6月30日、7月7日は、最も新しいプリキュア”キュアラメール”の”ローラ”こと”ローラ・アポロドーロス・ヒュギーヌス・ラメール”ちゃん、キュアミルキーの”羽衣 ララ”ちゃんが誕生日でした!ローラ……可愛すぎるんだよ!!!足が……綺麗でも~~~!!!ヤベ~イ!!!!!まあ、くるるんには劣るけどね(ただのくるるん好き並みの感想)。ララルンは……丁度スタプリの再放送も見ているのでね、やはり……触覚が良いですね。あんな宇宙人がいたら……きっと宇宙飛行士を目指していたよ。では、二人共、誕生日おめでとう!ローラ、早く合体浄化技アイテム……もらえると良いね!人間の世界での生活とグランオーシャンの平和は任せたぞ!海の女王!!!
20■■年 ■■■■■■■■周辺の海域
side:ネツゾーン
……きて!お…なさい!起きなさいったら!
フェイク「はっ!?ごぼぼっ!?ばあっ!!はぁ……はぁ……しょっぺぇ~!何だここは……海か?」
漸く起きた!全く……いきなり人が空から落ちてくるからびっくりしちゃったわよ!
フェイク「あ~~~!!!うるせえ、喚くな!!!……って、お前……”人魚”か?」
俺を起こそうとする小娘の大声に驚き目を覚ますと、俺が寝ていたのは地面ではなく……”海の上”だ。声がする方を見ると、そこにいたのはキュアエクス……”トキオ カケル”と同じくらいの小娘だったが、そいつの下半身には足じゃなくて”尾びれ”が付いていやがる……つまり、"人魚"ってヤツだ。
ローラ「あら、人間でも私たちの存在を知ってるやつはいるのね。私は”ローラ・アポロドーロス・ヒュギーヌス・ラメール”!グランオーシャンの女王候補なんだから!」
フェイク「知るかよ……ラメール……意味は確か”海”と……”母”か」
ローラ「ふ~ん……ねえ、あんた!どうして人間のあんたが空から降ってきたの?退屈しのぎに教えなさいよ!」
俺達におびえることなく話しかけてくる人魚の小娘。こいつ……どうして俺の姿を怖がらない?デリートを纏っているはずだが……。
フェイク「お前……俺が人間に見えるのか?……って、デリートが剥がれてやがるのか。おい、デリート!」
デリート『デリ~~~~~ト~~~~~……』ヘロヘロ
フェイク「おいおい……こいつ海水でのびてやがるよ。はあ……ここに来たのはな~、嫌なクソ野郎に無理やりここに落とされたからだよ。今度はこっちの番だ、ガキ……お前、ここが今"何年"か分かるか?」
ローラ「えっ?何年って……人間の西暦ってこと?さあ……あっ!ちょっと待ってなさい!」
海水でのびちまったデリートを仕舞い、人魚の小娘の質問に適当に返して、今度は逆に俺が質問を返す。この世界が今何年なのか……俺が時間の何処にいるのかを確かめるために。人魚は何かを思いついたらしく海に潜り込むと、戻って来るなり”何か”を持って海面から身体を出した。
ローラ「これよ!この前、海流に乗って流されてきたの!これって人間の"カレンダー"でしょ!」
フェイク「"2021年"……はっ!俺も、まあまあ流されてきたみてえだな~!あんがとよ、嬢ちゃん……俺は紳士的なんでな……お前の事は見逃してやる」
ローラ「あんた、もう行くの?ここから泳いだら地上まで結構な距離があるわよ?」
フェイク「あ~……俺の目的地はな~、陸は陸でも”2005年の陸”なんだよ。おっと、もう一つ……聞いても良いか、嬢ちゃん?」
ローラ「なによ?」
フェイク「”プリキュア”って奴らを……知ってるか?伝説になってたりするんだ……お前の国にそんな奴の話はないか?」
俺のいる場所が分岐世界でないのは感じている。だから気になったんだ……ここが未来なら、カイザーン様の悲願の為にプリキュアの存在は改竄されているはずだ。そして、人魚の嬢ちゃんが口にした答えは……。
ローラ「プリキュア?う~ん……”知らないわよ”。私の住んでるグランオーシャンにも、”プリキュアなんて奴の伝説はないわ”」
答えは……決まった!!!!!
フェイク「く……くくく……あはっ!あははっ!!!あーーーーーはっはっはっは!!!最高だぜ、ローラ!!!その答えを聞けて嬉しいぜ!!!キスでもくれてやりたいところだが……わりぃな!!!!!でえええええっ!!!!!」
ローラ「きゃあっ!?ちょっと!あんた何して……って……いない?」
俺は歓喜の叫びと共に次元の裂け目を出現させ、そこに飛び込んだ。もう答えは……結末は決まったんだ!カイザーン様の悲願は成就する!!!なら……さっさとお前を消さねえとな~~~っ!!!!!
フェイク「今度は逃がさねえぞ……キュアエクス!そして……ストリングもな~~~っ!!!だーーーっはっはっは~~~~っ!!!!!」
2005年12月25日 小泉学園 住宅街
side:駆
廻「大丈夫?痛い所はない?」
駆「は、はい……だいじょうぶっ!?くぅ~っ!!」
廻「無理しちゃだめよ!そうだわ、もう少し行ったところに私の家があるの!救急箱もあるから、一先ずいらっしゃい!そこの女の子はお友達よね?反対側を持ってあげて!」
コルーリ「は、はい!カケル、失礼しますよ!」
身体に走る激痛で倒れそうになった僕を支えてくれた時生のおばあちゃんは、心配そうに僕に語り掛けてくれた。心配させないように自力で立とうとするが、激痛は消えていなかった。結局、僕はおばあちゃんとコルーリに肩を貸してもらい……おばあちゃんの家があると言う所まで運ばれる事となった。そこには……恐らくおじいちゃんもいる。僕は痛みを感じながら、心の中では少しだけ嬉しい気持ちで……目的の場所へと向かうのであった。
2005年12月25日 小泉学園 時生家〈トキオ時計堂〉
廻「はい、着いたよ!進武~!作業中で悪いけど、ちょっと来てくれる~!!」
駆「トキオ……時計堂……時計屋さん?」
僕らが辿り着いたのは少し古めの一軒家で、大きな看板が掛けられている。店名は”トキオ時計堂”……見た感じ”時計屋”の様な佇まいだ。ジオウの”クジゴジ堂”よりも大きめではあるが……ここがおじいちゃん達の自宅なのだろうか?
進武「なんだい、廻?さすがの僕でもそんな大声じゃなくても……どうしたんだい、その子?」
廻「怪我をしてるの!救急箱を取ってきて!あっ!あと包帯も!救急箱のじゃなくて”寝室のたんす”にあるやつよ!」
進武「わ、分かった!すぐ用意するよ!」
廻「さあ、もう少しだからね!」
駆「は、はい……」
僕らはお店の玄関から中に入り、店内・工房と思わしき場所を通り抜けて自宅スペースであるリビングに到着する。
2005年12月25日 時生家 リビング
廻「はい、下ろすよ……これで良し」
進武「廻、救急箱と包帯……これで良いよね?」
廻「うん、大丈夫。さあ、上着を脱いで……お腹のところが一番キズが大きいわね。それじゃあ、包帯を巻くわよ」
ソファーに座った僕の身体をおばあちゃんが視診する。そして、一番大きな傷がある腹部を見つけると、おじいちゃんが持ってきたものから”包帯”を取り、それを僕の腹部に巻いていく。まさかプリキュア状態の防御を超えていたとは……。それにしても、その包帯は少しだけ変わっている……色が”黄色”の包帯なのだ。大丈夫なのだろうか?清潔な包帯……なんだよね?
廻「安心して。この包帯は海外の物でね、珍しい糸を使った物なんですって……これを巻くとすぐに良くなるわよ!はい、出来上がり……どうかしら?」
駆「……っ!!スゴイ……痛みが軽くなった」
包帯が巻かれ終わったことを確認し、ソファーから一度立ち上がってみる。すると、先ほどまで身体に走っていた痛みが嘘のように軽くなったのだ。僕は一応、無理をしないようにすぐにソファーに座りなおすと、おばあちゃんは座る僕に目線に合わせて口を開く。
廻「良かった!それで……あなた達、名前は?どうしてそんな怪我をしたの?」
駆「は、はい!僕の名前は駆……とき……っ!?」
廻・進武「「とき?」」
しまった……”時生”の苗字を名乗ったら怪しまれてしまう!?しかも、”とき”の部分まで言ってしまった……な、なんとか誤魔化す苗字……”とき”で繋がる苗字……そうだ!
駆「とき……わ!”常盤 駆《ときわ かける》”と言います。こちらは……えっと……明光院!”明光院 コルリ《みょうこういん こるり》”です!ぼ、僕たち、冬休みを利用した旅をしていて……け、怪我は今日、大きな地震があったと思うんですけど……それで驚いて……お腹を道路の柵とか?……に、ぶつけてしまったんです」
進武「そうか……確かに今日の地震はすごかったね~。まるで”天変地異”でもきたみたいだったからね。今年に入って”二回目”なんだ……年の初め位にもあったんだよ。まあ、世の中にはいろんなことがある物だ……私なんか、”あるもの”を救ってくれと”小鳥の妖精”に頼まれた事があるんだ……すごいだろう?はっはっは~!」
コルーリ「そ、それは……すごいですね」
進武「う~む……そこは笑って”嘘だ~!”と言う所なのだが……やはり冗談は難しいな」
廻「進武、ふざけないの。それじゃあ二人共、泊まるところはあるの?もし泊るところがないなら、怪我が落ち着くまで泊まっていきなさい。部屋は余ってるし、布団もある……無理はしない方が良いわよ」
駆「あ、ありがとうございます……お気持ちは嬉しいのですが、その……お二人の事が何も分かりませんので……」
廻「あら、いけない!怪我してるって急いでたから名乗ってなかったわね!」
僕の苗字やコルーリも既に接触しているからと思って、苦し紛れの誤魔化しで"ジオウ"の"ソウゴさん"、"ゲイツ"の苗字を名乗った僕。その他にも怪我についてを誤魔化したが……とても酷いので、おばあちゃん達に名前を尋ねて話をすり替える。
廻「私は'時生 廻"。今は小さなピアノ教室を開いているけど、一応それなりに有名なピアニストなのよ。そして、こっちは私の夫の……」
進武「僕は"時生 進武"。見ての通り……この時計屋"トキオ時計堂"の店主をしている。一応"三代目"なんだが、始めたのは"1999年"と最近でね。元々、別の職に就いていたんだが……ちょっと事情があってね……こうなったんだ」
駆「事情……ですか?」
進武「うん……まあ、色々さ。そうだ、お腹は空いてるかな?そろそろ夕食の時間だからね……少し待っていなさい」
廻「そうね!怪我してる時はしっかり食べないと!”食”って漢字は”人を良くする”って書くのよ!すぐに用意するわ!それに今日はクリスマスだからご馳走よ!ケーキも買ってきてあるからね!」
それから数時間後、おばあちゃんはローストチキンやケーキをテーブルに用意してくれた。クリスマスを種以外と過ごすのは初めてだったけど……とても楽しかった。そして、結果として僕とコルーリはおじいちゃんたちの家で傷が落ち着くまで泊まっていく事となった。
2005年12月25日 時生家 客間
廻「はい、ここが二人の部屋よ。お布団も用意してあるから……」
駆「ありがとうございます……えっ?」
コルーリ「どうしたんですか、カケル……ッ!?」
おばあちゃんに案内された客間……僕らが泊まる事になった部屋に布団が引かれていた。ベットではなくて、少し年季の入った敷布団が……”一人分”。
廻「二人共、見た感じそう言う関係でしょ♪最近の子は早いわよね~♪」
コルーリ「め、廻さん!あ、あの……お布団をもう一つ……!」
廻「ごめんなさいね~♪いま出せるお布団はどのみちこれだけだから~~~♪あっ!駆君はケガ人なんだから……程々にね♪それじゃあ、私は進武の所に行かないと。お休み、二人共♪ふんふふ~ん♪」
おばあちゃんは陽気に鼻歌を歌いながらリビングの方へと戻っていった。まあ……この布団しかないのなら仕方ない。僕はそう思いながら布団に入り、コルーリを呼ぶ。
駆「よいしょっと……コルーリもおいでよ」
コルーリ「ふぇっ///は……はい///失礼しまチュン……///」
駆「こうやって寝るのは……アカシック王国にいた時以来だね。……あの時に比べたら慣れたもの……だ……温かい……お休み、コルーリ……すぅ~……」
カケル、寝……いまし…か?うふふっ、おやす…な……カケル
12月と言う冬場の寒さのため、僕は布団とコルーリの温かめの体温を感じながら、疲労と睡魔で限界になった意識を手放し……僕の身体は布団へと沈んでいった。
???
駆(ここは……?ああ、そうか……これは"夢"か)
僕は真っ暗な空間を見回す。意識はぼんやりとしているが、自分が布団で眠りについた事は覚えていた為、この空間が"夢"である事はなんとなく理解できた。すると、真っ暗な空間にまるで映画のスクリーンの様に映像がながれ始める。
あなたの時間は……恐らく2005年までが限界でしょう。そして、それは"彼"の時間と交わる事が決定されている……だから、死の"運命"から逃れられないわ。
それで……よか。好きな人と結ばれて……子供も…める……。"■"も……あんなに良い子で、優しい子……ん。こうやって、こ……形でも……て良かっ…。
ぼやけた映像には2人の人影。どちらもシルエット、姿、背景はわからないが、話し声は聞こえた。しかし、話し声も片方だけノイズ混じりでハッキリ聞こえない。だが、ハッキリ聞こえたもう片方の内容だけで考えれば……"2005年に死んでしまうと言う警告"の様に思える。そして、それを聞いたもう一方の人物は……それを"受け入れている"みたいだ。
駆(この声……確か……)
ハッキリと聞こえた声……その声には聞き覚えがあった。しかし、その声の主を思い出そうとした瞬間……。
"起きなさい、駆君"
僕を呼ぶ声によって、僕の意識は夢から覚めてしまった。
2005年12月26日 時生家 客間
駆「ん……ふわぁ〜!おはようございます、廻さん」
廻「はい、おはよう。今日はお友達に会いに行くって言ってたでしょう、早く準備しなさいね。コルリちゃんは先に起きてリビングにいるから。それから……はい、今日のお洋服。息子が小さい頃のだけど、体格もあの時と同じくらいだし大丈夫でしょう。それに駆君、うちの主人と息子によく似てるから……尚更ね!」
駆「ッ!?……は、はい、ありがとうございます」
僕は身支度を整えて、おばあちゃんに差し出された洋服に着替える。サイズがピッタリの洋服に驚きながらもおじいちゃんとおばあちゃん、コルーリの待つリビングに向かい朝食を食べる。前日のなぎささん達との予定通り〈TAKO CAFE〉に向かわないと……。
駆「ふぅ……ご馳走様でした。それでは少し出かけてきます」
廻「待って!これ……巻いていきなさい」
椅子から立ち、玄関の方へと向かおうとする僕をおばあちゃんが止める。すると、おばあちゃんはテーブルに置いてあった”マフラー”を僕の首に巻く。黄色の無地のマフラーで巻いたところからほんのりあたたかくなる……が、このマフラーの感触からして毛糸ではなく、さらさらした生地で出来ている。マフラーと言うよりも”ストール”に近いだろう。
廻「今日はすごく寒いって天気予報で言ってたから、これを巻いて行って。怪我してる時は温かくしないといけないでしょ。私の手作りのマフラーなんだけど……外国で流行ってる”糸”を使った物なの!冬は暖かく、夏は涼しくなるって言う……えっと、確か……」
進武「化学繊維……だね」
廻「そうそう!化学繊維!それで編んだものなの!私が器用じゃなかったら編めなかったと思うわ!さらさらの生地でなかなか編めないのよ!」
進武「廻はピアノだけじゃなくて、こう見えて編み物も上手いんだ。そうだ、温かくと言うなら……はい、僕のコートだが……着ていきなさい。少し大きめだが、着れなくはないだろう」
おじいちゃんは部屋の奥にあるタンスから、一着の”白いコート”を取り出して僕に差し出す。おじいちゃんの言う通り、僕には少し大きいためコートの裾が膝よりも下に来てしまう……だけど、コート自体はあったかいし、何より……少し”桐生 戦兎”の格好みたいでカッコイイから、僕は喜んでコートに袖を通した。
駆「あ、ありがとうございます!よっと!それじゃあ……行ってきます!」
コルーリ「では、行ってまいります!」
進武・廻「「はい、いってらっしゃい」」
おばあちゃんからマフラーを、おじいちゃんからコートを受け取って、なぎささん達と待ち合わせする〈TAKO CAFE〉へ……おじいちゃん達に見送られて、僕とコルーリは〈トキオ時計堂〉を出発した。
2005年12月26日 移動たこ焼き屋台〈TAKO CAFE〉
アカネ「あっ!いらっしゃい!ひかり~!先輩くん来たよ~!」
ひかり「は~い!駆さん、コルーリ、おはようございます」
駆「おはようございます、ひかりさん。なぎささん達は……」
なぎさ「お~い!こっち!こっち~~~!」
タコカフェに着いた僕らをアカネさんが迎え、彼女に呼ばれたひかりさんが販売車の中から出てくる。なぎささん達は既にテーブルに座って待っていた。
コルーリ「おはようございます、なぎささん!ほのかさん!これって……もしかして、これが”クイーンチェアレット”ですか?光のクイーン……その”意志”であるハーティエルのこころの在り処とされるアイテムですよね?」
ほのか「そうよ。駆君たちの目的が、プリキュアの存在の固定って言っていたでしょう?そのために”アイテム”が必要って言ってたから……私達が思いつくものって言ったら……」
なぎさ「これしかないよねって」
駆「光のクイーン……ドツクゾーンが言っていた、ジャアクキングと対を成す……”光の存在”」
漸く……私の声が届きましたね。
駆「えっ?」
僕の頭の中に響く女性の声……その声が聞こえると、僕の視線が自然にクイーンチェアレットの方へと向かって行く。
駆「この声は……あなたが”光のクイーン”なんですか?」
クイーン(はい……そうです。初めまして、虹の園に生まれるとされる、世界によって選ばれ”世界の理”から切り離された存在……”特異点”……そして、光と闇を受け入れる”器を持つ者”)
コルーリ「ッ!?カケル……クイーン女王の声が聞こえるんですか?」
なぎさ「嘘っ!?もう話してるの!?」
ほのか「クイーン女王はなんて言っているの?」
僕とクイーンが話しているのを察したコルーリ、なぎささん達が一斉に話しかけてくる。が、まだそんなに詳しく話していないため、僕は周りを制止して話を続けることにした。
駆「まだ挨拶を交わしたくらいです……もう少し話してみますから待って下さい。クイーン女王、僕が特異点だと分かっていらっしゃるんですね。お願いです、直接……会うことは出来ませんか?」
クイーン(いいでしょう……私の”こころ”は『彼女』の側に居ます。彼女に手を伸ばしてください)
駆「彼女?……それって、ひかりさん?」
ひかり「えっ?私が……どうかしたんですか?」
駆「……すいません、ひかりさん。少しだけ失礼しますよ」
僕はひかりさんにゆっくりと手を伸ばす……すると。
シューーーーーン!!!
駆「ッ!?」
僕の意識は……まばゆい光に包まれる空間へと引き込まれてしまった。
2005年12月26日 クイーンの”こころ”が待つ空間
駆(はっ!?ここは……っ!?)
クイーン(これでよろしいですね……では、あなたのお話を聞かせて下さい)
目の前に現れた巨大な女神……クイーンが、その圧倒的な存在感と今までに見たこともない輝きと共に現れる。彼女に見下ろされながらも、僕は今までの事、プリキュアさん達を救う方法についてを話していく。
クイーン(そうですか……私達の力でも及ばぬ遥か彼方の”時間・空間を越えて存在を書き換える者たち”の侵略なのですね)
駆(……はい)
クイーン(そしてあなたが持つ力……それもまた”世界を書き換える力”ですね。その力は私が持つ”すべてを生み出す力”にも、ジャアクキングの”すべてを喰らい尽くす力”にもなり得る……光にも闇にもなり得る力です。それは光と闇が生まれる前の状態……”混沌”と言うべきでしょうか)
駆(混沌……ですか)
クイーン(私の存在は完全ではありませんから、”すべてを生み出す力”は使えません……ですが、あなたの”心の光”を形にすることは出来ます)
クイーンがそう言うと、急に僕の胸から光が迸り、その光が小さなハート形のカードとなる。そのカードにはクイーンの絵が描かれており、確か……なぎささん達が変身の時に使っていた物と同じだと分かる。
クイーン(あなたの心の中にある光を形にしました。その力をどうか世界の為に……光を繋ぐために使ってください。あなたの存在がどうか……”光”となる事を願っています)
駆(……はい)
クイーン(お願いします、未来の光を受け継ぐ……プリキュア)
クイーンの後光がより眩しいものとなり、その輝きに目を閉じてしまった僕は……。
2005年12月26日 移動たこ焼き屋台〈TAKO CAFE〉
コルーリ「カケル!カケルッ!!しっかりして下さいっ!!!」
駆「はっ!?はぁ……はぁ……クイーン女王は?」
なぎさ「何言ってんのよ!?ひかりに手を伸ばしながら急に動かなくなったから心配したんだよ!コルーリもずっと呼び掛けてたんだから~!」
ほのか「もしかして……クイーン女王に会っていたの?あら?駆君、右手に持ってるのは何?」
駆「右手?これは……クイーン女王が出してくれた……」
コルーリの声に驚き、僕は目を開く。すると、僕は元々いたタコカフェのテーブル席の所に立っていた。どうやら、僕の意識は現実世界に戻されたみたいだ。そして、ほのかさんに指摘された右手を見てみると……その手にはクイーン女王が僕の中から出してくれた”ハート型のカード”が握られていた。
ひかり「それって……!」
メップル・ミップル「「”プリキュアハート”メポ(ミポ)ッ!」」
駆「これ……クイーン女王が出して下さったんです」
コルーリ「これってMax Heartのお二人が使うアイテムです!これで……最後のアイテムが手に入りました!」
なぎさ「本当!?それじゃあ、これで駆くん達の目的完了じゃん!やったね!」
確かに……これで目的のアイテムは手に入った。これで……目的は達成した。でも、これで終わりではない……このアイテムを保存しなければならないが、これを保存すれば……僕の中にあるAqライトは完全に押し出されてしまう。そうなれば……レイジング・エクスは本当にどうしようもない”時空の破壊者”になってしまうかもしれない。
駆「そ、そうですね。でも、この世界でまだ……やる事があるんです。それをやり終えるまでは……もう少しいようと思います」
固定化への対処もそうだが、今の僕には……ここに残りたい理由がある。時生のおじいちゃんとおばあちゃん……二人ともう少しだけ過ごしたい。もちろんこれが……我儘なのは承知しているが、僕の記憶通りなら二人は今年中に命を落とす。お父さんから命日すら聞いたことがないけれど……確かに2005年だったはずなのだ。2006年まであと僅か……まだ生きているが残された時間は少ない。それに……。
コルーリ「……カケル?」
キュアストリング……環さんが何故2005年に来たのか?コルーリが……環さんは元の時代に戻ったと言っていた。それなのに何故、わざわざ時間を超えてきたんだ?環さんはおじいちゃんの友人だった……もしかしておじいちゃん達の死に何かしらで関わっているのかも知れない。まだ分からない疑問がある以上……その答えも知りたい。
駆「えっ?ああ、なんでもないよ……コルーリ。おじいちゃん家に戻ったらクアライト博士に報告しよう……保存の相談もしたいしね」
コルーリ「はい、分かりました」
ほのか「そうだわ!良かったらこの後、私の家に来ない?おばあちゃまが駆君にお礼がしたいんですって!」
駆「本当ですか?分かりました、それじゃあこの後は、ほのかさんのお家に行きましょう」
この後、僕らはほのかさんのお家へ向かった。ほのかさんのお婆様は特に怪我もなかったようで笑顔で迎えてくれたし、お茶菓子もご馳走になってしまった。それに……トキオ時計堂の話も聞くことが出来た。あのお店はおじいちゃんのおじいちゃん……つまり、僕の”ひいひいおじいちゃん”の代から経営しているらしく、一時期閉店してしまったがおじいちゃんが三代目になった”6年前”から再開したらしい。おじいちゃんに……詳しく聞いてみようかな。
side:ドツクゾーン
ウラガノス「で、その変な気配を垂れ流す奴が”あのお方”の成長を妨げてたってんだな~?」
ビブリス「しかもプリキュアと一緒に居たらしいじゃない。それなのに見逃すなんて……サーキュラス、あんた詰めが甘いんじゃないの?」
サーキュラス「光の気配を感じたのは確かだが……奴は闇の気配も纏っていたのだ。いや……あれはどちらでもなかった。光でも、闇でもない……もっと恐ろしい力だった。バルデス、奴は危険だ!すぐに我ら全員で手を打つべきだ!」
バルデス「……いや、その必要はない」
サーキュラス「何だと!?お前が奴を始末しろと言ったんだぞ!」
どこかにある洋館の中でバルデス、サーキュラス、そして駆達と接触していなかった残りの闇のファイター”ウラガノス”、”ビブリス”も揃い、前回の駆達との戦闘についての情報共有を行っていた。話を聞いたが実感の湧かないウラガノスとビブリスだが、実際に駆の力を目の当たりにしたサーキュラスは危機感を感じていた。駆に最初から危機感を持っていたであろうバルデスに更なる追撃が必要だと言うサーキュラスだが、その意見はバルデスによって拒否される。
バルデス「私も奴に接触し、分かったこともある。奴は”私達が干渉してはならない存在”だ……そして、奴らも必要にこちらへは干渉しない。奴らは時間と共にこの”時代”から消える……放っておけばいい」
サーキュラス「バルデス!」
大変ですザケンナー!?
バルデスとサーキュラスの話を遮るように大声で叫ぶ執事ザケンナーAが闇のファイターの集まる部屋へと走ってくる。
サーキュラス「なんだ、騒々しい!!」
執事ザケンナーB『大変なんですザケンナ~!』
執事ザケンナーA『あのお方がお部屋からいなくなってしまいましたザケンナー!』
サーキュラス「何だと!?」
執事ザケンナーの二人が告げたのは、金髪の少年が部屋からいなくなってしまったという報告だった。それを聞いたバルデス以外の闇のファイターは慌て始め、それぞれ部屋から一斉に外へと向かって行った。
2005年12月27日 トキオ時計堂
廻「それじゃあ、もうすぐ年末と言う事で大掃除をしましょう。今年は若い子もいるから去年以上に張り切っちゃうんだから!」
進武「はぁ……今年も張り切るね、廻。駆くん達もありがとう……手伝ってくれて」
駆「いえ、お世話になっていますから、これ位は手伝わせてください」
コルーリ「お掃除はよくやりますからお任せください!」
廻「よろしい!それじゃあ……私は二階、コルリちゃんはふたりの部屋をお願い。進武と駆君は店側をお願いね。必要な物は進武が分かるから、駆君は進武に聞いてから捨てたりするようにね」
おじいちゃんの家に来てから二日目……今日は年末の大掃除をする事となった。今日も二人は一緒に車で出かけるようなことが無く、交通事故につながる行動は全くない……事故はまだ起こらないだろう。クアライト博士に連絡も取ったが保存は禁止されてしまったし、対策も検討中……この時代にまたフェイク来る可能性もある以上、もう少しこの時代にいないといけない。もう少しここにいる以上……時間が許す限りはここに居たい。
2005年12月27日 客間(駆・コルーリの部屋)
side:コルーリ
コルーリ「えっと……タンスにあるお洋服は傷んでいるものを……よいっしょ!これで良し。後は本棚を……わぁ~……音楽関係の本がたくさんです。進武さんのでしょうか?えっと……”管楽器調律全書”、弦楽器調律-すべては基本にあり-”、”よく分かる楽器調律”……これが一番古いみたいですね」
廻さんに割り当てられた担当通りに、私はカケルと私の部屋に元々置いてあった衣類や本などをまとめている。衣類が終わったから本をまとめようと思ったので、本棚にある本のタイトルを読んでいく。本の傷み方から一番古いものは……”よく分かる楽器調律”と言う本だ。
コルーリ「何処かで聞いたタイトルですけど……わぁ~!スゴイ量の書き込み……進武さん、たくさんこれで勉強したんでしょうね。これは……捨ててはいけませんね。これ以外の本も確認して……大事そうなものは外しましょう。それをまとめて進武さんと廻さんに確認してから、縛って処分しましょうかね」
1ページ、1ページに書かれた無数の書き込み……これを見るだけで進武さんがどれだけ勉強していたのかが伺える。それに傷み具合の事を考えると大事にしていたからここにしまっていたのだろう。私はそう思いながら他の本を確認し、大掃除を続けた。
2005年12月27日 トキオ時計堂 店内
進武「うん、工房はこんなものだろう……悪いね、駆君」
駆「いいえ、大丈夫ですよ……っ!?あ、あの……そこにある"懐中時計"は?」
進武「ん?ああ、これかい?これはね……"孫"へのプレゼントなんだ」
店側にある工房を掃除していた僕とおじいちゃん。工房内の整頓がほとんど片付いた時、作業台の上にある物に目線がいく。それは……僕が持つお守りの中に入っていたのと同じデザインの二台の"懐中時計"だった。
進武「僕が時計職人になって初めて自作した時計なんだ。果実ちゃん……ああ、息子のお嫁さんなんだけどね、彼女から赤ちゃんは"双子"だって聞いていたんで二台つくったんだ……まだ生まれていないけれどね」
駆「どうして……懐中時計を?」
進武「時計は……時間を刻むものだ。これから生まれてくる子供たちの時間を……この時計たちと一緒に刻んでいってほしくてね。駆君、時間と言う物は……特別なんだ。減り続けるが増やすことは出来ない……生きている物を全て支配し、皆……その時間の猶予に従って生きている。だから、人は時間を大事にする……そして、支配し返そうとするのさ」
駆「時間を……支配……」
進武「まあ、その点……時計は時間を簡単に支配してしまうけどね」
おじいちゃんはそう言うと、近くに置いてあった目覚まし時計を手に取って僕の前に出す。
進武「見てごらん。時計は針を動かせば”未来”にも、”過去”にも自在に操作できる……なんてね」
おじいちゃんはニカッと笑いながら冗談を言っていた。しかし、その後は真剣な表情に戻りもう一度話し始める。
進武「だけどね、人生は進むしかないだろう。その時間のありがたみを教えてくれるのも……やっぱり時計だからね。だから……孫たちに時計を送ろうと思ったのさ。生まれて名前が決まったら、背面に仕上げの文字を掘るつもりなんだ……”僕と廻より孫へ”ってね」
駆「あの、進武さんは元々……時計職人じゃなかったんですよね。どうして……前の仕事を辞めて職人になったんですか?」
進武「ああ、そう言えば話していなかったね。う~ん……作業も一区切りして丁度いい時間だし、休憩がてら話そうかな。ちょっと長くなってしまうけど……そうだね、私は元々音楽業界で働いていてね……楽器の調律師だったのさ」
僕らは工房の座布団に座ると、おじいちゃんが昔の事を思い出すように……目を閉じながら話し始めた。
8年前 1997年8月14日
中学時代に聞いた音楽に感動し、吹奏楽部に入部して……音楽の魅力に取りつかれた僕は、その道のりの中で僕に”調律”の才能がある事を知った。そして……調律を学び、尊敬する師に出会い、私は夢であった”調律師になった。充実していたね……その仕事の中で同級生だった廻と再会し、恋をして、結婚して、息子である歩夢が生まれた。その幸せの他に、各国で出会う一流のピアニストやバイオリニスト、音楽家たちの命と言える楽器を調律させてもらっていた。最高の日々だった……”あの日”が来るまではね。
歩夢『えっ!?紛争地でのボランティア演奏に……調律師としてついて行くの!?』
進武『ああ!音楽には素晴らしい力がある!戦争で苦しむ人々の心に希望を与え、笑顔を与えるんだ……僕はその手伝いがしたいんだよ!』
僕の元に舞い込んだのは……当時、戦争中だった国で行うボランティアでの演奏会……その際に使う楽器の調律の仕事だった。音楽が持つ人を感動させる力は、国境を越え……人種すら超える。僕はそれを調律師の仕事の中で見てきた。だから……戦争の苦しみに耐える人々にわずかでも希望を与えたかったんだ。勿論、僕らの危険は保証されていない……話した時は息子に反対されたよ。
歩夢『何考えてるんだよ!?父さんは命がどうなってもいいの!?』
進武『分かっているよ……危険な事はね。でも、それだけの価値があるんだ!だから……!」
廻『……いいよ』
進武『ッ!?……廻、いいのか?』
歩夢『母さん!!父さんが心配じゃないの!?』
だけど……廻は反対しないですぐに”いいよ”と、言ってくれたんだ。
廻『進武、あんたは死なない……大丈夫!でも、怪我は保証できんよ!自分の意志でいくんだから、それだけは……ちゃんと自分でなんとかしなさい!』
進武『廻……!ああ、勿論だとも!』
歩夢『母さん!!あーーー!もう!分かったよ!父さん、絶対……無事で帰って来てよ!』
進武『ああ、勿論だよ……歩夢。父さんはお前たちがいる所に絶対に帰ってくる……約束だ!』
1997年9月11日 紛争地
そして……私はふたりに見送られ、目的としていた紛争地に辿り着いた。音楽の力で……人々に希望と笑顔を与える。そこに揃った音楽家たち全員が心にそう誓っていた……しかし、その場に響いたのは……。
ズドドドドドドドドッ!!!!!
兵士『撃て!!!撃てえええええっ!!!!!』
進武『な、なんだ・・・・・・これは!?』
音楽家『うあああああっ!!!!』
進武『ト、トーマス!?ひっ!?!?!?』
その場に響いていたのは……溢れんばかりの”銃声”だった。どこに耳を向けても銃声、銃声、銃声……それ以外に聞こえるのは大きな銃を敵の兵士へと向ける兵士たちの怒号、撃たれる人々の断末魔だった。そこに音楽の音色が入る余地は一遍もない……圧倒的なまでの怒りと悲しみ……そして”絶望”だった。さっきまで生きていた仲間の音楽家たちが……悲鳴の後には物言わぬ”物”になるんだ。それも……人としての姿を満足に残してすらいない。
進武『あ・・・・・・ああああああああああああっ!!!!!』
バンッ!
進武『あっ!!!・・・・・・めぐ・・・る・・・あ・・・・・・ゆむ・・・・・・』
バタンッ!
2005年12月27日 トキオ時計堂 店内
進武「僕がその国で覚えているのは……ここまでだ」
駆「撃たれたんですか!?」
進武「ああ、でも……廻の言う通り僕は生きていた。目が覚めたのは……一か月後でベッドの上だったけどね……はははっ!」
おじいちゃんは自分が撃たれて一か月以上昏睡状態だったと言うのに、その話が笑い話だとでも言わんばかりに笑った。
進武「まあ、命は助かったんだが……失ったものもあるよ」
駆「何を……失ったんですか?」
進武「”聴覚”さ……別に音が聞こえなくなったわけじゃないんだが、楽器を調律するために音を聞くと……”ノイズ”が混じるようになってしまったんだ」
おじいちゃんは髪をかき上げると、そこに”弾丸”が貫通したと思わしき傷跡が残っていた。
進武「受けた弾丸は奇跡的に貫通したんで頭の中に残らなかったんだが、脳にある”聴覚野”……聴覚をつかさどる部分に傷がついてしまったんだ。そのせいで……耳の中にノイズが残るようになってしまった。これは……調律師としては致命的だ。この耳では……楽器を最高の状態にチューニングすることは出来ない。だから僕は……調律師を辞めるしかなかったんだよ」
駆「嫌じゃ……なかったんですか?」
進武「当然……嫌だったとも。僕は妻と息子の次に音楽を愛していた……演奏の才能はなかったが、調律師として成功も出来た。音楽は、調律師は……僕の夢の全てだった」
おじいちゃんは苦しそうな表情で……話を続ける。
進武「だから……あの時は荒れたよ。妻をあんなに攻めてしまったのは人生で初めてだった。”何故、僕を止めてくれなかった!”……ってね。何より、僕の”無力さ”が嫌になったよ。息子が高校に進学しようとした時も、歩夢……息子は僕を庇ってね……学費の無償化がある県外の高校に進学すると言い出したし、そのために特待生にならないといけなかったから……遊ぶ時間を削ってまで勉強していた……いや、させてしまった。大好きだったカメラも……友達も……全て犠牲にさせてしまった。全部……僕のせいだ」
駆「進武さん……!」
進武「真っ暗な絶望のどん底にでもいる様な気分だった。世界が終わってしまうようなね……しかし、真っ暗になった絶望の中だったからこそ……見えた”光”もあった」
駆「見えた……光?」
進武「ああ……あれは僕がこの工房に入った時の事だよ。この工房は私の父のそのまた父……つまり、僕のおじいさんの代からあるんだ。おじいさんは僕が生まれる前に死んでいたし、歩夢が生まれる前の年に父も母も死んでしまってね……それ以来ずっと閉めていたんだ。でも……何故かその時は、ここに入りたくなったんだよ」
おじいちゃんは首にかけている”ペンダント”を握ると……表情が穏やかになる。
進武「時計の部品が散乱した部屋……子供の頃は父の作業する姿をよく見ていたんだ。それを思い出してね……僕は散らばった部品を集め、作りかけの時計に歯車をかみ合わせていった。信じられないほどしっくりくる感覚だった……そして何より……」
カチッ!……カチッ!……カチッ!
進武「"聞こえた"んだよ……歯車がかみ合い、針が時間を刻む時計の音がね。ノイズもなく、確実に一秒を刻む秒針の音だ……楽器を調律していたあの時と同じ感覚だったんだ」
駆「そんな事が……」
進武「まるで……僕は最初からこうするために生まれてきたんだと思ったよ。それからは時計を直す事、作る事に夢中になった!そして……僕は父と同じ時計職人になったんだ!僕は……絶望の中から光を見つけたんだよ!」
嬉しそうに話すおじいちゃんの表情は……それはもうイキイキしたものだった。
進武「それで分かったんだ……絶望しなければ……見えない光もあると、絶望の中にも”光”があるのだと……ね。駆君、もしも……君が絶望することがあるなら覚えておきなさい」
駆「……はい」
ポ―――ン!ポ―――ン!
進武「おっと!もうこんな時間か……さて、店にある置時計のネジを巻きなおす時間だ。駆君、それを済ませたら店内の方を掃除するよ」
駆「は、はい!」
おじいちゃんは首に掛けていたペンダントを外すと、店内にある大きな置時計のねじ穴に差し込み……数回まわす。おじいちゃんが持っていたペンダントは、どうやら”時計のネジ”だったようだ。
駆「それ……ネジですか?」
進武「ん?ああ、これはこの時計のネジでね、僕のおじいさんが初めて作ったこの時計のものなんだ。まあ、家に代々伝わる代物ってところさ。孫が生まれたら……このネジも孫にあげるつもりなんだ。なんてったって、このネジがさっき見せた懐中時計のネジにもなっているからね。これで回さないと……あの子達の時計の針を進めることが出来ない」
駆「二つ目を……作るんですか?二人分でないといけないですし……」
進武「ああ、スペアは作らないよ。このネジは特殊でね……よっと!」
駆「えっ!?ネジが……割れた!?」
おじいちゃんは持っていたネジを僕に見せると……それを半分に割ってしまった。
進武「これはおじいさんが考えたものらしくてね……二本のネジを合わせて、初めて一本の完成したネジになるんだ。おじいさんはおばあさんに結婚を申し込む時にこう言ったんだそうだ……”僕たちの時間を刻むこの大時計のネジを……一緒に回して欲しい”ってね。だから、このネジは……二本ないとダメなんだ。僕は双子の孫たちが……二人で支え合って行けるようにって意味で、このネジを懐中時計のネジにしたんだ」
駆「二人で……そうなると良いですね」
進武「ああ……よし、ネジも巻いたから掃除しよう!」
駆「はい!……ん?」
金髪の男の子「・・・・・・」
掃除を再開しようとすると、外に”男の子”が立っていた。5歳くらいの金髪の男の子で、その子は店内を眺めていた……いや、彼は……”僕を”見ていた。その目はとても純粋で曇りが全くない……その目が気になってしまった僕は外に出て、その少年に話しかける。もしかしたら……迷子かもしれないしね。
駆「どうしたの、迷子?」
金髪の男の子「……見つけた」
駆「えっ?」
金髪の男の子「あの人と……同じだ」
駆「あの人って……君、何を言って……」
男の子は僕の質問に対して意味不明な事を言い始める。僕はどう言う事なのかもう一度聞き返しながら……無意識に男の子に手を伸ばす……すると。
シューーーーーン!!!
駆(ッ!?)
僕は……真っ暗な空間の中に引き込まれた。”深淵”……そう言う表現が最も近いと言う程の暗闇……その中に僕は立っていた。男の子はいないし、おじいちゃんもいない……トキオ時計堂も、周りの建物も何もない場所だ。
駆(なんだよ……男の子は!?おじいちゃんは!?)
また会ったな……”プリキュア”
駆(ッ!?ジャ……ジャアクキング!?なんで!?)
動揺する僕に……低い声で誰かが語り掛けてくる。僕はその声がする方へ振り向くと……そこに立っていたのは”黒い巨人”。2005年に来て戦闘を行ったドツクゾーンのボス……ジャアクキングが、戦った時よりも大きく、それこそ”光のクイーン”と同じくらいの巨体になって……暗闇の中に君臨していた。
ジャアクキング(私を解放した事……感謝してやろう。ほう……やはり、お前の力は”混沌”か。だが、その中に秘めた”闇の力”は光を飲み込むほどに強大。クイーンと私が生まれた起源たる混沌……今、お前の混沌は”闇”に向かいつつある……見るがいい)
駆(えっ?・・・・・・なっ!?)
ジャアクキングに言われるように僕は奴の視線の先に目を向ける。すると……そこには暗闇ではなく、廃墟の様に崩れていく世界が広がっていた。周りを見回すと暗闇はなく、空間は……廃墟になった世界に書き換わっていた。
駆(なんだ……なんだ!?)
・・・・・・カケル
駆(えっ?こ、コルーリ!?)
コルーリ(カケル・・・・・・助けて)
駆(コルーリ!?待ってて!すぐに……!)
信じられない光景の中に聞き慣れた声が聞こえる。その声の主はコルーリで、服が破け、身体中に擦り傷や出血も見られるほどに痛々しい姿をしていた。僕はすぐにコルーリに駆け寄り、身体を支えようとする……すると、コルーリの身体に触れた瞬間。
シュンッ!
コルーリ(カケル……どうして……?)
駆(コルーリ!?)
私を・・・・・・”消す”の?
コルーリの身体が……まるで灰になるように崩れて消えてしまった。コルーリは僕に対して”絶望”を孕んだような表情を向けて消えていった。そして……これだけでは終わらない。
駆君……! 駆さん……!
駆(なぎささん!?ほのかさん!?ひかりさん!?)
また駆け寄って、触れた途端に消えていく。何度も!何度も!!何度も!!!……僕が触る度に消えていく。僕が動けば……建物が消える。立っているだけで……世界が消えていく。
駆(はぁ……!はぁ……!!はぁ……!!!)
ジャアクキング(これがお前の中にある力の”本質”だ。お前の力は”すべてを喰い尽くす力”……お前は私と同じだ。お前は感じているだろう……”痛み”を、”絶望”を。お前は私を理解できるはずだ。さあ……その闇を受け入れるのだ。光を飲み込み……”闇”となれ)
しっかりしろ、駆君!
駆「はっ!?はぁ……はぁ……す、進武さん?」
進武「どうしたんだい!?急にボーっとして」
駆「えっ?あ、あれ……男の子は?」
進武「それなら……さっき保護者と言う人が来て連れて行ったけど……それよりも君だよ!駆君、やっぱりまだ具合が悪いんじゃないか?廻っ!!駆君が具合悪そうなんだ!!すぐに来てくれっ!!!」
廻「えっ!?ちょっと、どうしたのっ!?体調が悪くなったって……こ、コルーリちゃん!!お布団を出して!!!ほら!駆君、しっかり掴まって!進武も反対側を支えてあげて!」
その後、僕は客間へと運ばれて残りの半日を布団で寝かされて過ごす事となった。僕が会ったあの男の子は……ジャアクキングだったのかもしれない。ひかりさんと同じ様な……ジャアクキングの一部だったのだろう。そして、僕が見たジャアクキングの幻覚……あの圧倒的な絶望感。あの幻覚を見た後、僕は仕舞っておいた"プリキュア ハート"を見た……するとそこには、クイーンではなく、"ジャアクキング"が描かれていた。
2005年12月28日 AM0:15 客間(駆・コルーリの部屋)
駆「はあっ!!!はぁ……はぁ……また、あの幻覚?」
眠っていた僕は勢いよく布団から飛び起きる。ジャアクキングの幻覚……あれを寝ている間もずっと見ていたからだ。見た所……まだ日も上がっていないし、Qaフォーンの時計を見ると日付が変わったばかりと言った感じだ。
コルーリ「チュン……カケル?どうしたんですか?まだ……夜ですよ」
駆「えっ?あ、ああ……起こしてゴメン。ちょっと……嫌な夢を見てたみたい。ちょっと台所で……お水飲んでくる。コルーリは……寝てていいよ」
コルーリ「カケル……汗びっしょりですよ。本当に……大丈夫ですか?」
コルーリが僕に向かって手を伸ばしてくる。
私を・・・・・・”消す”の?
駆「っ!?」
コルーリ「カ・・・・・・ケル?」
駆「ご、ゴメン……すごいのどか湧いてきちゃった。も、もう行くね!」
コルーリの伸ばしてくれた手を……僕は避けてしまった。ジャアクキングの幻覚を見てから……ずっと、コルーリが消えるイメージを見ていた。気が狂いそうになる程の回数を見た……1000回を超えた所から数えるのを止めてしまったが……その約百倍の回数を見ていただろう。そのせいで……コルーリに触れるのが怖くなってしまった……触れたら消えてしまう……いや、”消してしまう”かもしれないからだ。僕はそれを誤魔化すために、僕らの寝室から水道のある台所へと逃げる様に出ていった。
2005年12月28日 AM0:20 リビング
駆「……あれ?明かりがついてる……誰かいるのかな?」
リビングの前まで来ると、その中に明かりがついているのを見つける。奥は誰かいるのかと思いリビングのドアを開ける。
廻「あら?駆君、こんな時間にどうしたの?良い子はもう寝る時間よ」
リビングに入ると、イスに腰掛けたおばあちゃんがいた。テーブルにはオシャレなワイングラスと栓が開けられたワインボトルが置かれていた……”晩酌”と言うヤツだろうか?
駆「いや、寝付けなくて……お水を貰いに来たんです。廻さんは……それってお酒ですよね?」
廻「ええ、大事な事の前とかに飲むのよ……もうすぐ大事な用事があるからね」
駆「大事な用事?」
廻「そう……もうすぐ果実ちゃんの予定日なの。来月の1月11日……孫が生まれたら果実ちゃんが落ち着くまでここに泊まっていく予定だから、お酒も当分飲めないからね……今のうちに飲んでおくのよ。私、お父さんが九州の人だからかお酒が強くてね……結構好きなの。進武は一滴だって飲めないのよ~!飲むとそれはもうドロドロのヘロヘロよ!」
駆「へ、へえ~……」
正直どうでもいい情報も何個かあったが……僕と種の予定日が1月11日だったと言うのは驚きだ。予定よりもやや早期の出産だったんだ。まあ……誤差の範囲だろう。
廻「そうだ!せっかくだし駆君も夜更かしする?眠れないんでしょう……良かったら私の話し相手になってくれるかしら」
駆「えっ?い、いえ……僕は水を貰ったら……」
廻「良いから!お水取ってきてあげるから座って!」
僕はおばあちゃんに無理やり椅子に座らせられると、おばあちゃんは台所からコップに水を入れて僕の前に差し出す。どうやら……逃げ場はないみたいだ。
廻「それじゃあ何を話しましょうか?そうね……それじゃあ駆君は趣味ってある?」
駆「えっと……読書、天体観測、特撮鑑賞……でしょうか」
廻「へえ、頭よさそうな趣味ね……ん?特撮鑑賞って……ウルトラマンとか仮面ライダーとかの事?へぇ~!駆君位の年の子でも見るのね。息子の歩夢が小っちゃい頃に確か……そう!”BLACK”って言うのがやっててね!あの子が大好きだったな~!でも、駆君ぐらいの時には……”写真”が趣味だったわ」
駆「写真……ですか?」
廻「そうよ!”時間を一瞬の中に閉じ込めたみたい”って言ってね……カッコ付けちゃってね。そうだ!掃除してて見つけたんだけど、その箱の中にあの子に買ってあげたカメラが入ってるわよ。見てみる?」
おばあちゃんから趣味の話を振られた僕は、正直に自分の趣味を話す。すると、話がお父さんの子供の時の趣味の話にうつり、お父さんの子供の時の趣味が写真で会ったことが発覚する。そして、おばあちゃんは大掃除でお父さんに昔買ってあげたカメラが入っている箱を出していたらしく、それはリビングの端の方に置かれていた。お祖母ちゃんに勧められるように僕は箱を開けると、傷が一つも付いていない新品の一眼レフカメラが入っていた。
廻「あの子がカメラ屋さんで一目惚れした一品なの。どうしてもこれが良いって言って聞かなかったんだけどね……確か名前もある良いカメラなのよ。確か名前は……」
駆「あっ!書いてあります!えっと……”MIDEN F-Mk2”……”ミデン”でしょうか?」
廻「それよ!確か”ミデン”って名前だったわ!あの子……これを買ってあげたらすっごく喜んだのよ。そして……最初の写真は家族三人でって……でも……」
おばあちゃんは楽しそうな表情から、話を進める度に苦しそうに表情を変える……これってもしかして!
駆「進武さんの……件ですか?」
廻「あら……もう聞いてたのね。そう……進武が怪我で調律師を辞めて、家族の仲も……ね。あの子も学費の免除がある県外の高校に行くために……結局、このカメラで写真を撮る事もなくなっちゃったのよ」
駆「・・・・・・」
廻「ごめんなさい、暗い話になっちゃわね。そうだわ、他の話にしましょう!そうね……」
おばあちゃんの言葉に……なんて言葉を返したらいいのか分からない。そうやって黙っている僕におばあちゃんは新しい質問を投げかける。
廻「駆君、特撮が好きって言ってたわよね。一番好きなのは何なの?」
駆「えっと……仮面ライダーが一番好きです。他も一通りは全部知ってますけど……僕は仮面ライダーが一番お気に入りです」
廻「へえ~……歩夢が観てた”BLACK”とその続編しか知らないけど、私は”シャドームーン”って言う仮面ライダーにそっくりな敵が好きだったわね。そう言えば、どうしてそっくりだったのかしら?」
駆「シャドームーンは元々BLACKと瓜二つになるように設定されているんです。あれでも似ていないんですよ」
廻「そうなのね……でも、変じゃない。ほら、主人公の仮面ライダーは”黒”で、敵のシャドームーンは”銀”……普通は逆じゃない?”黒”って敵役に多いと思うんだけど……」
確かに……言われてみればそうかもしれない。しかし、それぞれのモチーフは”太陽”と”月”だからな……変ではないと思う。
駆「太陽と月をモチーフにしているので変じゃないと思いますよ。それに最初の仮面ライダーは悪の組織”ショッカー”によって改造された改造人間が、同じくショッカーの生み出した怪人と戦うと言う”同族と戦う悲しみのヒーロー”と言うのがデザインの定義で……」
廻「それじゃあ、”悪の力”で人を守ってるって事なのね」
駆「えっ?」
廻「だって、そうじゃない?悪の組織に改造されて力を手に入れて、その力で悪の組織とたたかってるんでしょ?」
確かに……そうだ。仮面ライダーの力の本質は怪人と変わらないと言うのが殆どで、その事をウィザードに出て来たアマダムも言っていた。”クロス・オブ・ファイア(炎の十字架)”……仮面ライダーは悪と同じものだって。
廻「でも……結局それは、戦う人の”心”次第だって事ね。どんなに大きな力でも、世界を滅ぼしてしまう力でも……その力を使う人が正しく使うことが出来れば、”世界を滅ぼす力”だって、”世界を救う力”になるって事……駆君、これから長い人生を歩むあなたに……大人の私からのお願い。あなたは……優しい子だと思う。だから……もしも大きな力を手に入れてしまったのなら、それを誰かのために……世界をよくするために使いなさい。そして、これから生まれる私の”孫”たちが……毎日、笑顔で生きていける未来をつくっていってほしいの……約束よ」
駆「は、はい……分かりました」
廻「ありがとう!あら……結構長く話しちゃったわね。そろそろ寝ないとね……夜更かしはここまで。お水を飲んだら、もう寝なさい」
駆「はい……んっ!ッ!?ぶほっ!?な、何これ……くらくらする……廻さん、これ……水じゃないですよね!?」
廻「ええ、それは福岡県産の”麦焼酎”よ。ほら、せっかく夜更かしだからと思って……こんな機会じゃないと飲めないでしょう?」
急激に上がる体温と脈拍、視界がぼやけて頭も回らなくなってくる……目の前にいる廻さんが……いつの間にか”3人”に……あっ……これはダメだ。
バタンッ!
その後、廻さんによると僕は机に倒れ込むように気を失ったらしい。もう”絶対にお酒は飲まない”と、僕は心に誓った。
2005年12月29日 トキオ時計堂
廻「えっ!?果実ちゃんが!?」
リビングにある固定電話の受話器を手にしているおばあちゃんが血相を変えて電話に出ていた。話の内容からするに……現在、僕と種を妊娠しているお母さんに何かあったと言う電話の様だ。
廻「ええ……ええ……そう……分かったわ。人手が必要ならすぐに連絡するのよ……ええ……それじゃあ、果実ちゃんにお大事にって……それじゃあ、切るわよ」
ガチャ!
駆「廻さん、どうかしたんですか?」
コルーリ「果実さんて……息子さんのお嫁さんでしたよね?」
廻「ああ、駆君にコルリちゃん……それがね、果実ちゃんが病院に運ばれたみたいなの」
駆・コルーリ「えっ!?」
廻「幸い、これと言った異常はなかったみたいなんだけど……予定日までそんなに日もないから、大事を取って入院することになったみたい。果実ちゃん、ご家族とあまり仲が良くないみたいで……歩夢が付いているけど……心配だわ」
お母さんの入院……僕の予定日が”1月11日”だったことを考えると、予定日よりも早い出産に繋がるアクシデントと言う事だろう。結果は決まっている……だけど、お母さんが倒れたと聞いて……僕は心配な気持ちを必死に隠した。
2005年12月30日 PM23:45
ピリリリリリッ!ピリリリリリッ!
進武「はい、時生ですが……おお、歩夢!どうしたんだ?……えっ!?わ、分かった、変わるぞ!廻、来てくれっ!!!」
廻「どうしたの、進武……誰かから電話?」
進武「か、果実ちゃんが……陣痛が始まったらしい!」
廻「えっ!?か、変わって!もしもし!……ええ……分かったわ!で、入院してる病院は……多田織市立中央病院ね。果実ちゃんに変われる?もしもし、果実ちゃん?陣痛のペースは……そう、それならまだ大丈夫ね。明日の朝にそっちに行くわ」
進武「取り合えず、”廻だけ”の方が良いだろう。女の人同士の方が良いと思うし……僕も取り乱してしまいそうだからね。僕は後から”車”で行こう」
もうすぐ日付が変わろうと言う時、静かになった家の中に電話の音が響く。僕とコルーリも速足で駆け付けると……そこで話されていたのは”お母さんの陣痛が始まった”と言う連絡だった。僕とコルーリは黙ってこの状況を傍観していると、入院している病院に向かうと言う話が出てくる。しかし、そこで話されている内容に……違和感を感じた。おじいちゃんは”おばあちゃんだけ”を先に向かわせ、自分は後から”車”で行くと言ったのだ。これでは……”未来の結果と違う”。おじいちゃんとおばあちゃんは……恐らく2005年最後の日、12月31日に亡くなる。そして……その死因は”交通事故”のはずなのだ。お祖母ちゃんを先に病院に行かせては……二人が亡くなる結果と違う。これが……どうやって僕の知る結果になると言うんだ!?
廻「そうね……分かったわ。明日、私がすぐ病院にいくわ……ええ、分かった。果実ちゃんの傍に居なきゃダメよ」
ガチャ!
進武「廻、すぐに支度をした方が良い……僕も準備しないとな」
廻「そうね」
駆「あ、あの……!」
僕は……これから準備を始めようとしている二人に声を掛ける。
進武「ん?何だい……駆君?」
駆「あの……二人で一緒にいかないんですか?わざわざ……別々に行かなくても……」
コルーリ「カケル……!」
進武「ふむ……僕がさっきも言ったけど、こういう事は女の人同士だからいい時もある。時と場合というものだよ」
廻「そう言う事よ。駆君たちはもう寝なさい……ね、いい子だから」
駆「ッ!!・・・・・・はい」
僕は……怖かった。変わりそうになる結果を見るのが怖かった。だから……僕はふたりを一緒にいかせようとしてしまった。僕は……どうしたらいいんだ!?僕は心の中のモヤモヤを感じながら……最後の朝を一睡もすることなく迎えた。
2005年12月31日 PM12:56
廻『それじゃあ、行ってくるわね』
お母さんの陣痛が強くなり、ペースも早くなったと言う連絡が来て、廻さんが出発してから既に”二時間程”。小泉学園から多田織までは電車で大体”一時間”……駅から病院までは歩いて三十分、タクシーで十分だから、もう着いていてもおかしくない。おじいちゃんは出発するタイミングを考えているのか……僕の目の前でしきりに置き時計で時間を確認している。おじいちゃんは……僕の目の前にいる。既に……僕の知る未来とは違う。
進武「うん、そろそろ良いかな……駆君、お店の看板を”close”にしてくれ。僕もそろそろ病院に行ってくるよ」
このままおじいちゃんを行かせたら……歴史はどうなる?僕が生まれるのは日付を跨いだ”1月1日”……無事に到着して出産を確認し帰る時に事故に遇うとすれば、恐らく12月31日には事故で死なない事になるから……事故で亡くなるには僕と種が生まれる前でないとおかしい。つまり……事故は向かう途中で起きるはずなんだ。でも……既に結果は変わっている。もしかしたら……未来も!
駆「あ、あの!僕たちも……一緒に行ってはダメでしょうか?」
進武「えっ?」
コルーリ「か、カケル!?それでは……!?」
進武「ふむ……いいよ。駆君とコルリちゃんは……もう僕たちの”家族”みたいなものだからね。歩夢と果実ちゃんに紹介するのも……悪くないさ。それに新しい命が生まれる瞬間なんて……きっと滅多にない事だよ。二人が将来に体験する事だろうけど……ね。それじゃあ、僕は車を車庫から出してくるから、二人も準備をしておいで」
駆「は、はい!」
もう……未来は変わっているのかもしれない!僕の干渉と、恐らく”キュアストリング”……環さんが何かしたのかもしれない。もしかしたら……!
進武・廻〈駆!〉
ふたりが生きてる……未来があるのかもしれない!僕はそんな……淡い希望を抱き、準備を整えておじいちゃんの車に乗り込む。これから先に待つ……”変わらない結果”へと向かうために。
2005年12月31日 PM13:15 小泉学園 公園広場前の道路
進武「道が空いていて助かるね……これならそんなに時間もかからないだろう」
コルーリ「カケル……どうするんですか?これでは……カケルが話していた結果と違いますよ」ヒソッ
駆「いいんだ……きっと……未来が変わったんだ。だから……」ヒソッ
ゴォォォォォオオオオオッ!!!!!
駆「ッ!?!?!?こ・・・・・・この感じ!?」
僕が感じたのは……強大な”Aqライト”の気配。あいつだ……あいつが来てしまった!!!しかも、信じられないほど近くに!?このままじゃ……巻き込まれる!!!!!
駆「この道はまずいです!!!すぐに別の道路へ入ってください!!!!!」
進武「えっ?別に込んでないけれど……」
駆「何でもいいですから、早くここから離れて下さい!!!!!」
コルーリ「進武さん!止まって下さい!!!!!」
進武「ッ!?」
ドッゴーーーーーーーーーンッ!!!!!!!!!!
僕たちの車の前に……突如として飛んできた”火球”。それが僕らの乗る車の目の前に落ち、大きな爆音と爆発を起こして……車を吹き飛ばす。
駆「あっ……」
コルーリ「カケルッ!!!」
進武「くっ!!”駆”っ!!!!!」
・・・・・・ドンッ!!!!!
そこで……僕の意識は途絶えてしまった。
2005年12月31日 PM■■:■■
駆「あ……ぐっ!!!い……たい!!!!でも……うご……ける!」
身体中に伝わる強い衝撃を受けて横になって倒れる僕の視界に写る……三人の人影と……”フェイク”の姿。僕は……どうやら車外に出されたみたいだが生きているらしい。僕は激痛が走る身体を必死に動かしてボロボロになったおじいちゃん車へと向かう。
駆「足が……折れてるのか!?あ、あれは……!コルーリ!!!」
僕は恐らく骨が折れている足を引きずって進んでいると、車の近くでしゃがみ込んでいるコルーリを見つけたので、彼女を呼び……その場所へと必死に身体を動かして進む。
コルーリ「か……カケル!?足、どうかしたんですか!?腕も……顔からも血がっ!?」
駆「出血はいい……それよりそんな所でどうし……た……」
僕はコルーリの心配を制止させて、彼女が視線を向けていたところに……目線を向ける。すると……そこには……。
進武「・・・・・・」
駆「お……じい……ちゃん……?」
コルーリ「ふぇ、フェイクが現れて……その攻撃が!進武さんはカケルを守ろうとして……爆風の前に出て……それで……それでぇ……!」
目の前にあるのは……おじいちゃんの姿をした”物”だった。
ゴキッ!!!
コルーリ「か、カケル……?」
ガキッ!!!!
駆「フェイクが……やったんだね?」
周囲に……鈍い音が響く。まるで、”人の骨が折れる”様な鈍い音……しかし、それは違う。この音は……僕の折れた骨が……”治っている音”だ。
駆「あの”ゴミ”が……やったんだな!」
ゴォォォォォオオオオオッ!!!!!
僕の身体から過去最高のAqライトの放出が起こり……そのAqライトが空に真っ黒な太陽を作り出す。僕は……しまっていたQaフォーンSをQaウォッチにスキャンする。
駆『プリキュアプリケーション』
Qaフォーン”002”……リンケージ!〈プリキュアップデート!〉
駆『アップデート』
スーパーQaライト:アクティベーション……〈Ready?〉
駆『インストーーーーールッ!!!!!』〈タップ〉
ゴォォォォォオオオオオッ!!!!!
黒い太陽が空から落ち……それが僕を飲み込み、それを落ちてきた黒い太陽の内側から出た青いリボンが……極限まで締め上げる。そして……怒りの権化はもう一度この世界に生まれ落ちた。
R・エクス「お前は……一片も残さず消してやるよ……フェイクウウウウウウウウウウ!!!!!!!!!!」
怒りの権化の咆哮が……世界へと響く。怒りの頂点を越えた”絶望”が……目の前の”偽物(フェイク)”を……消し去るために。
To Be Continued……
いかがだったでしょうか?いや……時間が掛かった!良い言い回しが見つからないし、説明したい事が上手く表現するためにいろいろ考えてしまった!しかし、しっかりと今回の話にも伏線をはれたし……気付いてもらえるかな?
次回、ふたりはプリキュアMaxHeart編……最終回になると思います。激昂するR・エクス!それを見て興奮するフェイクD!その戦闘に割って入る”キュアストリング”!そして、キュアストリングの口から語られる……この世界にいる理由とは!?そして、光と闇を受け入れ……キュアエクスは”未来”へと”駆け上がる”!乞うご期待ください!