ヴァールハイト・プリキュア   作:32期

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お久しぶりです、32期です。久しぶりの投稿になってしまいました。新年度が開始して新しい患者さんの記録や退院時の書類の作成、ワクチン接種の予定など忙しすぎて手が付けられなかったのです。申し訳ございません。

S☆S編、今回は駆の海原市での一週間をお送りします。両親の出会いや大空の樹、”古城家”の秘密などがが明らかになります。では、お楽しみください。

気付いたら結構なプリキュアが誕生日でした!キュアホワイトの”雪城 ほのか”ちゃん、キュアエトワールの”輝木 ほまれ”ちゃん、キュアフローラの”春野 はるか”ちゃん、キュアスターの”星奈 ひかる”ちゃん、キュアカスタードの”有栖川 ひまり”ちゃんの五名!このS☆S編が終わったらほのかちゃんも書けるし頑張らないとな!今年もみんなが幸せでありますように!ハッピーバースデー!


第五十二話:”愛”と”笑い”と”涙”と”怒り”。聖なる泉が……枯れる時。

AM7:00 海原市 古城邸 リビング

 

side:駆

 

コルーリ「カケル、おはようございます。左腕の痛みは大丈夫ですか?」

 

駆「ふあ〜!……おはよう、コルーリ。うん、もう殆ど痛みはないよ。……あれ?いぶさんはまだ起きてないの?」

 

コルーリ「はい、私も来たばかりですが……まだお見掛けしていません。徒棟さんが”朝食を運ぶ”と言っていたので、待っているところなのですが……」

 

駆「そうか……じゃあ、後で徒棟さんに聞いてみようか」

 

 古城邸で朝を迎えた僕はリビングにいるコルーリに挨拶をされる。昨日、夕食を食べた後にいぶさんが”泊まっていった方が良い”と言ってくれたのでこの古城邸に宿泊したからだ。挨拶を返した僕は、まだ来ていない”お祖母ちゃん”について質問すると、どうやらコルーリも見ていないらしい。コルーリによれば徒棟さんは起きていて、朝食を運んできてくれているらしいので彼に聞いてみようと考えたその時、徒棟さんがリビングに二人分の朝食をワゴンで運んでくる……僕が起きて来たことに気付いていたのか。

 

徒棟「おはようございます、駆さま。お目覚めになったようなのでコルーリ様の分と一緒に朝食をお持ちしました。それから奥様ですが……本日は調子がすぐれないそうですので、後で朝食を頂くと言っておりましたよ」

 

駆「あ、ありがとうございます。あの……僕たちの話を聞いてたんですか?」

 

徒棟「丁度、リビングの前まで運んできたところでしたので……話し声が聞こえてきたのですよ」

 

駆「そう……ですか」

 

徒棟「はい……では、冷めないうちにお召し上がりを」

 

 僕たちの前に並べられた”トースト”、”スクランブルエッグ”、”サラダ”、”オレンジジュース”……パンは多分、咲さんが配達してくれたものだろう。トーストされた食パンはカリカリだが、生地はもっちりとしている……ここに塗ったバターが程よい塩味を加えてくれることによってさらに素晴らしい。僕たちはこの素晴らしい朝食を味わいながら、今日の予定を話し合う。

 

駆「コルーリ、今日の予定は咲さんのお家に行く事だったよね?」

 

コルーリ「はい、お話をする予定です。お家のパン屋さんに来てほしいと言ってましたね」

 

徒棟「”PANPAKAパン”の事ですな。それでしたら地図をご用意いたしましょうか?」

 

駆「いいえ、大丈夫です。地図ならこれで……っ!?あ、やっぱり……地図をいただけますか?」

 

 いけない……QaフォーンSを出そうとしてしまった。この”2006年”にはまだ”スマートフォンは存在しない”のだ。こんな”未来の機械”を出してはいけない。僕はすかさず地図をお願いし直し、徒棟さんはそれを聞いて頷き返す。

 

徒棟「かしこまりました。では、用意をしてまいります。食器は後で私が片付けておきますので……そのままで結構です。出発の際にお渡ししますので、ゆっくりと準備をお済ませください」

 

駆「はい、よろしくお願いします」

 

朝食を終えて身支度を終えた僕たちは玄関の前に集まると徒棟さんが立っており、その手には四つ折りにされた紙と”七色の宝石”がはめられたストラップが付いた”鍵”が握られていた。

 

徒棟「こちらがPANPAKAパンへの地図でございます。それからこちらを……」

 

駆「鍵……ですか?」

 

徒棟「こちらは屋敷の鍵でございます。奥様が駆様方が海原市にいる間はこの屋敷で宿泊をしてよいとおっしゃいました……なので、こちらの鍵をお渡ししておきます」

 

コルーリ「で、ですが……」

 

徒棟「奥様は駆様の事を大変……気に入っております。奥様はこの屋敷で旦那様を亡くし、黒栖様……果実様がこの屋敷を出ていって以来、ずっと一人なのです。どうか奥様の為に、この海原市にいる間だけでも……一緒に過ごしてはいただけませんでしょうか?」

 

 徒棟さんは頭を深々と下げて僕にお願いをする。そのお願いの答えは……考えるまでもない。

 

駆「分かりました。ですが、僕たちもただ何かしてもらうのは嫌なので……せっかくなら僕たちもお料理とかを御馳走させてください」

 

徒棟「ありがとうございます……奥様もきっとお喜びになるでしょう。では、いってらっしゃいませ……駆様、コルーリ様」

 

駆「はい、いってきます」

 

コルーリ「行ってまいります。いぶさんによろしくお願いします」

 

徒棟「はい、どうかお気をつけて」

 

 僕らは徒棟さんに見送られて咲さんの自宅であるパン屋へと向かう。僕の手に握られた屋敷の鍵……それが自分の”帰える場所”の鍵だと思うと……少し嬉しかった。だって……僕が帰るはずの家はここにはなく、全てを終えるまでは変えることは出来ないのだから。そう言えば……Aqストッパーの件、どうなったのかな?

 

駆「そう言えば……コルーリ、僕が壊したAqストッパーの事だけど……どうなったのか」

 

コルーリ「既にお父様に報告済みです。詳しい指示はお屋敷に戻ってからしますね。少し……手の込んだ内容ですから」

 

 手の込んだ内容の指示……それをまだ知らないまま、僕らは歩き続けた。

 

 

AM8:30 海原市”夕凪” パン屋〈ベーカリーPANPAKAパン〉

 

駆「ここが……PANPAKAパン?」

 

コルーリ「その様ですね……あら?」

 

ニャ~!

 

咲似の少女「コロネ~!あっ!お客さんだ!」

 

ミラクル(えっ!?モフルンの声!?)

 

 みらいさんの言う通り、確かにモフルンの様な声だが……どう見ても普通の子供だ。そして探している咲さんに似た顔立ちから察するに……妹さんだろう。

 

駆(モフルン……な訳ないか)「おはよう、咲さんは……いるかな?」

 

咲似の少女「お兄ちゃん、お姉ちゃんのお友達なの?」

 

駆「うん、会う約束をしてるんだ」

 

ニャ~!

 

咲似の少女「もう!コロネったら!逃げようとしないの!」

 

ビート(この子……駆、その猫……コロネだけど……女の子を、”みのり”ちゃんを守ろうとしてるわ。駆の事を警戒してるみたい)

 

 エレンさん……確か元はセイレーンと言う”ネコの妖精”だから、ネコの言葉が分かるんだ。まさか……飼い猫にまで警戒されるとは思わなかったけど……仕方ないか。

 

駆「コロネ……だね。大丈夫だよ、僕は咲さんもみのりちゃんも傷つけない……約束する」

 

ニャ~……。

 

みのり「あ、おとなしくなった。あれ?お兄ちゃん、どうしてみのりの名前知ってるの?」

 

駆「えっと……コロネが教えてくれたんだ。お兄ちゃん、ネコと話せるんだよ」

 

みのり「本当!?すっご~い!」

 

駆「えへへ……あとでもっとお話ししようか。その前に咲さんを呼んでくれる?」

 

みのり「うん!分かった~!」

 

 その後、みのりちゃんによって咲さんが呼ばれてくると思っていた通り”舞さん”もいた。これで昨日の続きをもう少し話せると思ったのだが、どうやら咲さんは今日”パン屋の手伝い”もしないといけなくなったらしく話すのはパン屋が落ち着いてからになるらしい。何か……手伝えることはないだろうか?そんな事を思っていたら……。

 

 

AM10:00

 

沙織「手伝ってもらって悪いわね~!アルバイトの子が休んじゃって人手が足りなかったのよ」

 

駆「いえ、これくらいは……あ、いらっしゃいませ!」

 

コルーリ「食パンとチョココロネが焼き上がりました!いかがですか~!」

 

 絶賛……接客のお手伝い中です。それにしても……すごいお客さんだ。街のパン屋さんにしてはお客さんが多いし、お祖母ちゃんも配達を頼むほどだから……すごく人気なんだろうな。

 

咲「ありがとね、駆君!ホントに助かっちゃった!」

 

駆「いえ、昨日は助けていただきましたし……それにいぶさんのお家でパンを頂いたんですけど、すごく美味しかったです!ねえ、コルーリ?」

 

コルーリ「はい!とっても美味しかったです!」

 

舞「流石は咲のお父さんね!」

 

大介「あははっ!嬉しい事を言ってくれるね~!舞ちゃん!」

 

 舞さんの言葉に笑って返すPANPAKAパンの店主である”日向 大介”さん……これほどのパンを作ると言う事はよっぽどの職人だろう。それなのにこの町で小さなパン屋をするなんて……何か思う所でもあるのかな?しかし、お客さんは留まることなくやってくるので、そんな事を考えている暇はなかった……パン屋さんは大変だな。

 

 

PM13:00

 

沙織「はい、お待たせ!」

 

大介「よし、みんな行き渡ったかな!それじゃあ……いただきます!」

 

日向家・舞・駆・コルーリ「「「「「「いただきます!」」」」」」

 

大介「いや~!手伝ってくれて本当にありがとう!……そう言えば、ちゃんと名前を聞いていなかったね」

 

駆「あ、すいません。駆と言います……”時生 駆”」

 

 昼の営業時間を終えて少し遅い昼食……それを食べながら僕についての話が始まり、そして僕の名前を聞いた大介さんは驚いたような顔をする。それを見て笑っている咲さんのお母様”日向 沙織”さんは大介さんが驚いている理由を話始めた。

 

大介「”時生”って……確か彼の!」

 

沙織「ねえ、驚いたでしょう?うふふっ!ごめんね、駆君。実はね、ウチにアルバイトしてた高校生の男の子がいたんだけどね、その子の苗字も”時生”だったの。”時生 歩夢”くんって言ってね……もしかして、駆君は歩夢君の親戚か何かなの?よく見たら……少し似てるようだし」

 

 お父さんの名前……何でここでそれが出てくるのかと思ったが、お父さんは学生時代にここでバイトしてたと言うのだ。

 

大介「そう言われてみれば……ん?でも……”果実ちゃん”にも似てるような……」

 

駆「果実って……いぶさんの娘さんですか?」

 

大介「ああ、あの子もここでバイトしていたんだ。そう言えば……元気にしているかな?高校を卒業した後、この町を出ていってしまったんだ……もしかしたら、歩夢君と一緒に居るのかもしれないけどね」

 

沙織「ふたりは高校の先輩後輩同士でね……内緒にしてるみたいだったけど、付き合ってたのよ」

 

 

6年前……2000年 ベーカリーPANPAKAパン

 

大介『歩夢君、焼き上がった食パンを棚に並べてくれるかい?』

 

歩夢『はい!よっと!食パンが焼き上がりましたよ~!』

 

 歩夢君は親元を離れて海原市の清海高校に通っていた男の子でね、ご両親に迷惑をかけないようにアルバイトで働きながら勉強していたの。一人暮らしで大変だってよく話していたわ。そんな彼がここで働き始めて一年が経った頃ね……果実ちゃんがやってきたのは……。

 

カランカラ~ン!

 

歩夢『いらっしゃいま……せ……』

 

果実『あ、どうも……あの、店長さんは……』

 

大介『ん?ああ、古城さんの所の果実ちゃん!もう高校生になったんだ!大きくなったね~!それで、何の用だい?』

 

果実『あの……大介さん、私をこのPANPAKAパンで働かせてください!お願いします!』

 

 果実ちゃんはこのお店を始めた時からのお客さんで、お母様の古城さんが毎年ケーキを注文するから、果実ちゃんの事はよく知っていたわ。あの子が高校生になってすぐにここに来てね……働かせてくださいって言ってきたの。

 

 

駆「それは……どうしてですか?」

 

沙織「彼女に夢があったからよ。パティシエになりたいって……このPANPAKAパンのケーキを食べて、そう思ったって言ってくれたの」

 

大介「嬉しかったな……僕の作ったケーキが誰かの夢になってくれた。それだけですごくうれしかったよ。勿論、果実ちゃんの気持ちは本物だったし、僕も断る理由がないからね……ここで働いてもらう事にしたんだ」

 

沙織「そうそう!その時初めて果実ちゃんに会った歩夢君ね~!果実ちゃんに見惚れて上の空になっちゃって!」

 

大介「そうそう!真面目で正確な彼が失敗ばかりしてね~!」

 

 つまりこのPANPAKAパンが……お父さんとお母さんが出会った場所で、お母さんの夢が……始まった場所なんだ。

 

沙織「ふたりがお付き合いするようになったのは……クリスマスくらいになった頃だったかしらね」

 

 

2000年 12月25日

 

歩夢『……古城さん』

 

果実『なんですか、時生先輩?』

 

歩夢『いいのかい?今日はクリスマスなのに……誰かと出かけたりもしないでアルバイトなんかして』

 

果実『何を言ってるんですか!クリスマスの時期は大介さんがクリスマスケーキを販売するから、ケーキ作りを間近で見ることが出来るチャンスなんですよ!大介さんの一流パティシエとしての技術を……ものすっっっごく近くでですよ!それがどれだけすごいか分からないんですか、時生先輩!』

 

歩夢『近い///近いって///』

 

果実『とってもすごい事なんですよ!……って、時生先輩、顔真っ赤ですよ?あ、寒いですもんね……そうだ、カイロありますよ』

 

歩夢『……古城さん』

 

果実『はい?』

 

歩夢『クリスマスを一緒に過ごす……”恋人”とか……いないの?』

 

果実『えっ?いる訳ないじゃないですか~!いるとしても、私の恋人は……クリームと苺がたっぷりのショートケーキだけですよ!それとも……時生先輩が……私の恋人になってくれるんですか?』

 

歩夢『えっ!?』

 

果実『だったら……今すぐ答えて下さい!私……ここで答えてもらわなかったら一生をショートケーキと添い遂げますから!』

 

歩夢『えっ!?あっ!ああ、なるよ!き、君の恋人になるっ!!!』

 

果実『よかった///。時生先輩、私……実は先輩の事、初めて会ったお店の時に……その……もう好きだったんです///。一目惚れ……といますか、ずっと言うタイミングを探してたんですけど……ケーキを覚えるのも大事だし、私……恋とかこれまでした事なかったし……だから!OKを貰えて、超……嬉しいです///♪』

 

 

沙織「それからね、ふたりは”果実ちゃん”、”歩夢先輩”って言い合うようになってね♪それはもう甘酸っぱい青春を過ごしていったのよ♪」

 

駆「……///。あの、なんでそこまで詳しく会話の内容を知ってるんですか?」

 

沙織「えっ?だって二人共、路上販売が終わってお店のテラスで話してたんだもの。嫌でも聞こえちゃうわよ」

 

 なんとも恥ずかしい両親の馴れ初めを聞かされた僕は、顔が熱くなってしまう。僕は落ち着いた大人のお母さんやお父さんしか知らないから……お母さんがそんな事を言ったなんて信じられないが事実なのだろう。……こうやって会話の内容を聞いたが、種の性格ってお母さん譲りなのかな?何処かぶっ飛んだ事をいう所なんてそっくりかもしれない。

 

咲「ああ~!あの時のお兄さんが……あれ?でも、お兄さんがいなくなった後も果実さんていなかったっけ?」

 

沙織「ええ、歩夢君は卒業した後に”多田識市”にある大学に通い始めたし、果実ちゃんとは遠距離恋愛になったの。でも、果実ちゃんはここに残って働いてくれてたわ。だけど……途中で辞めさせられちゃったの」

 

舞「えっ?”辞めさせられた”?」

 

駆「……いぶさんにですよね」

 

大介「うん。いぶさん、果実ちゃんがパティシエになろうとしてるのは反対だったみたいだからね。古城さんの家は代々この海原市の山を管理しているから、跡取りの事とかもあったんだと思うよ。長女の黒栖ちゃんも少し前に”駆け落ち”同然で出ていってしまったって言うし……あ、ご、ごめんね!今いぶさんのお家にお世話になっているのに!」

 

 お母さんが話してくれたお祖母ちゃんの話の通りだ……お母さんはお祖母ちゃんに反対されて、高校の卒業後に家を出ていき、お祖母ちゃんとは絶縁関係になる。そのせいで、僕はお祖母ちゃんの事はほとんど知らなかったのだ……でも、この時代で直接話してみて、そんなに厳しい人には感じなかった。もしかしたら……お母さんに厳しくしたのは何か理由があるのではないのか?お祖母ちゃんに直接……聞いてみようかな。

 

大介「そ、そうだ!午後のお手伝いはもう大丈夫だから、みんなで出かけてきたらどうだい?」

 

咲「本当?それじゃあ、駆君とコルーリをこの町のおすすめの場所に案内するよ!ねえ、舞!」

 

舞「そうね!せっかくだし、お話ししながら行きましょうか!」

 

駆「分かりました。あの、良かったらここでパンを買って行ってもいいですか?」

 

沙織「ええ!勿論いいわよ!」

 

 昼食を頂いた後、僕はチョココロネを2つ買い終える。

 

沙織「はい、お待たせしました!」

 

駆「ありがとうございます!大事に食べますね!」

 

大介「あっ!ちょっと待ってくれ!」

 

 お店から出ていこうとすると、大介さんが厨房からある物を持ってくる。それは調理器具の”泡だて器”だった。

 

駆「これって……泡だて器ですか?でも……そんなに使われてないですよね。傷は少ないけど……この傷のつき方は、泡立ての練習でもしてたんでしょうか?」

 

大介「よく分かったね。これは僕が果実ちゃんにプレゼントした物なんだ。僕がよく使うメーカーのものだよ。といっても、僕は一度買ったら長く使うようにしてるからそんなに買い換えないけどね。その泡だて器なんだけど……歩夢君に会うようなら渡してくれないかな?駆君は歩夢君の親戚の様だし、歩夢君と会う機会もあるだろう。歩夢君なら果実ちゃんと一緒に居るかもしれないからね……お願いできるかな?」

 

駆「……分かりました。大丈夫ですよ……歩夢さんは果実さんと一緒に居ます。2004年に結婚して、今年の1月に双子の赤ちゃんも生まれました。住所も分かりますから……しっかりと渡します」

 

大介「そうか……!教えてくれてありがとう」

 

駆「では……失礼します」

 

 僕は受け取ったパンと泡だて器をカバンにしまい、外で待つ咲さん、舞さん、コルーリの元へと向かった。そして、咲さん達に案内されて山の中へと入っていく……どこに行こうと言うのだろう?

 

 

PM14:00 海原市 山頂〈大空の樹〉

 

駆「ここは……?」

 

咲「ここはね、大空の樹って言って私達の思い出の場所で大切な場所なんだ!」

 

舞「ここで咲とチョッピ達とも再会することが出来たのよね」

 

チョッピ「そうチョピ!舞たちとまた会うことが出来たチョピ!」

 

コルーリ「空気がとても澄んでいますね。それにここにある洞は……泉の郷ともつながっているようですね。今は不完全の様ですが……カケル、どうしましたか?」

 

 この樹に近付いてから変な空気を感じる。悪い気配という訳ではないが……僕の事を探るように遠回しに干渉してこようとしてくる。何かあるのは間違いない……そう思った僕はリンクの応用でその気配に逆に干渉してみる。すると、女性の声が僕の頭の中に響いてくる。

 

謎の気配(あの子に似た気配だと思ったのですが……人違いだったようですね)

 

駆「あなたは誰ですか?名前くらい名乗ったらどうですか?」

 

コルーリ「カケル、誰と話しているんですか?まさか……敵ですか?」

 

駆「誰かが僕の頭の中に話しかけてきた。一応、敵ではないみたいだけど、もう少し話してみるから……警戒はしてて」

 

フィーリア(警戒しなくて結構ですよ。私の名は”フィーリア”……泉の郷の王女です)

 

 泉の郷……フラッピ達の故郷の事だよね。その王女が……わざわざ僕に話して来たのか?でも、”あの子”って言っていたから人違いのようだが……まあいい、話せるなら色々聞いてみよう。

 

駆「フィーリア王女……と仰るんですね。あの、良かったら直接会ってお話ししていただけませんか?詳しくご説明したいのです」

 

フィーリア(……分かりました)

 

フラッピ「フィ、フィーリア王女と話してるラピッ!?」

 

チョッピ「フィーリア王女、何て言ってるチョピ?」

 

駆「直接会って話を聞いてくれるって……で、どうやってお会いすればよろしいのですか?」

 

 どうやって会うのかを問うと、いきなり僕の目の前にガラス製の”水差し”の様なものが現れる。すると、フィーリア王女は僕に再び話しかけてくる。

 

フィーリア(その”フェアリー・キャラフェ”に雫を入れて下さい。そうすればあなた達を私の元へ導くことが出来ます)

 

駆「雫って……そんなもの持ってないですよ」

 

フィーリア(いいえ、あなたは持っていますよ……そのズボンの”ポケットの中”に)

 

駆「ズボンのポケット?まさか……このカギに付いてる”七色の宝石”ですか?」

 

フィーリア(やはり……その気配でしたか。しかし、あなたから感じる”命の輝き”には……確かに”あの子”がいる。……失礼しました、ではその雫をキャラフェの中に入れて下さい)

 

駆「分かりました。えっと……ここに、これを……1…2…3…456……7!うわっ!?」

 

 僕は王女に言われたように、ストラップに付いた宝石を外してキャラフェに入れる。最後の七個目を入れ終わった瞬間、謎の穴が開き……僕らはその中へと吸い込まれていった。

 

 

空の泉

 

駆「うわあああああああああっ!!!がっ!!!!!……いった~……あっ!?」

 

咲「わああああああっ!!!」

 

駆「がっ!?」

 

舞「きゃああああああっ!!!」

 

駆「ごえっ!?!?」

 

 僕は背中から地面に落下してしまい、そのせいで生じた痛みを感じていたのだが……なんと更なる追い打ちとして順に”咲さん”、”舞さん”と僕の上に落ちてきたので……背中だけでなく腹部に痛みが走る。

 

咲「か、駆君、ごめんなさい!」

 

舞「大丈夫!?」

 

駆「だ……大丈夫です。これ位……はっ!ふたり共、避けて下さい!!!」バッ!

 

咲・舞「「きゃあっ!」」

 

チュ~~~~ンッ!

 

駆「おい……おい!おい!!!ちょっ……」

 

チュンッ!ラピッ!チョピッ!ムプッ!ププッ!

 

コルーリ「痛いチュン……あ、あれ?カケルは?」

 

舞「えっと……そこに……」

 

コルーリ「そこ?……チュン!?」

 

駆「ん~~~っ!!!んん~~~~~~っ!!!!!」

 

コルーリ「はっ///ご、ごめんなさい///」

 

 何があったかと言うと……咲さん達の上から、さらにコルーリ達”妖精”がまとめて落ちて来たのでふたりを何とか退けて代わりに僕がまた下敷きになったと言う事なのだ。まあ、幸い人間態になっているコルーリしか重くなかったからよかったけど……それよりやばかったのは”コルーリの胸部”だ。また大きくなったそれが顔に乗っかったせいで窒息しそうになった……これだから大きい胸は”命を奪う凶器”だと言うのだ。

 

駆「取り合えず……退いて。よっと……えっと、ここは”泉”?」

 

ムープ「ここは……”空の泉”ムプ!」

 

駆「空の……泉?」

 

フープ「フープたちが住んでた泉ププ!」

 

駆「つまり……泉の郷にある泉の一つって事か……っ!泉に何か出て来たっ!?」

 

フラッピ・チョッピ・ムープ・フープ「「「「フィーリア王女ラピ(チョピ)(ムプ)(ププ)!」」」」

 

 泉に光の柱と共に現れた小柄な人型の少女……フラッピ達の様な妖精ではないが気配は妖精と似ている。彼女が僕に話しかけてきたフィーリア王女らしい。

 

フィーリア「初めまして、"あの子"が育んだ命から生まれた……"世界を変える宿命を背負った子"」

 

駆「世界を変える……か」

 

フィーリア「はい。では、話しましょうか……あなた達が歩んで来た道について」

 

 フィーリア王女にも僕たちがこの2006年に来た理由、プリキュアさん達に迫る危険についてを話した。

 

フィーリア「そう言う事でしたか……未来から来たからこそあなたの”命の輝き”がこの世界に二つも存在するのですね。そして……”あの子”の輝きを感じる理由も理解できました」

 

駆「聞きたい事があります。僕が持っていた”雫”はある人から預かった物、僕の”命の輝き”に関係している人物……フィ―リア王女、あなたがさっきから言っている”あの子”と言うのは……もしかして」

 

フィーリア王女「お察しの通り……”いぶ”の事です。あの子の一族は古くから私達と交流があり、緑の郷と泉の郷を繋ぐ門を守護していたのです。彼女とは……まだあの子が幼子であった時からの仲です。当代の主となった後も良き友人として……私達は共に支え合ってきました。先ほど使った”雫”は、いぶに与えた物です……こうして、いぶの”子”がまた命を育み、私の前に来てくれたことを嬉しく思います」

 

 フィーリア王女は懐かしむように語り出すと、僕を見て小さく微笑んだ。

 

駆「”古城家”が……ううん、お祖母ちゃんが泉の郷と交流を持っていたなんて」

 

フィーリア「しかし、いぶは……もうここに来ることはありません。もう……何十年も会いに来ていませからね。それに、この役目も……いぶの代で終わります。あの子は自分の子供たちに”自分の道”へ進むことを選ばせましたから。ですが……これがあの子の……いぶの考えならば、私はそれを尊重したいのです」

 

駆「自分の子供に……”自分の道”を選ばせたってどう言う事ですかっ!?」

 

フィーリア「代々、いぶの一族は子供に私達の存在を知らせて使命を継承してきたのです。しかし……いぶは自分の子供である二人の少女に、私達の存在を教えることをしませんでした」

 

駆「泉の郷の存在を……知らせなかった?」

 

 フィーリア王女の話を聞いて……考える事がある。お祖母ちゃんがお母さんや黒栖さんにどうして厳しく当たったのか?泉の郷と緑の郷の交流を守る使命を持っていた”古城家”なのに継承をしなかったのか?これって……何か理由があるんじゃないのか?

 

フィーリア「それについては本人に聞いてみる方が良いでしょう。そしてあなた……駆さんでしたね。あなたがプリキュア達を救い、世界を変える使命を背負っているのなら……私も協力しましょう」

 

 すると、フィーリア王女は光を集めるとそれを球状の宝石にして僕へと渡してくる。

 

フィーリア「精霊の光を集めたものです……これがあなたの使命を救う力となる事を祈ります」

 

駆「ありがとうございます!」

 

フィーリア「雫もお返しいたしましょう。では、お気を付けて……」

 

駆「はい!えっ?うわっ!!!」

 

 僕らは再び空間に空いた穴に飲み込めれる。それを見るフィーリア王女はただ微笑んでいるだけであった。

 

 

PM16:00 海原市 古城邸

 

 フィーリア王女との謁見が終わり、僕らは早い段階で解散して古城邸に戻って来た。その理由は……。

 

駆「……いぶさん、入ってもよろしいでしょうか?」

 

いぶ「ええ、どうぞ……お入りなさい」

 

お祖母ちゃんに……聞きたい事があるからだ。僕はお祖母ちゃんの部屋の前まで来て、入っていいかを確認するとお祖母ちゃんの許可が出たため襖を開ける。コルーリも徒棟さんもいない……お祖母ちゃんと二人だけでの話し合いだ。

 

いぶ「いらっしゃい、どうしたの?」

 

駆「今日……PANPAKAパンに行ったんですけど、そこで娘さんについて教えてもらったんです」

 

いぶ「ああ……果実の事ね。果実、あそこのケーキが大好きだったのよ……小さい時に”ケーキが食べたい!”って言ったから初めて買ってあげたのがPANPAKAパンのケーキだったの。今でも覚えてるわ……目をキラキラさせて、夢中でケーキを食べるからお口をクリームまみれにしてね……うふふっ!」

 

駆「果実さんは高校入学と同時にPANPAKAパンでアルバイトを始めた……夢の”パティシエ”になるために。でも、いぶさんは反対してたんですよね?」

 

いぶ「そうね……駆君は知らないかもしれないけれどね、私達”古城家”にはある使命があるのよ」

 

駆「それって……海原市の山を管理し、”ある存在”を守る事ですよね?」

 

いぶ「そう……フィーリアに会えたのね。良かった……その雫を持たせておいて正解だったわ。咲ちゃんはよくあそこに行っている事は知っていたから、仲良くなった駆君をあそこに連れて行ってくれると思ったの……それに”プリキュア”であるあの子達ならフィーリアだって警戒はしないしね」

 

 どうやら……フィーリア王女に会わせる事は予定通りだったのだろう……ん?

 

駆「咲さん達がプリキュアって……知ってたんですか?」

 

いぶ「ええ、泉の郷に伝わる伝説の戦士”プリキュア”……幼き頃にフィーリアに聞いたことがありますからね。そして、夕凪に現れる怪物を退治しているのが咲ちゃん達……あの子達から泉の郷で感じる”光”に似たものを感じるもの。私、勘だけはよく当たるのよ……うふふっ」

 

駆「何故……僕をフィーリア王女に会わせようとしたんですか?」

 

いぶ「フィーリアに会えば、あなたが求めるものが手に入る……そう思ったからよ。そのために……わざわざ”過去”まで来たのでしょう?」

 

駆「ッ!?」

 

 お祖母ちゃんの口から信じられない言葉が告げられた。”過去”まで来た……それを僕に行ったと言う事は……もう……分かっていると言う事だ。

 

いぶ「愛娘の顔を忘れるものですか……あなたのお耳なんか果実そっくりだし、それに食べ物を食べた時に褒める癖なんかも一緒だわ」

 

駆「いつから……気付いてたんですか?」

 

いぶ「確信したのはあなたの持っていた”お守り”よ。あれは”私”が果実に作ってあげたお守り……小さい時から怖がりで、泣き虫だったあの子のために作ってあげた……世界で一つだけのお守りよ。だけど、そのお守りは果実にあげたものと全く同じだわ。そして、果実にお守りを挙げたのは”7歳”の時、あれから”十五年”は経っている……でも、そのお守りはそれ以上に傷んでいて、あなたはそれを”お母さんがくれた”と言ったわ」

 

駆「嘘かもしれないじゃないですか?」

 

いぶ「あなたの表情を見れば、嘘をついていないのは分かるわ……だけど、仮に果実に子供が出来ていたとしても、あなたの様な大きい子はいる訳がない。……なら、今よりもずっと先の”未来”から来たとしたら、あなた位の大きい子もいるし、お守りが時間と共に傷んでいてもおかしくない……そう考えたのよ」

 

 まさかあのお守りがお祖母ちゃんが作ったものだったなんて……あのお守りの事を話すべきではなかったかもしれない。いや、徒棟さんもこの屋敷に昔からいるみたいだから、あのお守りを見つけた時点で分かっていただろうし……間違いなくお祖母ちゃんに話していただろう。でも、これで……隠している必要もなくなった。聞いてみよう……どうしてお母さんに……こんなに優しいお祖母ちゃんが厳しく当たらなくてはいけなかったのかを!

 

駆「……”お祖母ちゃん”、聞いても良いかな?」

 

いぶ「ッ!?……ええ、いいわよ」

 

駆「どうして……黒栖さんやお母さんに厳しく当たったの?まだ……過ごした時間は少ないけど、お祖母ちゃんが優しいのは分かる。僕も……お母さんから聞いていた印象と違っていたから驚いたよ。……どうして?」

 

 お祖母ちゃんは僕の問い掛けに、真剣な表情で……答えた。

 

いぶ「あの子達が……”諦めない”様にするためよ」

 

駆「諦めない?」

 

いぶ「黒栖は病を患っていた……治療しても四十代までが限界、出産の際に掛かる負担で命を落とす可能性は健康な妊婦の5倍……これだけの危険を背負っていても、好きな男性と共に歩む……それがどれだけの”苦難の道”か分かる?果実はパティシエになりたいと言ったわ……職人は世界中にいる、常に最新・最高の技術を……努力を求められる。今までの人が考え付かなかった事に挑戦し続けなくてはならないわ。これも……黒栖とは違うけれど”苦行”よ。この二つに共通するのはね……”諦めずに進み続けなければならない事”よ」

 

駆「諦めずに……進み続ける……」

 

いぶ「あの子達の父親……あなたの祖父である”古城 王器《ふるき おうき》”は果実が生まれてすぐに病で亡くなったの……私は、亡きあの人の分もあの子達を育てていかなければならなかった。だから、私はふたりに”夢”を、”愛”を……それぞれの道を進むのならと厳しく接していた。私は……ふたりの幸せを誰よりも願っているわ」

 

 古城のお祖父ちゃん……お母さんが一度も話してくれたことがない人物だ。話を聞いていると”話さなかった”んじゃなくて……”知らないから話せなかった”のだろう。厳しく当たった理由は分かった……だけど、もう一つの疑問がある。

 

駆「なら、どうして”古城家の使命”をどちらかの子供に継承しなかったの?」

 

いぶ「……古城の使命を私の代で終わりにしようと思ったのよ。物事に……必ず終わりがあるようにね。私はあの子達を、最初から古城家に縛っていようなんて思っていなかったわ」

 

駆「……ん?そう言えば、お祖母ちゃんは古城家の使命を継承して、子供の時からフィーリア王女と関係があったんだよね?」

 

いぶ「ええ、私の両親のもとに生まれたのは”女”であった私だけ……だから、私はこの古城家を継承し……親が決めた相手とも結婚したわ。主人は優しい人だったし、私の事を愛してくれた……私もあの人を愛していたわ。でも……子供の頃は私にだって”夢”があったわ。”学校の先生”になりたかった……小さな子供たちに勉強を教えている、あの優しい姿に憧れたわ。私は夢を叶えることは出来なかったけど……せめてあの子達だけは自由に、自分が決めた道を……進んで欲しかったから。どうせ……私しか生まれなかった時点で、消える予定の一族だもの」

 

 お祖母ちゃんが言っている事は事実だと思う。でも……それが役目を継承しなかった理由か?何かもっと……違う理由があるような気がする……だけど、今の僕には分からない。

 

いぶ「でも……このような形で”孫”の顔も見れた。果実が……幸せでいるのなら……こんなに嬉しい事はないわ」ニコッ

 

駆「……うん」

 

 幸せ……か。これから先に待っている”出来事”、それによって起きる不幸の連鎖……僕のせいで……!

 

いぶ「”駆”……おいで」

 

駆「はい……ッ!?」

 

ギュッ!

 

 お祖母ちゃんが腰掛ける窓際に僕の近寄ると、お祖母ちゃんは優しく僕を抱きしめる。

 

駆「お祖母ちゃん……?」

 

いぶ「叶わないと思ってた。孫を……抱きしめることが出来るなんて……ありがとう……!」

 

駆「お祖母ちゃん……!」

 

いぶ「いいのよ……ここにいる間は好きなだけ甘えなさい」

 

 お祖母ちゃんは涙ぐみながらも微笑んで……優しく僕の頭を撫でてくれた。

 

 

……一週間後 

 

海原市”夕凪” 海岸

 

駆「……ネツゾーンが現れない。このまま現れなければ……もう少しお祖母ちゃんと一緒に居られる。だけど……種を助けないといけないし、もう”固定化”してもいいとは思うけど……クアライト博士に止められてしまってるしな……」

 

 ネツゾーンを退けてから一週間の時間が経った。しかし、ネツゾーンの次なる手は現れていないし、これと言った危機もない。フィーリア王女から貰った宝石を使い固定化しても良いかもとクアライト博士に相談もしたが……許可は出ていないし、Aqストッパーの件もいろいろ言われたのだ。

 

 

一日目 PM19:00 古城邸 客間〈コルーリの部屋〉

 

クアライト『カケル、君の安全を考慮して新調したAqストッパーに”外部からセーフティを制御できる機構”を組み込んだクア。コルーリに持たせるようにする……君に急激なAqライトの放出があった際にセーフティを緩めることが出来れば……Qaフィールへの負担も抑制できるだろう。しかし、Aqライトの放出はやはり危険……そこでクア。”AqライトをQaライトに再反転する”ための機構……以前話したことがあったクアね?』

 

駆『2012年の時に言っていたものですね。確か……”Qaフィール”の問題と”QaライトがAqライトに変換するメカニズム”の問題があるって言ってましたよね』

 

クアライト『君が提供してくれたAqライトのサンプルのおかげでメカニズムは把握できた。後は完成させるだけだが……』

 

駆『もう少しかかりますか?』

 

クアライト『いや……後、二週間ほどで完成予定クア。しかし、完成するまで君がプリキュアを”固定化”するためのアイテムをQaフォーンに保存することが出来ない。Splash☆Starを固定化すれば、君のQaフィールに繋がってしまう……そうならばAqライトはこれまで以上に放出されるだろう。……カケル、新ユニットの完成までは固定化アイテムの保存を禁止とする……これは”命令”クア!』

 

駆『……分かりました』

 

 クアライト博士との通信を終えて、後ろで待っていたコルーリが僕に近寄ってくる。

 

駆『コルーリ、セーフティを制御する装置は君が持ってるの?』

 

コルーリ『はい、こちらです』

 

 コルーリが見せてくれたのは、Qaフォーンよりも小型の液晶端末……あれでセーフティを制御出来る訳か。それにしても……。

 

駆『ハザードトリガーの自爆スイッチみたいだな』

 

コルーリ『違います!これは……カケルの安全の為です!』

 

駆『分かってるよ……コルーリ』

 

コルーリ『はい?』

 

駆『友達として、仲間として……もしもの時は頼むよ』

 

コルーリ『任せて下さい……私はカケルを守りますから!』

 

 

駆「あと一週間で完成……でも、それまではお祖母ちゃんと一緒に居られるからいいか。それに……この夕凪もいい所だし、種を助けたら……ここに連れて来てあげよう。お祖母ちゃんにも……会わせてあげたいしな」

 

 この夕凪で過ごした一週間は……結構楽しかった。コルーリはPANPAKAパンに買い物に行ってしまったからいないし……せっかくだから、僕は一週間にあった”出来事”を思い出していく事にした。

 

駆「えっと……ああ、健太くんの家は面白かったな。釣りなんて初めてやったけど……魚釣りは根気が必要って言うのがよく分かった。でも……」

 

 

健太『おもしろくない場合は、”おもくろい”!』

 

 

駆「あれはないよね……」

 

 面”白”いくないから、面”黒”い……大変面白くないギャグだった。僕の方がもう少し面白いギャグが作れると思った……例えば……こんなの!

 

駆「美味しいレタスが採れたっす!はい、カケルじゃ~ないと!……うん、結構いけるな」

 

 うん……健太くんよりは面白いはずだ!ふっふっふ……これは勝ったな!

 

駆「後は……あ、そう言えば……海であったあの妖精……元気かな?」

 

 

アザラシ型の妖精?『くるる~ん?』

 

 

 海岸に散歩しに来た時に、浜辺に打ち上げられていた小さいアザラシ……の様な生き物。気配から妖精の様な存在だろうとは思ったから、海に戻してあげたのだが……ちゃんと帰れたのかな?

 

駆「そう言えば、稀に川にまで上がってきてしまうアザラシがいたって昔のニュースであったし……あの妖精もきっと同じなのだろう。でも……あの妖精……どこから来たんだろう?海の中にまだ見ぬ妖精の国でもあるのだろうか?」

 

 まあいいか……気にしなくても。おっと……もう少し別の事を思い出そう!

 

駆「お祖母ちゃんに料理とスイーツもご馳走出来たし……一緒にケーキも作ったし……家族に甘えるのって……こんな感じなんだな。あんまり甘えたり……してなかったからな。もう少し甘えても……いいよね?」

 

ふむ、この一週間ほどお前の事を観察していたが……お前が何故プリキュアの一撃を押さえることが出来たのかが分からん。

 

駆「ッ!?お前は……人間じゃないな。それに……どこかで会ったような……ッ!!お前、僕の事を吹き飛ばした”金色の筋肉男”っ!!!」

 

キントレスキー「ほう、何処かで会っていたか?まあいい、私はキントレスキー!プリキュアである貴様に勝負を申し込む!」

 

 見た感じこの世界の存在だし……ネツゾーンとは関係ないようだ。正直、ネツゾーンの干渉もなしに僕がこいつらに関わっていいのか微妙だ。

 

駆「……お前に関わる理由がない」

 

キントレスキー「ふん、下らない事を!戦士であるのなら……理由など必要ない!」

 

駆「お前が何と言おうが……お前に関わる気はない」

 

キントレスキー「そうか……ならばっ!!」

 

駆「ぐっ!?」

 

 キントレスキーは僕の胸倉を掴むとものすごい力で宙吊りにしてくる。抵抗するために奴の腕を両手で掴むが……びくともしない。まるで金属でも掴んでいるかのようだ。

 

キントレスキー「お前の事は見ていた……確かこれがお前の”宝物”だったか?」

 

駆「あっ!?返せっ!!!」

 

 奴は空いている右手で僕の上着の内ポケットから……大切なお守りを取り出して僕に見せつける。何とか左腕を伸ばして取り返そうとしたが……僕の左手はただむなしく空を切るだけだった。

 

キントレスキー「どうだ……これで戦う理由が出来ただろう?さあ、私と戦え!!」

 

ドクンッ!

 

駆「……いいよ」

 

ドクンッ!……ドクンッ!!

 

駆「こんなに……怒りが込み上げてくるは初めてだ……」

 

ドクンッ!ドクンッ!!ドクンッ!!!ドクンッ!!!!ドクンッ!!!!!

 

駆「お前が戦いたいって言うなら……望みどおりにしてやる!!!!!」

 

 この時代に来て……僕の心に溢れてきた幸せな気持ち。それが……大きな泉に溜まった水のようにキラキラと光っていたのに、僕の中に湧き上がる”怒り”が……その泉を枯らしていく。心の中を真っ黒になっていく……僕の中にある感情は、目の前にいるこいつを……”消したい”と言う感情だけだった。

 

 

To Be Continued……




いかがだったでしょうか?聖なる泉って……実は私が好きな”クウガ”の碑文から取ってみたんです。この碑文の続き……皆さんは知ってますか?次回、キントレスキーと戦うエクス!別行動をとっていたコルーリの前に現れるマーネル!?海岸に集結するプリキュア達!そこでマーネルの頭の上から降ってくるデリート!戦いの中に巻き込まれるいぶ。それを見たエクスは怒りの沸点を越え……!乞うご期待ください!
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