ヴァールハイト・プリキュア   作:32期

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ふたりはプリキュアS☆S編、今回が最終回になります。キントレスキーの襲撃を受けた駆に芽生える”怒り”の感情。そして……エクスの新たな姿が!?今回はかなり長く、その上シリアス注意です。お覚悟はよろしくて?ってことでどうぞお楽しみください。

5/9はキュアコーラルの”涼村 さんご”ちゃんの誕生日でした!今回のトロプリの推しにしようか迷っている子です!今のとこ”まなつちゃん”か”さんごちゃん”でか~な~り迷ってます!でも、ビジュアルはかなり好みだし、”ペケッ”も可愛い!優しいし……もう好きな所しかない!話が逸れた!誕生日おめでとう!今年の平和は任せるぜ!




第五十三話:命を消し去る怒りの権化!”凄まじき戦士”、その名は……?

海原市”夕凪” 海岸

 

side:キントレスキー

 

キントレスキー「ふっ!ようやくその気になったか!ならば……」

 

プリキュアの少年「・・・・・・」

 

キントレスキー「さあ……プリキュアとなれ!」

 

 私はようやく戦闘する意思を示したプリキュアの少年を離し、真剣勝負に相応しい距離を取るために下がり”プリキュア”へなるように促す。

 

プリキュアの少年『……プリキュアプリケーション……インストール!!!』〈タップ〉

 

エクス「重なる思いで、駆けろ未来……キュアエクス!」

 

 少年は機械を取り出し、それを使ってプリキュアとなる。白い装束を纏ったその姿は……溢れんばかりの”怒り”を静かな闘気で包み込んでいるようだ。そして何よりも……奴の”目”が良い。

 

キントレスキー「キュアエクス……か、良き名だ。その目……あのふたりの”プリキュア”とは違う。目の前の敵を倒そうとする事に、一切の迷いのない”戦士”の目……気に入ったぞ!」

 

エクス「そんな事はどうでもいい……さっさと来い」

 

キントレスキー「ふむ、良いだろう!では……行くぞおおおおおおおっ!!!」

 

 私はキュアエクスの誘いに従い、全身全霊の力を込めて踏み込み、最高の力を持って左拳を打ち込む。一瞬で距離を詰められたと言うのに、キュアエクスの目はただ私の一撃を見据えている……私の踏み込みも、一撃も、全て見切っているのだろう。やはり……ふたりのプリキュアとは違う!甘さもなく、躊躇も感じさせない一人前の”戦士”!!実に楽しみだ……この戦士と戦えることに私は確かな興奮を感じていた。

 

キントレスキー「てやあああああっ!!!!!」

 

エクス「すぅ……ッ!」

 

ドンッ!!!!!

 

キントレスキー「・・・・・・ガハッ!?」

 

エクス「お守りは返してもらう……良かった。……これで、お前に手加減する理由もなくなった。もう……お守りは無事だからな……どうする?これで終わりにする?」

 

 キュアエクス……奴は私の一撃をやはり読み切っていた。奴の顔面に打ち込んだはずの一撃を最小限の動きで躱し、次の瞬間には私の”鳩尾”に奴の左拳を叩き込まれていた。”カウンター”……急所へと打ち込む完璧な”精度”と一撃の”速度”と”威力”……素晴らしい!私がこの充実した痛みを感じている間に、キュアエクスは私が右手に持っていた奴の”宝物”を取り……ズボンのポケットへと仕舞い込む。その間の表情は戦士よりも”子供”の様だったが……仕舞い終わった後に私に向けた表情は再び”戦士”の顔へと戻っていた。いや……先ほどよりもさらに洗礼された”歴戦の戦士”の様だ。ますます気に入ったぞっ!!!

 

キントレスキー「まさかっ!!ここからだぞ……キュアエクスッ!!!」

 

エクス「安心しなよ、最初から止めさせる気はないからさ。お前の”心”も”身体”も……全てを”消してやる”っ!!!」

 

 さあ……お前の全てを私にぶつけて来い!キュアエクス……お前こそ私の全てを賭けるに相応しい!!!

 

 

side:ネツゾーン

 

カイザーン「……あっ……うふふっ♪」

 

 カイザーンは自身の玉座に座っていると、”何か”を感じたのか……天井を眺める。その”何か”を理解したらしく、彼女の口角が上がる。

 

カイザーン「私のアルタイルが……”怒り”に震えてる♪もうすぐそこまで来てるもんね~……そうだ♪私とあなたに出来た”リンク”……せっかくだし使っちゃお♪」

 

 カイザーンは眺める天井へ向かって次元の裂け目を開き、そこへ”Aqライト”を流し始める。

 

カイザーン「えへへっ♪私からの祝福よ……そうだわ!せっかくだし私も2006年に行きましょう!不完全でも”王”の誕生だもの……”祝って”あげなくちゃね♪」

 

 Aqライトが流れていく次元の裂け目……その中に飛び込んでいくカイザーン。彼女は怒りに震える愛しの”彦星”のいる2006年の世界へと向かって行く。それは……彼女の考える”王”の誕生を”祝う”ため。

 

 

海原市”夕凪” パン屋〈ベーカリーPANPAKAパン〉

 

side:コルーリ

 

コルーリ「こんにちは!」

 

大介「おお、コルちゃん!今日もいらっしゃい!」

 

 カケルとこの2006年に滞在して一週間が経った。お父様が新しいカケル用の装備を完成させるまではこの2006年を出発することも出来ないし、プリキュアの固定化も禁止されている事、ネツゾーンの襲撃もないため平和に過ごせている。

 

コルーリ「はい!こちらのチョココロネを下さい!」

 

沙織「うふふっ♪今日もありがとうございます。そうだ!おまけしてあげるわね!」

 

コルーリ「ふわぁ~!ありがとうございます!」

 

 最近はこのPANPAKAパンのチョココロネが私達のお気に入りで、今日も散歩の途中で私が買ってくることにしたのだ。私は飛べるので移動も楽ですからね。それにしても……この時代に来てからカケルは笑う事も増えてきましたし、どこか安心しているような精神的にも良い傾向が見える様になってきました。カケルに何の問題も起きないことが一番……お父様が開発を終えるまでは何もないと良いですけど……。

 

咲「あっ!コルーリ、いらっしゃい!」

 

コルーリ「咲さん、こんにちは!……お出かけですか?」

 

咲「うん!舞と一緒にね!もうすぐ来ると思うんだけど……あっ!来た!お~い、舞~~~!!!」

 

舞「お待たせ、咲!あら、コルーリ!こんにちは!」

 

コルーリ「こんにちは、舞さん!お出かけなんですよね?どちらに行くんですか?」

 

 パンを受け取った後、お店の奥から咲さんが出てくる。なんでも舞さんとお出かけするらしい……すると、ちょうど舞さんもやってきて店内に入ってくる。お出かけと言う事は何かあった時に駆け付ける必要がある。そう思った私は舞さん達にどこに出かけるのかを訪ねる……が、それを遮るよう誰かがに店内に入店してくる。

 

沙織「いらっしゃいませ!あら、あなた!」

 

大介「ああ、君か!今日もいらっしゃいませ!」

 

どうも、店主さん

 

コルーリ「この……声……!」

 

コルーリ・咲・舞「「「マーネルッ!?」」」

 

 大介さんと沙織さんが声を掛け、その声に返すように答える声……私はその声に覚えがあった。間違える訳がない!だって、その声が……マーネルの物だからだ!

 

マーネル「今日も素晴らしいパンの香りと……この”ホイップサンド”の生クリームも最高の泡立て加減だわ。やはり一流の職人……流石ね。では、こちらを頂ける?」

 

沙織「はい、毎度ありがとうございます!」

 

コルーリ「マーネル、どうしてあなたが!?」

 

マーネル「うるさいわよ~、コルーリちゃ~ん。ここは一流の職人の店よ……声をあげないで。話があるなら外で聞くわ」

 

コルーリ「ま、待ちなさい!」

 

咲「こ、コルーリ!?待ってよ~!」

 

 マーネルは普段の誰かを馬鹿にしたような口調ではなく、どこか落ち着いた口調でパンを購入し外へと出ていく。私はそんなマーネルを追いかけ店内を出ると、咲さん達も店外に出ていく。マーネル……彼女は一体、何を考えているの?人影のない場所まで移動したマーネルに対して、私は問いかけた。

 

コルーリ「マーネル、あなたは……何を考えているんですか!?」

 

マーネル「そんな事、あんたが思っている通りよ~!コルーリちゃ~ん!キュアエクスを消しに来たのよ……見なさい!あたしの身体から溢れるパワー!カイザーン様から頂いたAqライトの祝福によって強くなったのよ!」

 

咲「前に会った時と違うって事?でも……どうしてお店で戦いを始めなかったの?」

 

 確かに……あの行動は少し……いいや、かなり変だ。マーネルは以前、キラパティを直接襲撃したり、店内でお客さんを巻き込んでキラキラルを奪ったりしていた。そんな彼女がそれをしなかった……一体、どう言う考えなのだろう?

 

マーネル「えっ?そんなの……キュアエクスがいないからに決まってるでしょ。それと……」

 

舞「……それと?」

 

マーネル「あの店は……一流のパティシエがいる最高の店よ。私はへらへら楽しそうにスイーツを作るへぼ職人は嫌いだけど、最高の職人には敬意を払う。あの男性は最高の技術と腕を持っているわ……そんな職人の店で暴れるなんて行いを……あたしはしない」

 

コルーリ「あなたの今までの行いで……よくそんな事が言えますね!」

 

マーネル「あっはっはっは!そうね~!その通りだわ!さあ……キュアエクスは何処?さっさと消したら……あんた達の番よ、この時代のプリキュア。それとも~……先にあなた達が歴史から消えたいかしら~?」

 

 やはり……彼女はまともじゃない!このままマーネルをカケルの元へ導いても、カケルが異常なく戦えるだろうか?でも……カケルじゃなくちゃ倒せない!なら、カケルに有利な状況を作っておくよう努力しなくては!

 

咲「消えたい訳ないでしょ!」

 

舞「そうよ!私達は絶対に消えないし、駆君も消させたりしないわ!」

 

フラッピ「咲っ!」

 

チョッピ「舞っ!」

 

咲・舞「「うん!」」

 

 フラッピさんとチョッピさんの声に従い、咲さんと舞さんは”クリスタル・コミューン”を取り出し……変身を開始する。

 

咲・舞『『デュアル・スピリチュアル・パワー!』』

 

咲「未来を照らし!」

 

舞「勇気を運べ!」

 

ブライト「天空に満ちる月!キュアブライト!」

 

ウインディ「大地に薫る風!キュアウインディ!」

 

Splash☆Star「「ふたりはプリキュア!」」

 

ウインディ「プリキュアの歴史を汚す者よ!」

 

ブライト「アコギな真似はお止めなさい!」

 

 前回の変身とは違う”黄緑色”と”水色”のコスチューム……あれがプリキュアの中で異なる名前を持つSplash☆Starのもう一つの姿である”キュアブライト”と”キュアウインディ”。花鳥風月の”月”と”風”を象徴するプリキュアが、私達の目の前に姿をあらわす。

 

コルーリ「お二人だけで戦うのは不利です!まずはカケルと合流を……!」

 

warning!warning!warning!

 

コルーリ「ッ!?嘘……戦闘なんてしてないはずなのに!?」

 

 カケルのApストッパーを遠隔操作できる端末から、戦闘発生のアラートが鳴り響く。マーネルは目の前……ネツゾーンと戦闘しているはずがない。それなのに響くアラートを聞き……私は動揺する。

 

ブライト「コルーリ、どうしたの!?その音は何!?」

 

コルーリ「カケルが……何かと戦ってます!場所は……海原市の海岸!?集合の場所から移動もしてないのに……!」

 

マーネル「へぇ~……キュアエクスは海岸にいるのね~?」

 

コルーリ「しまっ!?」

 

 動揺していたのもあり、思わずカケルのいる場所を口にしてしまった。それを聞いたマーネルは私達を無視し海岸方面へ向かって飛んで行ってしまう。このままではカケルが……謎の敵とマーネルによって戦闘が不利になってしまう。直ぐに向かわなくては!

 

ウインディ「このままじゃ危ないわ!私達も駆君の所へ向かいましょう!」

 

ボンッ!

 

コルーリ「ブライト、申し訳ないですけど……私を肩に乗せてチュン!」

 

ブライト「分かった!いくよ、ウインディ!コルーリもちゃんと掴まっててね!ふっ!!!」

 

 妖精に戻り、ブライトの肩に乗せてもらって二人のプリキュアは海岸へと飛んでいく。アラートを聞いてから、向かって行く途中も……私は嫌な胸騒ぎを感じていた。何でしょう……この胸騒ぎは?何か……嫌な予感がする!カケル……無事でいて下さい!

 

 

海原市 古城邸

 

side:いぶ

 

徒棟「奥様、最近は顔色も良くなっていらっしゃいますね……どうぞ、紅茶でございます」

 

いぶ「ありがとう……まさか、孫とこんな時間を過ごすことが出来るなんてね。もう少し……”生きたい”と思ってしまうわ。あの子達も遠ざけて……ひっそりと”終わり”にしようと思ったのにね」

 

 自身の部屋で徒棟の淹れた紅茶と共に彼と話をしているいぶ。彼女はこの一週間……素晴らしい時間を過ごしていた。愛する娘の子……自分の孫が料理を振舞ってくれ、そのうえ一緒に料理も出来た。他愛のない話で笑い、彼がこの町で経験した事を聞いて……良い事があれば褒めてあげて、驚くことがあれば驚いてあげる……普通の”祖母”と”孫”……”本当ならあり得ない”時間が彼女に”生”への執着を感じさせていた。

 

いぶ「徒棟……あなたも”兄”である主人が亡くなった後は、こんな形で私の傍に居なくても良かったのよ?」

 

徒棟「私の生涯を懸けても、あなたを最後までお守りする……私の命は若く未熟な私を育てて下さった兄”王器”と兄が愛した”いぶ様”のためにと……すでに決めているのです。それに、兄にも今際の際に頼まれていますから……守れなかったとなれば、兄に顔向けできません」

 

いぶ「昔から……あなたの頑固さは変わらないわね……うふふっ」

 

 いぶは昔の頃を思い出して小さく笑う。徒棟……彼は彼女の夫であった”古城 王器”……旧姓”徒棟 王器《あだむね おうき》”の実の弟なのだ。彼女と王器の結婚が決まった時、王器にとって唯一の肉親で、まだ若かった彼を使用人として古城家に招いた。仕事に対して真剣で、一度決めたら曲げようとしない……そんな彼の頑固さをずっと見ていた彼女は、そんな変わらない彼が可笑しかったのだ。

 

いぶ「うふふ……あら?」

 

徒棟「どうなさいました、奥様?」

 

いぶ「あの空に輝く光は……それに”波”が……”何か”で震えている?」

 

 部屋の窓……その景色から、いぶは空に光る二つの光を見つける。それは彼女にとっては見慣れた”精霊の光”……しかし、見つけたのはそれだけではなかった。”波”だ……彼女がよく眺める海から伝わる波……それを見た彼女は”違和感”を感じていた。波が”震えている”……海がもたらす力ではない”別の力”で震わされている……と、いぶは感じていたのだ。

 

いぶ「……徒棟、車を用意しなさい」

 

徒棟「奥様……また何かを感じていらっしゃるのですか?」

 

いぶ「そうね……駆に何か嫌な事が起きようとしている……そんな気がするの」

 

徒棟「……かしこまりました。すぐにご用意致します」

 

いぶ「ええ、お願いね」

 

 嫌な予感を感じさせる"何か"……その"何か"が自分が心配する"彼"のものとも知らないで、いぶはその"何か"へと向かって行く。

 

 

海原市"夕凪" 海岸

 

side:コルーリ

 

コルーリ「あっ!マーネルがいたチュン!」

 

ブライト「ホントだ!」

 

ウインディ「そこまでよ!」

 

マーネル「……ッ!」ガクガクッ!

 

コルーリ「……マーネル?」

 

 私達が海岸へ到着すると、そこには追いかけていたマーネルが立っていた。しかし、声をかけても振り向きもせず、ただ海岸の一点を見つめて、まるで何かに"恐怖"しているみたいに……身体を震わせていた。

 

コルーリ「いったい何を見て……ッ!?」

 

 目に前に広がる光景は……想像もしていなかったものだった。

 

筋肉質な金色の男「くっ!でえええええっ!!!ガッ!?!?!」

 

エクス「……ヒヒッ!ほら……もう一回だ!!!」

 

筋肉質な金色の男「なっ!?また……う、腕が……!?」

 

エクス「アハハ……はあっ!!!」

 

筋肉質な金色の男「ごはっ!?!?!」

 

 エクスと筋肉質な金色の男が戦闘しているのだが……それは戦闘と言うにはあまりにも”一方的”だった。筋肉質な金色の男は既に呼吸も荒く、肩で息をしていると言うのに、エクスのサークルにより”無理やり”腕を動かされているのだ。それだけじゃない……サークルでわざわざ”加速”を加えて、エクスは自分に向かって拳を振るわせている。それを何度も……何度も……何度も繰り返して、筋肉質な金色の男の鳩尾に”カウンター”を叩き込み続けている。

 

コルーリ「エクス……なんですチュン?」

 

ブライト「キントレスキーが……!」

 

ウインディ「あんなに一方的に……やられてるなんて……!」

 

 普通なら自分を不利にするこのような行為はあり得ないが……エクスには意味がある。これは……自分に対して攻撃をさせることで”カウンター”をすることが出来る。加速を加えれば威力も増すし、エクスの”目”なら見切る事は可能……だからこのような方法を取っているのだろう。

 

マーネル「な、何よあれ!?キュアエクスから感じる”Aqライト”……どうなってんのよ!?」

 

コルーリ「な、何を言ってるチョン?Aqライトは出て……」

 

マーネル「違う!!あいつの中に渦巻いてる”Aqライト”よ!!!何よあれ……”カイザーン様と同じ”なんてありえないっ!!!!!」

 

 マーネルが言った”カイザーンと同じ”と言う発言……どうやらカイザーンによって強化されたマーネルには、エクスに中にある”Aqライト”がカイザーンと同じに感じるようだ。しかし、どれだけエクスのAqライトが強大でも……何よりエクスはこれまでに何回もカイザーンに干渉されてきたが、そんな事を言われた事はない。どうしてここにきてそのような事を言うのか……私はマーネルに問い詰める。

 

コルーリ「カイザーンと……同じ?そ、それはどういう事チュン!?」

 

み~つ~け~た~~~~~!!!!!

 

マーネル「……えっ?」

 

デリート『デリ~~~~~トッ!!!!!』

 

マーネル「デッ!?」

 

バクッ!!!!!

 

 突如、空から響き渡る声……その声の聞こえる空を見ようと目線を上に向けると、大口を広げた”黒いカエル”……ネツゾーンの兵器”デリートが降ってきて、マーネルを丸飲みにしてしまう。そして、デリートは飲み込んだマーネルの外側を包み込むようにまとわりつき、身体から放出されるAqライトがデリートの全体を更に包み、包んでいたAqライトが消え去ると、マーネルの姿をした……新しい”デリート”が現れる。

 

マーネルD『う〜ん……"マーネルデリーター"出来上がり。ふむ、目線は低いが……身体が軽いし、動きやすい!それに……オラッ!!!』

 

シュンッ!!!

 

ブライト「エクスにビームを!?」

 

ウインディ「ダメ!防御が間に合わない!」

 

エクス「……ん?」

 

ドーーーーーンッ!!!!!

 

 ”マーネルデリーター”を名乗るデリートは、自分の身体をゆっくりと動かしながら確認すると日傘をエクスに向けて……そこからAqライトのビームを放つ。エクスはそのビームに一瞬だけ視線を向けたが、既にビームは目前まで迫っていて着弾したのか……砂浜に大きな砂ぼこりを上がる。

 

マーネルD『キヒャヒャ!こんな感じの……武器?も使えるしな!』

 

コルーリ「エ……エクスッ!?」

 

マーネルD『キヒャヒャヒャヒャ……あ?』

 

 エクスを心配していると、砂ぼこりの中に人影が見えてくる。砂ぼこりが落ち着き……その人影の正体が露わになるが……その正体は……。

 

キントレスキー「・・・・・・」

 

ブライト「キントレスキー!?」

 

ウインディ「キントレスキーが……エクスを守ったの?」

 

……不意打ちか?まあ……防御できたし良いか。

 

マーネルD『キヒャヒャ!やっぱり無事だよな~!キュアエクス~~~!!!』

 

エクス「最初から仕留める気のない攻撃だし……このくらい余裕だ……よっ!!!」

 

ドンッ!!!

 

キントレスキー「ぐはっ!?私を……盾に……!」

 

エクス「……近くにいた……あなたが悪い♪」

 

 砂ぼこりの中から出てきたのは……キントレスキーだった。その彼の後ろからエクスの声が聞こえるため、エクスを庇ったのかと思ったが……そんな彼をエクスは勢いよく自身の右側へと投げ倒す。エクスの言葉と態度から分かる……エクスはキントレスキーを"盾"にして、攻撃を防いだのだ。

 

マーネルD『よ〜し!前回の続きだ!!また遊ぼうぜ!!!キュアエクスッ!!!!!』

 

エクス「僕は今……虫の居所が悪い。だから……!」

 

コルーリ・Splash☆Star・マーネルD「「『ッ!?』」」

 

エクス「お前も……消してやるっ!!!!!」

 

 エクスから伝わる……尋常ならざる"怒り"。その怒りを露わにした表情に私達だけでなく、デリートですら驚いていた。……しかし、何か変だ。エクスの行動、精神状態……それらがあまりにも不安定なのだ。まるで……カケルとタネが一緒にいた時の様な……"二人の人間"を見ているみたいです。そんな事を考えていると一台の見慣れた車が海岸近くの道路に止まる。あの車……まさか!?

 

いぶ「あの白い服を着た子は……駆なの?」

 

コルーリ「いぶさん!来てはいけませんっ!!」

 

いぶ「成る程……黒い姿をしたあなたが元凶ね。今すぐこの場から立ち去りなさい!」

 

マーネルD『うるさいババアだな……それに、取り込んだマーネルの感情なのかな?あんたを見てると……イライラするぞ!喰う気にもならない!!決めたよ……ババア!お前はここで消えろっ!!!』

 

シュンッ!!!

 

徒棟「奥様っ!!!ぐあああああっ!!!!!」

 

 デリートは日傘をいぶさんに向けてビームを放つ。それを見た徒棟さんは、すぐさまいぶさんの盾になろうと身体を前に出し背中からビームを受けて気を失う。

 

いぶ「徒棟っ!?……っ!!」

 

シュンッ!!!

 

いぶ「きゃあああああっ!!!!!」

 

マーネルD『キヒヒッ!あ〜!スッキリした〜!!!』

 

……グシャッ……ボトッ!

 

マーネルD『……えっ?』

 

 徒棟さん、いぶさんに攻撃をし、それを見て歓喜の声をあげるデリート。しかし、その声を遮る様に……何かが"潰れて"地面に落ちる音がする。

 

マーネルD『あれ?なんで……俺の"腕"が落ちてるんだ?』

 

そう……落ちたのはデリートがいぶさんたちに向けていた日傘を持った右腕なのだ。しかも、ただ落ちたんじゃない……デリートは気付いていなかったが、私達はその光景を見ていたから……何が起こったのかが分かる。

 

マーネルD『それに……なんで腕が捻れて……待て……この"リボン"は!?』

 

エクス「ぐっ……ぐぐっ!」

 

 デリートの腕を”捻じ切った”のは……エクスだった。エクスは左手首に巻かれたリボンを伸ばし……デリートの右腕に巻き付けて、スーパーQaライトで強化したリボンで捻じ切ったのだ。その行為をしたエクスの表情は……いぶさんに被害が出たことで、怒りが頂点に達してしまったのか……歯を食いしばり、目を見開いて怒りに震えていた。

 

エクス「お前は……僕の家族を傷付けたっ!」

 

コルーリ「エクス……!」

 

エクス「消してやる……消してやる!……消してやる!!……消してやるっ!!!」

 

 エクスは……まるでデリートを”呪う”かのように”消してやる”と呟きながら、しまっていたと思われる……フィーリア王女から頂いた”精霊の光を集めた宝石”を取り出す。

 

コルーリ「エクス、ダメです!保存してしまったら……エクスのQaフィールがっ!!!」

 

エクス「デリート、お前の存在を……全て消し去ってやるっ!!!!!」

 

 そして……エクスは怒りに身を任せて、”宝石”をQaフォーンSへと入れる。

 

 

駆の深層意識

 

side:駆

 

駆(デリートを消す!消す!!消すっ!!!)

 

・・・・・・”お兄ちゃん”

 

駆(ッ!?……”種”!)

 

 駆は自分の心の中でデリートに対しての怒りを膨らませていると、頭の中に聞き慣れた”声”で、呼ばれ慣れた呼び方で……自分に語り掛けてくる存在を感じた。”リンク”を通して語り掛けてくるため、深層意識の中へと意識を進めていく。すると、そこにいたのは……カイザーンに攫われ、ここにいるはずのない自分の妹……”種”の姿であった。

 

駆(種……!自力で逃げて来たの!?)

 

種(うん。お兄ちゃんが遅いから……私から来ちゃったよ!……どうしたの、お兄ちゃん?怖い顔してるよ?)

 

駆(良かった……!僕、種に言いたい事がいっぱいあるんだ!でも……ごめん!今は……それどころじゃないんだ!お祖母ちゃんが……!)

 

種(お祖母ちゃんって……あの着物の人?)

 

駆(うん!あの人が……いぶさん!”古城のお祖母ちゃん”なんだ!デリートの奴が……お祖母ちゃんを傷付けたんだ!僕は……あいつが許せない!!)

 

 駆は種との再会を喜ぶが……すぐに今の状況を説明する。それを聞いた種は少しだけ考えると……笑顔で頷いて駆に話しかける。

 

種(う~ん……分かった!お兄ちゃんはお祖母ちゃんを助けたいって事だね!おっけー!だったら……ふたりでデリートを”消しちゃおう”!)

 

駆(うん!……あれ?)

 

 自分の意志を理解してくれた種に力強く頷く駆。しかし、駆は”ある事”に気付く。このリンクを通して存在する深層意識は本来”プリキュア達”や”バッドエンドシード達”がいるはずなのだが……その皆がいない。

 

信じち……メ!その…は種……んじゃ…い!……ザーン…よ!

 

もう…人の…!や…ろ!そ……は偽…な……!

 

駆(エールに……バッドエンドシードの声?良く聞こえないけど……なんて言ってるんだ?)

 

種(聞こえなくても大丈夫だよ!それに……デリートを消した後に聞けばいいでしょ?)

 

駆(そう……だね。よし……デリートを消し去って、お祖母ちゃんを助ける!)

 

 覚悟を決めた駆に……種は背中から抱き着く。

 

種(大丈夫だよ……私がいる。枷は全部……私が外してあげる♪)

 

 デリートへの怒りと祖母である”いぶ”を傷付けられたことで冷静さをなくしていた事で……駆は気付いていなかった。

 

カイザーン(さあ、怒りを解き放って……”私のアルタイル”♪)

 

 自分の中にいるのが……愛する妹ではなく、自身を底なしの”怒り”へと誘う……”皇帝”だと言う事に。

 

 

海原市"夕凪" 海岸

 

side:コルーリ

 

Aqライト:Qaフィール・セーフティライン……〈リリース〉、Qaウォッチ……システム:アクティブ……アップデート開始

 

エクス「ああああああああああっ!!!!!」

 

コルーリ「Aqライトが!?……チチュン!?なんでセーフティが解除されてるチュン!?私、まだ解除してないのに!?」

 

 Aqストッパーのセーフティが解除されて、エクスの身体から放出されていくAqライト……私はセーフティを解除してないはずなのに、なぜか勝手に解除される。それだけじゃない……Qaウォッチの音声は”アップデート開始”という、この場面ではあまりにも不穏な言葉が流れる。

 

フラッピ「ラピッ!ブライト!ウインディ!まずいラピ!!」

 

ブライト「フラッピ!?まずいって何がまずいの!?」

 

チョッピ「前回の時よりも"もっと怖い力"がエクスの中にあるチョピ!」

 

ウインディ「”エクスの中”に?それって一体……ッ!?何あれ!?」

 

ムープ・フープ「「”太陽”がっ!?」」

 

 ウインディが指さす方向……それは空に燦々と輝いていたはずの”太陽”がある方向。しかし、重なって太陽を蝕む”日食”のように……Aqライトで出来た”黒い球体”が青い空にまるで”穴”を開けたように浮いていた。

 

Qaウォッチ:アップデート完了……コード【RX】

 

エクス『……プリキュアプリケーション』

 

 エクスは天空に浮き上がった”Aqライトの太陽”に左腕を伸ばすと、右手に持った”QaフォーンS”を左手首に巻かれたQaウォッチにスキャンする。

 

Qaフォーン”002”……リンケージ!〈プリキュアップデート!〉

 

エクス『……アップデート』

 

スーパーQaライト:アクティベーション……〈Ready?〉

 

シューーーーーーーーーーンッ!!!!!

 

コルーリ「エクスのリボンが……空に伸びていくチュン!」

 

ブライト「リボンの端が伸びて……どんどん集まって……あ、あれって!?」

 

ウインディ「”黒い太陽”よりも大きい!それに……あの形って!」

 

フラッピ・チョッピ・ムープ・フープ「「「「大きい”手”ラピ(チョピ)(ムプ)(ププ)~~~~~っ!!!!!」」」」

 

 青色に染まったエクスのリボンの端が天空に伸びていくと、伸び続けるリボンが少しずつ”塊”になっていき……最後には”巨大な左手”となる。その大きさは空に浮かんだ”Aqライトの太陽”すら掴めるだろう。そう思っていると、巨大な左手は……本当に”黒い太陽”を掴む。

 

マーネルD『まさか……そいつを俺にぶつけようってのか!?』

 

エクス『……インストール』〈タップ〉

 

ゴォォォォォオオオオオッ!!!!!

 

ブライト「黒い太陽が……!」

 

ウインディ「……落ちてくる!」

 

 QaフォーンSの変身アプリをタップすると……エクスは左腕をゆっくりと下ろす。すると、”巨大な左手”と”黒い太陽”は……地上へ向かって落下を始める。しかし、それは”デリート”にではない……。

 

エクス「・・・・・・ハハッ」

 

ドゴーーーーーンッ!!!!!

 

 黒い太陽は……”エクス”を飲み込むように、彼の頭上へ落下した……その瞬間……。

 

シュバッ!!!!!

 

コルーリ「巨大な手が……リボンに戻っていくチュン」

 

 ”巨大な左手”を形成していたリボンが解けていき……黒い太陽に巻き付いて、その大きさを”エクスの身長”程まで小さくしていく。まるで膨大なエネルギーを”凝縮”していく様に……。そして……巻き付いたリボンが消えていき、中から……”黒いエクス”が姿をあらわす。

 

エクス「・・・・・・」

 

マーネルD『黒い……プリキュア?』

 

 エクスの姿は……彼が身に着けていた”白”の衣装ではなく”黒”に染められていた。それだけではない……元の衣装であるノースリーブジャケットには右腕にのみ追加の長袖、口元を隠すように巻かれた黒のマフラー、左手首から肘にかけて包帯の如く巻き付けられている”青いリボン”。そして、鮮やか”赤”のフルフィンガーグローブだけが黒く染まらず……変わらずに残されている。

 

エクス「……ああ、分かってるよ……”種”」

 

コルーリ「えっ?」

 

 エクス……なんで"タネ"の名前を?

 

エクス「……デリート」

 

マーネルD『な……なんだよ!?』

 

エクス「約束通り……お前は消す」

 

・・・・・・ガチッ!

 

 その時だった。世界がまるで凍り付いた様に……時を止めた。波音は止み、鳥は空に静止する……例えるなら”固定”されたように……。

 

エクス「デリート、右腕だけないよね」

 

マーネルD『あっ?』

 

シュンッ!!!

 

エクス「だったら……」

 

マーネルD『なっ!?』

 

グシャッ!!!

 

エクス「左腕もない方が……バランスいいよね?」

 

マーネルD『見え……なかった……!』

 

エクス「別にいいだろ……どうせまた生えるんだし」

 

 デリートの言うようにエクスの動きは、ほとんど見えなかった。私が目で追えたのはエクスがデリートの左肩を掴み、まるで人形を壊すように左腕を引き千切った瞬間だけで、”近づく瞬間”は全く見えなかった。

 

マーネルD『チッ!舐めるゴッ!?』

 

エクス「お前が腕を生やして右腕に持つ日傘で殴り掛かるのは……”もう見た”」

 

 デリートは腕を新たに生やし、エクスへと殴りかかる……と、思われた瞬間、殴り掛かる前にエクスの拳がデリートの腹部へと打ち込まれていた。それだけではない……エクスの言った言葉”もう見た”とは……一体どういう意味なのだろう?

 

マーネルD『もう見た……だと!?』

 

エクス「そうだよ。……あ、別に未来を見たとかじゃないよ。お前の動作を一秒くらいに”凝縮”して、何をするのかをその1秒間に読んだだけ。でも、その凝縮を認知できるのは僕だけだし……簡単に言えば”お前の時間を圧縮した”ってところかな」

 

マーネルD『どういう……事だ……?』

 

エクス「分からないか?う〜ん……つまり、お前は殴り掛かろうした事しか分からないが、本当は"殴り掛かっていた"んだよ。認知出来ないくらい動作に掛かった時間を圧縮して……短くなった時間でね」

 

マーネルD『な、何を言ってるんだよ?訳が分からない?』

 

 もしかして……強化された男性Qaライトの"凝縮"をデリートに使う事で、デリートの動作を……なかったと感じる位に短くしたと言うのだろう。それなら世界に起きている時間停止も理解できる。男性Qaライトには"固定"も関係する……おそらく世界の時間を"固定"したのだ。

 

エクス「まあ、お前のカエル並の頭に説明しても分かる訳ないよね。だから気づかないんだよ……自分に"痛覚"が出来てることにさ」

 

マーネルD『ッ!?ま、まさか……!?』

 

エクス「"Aqライト"でお前を書き換えてみた……感謝しろよ。本当はそれだけで"消せた"んだぞ。でも……それだと僕の気が済まないんだ」ギロッ!

 

マーネルD『あ……ああっ!!』

 

エクス「僕は今から……お前が自分から"消えたい"と思うまで……お前を痛めつける。僕はもう怒ってるんだ。お前には……1ドットの慈悲もない」ニコッ

 それからの出来事は言葉に出来ない程の惨劇だった。デリートをただ一方的に蹂躙するエクスは、デリートが泣き叫んでも、喚いても……笑顔を崩さずに拳を、蹴りを、Aqライトによる斬撃を……ひたすらに繰り返す。怒りを露わにしていた彼が……まるで別人の様だ。

 

マーネルD『嫌だ……!消えたくないっ!!消えたくないよ〜っ!!!』

 

エクス「"消えたくない"?お前がそんな事を言える立場か?お前はどれだけの人を傷つけた?お前は……どれだけ僕から大切なものを奪えば気が済むんだ?」

 

 泣き叫ぶデリートに詰め寄るエクス。すると、QaフォーンSが光り出し……彼の腰元に何かが現れる。その形には見覚えがある。だって……Splash☆Starの2名が使っていたアイテムなのだから。

 

ブライト「あれって……私達の?」

 

ウインディ「いいえ……似てるけど違うわ」

 

 ウインディの言う通り、確かに似ているが違う。ふたりのアイテムは中央パーツが”ハート型”だったのに対して、エクスのものは中央が”X型”になっている。

 

エクス「スパイラル・エクス・リング……ベルト型か!いいね!心が滾る!!……ん?何だい、種?」

 

 エクスはベルトの両サイドに付いたリングを中央部にセットし、回そうとするとエクスの手が止まる。そして……また”タネ”の名前を口にする。

 

エクス「うん……そうか。”精霊の光”と”命”を……本当?いいの?……分かった。信じるよ……種。それに……もう”一人”手に掛けてるんだ」

 

 まるでタネと話しているように途切れ途切れの会話をするエクス。そして……彼はリングをセットした中央部に手を掛け……。

 

エクス「今更、命の一つや二つ……奪うのなんて怖くないよ」

 

 ゆっくりと……回し始める。

 

ゴオオオオオオオオオオオオッ!!!!!

 

チョッピ「駄目チョピ……!駄目チョピィィィィィイイイイイッ!!!!!」

 

 "海"、”空”、”大地”、”森”、”町”……海原市だけじゃない。至る所から光が……エクスのアイテムの中心部に集まっていく。Splash☆Starのお二人がしていたような”精霊の光”……でも、それだけじゃない。町の建物などからも出てくるあの光は……何?そう考えていると、チョッピさんが声を上げる。

 

コルーリ「チョッピさん、どうしたんですチュン!?」

 

チョッピ「精霊の光が……!命の光が……!エクスに……無理やり集められてるチョピ!このままじゃ……”世界”全ての”命”がなくなっちゃうチョピッ!!!」

 

 エクスの元へと集まっていく光は、この世界の”命”と言えるもの……自然の命、精霊の命、人の命……その全てを自分の元へ集めていると言う。エクスは……世界の命を使って、デリートと言う”個”を消そうとしている。

 

エクス「この一撃でお前の存在を……全て消す。覚悟しろ……デリートッ!!!!!」

 

マーネルD『嫌だぁぁぁぁぁあああああっ!!!!!』

 

シュンッ!

 

エクス「ふっ!あはは……その程度の攻撃で抵抗のつもり……ん?」

 

マーネルD『かかった!その攻撃は囮だ!攻撃がどう来るのか読めても、”攻撃の後”の結果は分からねえだろ!やれ、ゲンサクキントレスキーッ!!!!!」

 

Gキントレスキー『プリキュアアアアアアアアアアッ!!!!!』

 

 デリートの反撃は日傘から放った速さ重視のビーム。しかし、攻撃の動作を読み切っているエクスは反撃を簡単に弾いてしまう。だが、エクスはデリートをじっくり痛めつける事を目的にしていたために、その反撃が実は”デリートの身体の一部”をビームと偽装したもので、弾かせることで倒れているキントレスキーへ方向を変えさせて着弾、キントレスキーをゲンサークにすると言う反撃だったのだ。ここへ来て反撃を許したことが仇になってしまう……はずだった。

 

エクス「うるさいな……!ああ、いいよ!!先にお前から消えろよっ!!!」

 

Gキントレスキー『でやああああああああああっ!!!!!』

 

エクス「プリキュア・オールライフ……!」

 

Gキントレスキー『終わりだああああああああああっ!!!!!』

 

エクス「エクスターミネーションッ!」

 

・・・・・・シュンッ!

 

 Gキントレスキーに撃ち込まれたエクスの拳……その拳が触れた瞬間、世界から……”全て”がなくなった。どう言う意味かと問われるのなら、そのままの意味だ。私とプリキュアのお二人、フラッピさん達、倒れているいぶさんと徒棟さん、そして……デリート、今言った人や妖精以外……全てが消えた。海、建物、機械、自然、動物、そして……人の全てが真っ白な”砂のようなもの”になってしまった。この海岸だった場所には……一面真っ白な”地平線”と真っ青な”空”、輝く”太陽”しかない。

 

コルーリ「・・・・・・世界が」

 

ブライト「何よ・・・・・・これ?お父さんは?お母さんは?みのりは!?学校や夕凪の皆は!?」

 

ウインディ「うそ・・・・・・でしょ?」

 

 ここに広がる光景を見て……プリキュアのお二人も動揺し始める。それだけじゃない……デリートも動揺を隠せないでいた。

 

マーネルD『なんだよ……これ!?聞いてない……聞いてないぞ!?』

 

エクス「・・・・・・デリート」

 

マーネルD『ッ!?!?!?』

 

エクス「次は・・・・・・お前だ」ニコッ

 

マーネルD『あ……あああああああああああっ!!!!!!!!!!』

 

 圧倒的な”絶望”として君臨するエクスは……デリートにまるで”死刑宣告”をするように、笑顔でデリートを指さす。その姿を見て発狂したデリートは自身の足元に次元の裂け目を作り、その中へと落ちていく。

 

エクス「・・・・・・逃げるなよ。逃げるなよ!逃げるなよ!!!ふざけるなよ……あのカエル野郎がっ!!!!!……分かってるよ!!!この力をコントロールしきれてないって言うんだろう!くそ!攻撃に対してしか”時間圧縮”を適用してなかったのが悪かったんだ!分かってるよ、種!追いかけてでも……あいつを消す!!!」

 

ブライト「待ちなさいっ!!!!!」

 

エクス「えっ?何ですか……僕は急いでるんです」

 

ウインディ「急いでるって……これを見てなんとも思わないの!?世界が……消えてしまったのよ!?」

 

エクス「えっ?なんだ……そんな事ですか。こんなの……」

 

パチンッ!

 

 エクスに対して怒りを示して迫るSplash☆Starの二人。しかし、ふたりの言葉を聞いてもこの現状を”そんな事”と返すエクスはめんどくさそうに指を鳴らす。すると世界は……”元通り”の姿に戻っていた。

 

ブライト「えっ?も……どった?」

 

ウインディ「こんな……こんなこと……」

 

エクス「どうせ元に戻せるんだから……そんなに騒がないで下さい。世界も、命も……僕が指を鳴らすだけで戻せる、”その程度”のことです」

 

ブライト「命に……その程度なんかないっ!!!!!」

 

”王”に意見するなんて……愚か者ね。

 

 エクスにぶつけたブライトの言葉を馬鹿にするように……聞き慣れた少女の声が響く。すると、エクスの背中から少し顔を出して微笑むと、まるでダンスでも踊るかのように元に戻った海岸の砂浜を移動して、エクスの右側に立つ。

 

コルーリ「カイザーンッ!!!」

 

カイザーン「うふふっ♪お久しぶり、コルちゃん♪」

 

ブライト「”カイザーン”って……エクスたちが戦ってる!?」

 

ウインディ「”ネツゾーン”の首領!?」

 

カイザーン「はい、説明ありがとう……プリキュアのふたり♪でも、今のあなた達は少し無礼だわ。何と言っても~♪ここは”王”の御前……跪きなさい♪そして……拝聴せよ!」

 

 カイザーンは私達に右腕を向けると、謎の圧によって跪く姿勢にされる。そしてカイザーンは、まるで”自分の恋人”を私達に自慢するかのように……”祝い”始める。

 

カイザーン「祝いなさい!怒りによって燃え上がった漆黒の太陽をも身に纏い、万物の全てを書き換える絶対なる王者!その名は怒れる絶望の王”レイジング・エクス”!今ここに……”真実”は消え去り、歴史が最終章へとたどり着いた瞬間よ!」

 

コルーリ「レイジング……エクス?」

 

カイザーン「素敵でしょう?私が考えたの♪黒い太陽……”ブラックサン”といったら”RX”でしょ?」

 

R・エクス「……”種”、怒りの王子はバイオライダーだよ。それに王子であって”王”じゃない……分かってるでしょ?」

 

カイザーン「分かってるよ~、”お兄ちゃん”♪」

 

 カイザーンに対して”タネ”と呼ぶエクス、そしてタネのように返答するカイザーン……まさか!?

 

コルーリ「分かったチュン!エクスがなんで”タネ”の名前を呼んでいたのか……カイザーン、あなたが”タネ”のフリをしてエクスを操ったんだチュン!」

 

カイザーン「うん、そうだよ♪私にはアストライスタ―の時に繋がった彼との”リンク”があってね~♪そこから彼の中に入ってAqライトを流して”認識改竄”で私を不純物ちゃんに見える様にしたんだ~♪それから邪魔だったQaウォッチのセーフティとアルタイルの”理性”、”道徳・倫理観念”の枷を外してあげたの♪」

 

コルーリ「酷いチュン!カケルは……あなたのおもちゃじゃないチュン!」

 

カイザーン「いいえ、アルタイルは私のモノよ♪さあ……行こう、お兄ちゃん♪デリートを消さないとでしょ?」

 

R・エクス「うん……行こう」

 

コルーリ「だ、ダメチュン、エクス!……カケルッ!!行っちゃダメチュン!!!」

 

 私の言葉が届かないのか……エクスはカイザーンに近付いていく。カイザーンの力によって動けない私達にはどうしようもない……そんな時だった。

 

いぶ「……お待ちなさい」

 

コルーリ「いぶさん!」

 

ブライト「古城さんっ!?」

 

ウインディ「駄目です!逃げて下さい!!」

 

R・エクス「お祖母……ちゃん?」

 

 いつの間にか意識を取り戻していたのか……カイザーンに近付くエクスを止めたのは”いぶさん”だった。いぶさんは姿勢をしっかりと伸ばし、エクスの目の前まで歩いていく。それに対してカイザーンは何も仕掛けようとしないため、"どうにでもできる"……と、余裕があるようでエクスといぶさんを微笑みながら眺めている。

 

いぶ「駆、もういいのよ……私はもう大丈夫だから。これ以上……誰かの命を弄ぶようなことは止めなさい」

 

R・エクス「……弄んでないよ、お祖母ちゃん。そうだ!見てよ、この子は”種”って言って僕の双子の妹なんだ!」

 

いぶ「えっ?……ッ!?か……”果実”!?」

 

 いぶさんが呟いた名前……”果実”。その名はカケルのお母様の名前の筈なのに……いぶさんはその名を”カイザーン”の顔を見て呟いた。

 

カイザーン「・・・・・・」

 

R・エクス「違うよ、お祖母ちゃん!お母さんじゃなくて”種”だよ!」

 

いぶ「でも……そんな……」

 

カイザーン「……お兄ちゃん、早く行こう」

 

いぶ「待ちなさい、果実!」

 

 いぶさんの言葉を聞いて無表情になったカイザーンはカケルをいぶさんから離そうと声を掛けるが、それを見たいぶさんはカイザーンの肩を掴む。

 

いぶ「果実……あなたは私を恨んでいるの?そのために……自分の子供すら利用するの!?」

 

カイザーン「違う!私をあんな女と一緒にするな!!!」

 

いぶ「果実っ!!!」

 

パンッ!

 

カイザーン「あ・・・・・・ああっ!くぅ~…!!嫌い!嫌い!!お前は嫌い!!!あんな女と同じ名前で呼んだ!!!お前も……アルタイルには必要ない!!!!!」

 

 いぶさんの平手打ちを受けたカイザーンは涙目になり、声をあげて怒り出す。

 

R・エクス「種っ!?お祖母ちゃんは……!があっ!!ぐぎ……頭が……ぐっ……」

 

いぶ「駆っ!果実、もうやめなさい!」

 

カイザーン「うるさい!ウルサイ!!五月蠅い!!!それ以上……あの女の名前を呼ぶな!!!」

 

ブライト「古城さん!?ウインディ!!」

 

ウインディ「ええっ!!はあっ!!!」

 

 急に頭を押さえて変身解除されたカケルに近寄るいぶさん。それに攻撃をしようとするカイザーンの間に、謎の力が解けて動ける様になったSplash☆Starの二人がバリアを張って割り込む。攻撃を止められたカイザーンは距離を取るために空中へ逃げる。

 

ブライト「駆君の心を、身体を操ってあんな事させて……!」

 

ウインディ「酷すぎるわ!あなたには……人の"心"がないの!」

 

カイザーン「そんなもの……いつ失くしたかなんて忘れたわよ!」

 

 その言葉を聞いて、ふたりは頷く……この敵を倒すと言う覚悟を決めたのだ。

 

ムープ『月の力!』

 

フープ『風の力!』

 

ムープ・フープ『『スプラッシュ・ターン!』』

 

 Splash☆Starのふたりに装着される”プリキュア・スパイラル・リング”。前回は中央部がハート型だったが、今回は”星型”になっている。ふたりは左右のリングを中央にセットして回し始める。

 

ウインディ『精霊の光よ!命の輝きよ!』

 

ブライト『希望へ導け!二つの心!』

 

Splash☆Star「「プリキュア・スパイラル・スター・スプラッシュ!」」

 

 エネルギー奔流がカイザーンへと向かって行く。歴代のプリキュアの中でも強力な力を持つsplash☆Starの浄化技……だが。

 

カイザーン「……消えて」

 

シュンッ!

 

ブライト「そ、そんな……!」

 

ウインディ「私達の力が……あんな簡単に!?」

 

 カイザーンが放ったAqライトのエネルギー光弾……指先に光っていたそれは小さな”ビーズ”程の大きさなのに、その一撃で……splash☆Starの浄化技を消し去ってしまった。

 

カイザーン「もういいよ……気分が悪い。私のアルタイルを祝うために来たのに……あの女の名前を聞かされた上に、あんたが……やってらんない。やっぱり待たなきゃ駄目だ。もう帰る……コルちゃん、私のアルタイルをよろしくね。バイバ~イ……はぁ」

 

 カイザーンは気怠そうにため息を吐きながら、次元の裂け目を開いてその中に消える。こうして……この混沌とした戦いは漸く終わりを告げ……。

 

……ガチッ!

 

 止まっていた時間が……また刻まれ始める。

 

 

……■■■後

 

海原市 古城邸

 

side:駆

 

みて~!おほしさま!!■■■■■、あれが”天の川”なんでしょう?

 

そうだよ。あそこに光ってるのが彦星の”アルタイル”、あっちが織姫の”ベガ”だよ。

 

へぇ~!それじゃあ、わたしが”ベガ”で、■■■■■はアルタイルだね!

 

 頭の中に広がる幼い時の記憶……病院の屋上と思わしき場所にいる僕と……誰だっただろうか?おかしいな?隣にいた女の子の顔にまるで靄が掛かったみたいに思い出せない。思い出そうとするが、広がる光景に光が掛かり……少しずつ消えていく。どうやらこの光景は夢のようだ……僕は名残惜しい気持ちと共に……目を覚ました。

 

 

駆「あ……この天井は……古城邸の……ん?前髪が目にかかる……邪魔だな」

 

 僕は見慣れた天井からここが古城邸であることを理解すると上半身を起こす。前髪が目に掛かってしまったために鬱陶しく感じながら髪を弄っていると、ドアが開き……そこから見慣れた彼女が入って来た。

 

駆「コルーリ、おはよう……あれ?髪……伸びた?」

 

コルーリ「嘘……!か、カケルッ!!!よかった……!本当に良かったぁ……!」ギュッ!!!

 

駆「痛いよ……コルーリ」

 

コルーリ「はっ!す、すいません!少し待っていてください!”お医者様”を呼んできます!」

 

 医者を呼ぶ?まさか……僕はそんなに大怪我をしたのか?でも……ん?僕はデリートがお祖母ちゃんを攻撃してから……おかしい。その後の記憶が……何か曖昧だ。覚えてるのは……デリートに攻撃をしていた事、Splash☆Starのアイテムを出して使った事、それで……ゲンサークにされたキントレスキーに攻撃をぶつけて……ここら辺までかな。そうだ!種が戻って来てるんだ!リンクを使って……!

 

駆「種、聞こえる?あの後の事……覚えてる?……あれ?リンクが……繋がってない」

 

バッドエンドシード(漸くお目覚めだね……もう一人の僕)

 

駆「バッドエンドシード?どう言う事?何が起こったの?」

 

バッドエンドシード(分かったよ。医者が来るまで話そうか……”三か月前”の話をね)

 

 バッドエンドシードの話を聞いた僕は驚愕した。僕があの戦いの際に話していた種が”カイザーン”であった事、僕がまた……世界を滅ぼした事、そして、僕があの戦いから”三か月間”も意識を失っていたと言うのだから。

 

駆「僕が……世界の命を!?うっ!!」

 

コルーリ「お待たせしました……ッ!?カケル、大丈夫ですか!?せ、先生!カケルがっ!!!」

 

 命を奪い、世界を滅ぼした……その言葉を聞いて僕は吐き気を催すが、空っぽの胃からは何も出てくることはなかった。丁度、医師を連れて戻って来たコルーリによって発見されて、来てくれた医師に診てもらったのだが……少なくとも肉体に問題はないらしく、とても三か月間の昏睡状態にあった患者とは思えないとの事だった。本来、長時間の昏睡となれば関節は固まり、筋力も低下するので歩いたり、起き上がったり、物を掴むことも困難になる……だが、僕にはその兆候が一切なかった。

 

医師「うむ……私は一度、診療所に戻ろう。ちゃんと準備しなくてわな。今日が……”山場”だからね」

 

コルーリ「はい、"昨日から"……ありがとうございました」

 

 僕を診察し終え、医師はコルーリと話をして部屋を出て行く。医師とコルーリの会話……その内容には引っかかるものがある。"山場"、"昨日から"……この内容では……まるで誰かが"危篤"であるという風に聞こえる。

 

駆「コルーリ、もしかしてお祖母ちゃんか、徒棟さんに……何かあった?」

 

コルーリ「チチュン!?そ、それは……」

 

駆「まさか……僕がデリートから守れなかったから!?それとも……僕が命を集めたせいでっ!?」

 

コルーリ「違います!カケルは悪くないです!これは……いぶさん自身の問題なんです!」

 

駆「お祖母ちゃんの問題って……どういう事?」

 

 僕の問いに対しての答えをコルーリが答えていく。

 

コルーリ「・・・・・・」

 

駆「・・・・・・ッ!」

 

 その内容を聞いた僕はなんとも分からない気持ちになり……堪らずお祖母ちゃんの元へと走り出した。

 

 

古城邸 いぶの部屋

 

バンッ!!

 

駆「お祖母ちゃんっ!!」

 

いぶ「あら……駆、おはよう。目が覚めたのね」

 

 僕は襖を勢いよく開けて、お祖母ちゃんの部屋に入る。すると、楽しかった一週間の日々と同じように……お祖母ちゃんは僕に朝の挨拶をする。唯一の違いと言えば……お祖母ちゃんが布団で横になっている事だ。僕はお祖母ちゃんが横になっている布団に近付き、膝を付いて話しかける。

 

駆「お祖母ちゃん、どう言う事なの!?こんなの……聞いてないよ!!」

 

コルーリ「カケル、いぶさんは……」

 

いぶ「そう……コルーリちゃんから聞いてしまったのね」

 

駆「……ステージ4の膵臓癌。いつから……!」

 

いぶ「もう……7年前になるわ」

 

 僕がコルーリから聞いたお祖母ちゃんの問題……それはお祖母ちゃんが”膵臓癌”であり、昨日から容体が悪化し、持って”今日まで”だと言うものだったのだ。膵臓癌は早期発見が難しい事がよく知られている……しかし、ステージ4まで放置しているなんて……!

 

駆「どうして隠してたの!?なんで言ってくれなかったの!?」

 

いぶ「あなたが……笑顔で過ごす時間を私のせいで奪いたくなかった。それに……いつ命が尽きるのかが、私にも分からなかった。私の余命は……6月の最後の通院で申告された”半年”というわずかな時間だけだったもの」

 

駆「そんな”噓”……ついてほしくなかったよ!」

 

いぶ「ごめんね……。”娘たち”にすら隠してしまった……この”真実”は……お墓まで持っていこうと思っていたから」

 

駆「お母さん達に……すら?」

 

 七年前から秘密、お母さん達にすら話さなかった……まさかっ!?

 

駆「お祖母ちゃんがお母さんや黒栖さんと絶縁して、自分の元から遠ざけたのって……”病気を隠すため”だったの?」

 

 僕の辿り着いた一つの結論……それを聞いたお祖母ちゃんは小さく頷き、ゆっくりと語り始める。

 

いぶ「病気が見つかったのは2000年……この病気が見つかった時は驚いたわ。この病は……主人が亡くなった病気でもあったから。それを知っているあの子達に……正直に話すかを考えもした。でも……私には出来なかった。特に果実には……ね。父親がいない事をいじめられたこともあった……そのうえ、母親である私が父親と同じ病気で命を落とすかもしれない。言えなかった……!あの子がどれだけ強くあろうと自分を偽っても……あの子の優しい心は……きっと”絶望”で押しつぶされてしまう!私も耐えられなかった!あの子の前で命を終えるなんて……!そうなるくらいなら……」

 

駆「だから、自分から遠ざけたんだね」

 

いぶ「あの子達の心には……新しい支えがあった。黒栖には”想ってくれる優しい人”が、果実には”目指すべき夢”が……私が今までやって来た事があの子達の生きる力になる。あの子達は決して諦めず進み続ける……だから私は……」

 

駆「一人で……古城家を終わらせようとした。お母さん達を想って……病気と分かった後も継承しなかったんだね」

 

 お祖母ちゃんの話を聞き……やはり、お祖母ちゃんは優しい人だと言う事が分かった。この人は……誰よりもお母さん達を愛していた。だから最後まで……”優しい嘘”をつき続けたんだ。でも……それなのに!お母さんが……黒栖さんが……お祖母ちゃんに愛された二人がこの”真実”を知らないまま終わるなんて……嫌だ!!!

 

駆「お祖母ちゃん……僕なら、お祖母ちゃんの病気も治せる!だから……!」

 

いぶ「そんな事をしてはいけません!」

 

 僕は……心の中で恐怖していながらも”Aqライト”の力で病気を治せるという可能性……ううん、”確信”をお祖母ちゃんに伝える……が、それをお祖母ちゃんは強く拒否した。

 

駆「ッ!?で、でも……!このままじゃ……お祖母ちゃんはお母さん達に嫌われたままなんだよ!?そんなの……酷すぎるじゃないか!!」

 

いぶ「駆、全ての命には……”定められた時間”が存在するのよ」

 

駆「定められた……時間?」

 

いぶ「全てのものに生命が宿るように……命は生まれた瞬間に、滅びが定められる。それは世界によって決められているの……その均衡を犯すことは誰であってもしてはいけない。その均衡を犯すことが出来るのは……きっと”神”だけ。駆……あなたは”人”であることをやめてしまうの?」

 

駆「……でもっ!!!」

 

・・・・・・キュッ

 

 お祖母ちゃんが僕を諭すように話をしてくれた後も……僕はお祖母ちゃんを助けたいと言う感情を捨てられなかった。僕もなんとか説得しようとしたが……僕は上半身を布団から起こしたお祖母ちゃんに抱きしめられていた。三か月前に抱きしめてもらった時と違って……腕から伝わる力がとても弱々しかった。それだけじゃない……あの時の温もりも……今は感じられない。それでも……お祖母ちゃんは優しく僕に語り掛ける。

 

いぶ「生きる人の命を、生きてきた時間を……弄ぶ事は絶対にしてはいけない。それは……その人の”歴史”をすべて否定する行為だからよ。私の生きたこの時間が……私の全てだから……私はこれで良いのよ。それに……駆、あなたのおかげで……十分すぎるほど生きることが出来たもの」

 

駆「僕の……おかげ……?」

 

いぶ「駆、今日が何日か……分かる?」

 

駆「え?えっと……」

 

コルーリ「今日は……”2007年の1月1日”です」

 

 そうか、あの戦いがあったのは10月2日だから……本当にあれから3か月たったんだ。ん?1月1日って……。

 

駆「僕と種の……誕生日。どうして知ってるの?話したこと……なかったのに」

 

いぶ「あなたの”宝物”が……教えてくれたのよ。中身を見てみなさい」

 

駆「中身って……お守りの?……うん、分かった」

 

 お祖母ちゃんは僕にお守りの中身を確認する様に促す。すると、コルーリが僕にお守りを差し出し、それを受け取ると……僕は中身を取り出す。そこに入っていたのは……二台の”懐中時計”だった。

 

駆「懐中時計……?でも、針は止まってる」

 

いぶ「ごめんね、駆をここへ運んだ時に徒棟と一緒に中身を見てしまったの……懐中時計の裏面を見てみなさい」

 

言われるように懐中時計の裏面を確認すると、そこには文字が彫られていた。

 

駆「こっちは”2006.1.1 from S&M to K”、もう一個は”2006.1.1 from S&M to T”……”K”と”T”って……駆と種!?じゃあ”S&M”って……進武と廻!時生のおじいちゃんとおばあちゃんの名前か!」

 

いぶ「きっと……あなた達の誕生を祝ったものね。その懐中時計の刻印のおかげで……あなたの誕生日を知ることが出来た。そして……私の生きる力になった」

 

駆「どう言う事?」

 

ピンポーン!

 

いぶ「来たみたいね……徒棟」

 

徒棟「畏まりました」

 

 静まり返った屋敷に響き渡るインターホンの音。部屋の外で待っていたのであろう徒棟さんに、お祖母ちゃんは対応する様に指示を出す。お祖母ちゃんの口ぶりからして、おそらくお祖母ちゃんが計画したものだろう。それから一分ほどして徒棟さんは戻ってくる……インターホンを鳴らした”2人の客人”を連れて……。

 

咲「駆君!」

 

舞「意識が戻ったのね!」

 

駆「咲さん!舞さん!」

 

 連れて来られた客人の正体は咲さんと舞さん。咲さんは何やら大きめの箱をかけており……おそらくその箱の中身が、お祖母ちゃんが用意したものなのかもしれない。

 

咲「いぶさん、ご注文の品をお届けに来ました」

 

駆「ありがとう、咲ちゃん。元旦の日に……悪いわね。大介くんにもお礼を言っておいてくれるかしら」

 

咲「はい!それじゃあどうぞ、駆君!」

 

駆「僕に?」

 

いぶ「開けてみなさい」

 

 咲さんに渡された大きめの箱……僕はそれを受け取ると、畳の上に置いて箱をあける。その中に入っていたのは……ショートケーキだった。真っ白な生クリームと宝石のように輝く真っ赤な苺、そしてケーキの一番上には”Happy Birthday カケル”と、チョコペンで書かれたチョコレートが乗せられていた。

 

駆「バースデーケーキ……?」

 

咲・舞「「ハッピーバースデイ!駆君!」」

 

いぶ「お誕生日おめでとう、駆。良かった……これだけはちゃんと言ってあげたかったのよ。私は2006年を越えられないと思っていたから」

 

駆「もしかして……さっき言っていた僕のおかげで”十分すぎるほど生きることが出来た”って……」

 

いぶ「私の勘だけどね……あなたが誕生日に目覚める気がしたの。だから……絶対にあなたの誕生日である”1月1日”まで生きようと思った。いつ命が尽きてもいいと思っていた私が……生きていたいと思うことが出来た。駆……あなたがいてくれなかったら、きっと私は……2006年を超えることはなかった。私に生きる意味をくれた……本当にありがとう。さあ、召し上がれ……あなたのお母さんが大好きだったショートケーキよ」

 

 徒棟さんが差し出してくれたフォークを受け取り、ショートケーキを一口分取り……口に運ぶ。すると、僕の目に涙が溢れてくる。

 

駆「この味……知ってる。お母さんと……種と……僕が作ったショートケーキの味……!お母さんが教えてくれた……ケーキの味!クリームの固さと口当たりも……スポンジ生地の食感と配分も……同じだ!あの時の味だ!」

 

咲「このケーキはお父さんが果実さんに教えてあげたものなんだって」

 

駆「これがお母さんの……ルーツか。おいしい……!美味……しい……うぅ!」

 

 僕は涙を拭うことなく、目の前のケーキをひたすらに口へと運ぶ。お母さんが大好きだったケーキを僕も食べる事のうれしさと……このケーキを食べ終わったら、きっと……”もう会えなくなる”って……感じるから。それでもお祖母ちゃんが言っていた……”全ての命には定められた時間が存在する”……きっとこれも変えてはいけない事だ。だから……僕は手を止めずに、ケーキを食べ続けた。

 

 

古城邸 玄関

 

駆「お祖母ちゃん、今まで……ありがとうございました」

 

コルーリ「ありがとうございました」

 

 次の時代へ向かうために、僕は出発する支度を終えて……お祖母ちゃんと徒棟さんに最後の……本当に最後の挨拶を交わす。お祖母ちゃんは徒棟さんに身体を支えられながら見送りに来てくれたのだが、無理はしないで欲しかったのが本音だ。それでもちゃんと見送りたいと言うお祖母ちゃんの願いだから……徒棟さんがこうして叶えてくれたのだ。

 

いぶ「ええ……駆、これを」

 

駆「これ……屋敷の鍵?」

 

 お祖母ちゃんから渡されたのは僕がこの2006年で過ごしている間、ずっと使っていた屋敷の鍵だった。

 

いぶ「もうこの家は……あなたの家でもあるわ。だから、その鍵はあなたの物よ。例え……私が”いなくなっている”としても……ね」

 

駆「ッ!!……うん」

 

いぶ「それじゃあ……駆、コルーリちゃん、”いってらっしゃい”」

 

 旅立つ僕へ……お祖母ちゃんが掛けてくれた言葉は”さよなら”ではなく”いってらっしゃい”だった。その言葉を聞いた僕は、溢れそうな涙を精一杯我慢し……笑顔でお祖母ちゃんの方を見る。

 

駆「……うん。行ってきます……お祖母ちゃん、徒棟さん」

 

コルーリ「行ってまいります、いぶさん、徒棟さん」

 

徒棟「はい、行ってらっしゃいませ……駆様、コルーリ様」

 

 楽しかった古城邸を背に……振り向くことなくアカーシャの元へと足を進めていく。すると、ずっと待っていてくれた咲さんと舞さんが僕たちに寄ってくる。

 

咲「駆君……もういいの?」

 

駆「はい、もう……行かないと……」

 

舞「駆君……これ」

 

 舞さんに差し出されたのは……ハンカチだ。確かに、今の僕には必要だ……だって……。

 

駆「く……くぅ……!ああああああああっ!!!」

 

 もう……涙を我慢できなかったから。それでも……進むしかない。振り向いたら……進めなくなる。だから、泣きながらもアカーシャへと向かっていった。

 

 

プリキュアカーシャ 着陸ポイント

 

駆「咲さん、舞さん……ありがとうござました。それから……ごめんなさい。僕がやったことは人として最低な事です!恨まれても仕方ありません!なんなら……殴っていただいても!」

 

咲「お、落ち着いて~!」

 

舞「そんなことしないから!」

 

駆「で、でも……僕は……」

 

 プリキュアカーシャに到着したので咲さん達に最後の挨拶をしているが、僕には心残りがあった。僕がした行為によって咲さん達の家族を……元に戻ったとしても、奪ってしまった。このような行為は許されるものじゃない!だから咲さん達へ謝罪と、必要なら”落とし前”も付けようとしたのだが……それについては咲さん達に止められてしまった。

 

咲「それじゃあ、約束!今度は奪うんじゃなくて、みんなを守って!駆君の力はきっとそれが出来るから!」

 

舞「他のプリキュア達も救ってきたんでしょ!駆君、私達……信じるからね!」

 

咲「駆君、”すべてのものに生命は宿る”……大事じゃない、その程度の命なんてないんだよ!駆君、駆君の手は……みんなを守るものだから、しっかり手を伸ばしてね!」

 

舞「私達の思いも駆君と一緒にいくんでしょ?だから……しっかりね!」

 

駆「は、はい!必ず……守ってみせます!」

 

 僕の手を握る咲さんと舞さん。そして、その上からフラッピ、チョッピ、ムープ、フープも手を重ねてくれる。僕は少しだけ心が楽になったのを感じ……そろそろ出発しようとアカーシャに乗ろうとしたが、僕は重大な事を思い出す。

 

駆「そ、そうだ!サインを貰わないと!あ、あの!お二人のサインをもらってもいいですか?」

 

咲「さ、サイン!?ま、舞っ!サインって何書けばいいの!?」

 

舞「わ、分からないわよ~!?」

 

 そんなこんなあったけど……お二人は試行錯誤してサインを書き終えてくれた。それを受け取り……僕とコルーリはアカーシャに乗り込む。

 

コルーリ「皆さん、ありがとうございました!」

 

駆「また……未来で会いましょう!」

 

咲「うん!またね、駆君!コルーリ!」

 

舞「最後のプリキュアをちゃんと守ってね!」

 

 ハッチが閉まり、アカーシャはQaライトの放出しゆっくりと浮き上がる。そして、アカーシャは空へと駆けあがり、晴天の空に”碧色の流れ星”が流れ……流れ星は空の彼方へと消えていった。

 

駆(さようなら……お祖母ちゃん)

 

 この時代を旅出す僕は……もう会えないであろう”お祖母ちゃん”に……心の中で”さようなら”を告げた。

 

 

side:いぶ

 

いぶ「ありがとう……徒棟」

 

徒棟「いいえ……奥様の望みとあらば……」

 

いぶ「うふふ……徒棟、私を窓の所へ」

 

徒棟「畏まりました、奥様」

 

 駆達と別れた私は、徒棟に支えられながら自分の部屋へと戻って来た。私はあの子がやってきた日のように海が見える窓際に運ぶように徒棟に指示を出し……目的の場所に付いた私はゆっくりと腰掛けて海を眺める。

 

いぶ「あの波……あの子が来た時と同じものじゃないかしら?少し……目がかすんでしまって……よく見えないの。見える……徒棟?」

 

徒棟「はい……仰る通り、あの時の波と同じでございます」

 

いぶ「そう……あ……あれは……!」

 

 霞んでいる視界の中でも見える……晴天の空、太陽の光よりも輝く”碧色の流れ星”……ああ、分かる。あの子達だ……駆達が旅立っていったんだ。

 

いぶ「さよう……なら……か……け………る……」

 

 ”碧色の流れ星”が消えるのを見届けた私は、重たくなる瞼を……ゆっくりと閉じていく。もう……時間の様だ。

 

 

……”いぶ”

 

いぶ『えっ?フィーリア……なんで?』

 

フィーリア『会いに来たのよ。もう……ずっと会っていなかったでしょう?』

 

 遠くなっていく意識の中に私を呼ぶ声が聞こえた。私は聞き慣れたその声の主を確認するために、いつの間にか重くなくなった瞼を開く。すると、そこは私の部屋ではなく……泉の園で、やはり声の主は親友である”フィーリア”のもので、彼女は子供の時から変わらないその見た目で……私の前に立っていた。

 

いぶ『嬉しいわ!……ありがとう、フィーリア。私の孫を……駆を手伝ってくれて』

 

フィーリア『あの子の運命は……強大な絶望との対立が決定しています』

 

いぶ『フィーリア……絶望とは”果実”の事なの?』

 

フィーリア『……それは私にも分かりません。しかし、あの子とあの子を操っていた人物には切っても切れない宿命がある……それは間違いありません』

 

 果実と同じ顔をした少女……あの子と駆を結ぶものとは何?……考えても意味はないわね。もう……”今の私”にはどうしよもないのだから。

 

いぶ『ありがとう……教えてくれて。それじゃあ行きましょうか……あなたの話がたくさん聞きたいわ』

 

フィーリア『ええ、いいですよ。いぶ、あなたの話も聞きたいわ』

 

 私はフィーリアと手を繋いで泉の園の中へと進んでいく。

 

いぶ(少女)『あははっ!』

 

フィーリア『うふふっ!』

 

 まるで……何者にも縛られなかった”子供”に戻ったようだ。全てから解放された私は”かけがえのない親友”と共に……泉の園を”駆”けていく。

 

 

To Be Continued……




いかがだったでしょうか?一応、エクスのあの姿は仮面ライダーで例えると、”プログライズホッパーブレードのないメタルクラスタホッパー”、”フルフルラビタンのないハザード”と言うか……つまり、あれでは未完成なんです!MaxHeart編で完成形にしますからお楽しみに!最近は投稿が遅くなっていますが……次はもう少し早く投稿します!頑張るぞい!と、いう訳で次回予告!2005年に辿り着いた駆達!そこにで襲い掛かってくるのは……なんと”プリキュア”!?駆を”ジャアクキング”と呼ぶプリキュア達、駆を”クイーン”と呼ぶドツクゾーン!そして……コルーリが2005年で出会っていたもう一組の”特異点”の正体が……!乞うご期待ください!
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