ヴァールハイト・プリキュア   作:32期

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アカシック王国編、今回は駆視点での三日間、そして……襲撃してきたネツゾーンへと向かっていきます。駆が決めた覚悟とは……?では、お楽しみください!

12月15日は、キュアスカーレットこと”紅城トワ”、本名”プリンセス・ホープ・ディライト・トワ”ちゃんの誕生日でした!私の本編でも、結構大事な役目を与えたことから分かるように、ゴープリの中でも大好きなキャラです!キリッと決めるところや、高貴な部分もあるけれど、時折……いや、結構な頻度で見せていた天然っぷりも可愛い!!!個人的には咎ったお耳なんか最高ですよ!!!……いかん、話が逸れてしまう!では改めて……トワちゃん、誕生日おめでとう!


第四十話:さようなら。心と……身体と……

5月13日 駆・コルーリの部屋〈寝室〉

 

side:駆

 

駆「僕が戦える可能性……か」

 

 僕はアカシック女王によって与えられた……”コルーリと一緒に暮らすための部屋”の寝室で、この二日間の出来事を思い出していた。その一つが……僕にはまだ”戦える可能性”があると言うものだ。それは……コルーリとの結婚を表面上は承認した、アカシック女王への謁見が終了した後に……クアライト博士が僕の耳元で告げた言葉だった。

 

 

三日前……”5月10日” 

 

クアライト『カケル……君にはまだ戦える可能性がある……』ボソッ

 

 この言葉が……僕にとっては希望だった。Aqライトしか残っていないと思っていた僕に与えられた……最後の道……その言葉を聞いた僕は、もうその事で頭がいっぱいだった。クアライト博士は、”詳しくは明日……研究室で話す”と言ったため、僕は……早く明日になって欲しいと願ったほどだ。しかし……明日になる前に、コルーリにどうしても聞かなければいけない事がある。コルーリはどうして……あんな自分を犠牲にするような”嘘”をついたのか……それだけは、ハッキリしたかった。どうして”僕なんかのために、こんな事をしたのか”?僕の事を”信じてなんかいない”のに……あんなことをしたのかを……僕らが”マウティ”と言う雌鳥の妖精に案内されて連れて来られた部屋で問い詰めた。

 

駆『……コルーリ、どうしてあんなこと言ったの?あの場を誤魔化すためとはいえさ……自分を犠牲にした嘘なんて……!』

 

コルーリ『……私は、事実しか言っていません』

 

駆『コルーリ……ッ!』

 

コルーリ『私は……嘘をつきません!カイザーンみたいに……カケルを騙したりしません!!あの時言ったことが、私の真実ですっ!!!カケル……私を……信じてくれないんですか?』

 

 コルーリに返された言葉。それは……”僕を信じている事”と言う”真実”を何よりも感じる言葉だった。でも、それと同時に……僕がそんなコルーリの事を”信じていない事”を浮き彫りにしてしまうものでもあった。僕はその言葉から逃げて、答えられなかった。信じたいけど、信じられない自分の愚かさ……それによって……僕は”プリキュアさん達との絆”すら手放してしまった。そんな”愚か者”な僕は……コルーリに”信じている”と言う……それだけの言葉すら、言い切れる自信がなかったんだ。

 

 

二日前……”5月11日” アカシック城〈研究室〉

 

 翌日、クアライト博士と予定していた”僕が戦える可能性”についての説明を受けるために、クアライト博士の研究室へやって来た。僕に何が残っているのか……それが知りたいと思う僕は、クアライト博士に食い気味に問いかける。

 

駆『クアライト博士、教えて下さい!”僕の戦える可能性”って……一体、何なんですか?』

 

クアライト『そんなに焦る事はないクア……この画面を見てくれクア』

 

 僕の前に出て来たディスプレイに映るのは……何だ?丸の中に……少しだけ”青”のグラフの様なものがある。なんと言うか……”グラスの中に溜まった液体”の様な風に見えるが……しかも、本当に青い部分が少ない。馬鹿みたいに大きなグラスに、水が”一滴”あるかないか位しかないのだ……これが一体、何だと言うのだろう?

 

駆『これは……何ですか?』

 

クアライト『それが……君の”Qaフィール”クア』

 

 ”Qaフィール”……Qaライトの最大使用限度の事だよね?あれ……?でも、僕のQaライトは”0”だから……Qaフィールはないはずなのに……何でそれがあるんだ?

 

クアライト『今まで、直接の検査をしていなかったため分からなかったクアが……それが本来の君の”Qaフィール”クア。単純なQaライトの使用限度は……特異点の50倍に相当するQaライトを所有していたタネのQaライトを容易に許容できる。結論から言えば……”全時空”に存在する生命体のQaライトを”全て”許容できる事になるクア』

 

駆『ちょっと待って下さい!?検査はコルーリが何回もしてくれていたんですよ!?どうしてそれで……こんな結果になるんですか?』

 

クアライト『……Qaフィールは、個人が持つQaライトの総量を計算して割り出すクア。君の場合はQaフィールの許容量が大きすぎるあまり、Qaライトの総量が小さすぎる……そのせいで”0”と言う結果になったようクア。それに加え、君の”Qaライト”には少し面倒な事が起きているクア』

 

駆『面倒な事……?』

 

クアライト『……そのディスプレイに映っている球体が”Qaフィール”、その中に溜まっている青色のグラフが”Qaライト”クア。カケル、君のQaライト総量は……本来ならその量ではないのだ。もう少しグラフとしても溜まっているはずなのだ』

 

 どう言う事?つまり……僕のQaライトがなんらかの理由で、元の量よりも”少なくなっている”って事か?何故、そのような事になっているんだ?

 

クアライト『カケル……君は、Qaライトに性質がある事は知っているクアね』

 

駆『は、はい……スーパーQaライトの時に言っていた”膨張”とかの話ですよね?男性の特性が”凝縮”だと気が付いて、アストラル・シードの改善に使いました』

 

クアライト『そう……その男性Qaライトの特性である”凝縮”が原因なんだクア』

 

駆『……えっ?』

 

クアライト『君のQaライトには、異常なほどの”凝縮”特性がかかってしまっているクア。そのせいで、Qaライト総量に見合わない程に凝縮されてしまい……Qaフォーンが変身に使用するQaライトを下回ってしまうのだ。そのうえ、大きすぎるQaフィールにも問題がある。Qaフォーンは変身アプリを起動する際に、Qaフィールを基準として、使用者である特異点の”Qaライト出力”を割り出す……君の場合は、”極端に凝縮されたQaライト”と”常軌を逸したQaフィール”によって、Qaライト出力が割り出せない……つまり、プリキュアプリの処理が行えないんだクア』

 

 つまり……僕が変身できないのは、何もかも僕の異常な”体質”と”特性”のせいと言う事になる。ここまで話を聞いたが……この話のどこに、僕が戦える可能性があると言うのだ?

 

クアライト『しかし、Qaライトの保有量は問題ない。”大は小を兼ねる”と言う言葉が君たちの世界にあるように、大きければ”抑える”事も出来るクア!Qaライト特性を”抑制”し、Qaフィールのサイズを”制御”さえできれば……プリキュアとして戦う事は出来るはずクア!』

 

駆『ほ、本当ですか!?あ、あの……それはいつ出来るのですか?』

 

クアライト『すでに取り掛かっているクア!Qaウォッチの様なアイテムを変身に挟むことで、変身を補助するようにする予定クア!この程度なら……そこまで時間は掛からないと……』

 

ピリリリリリッ!ピリリリリリッ!

 

クアライト『ん?カケル、ちょっと待っていて欲しいクア。……私だ、ああ……』

 

駆(僕は……まだ戦える!カイザーンを……消せる!!!)

 

 僕はこの事実に歓喜した。僕にAqライト以外の可能性がある……戦える!カイザーンを消すことが出来る……それ以上に望むことなんてっ!!!

 

お兄ちゃんっ♪

 

駆『ッ!?……忘れそうになってるのか?信じられないからって……僕は……!』

 

 種に対しての疑惑やカイザーンへの怒り……それによって、僕は冷静な判断が出来なくなっている。大抵の事は覚えていられる僕が……種を忘れそうになるなんて……。

 

クアライト『待たせたクア。すまないが、ペック達に呼ばれてしまったので、話はここまでにするクア。カケル……すまないが一つお願いしてもいいクア?』

 

駆『……? はい、何でしょうか?』

 

クアライト『君のAqライトを少しで良いのだ……サンプルを取らせてほしいクア。君の変身に何かしらの障害が発生しては意味がないクア。サンプルがあれば、より確実に変身補助の際のバグを取り除けるはずクア』

 

 確かに……その方が暴走の可能性も少なくなるし、協力はするべきだろう。

 

駆『分かりました……ふっ!!……これで良いですか?』

 

クアライト『十分クア。コルーリはまだ部屋に戻っていないだろうが……どうするかね?』

 

 僕が出したAqライトを容器の中に入れるクアライト博士。容器の中で怪しく光るAqライト……僕はこれを何の反動もなく出すことが出来てしまった。僕は……どうやってもこの力からは逃れられないのだろうか?考えるのは止めよう……そうだ、このまま戻っても暇になるだけだし、アカシック王国の文字が分からないのは不便だ。勉強をするために、何か簡単な本はないだろうか?

 

駆『あの……本はありますか?子供が言葉を覚えるときに使うような……簡単な本で良いんですけど?』

 

クアライト『ふむ……そう言ったものは、城下町の方に行くべきクア。しかし、君の事はすでに軍の方で”監視対象”になっているからな……私が外出申請をしておこう。明日には受理されるはずクア』

 

駆『分かりました……それでは、失礼します。今日は……ありがとうございました』

 

 僕はクアライト博士にお礼を言うと、僕たちの部屋に戻る。どうせ行動が出来ないのだから……何か作ろうかな。

 

 

5月13日 駆・コルーリの部屋〈寝室〉

 

駆「でも……結局それも、無駄になったんだよね」

 

 戦える可能性を提示された次の日……僕に待っていたのは結局、戦う事の出来ない”自分の無力さ”だけだった。でも……”力を持つことは、責任が伴う”……それを思い出させられた日でもあったのだ。

 

 

1日前……5月12日 アカシック城〈研究室〉

 

駆『変身できないって……どう言う事ですかっ!?』

 

 研究室に呼ばれた僕に告げられたのは……クアライト博士が考えていたと言う僕の”変身補助”が、”不可能”になったと言うものだった。いきなり言われたこの言葉に僕は動揺し、クアライト博士に声をあげながら詰め寄る。

 

クアライト『……君の”Aqライト”のせいクア』

 

駆『Aqライトの……?』

 

 僕が考えてる間、いつの間にか僕の前にディスプレイが出現する。内容は昨日見た物と同じ……いや、昨日の物と違う箇所がある。それは……昨日は透明だったQaフィールの球体の中が、”黒”に塗り潰されているのだ。

 

駆『Qaフィールの中が……黒くなってる?』

 

クアライト『……昨日、君に提供してもらったAqライトのサンプルデータを使い、君のデータを再計算したクア。そして分かったクア……カケル、君のQaフィールは”膨大な量のAqライトで満たされている”んだクア!』

 

駆『……つまり、どういう事ですか?』

 

クアライト『……君の身体からAqライトが漏れ出す時があるだろう?あれはAqライトが、Qaフィールから溢れだした物なんだクア。今回、検討していたQaフィールの”サイズ制御”は、今現在のQaフィールに溜まっているAqライトを収めておけなくしてしまうんだクア……つまり、漏れ出すAqライトの量がこれまでの500倍まで増える……暴走の危険を逆に助長してしまう』

 

 ふざけるな……!今になって……こんな事ありか!?僕に……戦う手段はもうないのか!!

 

駆『他に……ないんですか!?このAqライトを何とかして、プリキュアになる方法はないんですか!?』

 

クアライト『……私の予想ではあるが、”Aqライトを浄化”しつつ、Qaライトを変身に使用できる量まで増やす事が出来れば可能クア。しかし、君のQaフィールのサイズは変えられない事が確定してしまった。その中でQaライトを変身可能域まで持っていくのは、君の”凝縮”特性を抑制しても足らん。他のエネルギ―で代用できれば別だが……そんな都合のいいものがある訳ない。残念だが……現状、君の変身は不可能クア』

 

駆『そんな……っ!?アカシック王国の技術でどうにかならないんですか!?』

 

クアライト『……一応、改善の手は考えているが、最低でも”一年”は掛かる』

 

駆『一年っ!?そんな時間ある訳ないじゃないですか!!カイザーンは本格的に動き出すんですよ!?』

 

 僕はクアライト博士に言われた変身を可能にする手が生まれるのに”一年”掛かると言う言葉に……僕は怒りを込めて言葉を返す。

 

クアライト『すまないクア……しかし、これが現実クア。ネツゾーンとタネについては……キュアストリングとペックに任せるクア。君は……コルーリとアカシック王国で待つクア』

 

駆『……ぐっ!!』

 

クアライト『最善は尽くす……私もまだ諦めた訳ではないクア。少し君も落ち着いた方が良いクア……そうクア!外出許可が出ていたし、少し城下町まで行って気分転換をしてくると良いクア!城門前に付き人を用意するから、そこに行きなさい』

 

駆『……分かり……ました』

 

 クアライト博士の勧めもあり、僕は城下町へと向かう事にした。正直……こんな事をしている訳にはいかないけど、少しでも……別の事を考えていたかったから、僕は付き人が来ると言う”城門”まで歩いた。

 

 

アカシック城 〈城門前〉

 

駆『……殆ど鳥型の妖精しかいない。そう言えば家とかの建物が小さかったし……僕、本を買うつもりだけど店に入れるかな?そもそも本が小さくて、読むのに虫眼鏡が必要なんてことないよね?』

 

 そんな不安を考えながら付き人を待っていると……黒い軍服を着て銃を背負った鳥がやってくる。あの鳥……僕がアカシック王国にきた時に、僕に銃を向けた軍人の中にいた一匹だ。僕に”動くな!”と言っていた鳥なのでよく覚えている。

 

クローネ『お待たせしましたカー!僕はアカシック軍"警備部隊"所属の《クローネ・カーラウス》と申しますカー!』

 

駆『初めまして、今日はよろしく……』

 

スチャッ!

 

駆『ちょっと!?銃口をこっち向けないでよ!?』

 

クローネ『申し訳ないですが、”監視対象”であるあなたは、保護対象と言うよりも”危険人物”である事の方がアカシック軍では問題になっているカー!それに今回は城下町に出る以上、国民の安全も守らないといけないカー!辛抱して欲しいカー!』

 

駆『……分かった。その……質問があるんだけど?』

 

クローネ『カー?何ですカー?』

 

駆『僕……お店に入れる?それから……お金はありますか?』

 

 色々聞いたが、どうやらお店と言っても、僕が入れるくらいは大きいらしい。それにお金も、クアライト博士がクローネに持たせてくれたらしいので、それで買えるようだ。僕らはそれを聞いて安心し、アカシック王国の城下町へ向かって歩き始めたのだが……その間もクローネは僕の肩に乗りながら、銃口を僕の顔に向けていた。……誤射とかは勘弁してほしいよ……まあ、”後藤さんのバズーカの誤射”に比べれば、こんな豆鉄砲サイズの銃なんてどうって事ないと思うけどね。

 

 

アカシック王国 城下町〈アカシックキングダム・セントラルストリート〉

 

駆『買えた……でもよかった、購入時に本のサイズを変えられるなんて……電子書籍より、こうやって本のページをめくる方が好きだから、本の方を買う事が多いし助かるよ』

 

クローネ『でも、どうしてそんな3歳くらいの小鳥が読む本を買うですカー?』

 

駆『この世界の言語形態が分からないからね……言葉を覚える勉強用に欲しかったんだ。ねえ、クローネ、ここに書いてある言葉って”単語”なの?』

 

クローネ『ここに書いてあるのは単語ではないカー。人間が住む世界の……確か、”あいうえお”と言うのに近いと思うカー』

 

駆『ふーん……色々聞きながらで悪いんだけど、ここに書いてあるのがどう読むのか簡単に教えてくれないかな?』

 

 僕はクローネに頼み、この本に書いてある字の読み方を説明してもらう。アカシック王国の言語形態は日本の”あいうえお”に相当する五十音”のみ”で、その他に漢字、カタカナや、英語の単語の様な形態はない。つまり、この本に書いてあるアカシック文字を理解すれば、言語形態をすべて把握したことになる……数字についてはなんと、僕らの世界と何ら変わりないらしく覚える必要すらないようなので、取り敢えずこれで良いだろう。よかった……僕が覚えるの早いおかげで、もう覚えられたし……部屋に戻ったら復習して、しっかり確認もしよう。……それよりも。

 

駆『ありがとう……もう覚えたよ。あと……さ』

 

スチャッ!

 

駆『銃口は下げてくれないかな?』

 

クローネ『だ、ダメカー!国民の安全を守るためカー!そ、それに訓練はしっかりしてるカー!誤射だってしないし、もしもの時は……撃つ覚悟だってあるカー!!』

 

駆『それじゃあ……僕からアドバイスをあげるよ』

 

クローネ『アドバイス……カー?』

 

駆『誰かを守るために覚悟を持って銃を向けるのは……別に悪い事じゃない。でも、君は”撃った後”の事を考えたことはあるかい?』

 

 僕はクローネに銃を”撃った後”の事を考えたことがあるかを聞いてみる。それは……僕が経験したことをアドバイスとして伝えるために、この鳥に聞かなければならない事だから……僕はクローネを真っ直ぐ見つめながら返答を待つ。そして数秒の沈黙の後、クローネは答えた。

 

クローネ『……考えた事ないカー。だって……撃ったら終わりカー。それ以上何があるカー?』

 

駆『君が……国を守るためにある人を撃ったとする。それは正義のためだと思うけど……その正義のせいで、”悪”にされた人にだってさ……何か事情があるかもしれないって思わない?どうしてこんなことをしたのか……どうしてこんな間違いをしたのかって……。自分たちの知ってる事情だけが……全てじゃない』

 

クローネ『どういう……事ですカー?』

 

駆『僕は、一人の人間を撃ったんだ……妹を助けるためにね。妹を守りたい……その気持ちだけで引き金を引いたけど、そのせいで……悲しむ人が生まれた。僕が撃ってしまった人の”家族”……僕は偶々その人たちを見つけてしまったんだ……その時、僕が撃った人の葬式中で、母親の様な女性が一人で永遠と泣いてたんだ。僕は……一発の弾丸のせいで、人の命を奪い……その人を大切に思う人に”消えない悲しみ”を刻んでしまった。銃を向けて、引き金を引く……すごく簡単だよね?でも……撃った後には”自分が撃った人間を想う人”にまで傷を与える。撃つのなら、それすらも受け入れるか……それすらも奪い去る覚悟が必要になるんだ。その覚悟がないのなら……銃を撃つのは止めた方が良い』

 

クローネ『撃った人を想う人まで……傷つける……カー』

 

 どうやら、僕の話はこの子に伝わったからか悩んでいるようだ。そうだ……もう一つ伝えないといけない事があった!

 

駆『あと……もう一つアドバイスがある』

 

クローネ『な、何ですカー!?カー――ッ!?』

 

スチャッ!

 

駆『相手を撃つ以上……自分も撃たれる危険がある事……だよ。本当に銃を持つのなら……気を緩めちゃダメだ』

 

 僕はクローネが悩んでいる間に、肩から掛けた小型銃を外し、銃口をクローネに向けた。あまりこう言う事はしたくないけど……命を奪うものを持つ以上、それだけの責任が伴うのだ。

 

駆『”力を持つことは、責任が伴う”……忘れない事だ。君は……この引き金を引こうと思えば、いつだって命を奪えるんだから……はい、返すよ』

 

クローネ『ッ!!……分かったカー。銃口を……軽々しく向けるのは止めるカー。でも、銃を奪うのは止めてカー!始末書じゃ済まないカー!!』

 

駆『うん……ごめんね。そう言えば……町の中警備隊でいっぱいだよね?アカシック王国って、そんなに治安悪いの?』

 

クローネ『いいえ、本来はとっても平和な国カー。ですが、昨日から警備に回される人が一気に増えたカー。アカシック女王陛下のご命令カー……何かお考えがあって事だと思うカー』

 

駆『……僕が来た後……か』ボソッ

 

 僕は城下町を巡回する警備隊の数が異常に多い事が気になっていた。確か来た直後は空から見た時だけだとそんなに多くなかった……しかし、昨日から警備隊を多くしたと言う。つまり……”僕の外出申請がされた後”、または”僕が来た後”に増えたと言う事になる。

 

クローネ『あの……どうかしましたカー?』

 

駆『……いいや、別に。そろそろ戻ろうかな……警護をお願いね』

 

クローネ『お任せください!”コルーリ先輩”の婚約者ですもんね!!しっかりお守りしますカー!!!』

 

駆『コルーリ……先輩?つまり……君はコルーリより”年下”なんだ』

 

クローネ『はい!僕、今年からアカシック軍に入隊しましたので!訓練生時代、コルーリ先輩は僕たち後輩の憧れだったカー!!美しい青い羽、可愛らしい容姿、勉強は学年トップが当たり前!ブルーの階級を成鳥になる前に賜ったエリート中のエリート!!』

 

 そんなにすごかったのか、コルーリ……まあ、ハッキングにデータ制作とか結構すごいことしてたし……確かにすごいか。しかし、階級制なんだな……アカシック王国って……ブルーの階級って言ったけど、どれくらいすごいんだろう?

 

カケルーーーーー!

 

駆『んっ?あ、コルーリ』

 

クローネ『こ、コルーリ先輩っ!?』

 

コルーリ『ようやく見つけました!昼食の一緒に食べようと思って探していたんです。お父様に聞いたら、城下町に行ったと……あら?あなたは確か……クローネ・カーラウス警備兵でしたね』

 

クローネ『お、覚えていただいているなんて光栄ですカー!その……入国時には失礼な事をしてしまい申し訳ありません!』

 

コルーリ『仕方ありません……あなたは軍の指示に従ったまでです。それについては詳細な報告を怠ったペックに責任がありますから、気にしないで下さい』

 

 こうやって見ると……軍の上下関係と言うものがあり、同年代のコルーリ達が本当に軍人なのだと考えらされてしまう。

 

駆『……コルーリ、本当に軍人なんだね』

 

コルーリ『そうですね……あまり向いていないと思うんですけど』

 

クローネ『ちゅ、昼食と言う事でしたら城まで警護いたしますカー!』

 

コルーリ『ありがとうございます……では、お願いしますね』

 

クローネ『カー!』ビシッ!

 

 そんな感じで、クローネに警護されながら僕らはアカシック城へと戻り、そこでクローネとも別れた。僕はコルーリと昼食を食べながら、クローネに話したことを考えていた……僕が経験したことをそのまま伝えたのだが……どうしてそんな事をしたのだろう?でも……今になればわかる。僕は……クローネを”信用していた”んだ。理由は簡単だ……クローネが”僕を信用していない”からだ。僕に対して向ける警戒心には……”嘘がない”。だから信じれたんだ……中途半端な信用よりも、明らかなくらいの敵意の方が信頼できる……今の僕が信用できるのは……”善意”でも、”良心”でもない。”悪意”と”警戒心”と言う……敵に対して向ける”嘘偽りのない感情”だけだった。

 

 

5月13日 駆・コルーリの部屋〈寝室〉

 

駆「嘘のない感情である敵意しか信じられない僕よりも、キュアストリング……”環さん”の方が向いている。僕なんかより……彼女の方がプリキュアに……向いてるんだ!」

 

 今日……僕はキュアストリング……彼女と初めてしっかり話した。それで分かったんだ……彼女は”プリキュア”だ。僕が知っている彼女(プリキュア)達たちと同じだった。理由などなく人を信じ、誰かを想い……諦めない。今の僕のように誰かを信じる事も出来ず、想う事も忘れ……諦めようとしている僕とは……何もかもが決定的に違ったんだ。

 

 

2時間前……5月13日 アカシック城〈ラウンジスペース〉

 

駆『……あれは、ストリング?』

 

 僕はアカシック城を散歩していると、ラウンジスペースの一角でQaフォーンと”にらめっこするストリング”を見つける。そのままスルーしてもよかったのだが、なんとなく気になってしまったので……僕は彼女に話しかけた。

 

駆『あの……どうかしたんですか?』

 

ストリング『んっ!?……ああ、君か……何?』

 

 どうやら……彼女はあまりしゃべらないらしい。数回しか顔を合わせてないけど……何となく分かる。そして……何だろう?こうやってよく見ると……”種”に似ている気がする。外見じゃない……雰囲気の様なものがって意味だけど……なんでだろう?

 

駆『えっと……何かQaフォーンを見ながら困ってるように見えたので……どうしたんですか?』

 

ストリング『ん……この”板”、変身の仕方とかは何となく分かったんだけど……楽しそうな使い方が分からない。ペックが……”ボタン押せ”って、言うんだけど……ボタンなんてないし、書いてある”絵”は動くし……”板”のくせに”電話”まで出来るし……他の事も出来ないかなって思ってたんだけど……イマイチだし……使い方を考えてた』

 

駆『”板”って……いや、普通の”スマートフォン”とそんなに変わらないと思いますけど……』

 

ストリング『……すまぁと……ふぉん?』

 

駆『……もしかして、知らないんですか……スマートフォン?』

 

僕の言葉に小さく頷くストリング。今時スマートフォンを知らない人なんているんだ……いや、よく考えたらだけど、彼女はペックに協力している特異点で……っ!もしかしたら……!!

 

駆『あの……ストリングって……何年生まれですか?』

 

ストリング『えっ?……んっと……”1961年7月6日”生まれで……今は13歳だけど……』

 

駆『……なるほど、それなら知りませんよね。テレビだってまだ”白黒”だし、電話だって”黒電話”ですもんね』

 

ストリング『そんな昔じゃなかっ!テレビに色がもうすぐ付く!それにウチはお父さんがそこら辺に拘るけんっ!どうせまたすぐ買おうとするばい!!……はっ!?ん~~~~~っ////!!!』

 

駆『普通に喋れたんですね。でも……その喋り方は”博多弁”ですか?』

 

 普通に喋ったのも驚きだけど、博多弁で喋るのも驚いた。どうやら、博多弁を喋っているのをバレたくなかったのか……頭を抱えて唸りながら蹲ってしまった。少しして落ち着いたのか、小さな声でストリングが僕に話しかけてくる。

 

ストリング『変……でしょ?』

 

駆『えっ?』

 

 変とは……どう言う事なのだろう?

 

ストリング『学校で……男の子たちがみんな”変だ!”って……言ってくるの。転校する前はみんな……同じやったのに……転校したら……みんな変な目で見てくる……だから、ゆっくり喋って……標準語……練習したの』

 

駆『……変じゃないですよ』

 

ストリング『……えっ?』

 

駆『変なんかじゃないですよ……可愛いと思いますよ、僕』

 

ストリング『ッ!!……ふふっ!そんなふうに言ってきたんは、あんたが”二人目”ばい』

 

 ストリングは小さく笑うと、蹲っていた姿勢を正し、僕の目を見てくる。すると、彼女の方から僕に手を差し伸べてきた。

 

環『私は……環《たまき》。ストリングってよく分からんけん。こっちで呼んで』

 

駆『環さん……えっと、名前ですか?名字ですか?』

 

環『名字。名前は……お母さんに”好きになった男の子”に初めて教えなさいって言われてるたい。だから名字で我慢して』

 

駆『どっちでもいいですけど……僕は”時生 駆”と言います。改めてよろしく……です』

 

環『時生……変わった苗字やね。もしかして……親戚に”進武”って子……おらんと?』

 

 えっ!?おじいちゃんの名前……なんで!?

 

駆『お、おじいちゃんが進武って名前ですけど……どうして知ってるんですか?』

 

環『おじいちゃん?君って……』

 

駆『ああ、僕は”2006年”生まれなんです。環さん達よりも未来の人間なので……』

 

環『そう言う事……あ、何で知っとるのか言わんとね。進武は……私の同級生たい。同じ吹奏楽部に所属しとるんよ……変わった苗字やけん、よく覚えてる』

 

駆『同級生!?じゃ、じゃあ……”廻”って人を知りませんか?この写真の人なんですけど?』

 

 僕は退屈しのぎに読もうと持ってきていた本”よく分かる楽器調律”の本に挟んでいる”おじいちゃん達の写真”をみせる。音吉さんの話では、おばあちゃんもおじいちゃんの中学時代の同級生だったと言う……もしかしたら知っているかも!

 

環『”廻”……。そう……ごめん、私そんな名前の子は知らない』

 

駆『……そうですか』

 

 どうやら……おばあちゃんの事までは知らないみたいだ。別に疑う必要もない事だし……ここはそれでいいだろう。

 

環『ところで……”駆”、この”きゅあふぉーん”の使い方……教えて』

 

駆『えっ?は、はい……いいですけど……って、いつの間にか名前呼びですか?』

 

環『気にせんでよか……さ、初めて』

 

 僕は環さんに一般的なスマートフォンとしての使い方をレクチャーする。まあ、普通に分かってもらえたみたいだからいいのだけど……ただ、このままただ教えているだけでも退屈だし、何か聞いてみようかな?

 

駆『そう言えば……何でペックに協力したんですか?別に……手伝う必要とかなかったんじゃないですか?』

 

環『……理由なんてなかよ』

 

駆『疑わなかったんですか?……いきなり喋る鳥が”助けて”って言ったんですよ?』

 

環『私はただ……彼が”助けて”って言ったから助けただけやけん。誰かを助けるのに理由なんて……なかよ』

 

駆『たった……それだけで……』

 

 ああ……そうか、彼女は”本物”だ。プリキュアとして……彼女たちと同じ”心”を持っている。理由なく誰かを救おうとする……正義を体現しようとする者……やはり、彼女にプリキュアさん達を託してよかった。僕は……間違っていなかった。

 

環『駆は……違うと?』

 

駆『えっ?』

 

環『駆は……コルーリを助けた。そん時は……何も考えなかったんじゃないと?』

 

駆『僕は……種が勝手にやったから手伝って……』

 

環『妹さんの事……信じてるんね。だって……信じてなくちゃ、一緒にやろうとなんて思わんもん』

 

 環さんは座っていた椅子から立ち上がり、伸びをする。彼女の言葉を聞いた僕は……何故か、自分の気持ちを吐き出し始めた。

 

駆『信じてる……そうだよ、あの時は信じてたさ!種を、仲間を、プリキュアさん達の事を何もかも信じてここまで来たんだ!!でも……それでも裏切られて、騙されて……!それでも……本当は信じたい!でも……信じられないんだ!!疑おうとしてしまう……信じなきゃいけないのに!!!』

 

環『別に……全部を信じなくてもよかよ?』

 

駆『……えっ?』

 

環『みんながみんな……全部を信じてる訳じゃなかよ。私だって……ペックを疑った。でも……真剣に困ってたけん……信じてみようと思ったばい。心なんて分からんけん、疑って当たり前たい……でも、それでも信じるから……誰かを好きになるんよ。私も……そうたい。私を助けてくれた男の子……疑ったけど、よ~く知っていったら、ただの変人で、お節介で……優しい人だった……だから、好きになったんよ』

 

・・・・・・ギュッ

 

駆『環さん……?』

 

環『無理することなか……今は私にお任せたい。駆……あなたの事は私が守ってあげる。妹さん……種も助けてあげる。残りのプリキュアも助けてあげる……安心せんね……大丈夫たい』

 

 僕は……環さんに抱きしめられていた。温かい……何でだろう?すごく落ち着く……お母さんに抱きしめられているみたいだ。

 

環『そろそろ、ペックの所に戻らんとね。……そうたい!明日、結婚式でしょ?お部屋まで迎えにいくたい……約束とよ?それじゃあ、またね……駆』

 

 環さんは、ペックの所へ戻ると言ってどこかに行ってしまう。

 

駆『……守ってあげる……か』

 

 その言葉は……普通なら何とも思わないだろう。でも……それは今の僕が”無力”であることの証明に他ならなかった。

 

 

5月13日 駆・コルーリの部屋〈寝室〉

 

駆「僕って……本当にどうしようもないのかっ!?」

 

 頭を抱え……僕は考える。その度に……どうしようもないと言う結果しか出て来ない。そんな時……”彼女”が帰って来た。

 

コルーリ「カケル……どうしたんですか?」

 

 コルーリが帰ってきて……心配したような声で僕に話しかける。その声のトーンが心配してくれていると分かるから……信じたい、でも……信じることが出来ない。これ以上この声を聞いていたら……彼女を疑い続けないといけなくなる。だから……喋らないで欲しいと思い、僕は彼女に……その意思を誤魔化しながら話した。

 

駆「……ちょっと、静かにして。一人に……させてくれないかな?」

 

コルーリ「カケル……何か悩んでいるのなら、相談してください。私……心配なんです……カケルの事が。私は……カケルの力になりたいんです!支えたいんです!だから……一人で悩まないで下さい」

 

 コルーリは”嘘を言っていない”。分かる……けど……どうしても心が信じようとしない!もう……彼女を疑いたくない!信じたい!!……そうだ。

 

グッ!

 

コルーリ「か、カケル……?」

 

 これ以上、疑わないようにするなら……。

 

駆「……嘘を言わないでよ」

 

 コルーリを……遠ざければいいんだ!

 

コルーリ「う、嘘なんて……!きゃあっ!!か、カケルっ!?や、やめて下さい!!」

 

 僕はコルーリをベッドに押し倒し、両手を拘束して胸元から衣服のボタンを無理やり外していく。これくらいじゃ……僕から離れないかもしれない。もっと……責める様に声をあげて……嫌がらせるんだ!

 

駆「怖いだろ!嫌だろ!もう……嘘なんて言えないだろ!!」

 

コルーリ「か、カケル……っ!」

 

駆(ごめんなさい……!)

 

駆「ほらっ!言えよ!!怖いって!!!僕なんか……嫌いだって!!!」

 

駆(ごめんなさい、コルーリッ!)

 

 これ位すれば……僕を嫌うはずだ!離れていくはずだ!もう……コルーリを疑わなくて済むし、彼女だって……僕に関わらなくなって、幸せにだってなれる!だから……!これで……!!

 

コルーリ「……そうしたら、カケルは……”救われますか”?」

 

駆「……えっ?」

 

コルーリ「私に……そうする事で……カケルが救われるのでしたら……私は……いいですよ」

 

 押さえつけてたコルーリの両手から……力が抜けていく。それは……まるで僕に”何をされてもいい”と言う意思の表明のようだった。違う……!そうじゃない!!

 

駆「ッ!?……違う!僕は……そんな事を……言って欲しいんじゃ……ない!」

 

 僕は寝室から走り出し、玄関のドアを開けて、アカシック城の廊下へと抜けていく。僕は……コルーリの心から逃げ出した。彼女は僕を受け入れてくれようとした……僕が思っていた通りにはならなかった。どうすればよかったんだ?どうすれば僕は……彼女を遠ざけることが出来たんだ?分からない……分からない!!

 

 

アカシック城 渡り廊下

 

駆「……どうすればよかったんだ?僕は……どうしたら……」

 

お困りか……少年?

 

駆「……? だ、誰ですか?……人?いや……何なんだ、あなたは?」

 

 僕の前に現れたのは黒いコートを着て、それについているフードを深く被った”男の人”。身長は僕よりも15センチは違うから……180センチはあるのだろう。そして、何よりも怪しいのは……この男が”人の姿をしている事”だ。アカシック王国に来て人の姿をしていたのは、アカシック女王とコルーリ”だけ”だ。他の妖精たちも人型になれるみたいだが……僕には分かる。こいつは……”人間”だ……しかも……。

 

駆「なんで……あなたから”Aqライト”を感じるんだ!?」

 

黒コートの男「ふ~ん……一応、感じるのか。まあ、それくらいは出来てもらわないと困るけどな……」

 

 この男から感じるのは……Aqライトの気配だ。しかも……カイザーンに匹敵するかそれ以上の力がある!こいつも……ネツゾーンなのか!?

 

黒コートの男「俺はネツゾーンじゃない……まあ、”通りすがりの時の王者”ってところだ……覚えておかなくていい」

 

駆「今……僕の考えを読んだんだな?」

 

黒コートの男「当たり……言っておくが名乗りはしないぞ。お前に名乗っても仕方がないからな」

 

駆「じゃあ……何で僕の前に来た?目的は何だ?」

 

黒コートの男「目的はシンプルだ……こいつを渡しに来た。それから……伝えないといけない事がある」

 

 男が僕の前に出したのは、僕と種が今まで使ってきた……”Qaフォーン”だった。

 

駆「Qaフォーン……何であんたが!?」

 

黒コートの男「その理由は……こいつを見ればわかる」

 

 男はそう言うと、僕の頭に左手を置く……すると、僕の頭の中に映像の様なものが見えてくる。場所はアカシック女王に謁見した部屋、いるのは……アカシック女王とクアライト博士だった。

 

アカシック女王〈ごめんなさい、クアライト……呼び出してしまって……〉

 

クアライト〈どうしたのだ……”マウティ”?急な連絡だったため、カケルにはペックからの呼び出しと誤魔化してしまったが……まさか、アカシックレコードが示す歴史に、何か変化があったクア?〉

 

アカシック女王〈はい……以前から示されていた”ネツゾーンによるアカシック王国への襲撃”……その発生日が変わりました。”5月18日”……コルーリの誕生日を0として数えて”一週間後”の日こそ”襲撃の日”とされてました……しかし、コルーリの結婚式を三日後と決めた途端……襲撃までも三日後にずれてしまった!どうして……運命はあの子をこんなにも苦しめるのでしょうか?!ただ幸せになる事まで……許さないの!?クアライト……どうして……!〉

 

クアライト〈……カイザーンのせいと考えるほかないクア。そもそも、今までのアカーシャとの通信不良はカイザーンの発生させていた”時間の流れ”と”空間の歪み”のよる物であったし、奴は……本当に”万物を改竄する者”なのだクア〉

 

アカシック女王〈カケル君、タネちゃん……そして、コルーリ。三人の歴史がアカシックレコードから塗り潰されているのも……そういう事なのでしょうか?私がアカシックレコードを管理し、観測することで、多くの災厄から逃れてきた……コルーリの結婚式やキュアストリングの滞在期間だってすべて織り込み済みで襲撃に備えたと言うのに……私の考えは全て筒抜けと言う事でしょうか?〉

 

 アカシック女王とクアライト博士の会話……そこから分かったのは、これからアカシック王国に”ネツゾーンの襲撃”があると言う事。それを予見していたアカシック女王は、襲撃よりも早くコルーリの結婚式を挙げさせようとしたら、襲撃の日が予定の日よりも早まってしまった事だ。しかし……なんか変だ。この二人の会話から分かる事には”もう一つ”ある。それは……コルーリの幸せを優先していると言う事。なぜそこまでコルーリを優先する?国王と言う立場ならば”国民”を優先するはずだし……アカシック女王とコルーリは他人の筈だ。いや……だったら何故、他人の筈のコルーリの誕生日を把握していたんだ?クアライト博士の娘だから……?待て……クアライト博士、アカシック女王の事を”マウティ”って言ったよな?マウティと言うのは……確か僕らを案内した雌鳥のはず……アカシック女王が化けていた?でも……この話はプライベートな物の筈だし……そこまで嘘をつき続ける必要はない……なら、何故そう呼ぶんだ?

 

黒コートの男「ここまでだ……長すぎる考察は必要ない。どうせ……明日になれば知る事だ。で……分かっただろう?明日……ネツゾーンがこの国を襲撃するんだ。その時、お前は戦う事になるだろう……だから、俺はこのQaフォーンを届けに来たのさ」

 

駆「僕は……戦う力が……もう……!」

 

黒コートの男「知ってる……お前は弱い。誰かに頼らないと戦うことも出来ない……でも、可能性はゼロじゃない。お前が本当に戦う事を望むなら……運命はその道を示す」

 

駆「運命……!」

 

 僕は……まるで引き付けられるように、Qaフォーンを手に取る。

 

黒コートの男「祝え……今ここに、新たな道が示された」

 

駆「えっ?」

 

 男の方を向くと……僕は黒い空間の中に囚われる。男もいなくなっており、僕は閉じ込められたと思ったが……その空間はすぐに開かれ、僕は元居た廊下に立っていた。

 

駆「……夢、だったのか?……ん?これはっ!!」

 

 僕は何か変化がないかと周囲を見回すと、Qaフォーンの画面に映った”時間”に目が行く。そこに表記された時間は……”5月14日 8時14分”。僕は……一日の時間を飛び越えてしまっていた。

 

駆「時間が……まさか、あの男は僕を未来に飛ばしたのか?」

 

warning! warning! warning!

 

 城中に響き渡る警報……これは、まさかっ!!

 

駆「ネツゾーンの襲撃……来たのか!」

 

 僕はQaフォーンをポケットにしまい、ネツゾーンがどこに現れたを探そうとする。すると、僕の後ろから環さんとコルーリがやってくる。

 

環「駆っ!ここにいたと?!」

 

駆「環さん!……コルーリも」

 

コルーリ「駆っ!無事だったんですね!!」

 

駆「この騒ぎは……ネツゾーン?」

 

環「そう……アカシック城の大広間に現れたって」

 

 どうやら、あの男の言っていた通りらしい。早く行かないと……!

 

駆「分かりました。直ぐに向かいましょう!!」

 

環「ダメ!駆は……コルーリと避難して。私が何とかするけん……早く逃げて!」

 

駆「でも……!」

 

環「今、戦えない駆に……何が出来ると?駆はコルーリと結婚するんよ……幸せにならんといけん!それに、女の子を泣かすなんて……絶対したらいけん!!駆はコルーリを守るばい……いいと?」

 

 僕は……言い返せなかった。僕は戦えない……何が出来る?僕に残ってるのは”Aqライト”だけ……いや、後は使えるか分からないQaフォーンか。他にないのか……考えろ!考えろ!!

 

コルーリ「……カケル、これを」

 

 考えている僕の服の袖を引くコルーリ。彼女が僕の前に差し出したのは……男性用Qaフォーン。何故、これを持っているんだ?

 

コルーリ「カケルは……そうしたいんですよね?」

 

駆「コルーリ……何を考えてるの?」

 

コルーリ「私は……駆が進みたいと思う道に進んで欲しいだけです」

 

 信じるか?……本当に信じていいのか?どうする!どうする……!!

 

パンッ!

 

駆「ッ!?……コルーリ?」

 

コルーリ「しっかりしなさい!何を迷うのですか!私の事を信じなくったっていいです!あなたには……皆を守る力があるんです!!」

 

 コルーリは僕の顔にビンタをして、僕を叱咤するような言葉をぶつける。

 

駆「……でも、戦えないのは事実だ。これを持って行っても……変身できるか分からない!」

 

コルーリ「……その程度でへこたれるんですか?カケルは……今まで苦しい戦いに向かっていったじゃないですか!奇跡ぐらい起こしてやりなさい!!こんなところで何もしないカケルなんて……私の好きなカケルじゃありませんっ!!!」

 

駆「コルーリ……」

 

 ……分かった。漸く……踏ん切りがついた!

 

駆「……ありがとう、コルーリ。これ……持ってくよ?」

 

コルーリ「カケルッ!!」

 

バンッ!

 

コルーリ「え……?」

 

 僕はコルーリを突き飛ばし、僕の後ろの壁にあるスイッチを押す。さっき廊下の周囲を見回していた時に見つけたスイッチ……”緊急隔離防壁”の作動スイッチ。この国の言葉を勉強したおかげで気付けた……これで……。

 

ドンッ!!!

 

カケルッ!開けて下さい!! 

 

駆、何でこんなことすっと!?

 

駆「……さあ、行くか」

 

 僕は……”命”を捨てる覚悟が出来た。

 

 

アカシック城 大広間

 

アカシック軍兵士「「「「「うわ~~~~~~っ!!!!!」」」」」

 

フェイク「はっはっは~~~っ!!!お前らみて~な鳥が束になったって俺には勝てやしねえよ~~~!!!!!」

 

駆「はぁ……はぁ……フェイク!お前だったのか!!」

 

フェイク「ん~~~?おお!!ようやく見つけたぜ……キュアシードの身体の方!お前の命を……貰いに来たぜ!!!」

 

駆「やっぱり……僕が目当てだったか」

 

 アカシック城の大広間にいたのは……フェイクだった。目的は……”僕の命”だ。これ以上……被害を出させるわけにはいかない!!僕はポケットにしまっていた2台のQaフォーンを取り出し、変身を試みる。

 

駆「プリキュアプリケーション!インストール!!!」

 

error!

 

駆「……やっぱり……ダメか……!でもっ!!!」

 

フェイク「ほう……あの時の黒い光か?”Aqライト”って、言ったか?まあ俺も……使うけどなあ!!!」

 

駆「フェイクが……Aqライトを!?」

 

 僕は変身が出来ない事が分かったため、Aqライトで戦う事を決める。しかし、僕の前にいるフェイクも……なんと”Aqライト”を使用し始める。今までこんな事なかったのに……!

 

フェイク「スゲ~だろ……カイザーン様から頂いたんだ!あの時はしてやられたが……今回はどうかな~?」

 

駆「……くっ!」

 

クローネ「キュアシード、大丈夫カー!?」

 

駆「クローネ!?何でここに!?」

 

 僕の後ろから、クローネが心配そうに聞いてくる。どうしてこんなところにいるんだ!?

 

クローネ「連絡があって駆け付けたカー!ぼ、僕もお手伝いするカー!!」

 

駆「……いい」

 

クローネ「な、なんでカー!?」

 

駆「……Aqライトを使った戦いになる。周りにどんな被害が出るか分からないんだ。クローネ、君は周囲で負傷している兵士を救助して……出来るだけ僕らが戦っている近くに来るな」

 

クローネ「ぼ、僕はアカシック王国の軍人カー!僕だって力に……」

 

駆「邪魔だって言ってるんだ!戦いが始まったら……抑えが効かない!!巻き込まれるぞ!!敵の攻撃だけじゃない……僕の攻撃にもだ!!!僕に……命を奪わせるな!!!!!」

 

 クローネは……涙目になりながら、僕に敬礼をして周囲に倒れている兵士を外へと運んでいく。これでいい……!

 

駆「待たせたね……これで邪魔はいない!」

 

フェイク「へっ!そんじゃあ……始めようぜ~~~~~!!!!!」

 

駆「だりゃああああああああああ!!!!!」

 

 僕の……命を”捨てる”ための戦いが始まった。

 

 

アカシック城 渡り廊下〈隔離壁前〉

 

side:コルーリ

 

コルーリ「カケルッ!カケルッ!!!」

 

 カケル……どうして?なんで……私たちを置いて行ってしまうんですか!?Qaフォーンを受け取る時に……彼が見せた”笑顔”。まるで……全てを捨てようとしているようだった。

 

環『コルーリ、下がって!ぷりきゅあぷりけーしょん!いんすとーる!!!』

 

 キュアストリング……カケル曰く”タマキ”さんは、Qaフォーンを起動して変身を開始する。碧の光が彼女を包み、それが晴れていくと……黄色の衣装を纏い、左手首に黄色のリボン巻かれたプリキュア”キュアストリング”の姿になる。

 

ストリング「未来へつながる、希望の糸!キュアストリング!」

 

コルーリ「ストリング……何を?」

 

ストリング「この壁を……ぶっ壊すばい!プリキュア・ストリングバインド!!」

 

バラ!バラ!バラ!

 

 ストリングは指先から糸を出すと、そのまま壁をひっかくような動作をする。すると、隔離壁がバラバラになり……進めなかった道が開く。

 

ストリング「行くよ!駆……無茶しようとしてると?」

 

コルーリ「多分……直ぐに行きましょう!」

 

 私たちは……廊下を走り抜け大広間に向かう。そして……そこに待っていたのは……。

 

フェイク「へっへっへ……楽しかったぜ、キュアシード」

 

駆「・・・・・・かはっ!」

 

 フェイクに首元を掴まれ、宙吊りにされている……カケルの姿だった。

 

 

アカシック城 大広間

 

駆「ぐっ!……がはっ!」

 

フェイク「所詮はただの”身体”か……おい、2013年の時みたくやれよ?じゃねえと……退屈だろうが!」

 

 僕は……フェイクに手も足も出なかった。僕が出来ることを全てやった……それでも敵わなかった。

 

フェイク「まあ……カイザーン様のご命令もある。取り合えず……このぐらいで良いだろう!おっ!丁度、二人位こっちに向かってきてるな……そいつらの前でやるか」

 

駆「はっ……ははは!」

 

フェイク「何が可笑しいんだ……キュアシード?」

 

駆「命を捨てる気だったから……やり切ったなって……」

 

フェイク「なんだと?」

 

 僕の口から……笑い声が零れる。

 

駆「だから……中途半端に痛くしないでさ……一思いに……やってよ……」

 

フェイク「へっ!いいぜ!お望み通りやってやる!……おっ?来た来た!」

 

 何とか目を動かし、フェイクが見る方向を見る。そこにいたのは……キュアストリングとコルーリ。あ~あ、来ちゃったのか……でも、”最後”だしいいか。

 

フェイク「へっへっへ……楽しかったぜ、キュアシード」

 

駆「・・・・・・かはっ!」

 

 フェイクは……空いている方の右腕を振りかぶり、拳にAqライトを纏わせる……そして……。

 

フェイク「あばよ……キュアシ――――ド!!!!!」

 

ゴンッ!!!!!

 

その拳を……僕の胸へと打ち込んだ。

 

駆「ゴッ!!……あ、ああ……ぁ……」

 

 意識が遠のいていく……目の前が真っ暗になる……身体から力が抜ける……熱がなくなっていく。ああ……これで、僕が”願っていた”通りになった。だって……こうなれば、何を疑わなくてもいいし、苦しまなくていい……もう何もかも捨てて……いいよね?

 

コルーリ「カケル――――――――――ッ!!!!!」

 

 ごめん、コルーリ……すいません、プリキュアさん……僕もそっちに行くよ、種。おっと……言いそびれるところだった。

 

さようなら……。

 

……ドクンッ!

 

僕の……心……。

 

……ドクンッ

 

僕の……身体……。

 

……ドクン

 

そして……この……”苦しいけど、美しい世界”……。

 

……ドク

 

駆「・・・・・・さよ・・・・・・な・・・・・・ら・・・・・・」

 

……ド

 

 そして……僕の鼓動が……

 

……

 

 その動きを……止めた。

 

 

To Be Continued……




いかがだったでしょうか?主人公……まさかの退場!私……ドライブの泊さんの殉職からのタイプトライドロンの登場が結構好きなんで……駆もこのままにしてやりませんよ!次回……命を捨てた駆は生死の境で抗うコルーリ、ストリング、クローネ……そして、他の人々の姿を見る。そして……その中で見つけた本当の気持ち。七色の光の中……新たに生まれるアイテム”QaフォーンS”!そして……全てのプリキュアの思いを重ね……”絆のプリキュア”が再び誕生する!!乞うご期待ください!
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