ヴァールハイト・プリキュア   作:32期

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ごきげんよう、32期です。今回で本編も五十話です……いや、モチベーションが上がらないし、連勤続きで疲れ、遅くなってしまい申し訳ありません。しかし、今日はお休みでしっかり休めましたし、ヒープリの映画も観てきました!朝一の上映で劇場内に”私一人”という貸し切り状態だったので、大声で応援も、ダンスをしても恥ずかしくない状態……少し年甲斐もなくはしゃいでしまいました。……話を戻します。今回からふたりはプリキュアSplash☆Star編となります!ですが、今回の話は駆の母……果実の過去や駆の母方の祖母など、駆自身の家族にも触れていきます。では、お楽しみください!



ふたりはプリキュア Splash☆Star編
第五十話:海原市での邂逅。彼女は駆のおばあちゃん!?


プリキュアカーシャ 操縦室

 

side:コルーリ

 

コルーリ「お父様、カケルの最新データ……確認していただけましたチュン?」

 

クアライト『うむ……確認は済んでいるクア。やはりカケルの負傷を書き換えたのは”Aqライト”で間違いないだろう。しかし、分からない事もあるクア。何故……カケルの身体からAqライトが放出されたクア?情報によれば、Aqライトの濃度は”ダークドリーム”を取り込んでから増している……だが、放出が見られたのはデリートとの戦闘終了直後の為、ダークドリームの関与はあり得ないクア。』

 

 現在、私達は2006年へ向かう航海の途中……カケルの最新の戦闘とAqライトの放出についてのデータを確認してもらい、分析を手伝っていただいている。前回の戦闘でカケルが負った負傷はカケルをアカーシャに運んで直ぐのメディカルチェックで既に確認されていた……しかし、それでもカケルの負傷した箇所は粉砕骨折していながらも骨が一部のズレもなく”固定”されていたり、その間もAqライトが負傷した左手で活性化していた。それに関しては変身解除後も巻かれていたカケルのスーパーQaライトの波長を示す”青いリボン”、それによって固定されていた箇所で鈍く輝いていた”Aqライト”……この二つが完治の理由だとお父様は考えていた。しかし、お父様も私も分からない事がある。それがカケルの身体中から放出された”Aqライト”だ……負傷した箇所ではなく身体中から放出していたのを考えると……ケガが原因だとは思えない。

 

クアライト『そして、今のカケルのAqライトは信じられない程に安定している。そのうえ”Aqストッパー”のセーフティだって上げた状態クア。少なくともデリートと戦闘する前まではAqライトの兆候はなかった。変身アイテムを書き換えるために力を使おうとする様子があったと聞いたが、それはダークドリームに止められている……何が原因クア?』

 

 そう……カケルのAqライトの使用は見られなかった。それにお父様のAqストッパーによる抑制もある。なのに何故、Aqライトが放出されたのでしょう?それを考える私達に、ソファーで腰掛けているカケルが口を開く。

 

駆「その事についてですけど……実は心当たりがあるんです」

 

コルーリ「本当チュン?」

 

クアライト『カケル、心当たりとはいったい何クア?』

 

駆「一度、僕の中にいるバットエンドシード達と話したんですけど……何でもAqライトは抑制できてるのに、身体からAqライトが”押し出された”らしいんです」

 

コルーリ「押し出された?どういう事チュン?」

 

 カケルが話す”Aqライトが押し出された”と言うのは……一体どういう事なのでしょう?

 

駆「プリキュア5のアイテムを保存してから、僕の”Qaフィール”の中に急激なエネルギーが流れて来たらしい。そのエネルギーがQaフィール内のAqライトを浄化しようとするらしいんだ」

 

コルーリ「それって……カケルが変身する時はプリキュア達のエネルギーをQaライトの代用として使用していますし、変身している時の原理としては別に変ではないですよね?」

 

駆「だけど、Aqライトは浄化されずに……そのエネルギーに押し出されたって言うんだ」

 

クアライト『プリキュアのエネルギーでAqライトが押し出されたか……二人共、少し待っていてほしいクア。計算してみよう……その話が正しいのなら、結果は出るはずクア』

 

 お父様はそう言うと、少しだけ黙り込み計算を始める……数秒後、お父様は結果が出たらしく、それについて話を始めた。

 

クアライト『結果が出たクア。Aqライトの最新データでプリキュアのエネルギーによる浄化を計算してみたが……カケルの言う通り”浄化”がされていない』

 

コルーリ「それは本当ですチュン、お父様!?」

 

クアライト『うむ……Aqライトの濃度が急激に上がってしまった事が原因だと思われるクア。おそらく……”不幸のエネルギー”によるもので間違いはないだろう。そしてもう一つの問題について……Aqライトが押し出されたと言う物だが、カケルが有しているプリキュアのエネルギーはプリキュア5の時点でこちらも急激に上昇した。エネルギーの大半を変身に使用していたが、現在はもっと余裕がある……しかし、その増えたエネルギーはQaフィールの中に”流れ込み”、Aqライトを浄化しようとする』

 

駆「……Qaフィールに流れ込んだエネルギーがAqライトを浄化しようとするけど、Aqライトは浄化されない。だから、エネルギーに押し出されて身体から放出される……つまり」

 

クアライト『……結論を言おう。”プリキュア”のエネルギーが増えたことで……カケルのAqライトは体外へ放出されている』

 

コルーリ「そ、それでは……プリキュアの皆さんが貸してくれている力のせいで……カケルのAqライトが放出されてしまうと言う事チュン!?」

 

 そんな……っ!?それでは……カケルが”プリキュアを助けていること自体”が、カケルを苦しめている事になってしまう!?そんな……そんな事って!

 

クアライト『しかし、カケルはAqライトの中にバッドエンドシードと言った”ストッパー”の存在があるため、放出されたAqライトは安定している。だが、プリキュアはそうはいかん。”存在の固定化”はQaフォーンに保存しなくては意味がないクア。プリキュアの変身アイテムを保存した時点で、カケルのQaフィールと”リンク”を結んでしまう。残りのプリキュアは二組だけ……だが、その二組こそプリキュアの中でも特に大きな力を持つ存在クア!カケルのエネルギーはプリキュア5を固定化した時よりも増える!!そうなれば……!』

 

駆「僕の身体から……今まで以上のAqライトが押し出される……ですよね?」

 

コルーリ「そんな!?」

 

駆「でも……どうにか出来ない訳ではないですよね?」

 

コルーリ「……えっ?」

 

 どうにか出来ない訳ではない?どういう事ですか?

 

クアライト『……カケルの”スーパーQaライト”クア』

 

コルーリ「ッ!!そ、そうです!スーパーQaライトがAqライトを抑え込んでいました!」

 

クアライト『しかし……カケル、君はスーパーQaライトをコントロールできるクア?』

 

駆「……いいえ。現状、意識的な発動も出来ていません。でも、僕たちには”スーパーQaライトを使うため”にクアライト博士が作ってくれた”Qaウォッチ”があります」

 

クアライト『……カケル、Qaウォッチは本来”タネ”が使うためものクア。機能だって既に別物で、君が2013年で使用した際、Aqライトによる暴走を引き起こしている。それに現在装着させている”Aqストッパー”はQaウォッチの機能を抑制する用途もある。Aqストッパーを付けている状態では使用は出来ない上、外せば……Aqライトの抑制の効果もなくなる。リスクが高すぎるクア』

 

 スーパーQaライトでAqライトを抑えつけていたのは事実ですが……お父様の言う通り、スーパーQaライトを使用するために”Qaウォッチ”を使えば暴走の可能性、Qaウォッチの機能とAqライトを抑制しているAqストッパー……それを外すした際のリスクなど、危険であることに変わりはない。

 

駆「なら……他に方法がありますか?」

 

クアライト『……Aqストッパーをアップデートする方法を取るべきクア。可能な限り……早急に用意しよう。2006年に到着するまでには完成させる。それまでは……待機しているクア。すまないがこれで通信は切るクア。直ぐに取り掛からなくてはいけない』

 

コルーリ「は、はい。お父様……おねがいしますチュン」

 

クアライト『分かっているクア。では……』

 

 お父様は通信を切ると……操縦室は静寂に包まれる。

 

コルーリ「カケル……きっとお父様が何とかしてくれるチュン。だから……もう少し待つチュン」

 

駆「……分かったよ、無理は出来ないからね」

 

 私の言葉に微笑んで言葉を返すカケル。でも……その顔が少しだけ”不満”そうに見えるのは何故でしょうか?私は……あなたが苦しむのを見たくない。そして……2008年の時のように目覚めないあなたを待つ事なんて……耐えられない。カケル、お願いだから……また無理だけはしないで……そう考えながら私は2006年へとアカーシャを進めていった。

 

 

side:ネツゾーン

 

カイザーン「わた~した~ちは~星……あら?おかえり、デリート。どうだった?キュアエクス……私のアルタイルは?」

 

デリート『面白かった!カイザーン様の言った通りだった!!もっとあいつと遊びたい!!!……だけど、インペイルの奴がぶっ壊れちまったから……どうすれば良いんだ?』

 

 何か歌を歌っていたカイザーンの元に、キュアエクスとの戦闘を終えて戻って来たデリートが次元の裂け目からやってくる。操っていたインペイルも一緒だが気を失ってしまっているようだ。その様子を見たカイザーンはデリートに問いかけると、”もっと遊びたい”と言うデリート。それを聞いたカイザーンは微笑むと……デリートに助言をする。

 

カイザーン「そうね……だったら2006年にマーネルがいるわ!それを使ったらいいわよ♪インペイルと同じやり方でやれば良い……簡単でしょ?」

 

デリート『あいつかっ!分かった!!でも……俺、フェイクの奴が良い!あいつだとやり易い!!』

 

カイザーン「あら残念……フェイクはまだ目覚めてないのよ。もうすぐ起きると思うから……それまでマーネルを使って、私のアルタイルと遊んでらっしゃい♪」

 

デリート『そうか……なら、マーネルで我慢する!』

 

カイザーン「うふふっ♪いい子ね……インペイルは私が直しておいてあげる♪さあ、行きなさい!デリート!!私のアルタイルをもっと追い込むのよ♪」

 

デリート『キヒャヒャ!かしこまり~!!』

 

 デリートはカイザーンの言葉に従い、インペイルの身体を置いて行き、再び次元の裂け目に飛び込む。

 

カイザーン「アルタイルはAqライトを物にしようとしてる……あと少しで私の所に辿り着く。あなたが”私のもの”になる♪うふふっ♡」

 

種〈駆はあんたのものになんか……絶対にならないから〉

 

カイザーン「それはどうかしらね~♪」

 

種〈それに……私と駆の”星の歌”に勝手な歌詞を付けないで。それは私と駆のもの……あんたが勝手に好きにしていいものじゃない〉

 

カイザーン「……それは違うよ」

 

 いつものふざけた口調と違うカイザーン。それを感じた種は小さな恐怖を覚える。

 

カイザーン「この歌は……”私達”のもの。この歌詞だって……”私達”が決めたもの。不純物のくせに……いらない物のくせに……!私に必要なのは彼だけなのに……お前がいるせいで!……ふぅ~!ちょっと熱くなっちゃったかな♪あんまり大きな口を叩かない方が良いよ……その気になったらあなたなんか”一瞬”で消せるんだからね~♪でも、決めた事だから……あんたは彼の前で消してあげる。絶対に……絶対に♪うふふっ♪」

 

種〈私は消えない……駆が来てくれる。そして、私と駆が……あんたを消す〉

 

カイザーン「あなたを受け入れるかも分からないのによく言うよ。まあ、勝手に信じてればいいよ……するだけ無駄だけどね〜♪」

 

 カイザーンが僅かにみせた"怒り"を感じながらも、強気で返す種。睨み合う二人の会話はここで途切れ、再びカイザーンは歌い始める……そして……。

 

……ピキッ

 

 その歌に紛れ、"偽物"を包むAqライトに小さなヒビが入り……もうすぐ目を覚ます事を感じるカイザーンは、満面の笑みで歌い続けた。

 

 

2006年 海原市 ???邸 

 

side:???

 

執事「おはようございます……”奥様”。お薬をお持ちしました」

 

???「ありがとう、徒棟《あだむね》。今日は……何か起きそうな気がするわ」

 

徒棟「奥様がそう仰るとは……。では、お車を用意いたしましょうか?」

 

???「そうね、今日は海へ……薬を飲み終えたら出発しましょう」

 

徒棟「かしこまりました……奥様」

 

 海原市の海を一望できる山に建てられた日本家屋の豪邸。その一室から海を眺める女性はいつも見ている”波”がいつもと違う事を感じ、話しかけてきた執事である”徒棟”に”何かが起こる”と伝える。そんな彼女の言葉をすぐに汲み取り、出かける準備を始めようとする。

 

???「この波……この潮風……あの子……”果実”がここを去った日の様だわ」

 

 この屋敷を……自分の”夢”を叶えると言って出ていった子の事を……そして、彼女が出ていった後に見た”波”と”潮風”を……彼女は思い出していた。この”波”と”潮風”は何かを起こす……それを分かっているからこそ動き出そうと考えて、彼女は……運ばれてきた薬を飲み込み、自分を待っている車へ向かうため……座っている椅子から腰を上げた。

 

 

2006年 海原市"夕凪"  海岸

 

side:コルーリ

 

駆「ここが海原市……二番目のプリキュアさん達がいる場所か」

 

コルーリ「はい。カケル、新しいAqストッパーはどうですか?体調に変わりはないですか?」

 

 2006年の海原市に到着した私達。私はカケルの言葉に答えながら、お父様が新しくアップデートしたAqストッパーを装着してからの体調を確認する。お父様によると、アップデートしたAqストッパーは”現在のカケルのデータ”から予測し、さらに強固なセーフティを設けたと言っていた。カケルはAqライトと切っても切れない状態にある以上、強固なセーフティを設けたことで異常が出ないとは限らない。

 

駆「それは問題ないみたいだけど……海原市にこんな形で来れるなんて思わなかったよ」

 

コルーリ「……? どう言う事ですか?」

 

駆「海原市……ここは”お母さんの故郷”なんだ。前に話したよね?……あ、あれは2012年でみた夢の話か」

 

コルーリ「じゃあ……ここにカケルの”祖父母”がいるかもしれないんですね」

 

駆「でも……目的はプリキュアさんを救うことだ。”古城”のお祖母ちゃんやお祖父ちゃんを探してる暇はない……ん?」

 

ドドドドドドドドドドッ!!!!!

 

 この町にカケルの祖父母がいるらしいが……カケルはアカシックのプリキュアとしての使命を優先すると言っている。私としては……それくらいの我儘はいいと思うのだが、カケルに言っても……きっと頷いてはくれないだろう。そんな事を考えていると、私達がいる砂浜の向かうから……凄まじい速度で”何か”が向かってくる。走っているのだろう……とんでもない砂ぼこりが舞い上がり、聞こえてくる足音は……まるで削岩機の様です。そんな到底人間とは思えない事をしている”何か”……その姿は……。

 

筋肉質な金色の男『おおおおおおおおおおおおっ!!!!!』

 

ドンッ!!!

 

 全身が”金色”、筋肉隆々の……モヒカンヘアーにおヒゲを生やした男性でした。そんな男性は私達には目もくれず……私とカケルの間に空いた隙間を走り抜けた。そのせいで砂ぼこりに包まれてしまい……周りが見えない。

 

コルーリ「ケホッ!……一体、何だったんですか?カケル、大丈夫でしたか?……あれ?カケル!どこですか……えっ!?」

 

 砂ぼこりが止み、カケルに話しかけると……カケルはその場にいなかった。心配して周囲を探すと……信じられない光景を目の当たりにする。それは……カケルが海岸から”25メートル”、海面から”5~6メートル”の位置にカケルがいたからだ。何故そんな所にカケルがいるのか?そう言えば……男が走り抜けるときに”ドンッ!!!”って音がしたけれど、もしかして……それってカケルが男とぶつかった音で、カケルは男にぶつかったから”あんな所”に吹き飛ばされてしまったのだろうか……って!?

 

コルーリ「そうじゃないです~~~!!!」

 

バッシャーーーンッ!!!

 

コルーリ「か、カケルーーーーーッ!!!!!」ボンッ!

 

 私はすぐさま妖精の姿に戻り、カケルが落ちた場所まで飛んでいく。真上まで行くと人間に変身して私も海に飛び込み、カケルの身体を抱えて海岸の方へと泳いでいく。運の良い事に”波”が私達を海岸の方へ運んでくれた事で、それなりに距離があったがすぐに海岸にあがることが出来た。

 

コルーリ「はあっ!はあっ!カケル!息は……良かった、呼吸してる。でも……気絶してるみたい。どうしよう……アカーシャまでは距離があるし体格的に担いでいく事は出来ない。病院は……ダメです。カケルが持っているもので”未来人”であることがバレてしまうし、戸籍などの問題もある……このままじゃ!ひ、人を呼べば……これもダメ!病院に連れてかれてしまう!」

 

 どうしよう……どうしよう!このままじゃ……カケルが……!

 

コルーリ「助けなきゃ……(どうやって?)助けなきゃ……!(どうやって助ければ!)」

 

……どうしたのですか、お嬢さん?

 

コルーリ「チチュンッ!?あ、あなたは……?」

 

 海岸に膝を付いて考えていた私に話しかけてきたのは、藍色の着物をきて日傘を差した女性。私を見下ろし落ち着いた口調で話す彼女は、カケルと私を交互に見ると……カケルの方を驚いた表情で再度見つめる。

 

着物の女性「この子は……」

 

コルーリ「あ、あの……あなたは?」

 

着物の女性「あなた達……ずぶ濡れじゃないの。この子も気を失っているようだし……徒棟、車の中にあるタオルを。それから救急車を……」

 

コルーリ「ま、待って下さい!病院は……!」

 

着物の女性「……病院に連れていくのが不味いのかしら?」

 

コルーリ「それは……!」

 

 どうしよう……!カケルは助けたい……だけど、このまま病院に連れていかれてしまっては……!

 

着物の女性「……なら、私の屋敷へ運びましょう。私が贔屓にしているお医者様もいるわ……それならいいかしら?」

 

 着物の女性が言った言葉は思いもよらない物だった。私達の事を疑うことなく……私達の都合に合わせてくれると言う物だったからだ。

 

コルーリ「そ、それでしたら……で、でも……お金もお返しできませんし、ご迷惑になってしまいます」

 

着物の女性「子供がそう言ったことを気にするものじゃありませんよ。それに……この子を助けたいのは”私の勝手”です。徒棟、この子を車に運びなさい。あなたも車へ……大丈夫だから」

 

徒棟?「かしこまりました、奥様」

 

コルーリ「は……はい」

 

 執事と思わしき初老の男性はカケルを抱えると、黒塗りの高級車の後部席にカケルを寝かせて私にタオルを差し出してくる。それを受け取った私はカケルを寝かせた席の隣に座り、それを見た着物の女性は……対面になっているもう一つの席に腰掛ける。執事の男性が操縦席に乗り込み車が走り出し、私達は山の方へと向かって行く……それにしてもこの人は誰なのだろう?まだちゃんとお名前を聞けていない。

 

コルーリ「失礼だとは思いますが……あなたは誰なんですか?どうしてここまでしてくれるんですか?」

 

古城「そう言えば、まだ名乗っていなかったわね。私は”古城”……この海原市の山を管理している者よ。助けた理由はさっき話した通りだけれど……そうね、その子が……”私の娘”にどこか似ていたからかしらね」

 

コルーリ「娘さん?」

 

古城「ええ……もう出ていってしまったけれどね。まだ屋敷までは掛かります……その子の事も拭いてあげなさい」

 

 古城と名乗る女性に促されてカケルの髪や身体を洋服越しに拭き、これからの事を考える。私達が向かっている彼女の屋敷とはどんなところか?彼女は何故、あんなにもいいタイミングで出て来たのか?警戒は……しておいた方が良いかもしれない。

 

 

海原市”夕凪” パン屋〈PANPAKAパン〉

 

side:ふたりはプリキュアSplash☆Star

 

ピリリリリリッ!ピリリリリリッ!

 

沙織「はい、PANPAKAパンです……ああっ!古城さん!ええ、かしこまりました!咲~!!」

 

咲「どうしたの、お母さん?」

 

沙織「パンの配達なんだけど、山の上の”古城さん”は知ってるでしょう?今日はお客さんが来てるらしくて、いつもより早く来てほしいんだって。今日の配達は古城さんだけだし……お願いできる?注文の量も多いから大変かもだけど……」

 

 2006年にいるプリキュア……Splash☆Starの2人。2人で宿題をしようと咲の部屋で集まっていた所、咲を呼ぶ母の”日向 沙織”の声がしたので2人で一階に向かうと、配達を頼まれる。咲は配達先の”古城”と言う人物をよく知っていた。PANPAKAパンの常連さんで、毎日配達でパンを買ってくれる山の上にある大きなお屋敷に住むおばさんである。何回も配達で行ったことがあり、執事のおじさんや古城さん本人も優しかったからだ。

 

舞「だったら私もお手伝いします!いいよね、咲?」

 

咲「うん!私と舞で一緒に配達するよ!ごめんね、舞……宿題も手伝ってもらってたのに」

 

舞「ううん、宿題は戻ってからでもできるでしょ。それに私もPANPAKAパンのパン大好きだもの!それを待ってるお客さんがいるなら、私も手伝いたいし」

 

沙織「本当?舞ちゃん、悪いわね。それじゃあお願いするわね」

 

大介「はい、これが注文のパンだ。2人とも、気を付けて持って行ってね」

 

咲「うん!いってきま~す!!」

 

舞「いってきます!!」

 

みのり「いってらっしゃ~い!!」

 

ニャ~ン

 

 舞の申し出もあり、古城さんの住む山の上まで一緒に向かう事にした二人。2人は咲の父である”日向 大介”から配達のパンを受け取ると、咲の妹の”日向 みのり”と飼い猫の”コロネ”に見送られて、2人は自転車で古城の屋敷へと向かって行く。自転車で坂を上り、目的地の古城邸へ到着した2人……扉の前まで来た2人をパートナーの妖精である”フラッピ”と”チョッピ”、そして”ムープ”と”フープ”が二人を止める。

 

フラッピ「咲!舞!ちょっと待つラピ!」

 

咲「えっ?どうしたの、フラッピ?早くパンを届けないと」

 

チョッピ「この建物の中から、”怖い力”を感じるチョピ」

 

舞「怖い力?どう言う事なの、チョッピ?」

 

ムープ「すごく怖い力が中にいるムプ!」

 

フープ「すごく怖いププ!アクダイカ―ンよりも怖い力ププ!!」

 

 妖精たちの言葉を聞いて2人は驚いた。アクダイカ―ンよりも怖い力……”満”と”薫”の2人に助けられて何とかなったアクダイカ―ンよりも危険な敵がこの屋敷にいると言うのだから。

 

咲「で、でも……古城さんは昔からいる人だし、フラッピだって前に配達に来た時は何も感じなかったでしょ?」

 

フラッピ「う~ん……でも、この中から感じるのは本当ラピ!」

 

咲「……分かった。フラッピたちの言う事……信じるよ!舞……いくよ」

 

舞「うん……分かった、咲」

 

 2人は警戒しながらもインターホンを押し、住人である古城を呼ぶ。すると……。

 

いぶ「あら、咲ちゃん……配達ありがとう。そちらの子はお友達?あなたもありがとうね」

 

 何の変哲もなく2人を迎える屋敷の主人”古城 いぶ”……その様子を確認した咲はいつもと変わらない彼女を見て安堵した……が。

 

黒髪の少年「お客さん……ですか?」

 

ゴォォォォォオオオオオオッ!!!!!

 

フラッピ「咲!あいつラビ!」ボソッ

 

チョッピ「あの男の子から怖い力を感じるチョピ!」ボソッ

 

舞「彼……から?」

 

 彼女の後ろから来た少年を見た妖精たちは小さな声で叫んだ。”この男の子から怖い力を感じる”……自分たちは彼から何も感じないのに、フラッピたちは彼を警戒した。どうしてなのだろう……そんな事を考えて黙っていたら古城さんが口を開く。

 

いぶ「駆くん、コルーリちゃん、丁度良かったわ。あら……咲ちゃん、疲れているの?そうだわ、良かったらお茶でもいかが?用意してくるから、二人とも上がって待ってて頂戴。駆くん達もいらっしゃいな」

 

咲「えっ?お、お構いなく!」

 

駆「いいえ……折角ですし一緒にいかがですか?聞きたい事と話したい事があるんです」

 

 お茶を用意すると言い出す古城さんに断ろうとした咲だが、それを”駆”と呼ばれた少年が止める。そして……彼は”コルーリ”と呼ばれる少女に肩を借りながら、咲と舞、2人に近付き左右に立つ二人の耳元で……驚きの言葉を呟く。

 

駆「”プリキュア”である……あなた達にね」ボソッ

 

咲・舞「「ッ!?」」

 

 ふたりをプリキュアと見破る少年……駆。彼は何者なのか?フラッピたちが感じた”怖い力”とは何なのか?この出会いは”ふたりの歴史”を守る戦いの……始まりを告げるものだった。

 

 

2006年 海原市 古城邸

 

side:駆

 

軽い脳…盪でしょう。……しかし……ど…やって……そんな高…から……。

 

……先生、あ…がとう…ざい…まし…。玄関までお…りします。

 

ありが…うござ……した。

 

……バタンッ

 

 誰かの話し声が聞こえる……一人はコルーリの声だけど、他の声は……誰だろう?男性と女性……声の感じからして、どちらも初老くらいかな?それにしても……頭が痛い!なんでだっけ……あっ!思い出した!

 

筋肉質な金色の男『おおおおおおおおおおおおっ!!!!!』

 

ドンッ!!!

 

駆『…………えっ?』

 

バッシャーーーンッ!!!

 

そうだ!あの"剣《ブレイド》"のナレーションの声にソックリな"筋肉隆々な金色の男"!あいつに吹き飛ばされて、海に頭から落ちて……それからどうなったのだろう?その後の記憶がない……確認しないと。そう思った僕は頭の痛みを堪え、重たい瞼を開く。

 

駆「んっ……ぐっ!ここは……?」

 

コルーリ「カケル!目が覚めたんですね!」

 

駆「まだ……頭が痛むけどね。それより確認なんだけどさ、ここは何処?」

 

あら……目が覚めたのね。

 

コルーリ「あっ!はい!カケル、こちらが私達を助けて下さった"古城 いぶ"さんです。そして、ここはいぶさんのお屋敷である"古城邸"です」

 

駆「"古城"っ!?」

 

 ベッドから上半身を起こすし周りを確認すると、木造の日本家屋のような部屋にいた。そして、僕が起きたのに気づきコルーリが話しかけてくると、その後に知らない女性がドアから入ってくる。コルーリは彼女を”古城”と言った……つまりこの人が……っ!

 

駆(お母さんのお母さん……僕のお祖母ちゃん)

 

いぶ「頭が痛むと言っていたけれど……先生の話では頭を打った事による脳震盪と言っていたわ。もう少しベッドで休んでいなさいな。それと貴方が着ていたお洋服は今乾かしているから……主人が昔着ていた浴衣だけれど、今はそれで我慢してね。コルーリちゃんも娘のものでごめんなさいね」

 

駆「あの……助けていただいてありがとうございます。僕は……時生 駆といいます」

 

いぶ「コルーリちゃんから話は聞いているわ。二人で駆くんの”妹さん”を探しているって……。それにしても……こうしてしっかり見ると、やっぱり”あの子”に似てるわね」

 

駆「あの子とは……?」

 

いぶ「ああ……うちの娘の事よ。二人共、出ていってしまったけれどね。あそこに写真があるでしょう……そこに写っている二人の女の子が娘よ。大きい方が姉の”黒栖”、小さい方が妹の”果実”……あなた、果実によく似ているのよ。だから……あなたを海岸で見た時、”運命”かもと思ってしまったほどよ。今日の海は……あなたと合わせるために、あの”波”を見せたのかしらね」

 

 彼女の指さす方向にある壁に掛けられた大きめの写真……そこに写る”若い頃のいぶさん”と二人の少女。姉である少女の名前は”黒栖”……その顔は2018年のパラレルワールドで出会った”夢幻 累”と瓜二つの女の子。妹である少女の名前は”果実”……お母さんの子供の頃の姿だ。僕に母方の伯母さんがいる事は知っていたけど……まさか累さんのお母様が”お母さんのお姉さん”だったなんて知らなかった。しかもこれでは……累さんは僕の”従姉”と言う事になるではないか。

 

いぶ「黒栖は”結婚”のために……果実は”夢”のために……二人共、”古城家の使命”を理解せず、出ていってしまったわ。……ごめんなさいね、暗い話を聞かせてしまって……そうだわ!あなた達、お家には帰れないのでしょう?だったら泊まっていきなさいな。私が贔屓にしている美味しいパン屋があってね……そこから毎日配達を頼んでいるの。もうすぐ来ると思うから、それが届いたら夕食にしましょう。それまでもう少し寝ていなさい、駆くん」

 

駆「……はい」

 

いぶ「いい子ね……コルーリちゃんも少し休みなさい。それじゃあ、私は失礼するわね」

 

バタンッ

 

 僕たちに休むように言うとお祖母ちゃんは部屋から出ていく……本当にあの人が僕のお祖母ちゃんなのか?

 

駆「コルーリ……いぶさんの事だけど……」

 

コルーリ「はい、ここまで怪しい所がないか探ってみましたが……全く怪しい所はありませんでした。それに、あの写真を見た時に思いました……あの写真に写っている少女がどこか……”カケルに似ているな”と……。それに話していて感じました……いぶさんはとってもお優しい方でした。疑いようがないくらいに」

 

駆「……そうか」

 

コルーリ「カケル……いぶさんはもしかして……」

 

駆「間違いない、僕のお祖母ちゃんだ。お母さんの……母親のね」

 

 お母さんの話で聞いていたイメージと違う。お母さんも伯母さんも……お祖母ちゃんと喧嘩して絶縁状態になったと言う……でも、こうして話すとお祖母ちゃんは優しい人だし、お母さんたちを想っているようだった。”お母さんが話していたお祖母ちゃん”と”今目の前にいるお祖母ちゃん”……どちらが正しいのだろう?

 

ピンポーン!

 

コルーリ「……お客さんでしょうか?」

 

駆「人が2人に……この気配は”妖精”だ。4匹はいるみたいだよ」

 

コルーリ「カケル、その組み合わせは……もしかしたら”Splash☆Star”かもしれません」

 

駆「スプラッシュスター?プリキュアなの?」

 

コルーリ「はい。確認してきましょうか?」

 

駆「……いや、僕が行くよ。コルーリ、途中まででいいから肩を貸してくれる?」

 

 僕はコルーリに肩を貸してもらい、玄関の方へと歩いていく。そして、そこで出会ったのだ……プリキュアである……”ふたり”に。

 

 

To Be Continued……




いかがだったでしょうか?今回は駆の母方の祖母”古城 いぶ”が登場しました。駆の母である果実や劇場版に出た累の母”夢幻 黒栖”は姉妹と言う設定は初期から決めていたので……気付いてる人いたかな?劇場版のキャラクター設定で旧姓を記載してあったり、駆達がスマイルプリキュアの時代で”星空家”を投稿した時に話の中で果実の旧姓も書いてたので……勘のいい人は分かってたかな?ちなみに”古城家”だった人の名前には”聖書”や”キリスト教”がモチーフです。いぶは最初の女性”イブ”から、黒栖は”十字架《クロス》”、果実は蛇に唆されてアダムとイブが食べてしまった”禁断の果実”から……と、こんな感じ決めた名前です。
では、次回の話は……ふたりのプリキュアに接触した駆とコルーリ。そんな駆達の前に現れるマーネルと彼女が召喚したガンサクウザイナーが迫る。目の前の危機を回避することは出来るのか!?乞うご期待ください!
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