技術でもあります。セリフの中にしっかりと言ったシーンもありますので、気になった方は映画を見返してみてはいかがでしょうか?ちょっとスイーツの描写に力入れ過ぎましたかね……まあいいか!次回は、ノイズゲンサークとの戦いが始まり、苦戦するヴァールハイト・プリキュア!そんな中、キュアシードはノイズゲンサークに飲み込まれてしまう!その中で見たものは、”悲しみ”……しかし、その体内で見つけた楽譜の中から……輝くハートが現れる!乞うご期待ください!

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