ヴァールハイト・プリキュア   作:32期

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ごきげんよう、32期です。今回は、HUGっと!プリキュアの時代に来た物語の後編です。はな、エクシード、そしてもう一人の”少女”の目線で進んでいきます。今回の話は、私の別作品である劇場版2作目のチャプター3からアザーの話を読むとよりお楽しみいただけるのでお勧めです。ハグプリ本編と比べて違いを確認するのも面白いと思います。ではお楽しみください。

本日でヴァールハイト・プリキュアも5年目を迎えることが出来ました。毎年、この日には雑談回をしているのですが、前日夜勤、日勤合わせて5連勤で書く暇がない、最新作きみプリも観れてないでエミュも出来ない為、今回はスキップしました。可能なら今月中に雑談回はあげようと思います


第六十三話:なんでもできる!なんでもなれる!フレフレわたし!【後編】

はぐくみ市 のびのびタワー〈展望フロア〉

 

side:野乃 はな

 

はな「みんな……何で止まってるの?まるで……時間が止まったみたい」

 

 私は綺麗にカットした前髪を手で少し弄りながら、今起こっている事を振り返る。今日、私はクラスメイトのひなせ君が所属する吹奏楽部が企画していた年始めのコンサートに来ていた。演奏が始まってウキウキしていたその時、いきなり周りが暗くなって——私とあまり面識がない数名のクラスメイト以外の全員が止まってしまった。話しかけようとしたけど2人とも何処かに行っちゃったみたいで、結局、私だけが残ってしまったのだ。

 

はな「外も同じふうになってるし……ママ達は大丈夫かな?それに……あのビルは何?」

 

 周りがこんな風になってから"碧色の流れ星が流れた後、急に空が割れてその奥から現れた大きなビル。もしかして——あれがこの現象の原因?でも、仮にそうだとしても——。

 

はな「私にできる事……ないよね。……ッ!?な、何っ?あの光?近付いてって……こっちに来てる!?」

 

 ビルの方から飛んでくる一筋の光。それは近付いているみたいで、どんどん大きく見え始める。その光は速度を緩める事はなく、最終的には——。

 

——ズガーーーーーンッ!!!!!

 

 私達がいる"のびのびタワー"に——直撃した。

 

はな「きゃあっ!?た、タワーが!?こ、これじゃあ……崩れちゃう!?」

 

 タワーの真ん中辺りにぶつかった光線のせいで揺れ始めるのびのびタワー。私達がいる展望フロアがゆっくりと傾き始めている事に気付いた私は悟る。このままだと"タワーは崩れてしまう"——と。

 

はな「みんなを逃さないと!……って、私以外は動けないんだー!それにこんな人数……私だけじゃ運べないし!そもそもどうやって逃げればいいの!?」

 

 あまり良くもない頭でみんなを助ける方法を必死に考える。だけど、そんな方法——こんな状況である訳ない事はすぐに理解できてしまう。

 

はな「このままじゃみんなも……私も死んじゃ……あっ!?」

 

 どうしようもなくなったと思った瞬間、少し離れた所にいるお母さんと赤ちゃんの親子——その母親に抱かれていた赤ちゃんがタワーの揺れによって腕の中から落ちてしまう。

 

はな「ダメーーーーーッ!!!!!」

 

 私はさっきまで考えていた事も忘れ、落ちそうな赤ちゃんの元へと走る。こんな状況でできる事は無いけど——でも!目の前で怪我をしてしまうかもしれない赤ちゃんを放っておくなんて出来ない!精一杯に足を動かし、真っ直ぐに進む。もう少しで床にぶつかりそうな赤ちゃんを受け止める為に、私はヘッドスライディングで飛び込む。そして——。

 

はな「ッ!!!……やったっ!!!」

 

 私は見事に赤ちゃんをキャッチする事に成功する——が。

 

——ガラガラッ!!!ガゴンッ!!!!!

 

はな「……あっ」

 

 次の瞬間、私達がいる展望フロアの床が崩れ、私達は空中に投げ出される。身体に伝わる浮遊感、近付いてくる地面——それだけで私はどうなるかを理解した。

 

はな(私……もうダメなんだ。……でも!)

 

 助からない事は理解した。でも、今——私の腕の中にいる"赤ちゃん"だけでも助かるかも知れない。【この子だけでも守る】——それだけを考えながら、私は赤ちゃんを力一杯抱きしめて目を瞑る。

 

——ドゴンッ!!!ドガンッ!!!!ドガガガンッ!!!!!

 

はな「ッ!!!!!…………あ、あれ?」

 

 崩れた瓦礫が地面に落ちた音がすぐ近くで響く。もう地面も近いのだ。だから私は必死に身構えたのだが——一向に何も起こらない。何でだろうと目を瞑りながら考えていると——。

 

"はなさん、目を開けてください"

 

 私を呼ぶ——"男の子"の声。恐る恐る目を開けるとそこには——。

 

???「大丈夫ですか、はなさん?」

 

 白い衣装を着た私と同い年くらいの男の子が、大量の瓦礫を支えて私と赤ちゃんを守ってくれていた。

 

はな「あなたは……"ヒーロー"?」

 

エクス「あはは……そんな大層なものじゃ無いですよ。僕はキュアエクス……皆さんを助けに来た"プリキュア"です」

 

はな「プリ……キュア ?」

 

 男の子の名前はキュアエクス——"プリキュア"と言うヒーローとは違う人みたい。聞いた事もない言葉なのに——何でだろう?"プリキュア"と言う言葉に、私は言い様のない感覚を覚える。

 

はな「……って、それどころじゃない!?あ、あの!この子のお母さんや、私のクラスメイトのみんなはっ!?」

 

エクス「ぐっ!?……だ、大丈夫。そっちは僕の力で……無事に地上へ移動させました」

 

はな「そ、そっか……良かった〜!……って、そう言えば何であなたは私の事を知ってるの?!」

 

 みんなの無事を聞いて安心した途端、私にある疑問が浮かんだ。キュアエクスと言う彼は【何で私を知ってるのか?】と言うものだ。

 

エクス「……僕達は出会った事があります。今はまだ……思い出せないだけ。しかし、あなたを探していたのに髪型が違うので見つけるのが遅れちゃいましたよ。"前髪"……僕が知ってる時と違ったので」

 

はな「えっ?」

 

 私は去年の転校を機に前髪を切った。子供っぽい私じゃない——大人っぽい私になる為に。それは見事に成功し、私は"イケてるお姉さん"に一歩近づいたのだ。

 

——ガッ!ガガゴゴッ!!!

 

 ——なんて考えていたら、彼が支える瓦礫が再び音を立て始める。それを支えるキュアエクスは苦しそうに歯を食いしばり、必死に私と赤ちゃんを守ってくれている。

 

はな「だ、大丈夫!?」

 

エクス「あんまり……大丈夫じゃないかもです。でも、大丈夫……2人だけでも助けますから。いざって時の為に用意した"糸"があります……からっ!」

 

——シュシュシュシュンッ!!!

 

 彼の腰に付いたケースから伸びてきたのは——一本の黄色い"糸"。その糸は瓦礫の隙間に入り込むと、人が1人通れそうな小さなトンネル状の穴が出来たのだ。しかし、通れそうと言っても——"屈んでいれば"と言うぐらい小さい穴だが。

 

エクス「はなさんの体格なら、この穴を赤ちゃんと一緒に通れます。さあ、早く……!」

 

——ガガンッ!!!

 

はな「ッ!?こ、このトンネル……どれくらいあるの?」

 

エクス「瓦礫が結構ありましたから……10メートルって所ですかね」

 

はな「じゅ、10メートル!?む、無理だよ!そんな長い中を赤ちゃんと一緒に抜けるなんて!え、エクスなら、瓦礫を押し除けたり……!」

 

エクス「期待してもらえて恐縮ですが……僕は現状だとこの瓦礫を支えるので手一杯です。それに糸でトンネルを維持してられるのも時間の問題だ。今、貴女と……その赤ちゃんを救えるのは……"はなさん"しかいな……いっ!?」

 

——ガガガガンッ!!!!!

 

はな「で、できないよ!私にはできない!」

 

エクス「できますっ!!!!!」

 

はな「ッ!?」

 

エクス「なんでもできる!なんでもなれる!……大丈夫です。貴女ならきっとできる!!自分を……信じてっ!!!フレフレ!はなさん!!!」

 

はな「……エクス」

 

 エクスから私に向けられた"エール"——それは私がいつだって言葉にしてきたものだった。

 

エクス「僕はいつだって……このエールに、あなたのエールに支えられてきた。今度は……僕の番なんだ!フレフレ!はなさん!自分を信じて!!行くんだっ!!!」

 

はな「……うん!」

 

 彼のエールに押されて、私は赤ちゃんを片腕で抱きながら穴へと入る。穴の先に見える出口の光を目指して——私は進む。

 

 

はな「はぁ……はぁ……」

 

 光に少しずつ近付いているが、まだまだ先は長い。小さな穴を匍匐前進で進んでいるが、赤ちゃんを片腕で抱いているから思う様に距離を稼げない。その上、狭い穴の中は圧迫感があり息苦しい。冬なのに私の額には汗が流れてくる。

 

はな「今……どれくらい来たんだろう?半分は来た……かな?距離感が……掴め……ない!」

 

 変わらない風景で掴めない距離感、振り向く事も出来ない狭さの穴。もう——後ろには戻れない。さっきまで一緒にいたエクスが居ないだけで、こんなに怖くなるなんて。1人は——怖い。【転校する前の私】に——戻ったみたい。

 

 

はな『やめて!みんな格好悪いよ!』

 

 

 あの時の記憶を——私は思い出してしまう。みんなに無視されて、1人になってしまった私を——ママが抱きしめてくれた。だから私は——ママみたいな【格好いいイケてる大人】になりたくて変わろうとした——なのに!

 

はな「私……何も変わってないよ」

 

——サラッ

 

はな「ッ!?光が消え……ま、前髪か」

 

 視界にあった出口の光が消えてしまう。それに驚いた私はすぐにその原因に気付く。整えていた前髪が崩れて垂れてしまったのだ。私は前髪を整え直すが、何回も崩れて——私の前から光を隠してしまう。

 

はな「……グスッ!こ、怖いよ……助けてよ!ママ……!パパ……!ことり……!」

 

 胸の中に溢れてくる恐怖で私は涙を流し、縋る様に家族を呼ぶ。でも、誰も来てくれない——私はやっぱり、"ひとりぼっち"なんだ。

 

はな「う、うぅ……あっ」

 

 しかし、私はいま自分の腕の中にあるものに気付く。赤ちゃん——この子だって今”ひとりぼっち”だ。泣く事しか出来ないのにそれさえも許されず、大好きなお母さんとも離れてしまっている。

 

はな「私が諦めたら……誰がこの子を救ってくれるの?」

 

——カチャッ

 

 たまたま動かした指に触れる冷たい感触。そこにあったのは——"紙切りバサミ"。コンサートに来ていた吹奏楽部の子の筆箱にでも入っていたのだろう。

 

はな「この子だって泣きたい筈なのに、私が泣いてどうするの!この子だってママに会いたいんだ!エクスにも言ってもらった!なんでもできる!なんでもなれる!……私、諦めたくない!これしきの事で心折れるとか……!」

 

——スチャッ!

 

 私はすかさずそれを拾い、拾ったハサミを私の視界を遮る前髪に添えると——。

 

はな「私のなりたい……"野乃 はな"じゃないっ!!!!!」

 

——ジャキンッ!!!!!

 

 その前髪を断ち切り、私の視界に"光"を取り戻す。

 

はな「フレ!フレ!わ・た・しーーーーーっ!!!!!」

 

 私は——精一杯のエールを自分に送り、目の前にある光へとがむしゃらに進む。どれくらい時間が掛かったか分からない。でも、出口はもう目前。後もう少しと言う所で——。

 

——シュンッ!!!

 

 出口の光よりも眩しく輝く宝石が目の前に飛んできた。

 

はな「これ……宝石?」

 

……ママ!

 

はな「……えっ?」

 

ママ、手を取って!

 

はな「あなた……は?」

 

 宝石は姿を変え、女の子の姿になる。金髪をした女の子でエクスに似た様な衣装を着てるから——もしかして、この子も"プリキュア "なのかな?

 

はな「……って、何で私が"ママ"なの!?」

 

???「それはいいから早くしてよ、ママ!"シード"がおじさまの事を助けられないでしょ!」

 

はな「シードって何っ!?おじさまって誰〜〜〜っ!?!?」

 

???「は〜や〜く〜〜〜!よっと!シード、OKで〜すっ!!!」

 

 私を引っ張り出すと少女が誰かを呼ぶ。金髪の少女に呼ばれて凄い勢いで走ってくる——恐らく"プリキュア "の子。その子はその勢いを緩める事なく私がさっきまでいた瓦礫に突っ込んで行く。

 

シード「ありがとう、トゥモロー!お兄ちゃん!今助ける……よっ!!!!!」

 

ドッガーーーーーンッ!!!!!

 

はな・トゥモロー「「どへーーーーーっ!?!?!」」 

 

 走ってきたシードのパンチによって粉砕される瓦礫。その衝撃的な威力と出鱈目さに私と隣にいる"トゥモロー"も、あまりの事に変な声が漏れる。

 

はな「……って!エクスが中にいるのになんて威力だしてるの〜〜〜っ!?」

 

シード「大丈夫!お兄ちゃんならこれ位……って!トゥモローが何でいるの!?ナチュラルに呼ばれたから普通に返事を返しちゃったよ」

 

トゥモロー「お、おじさまーーーーーっ!!!!!」

 

——ガチッ!

 

 粉砕された瓦礫の中に残されたエクスを心配していると、舞い上がった瓦礫の破片や埃が空中で静止する。一瞬だけど聞こえた歯車の止まった様な音——その音が聞こえた方に目を向けると、そこには彼がいた。

 

エクス「ゲホッ!ゲホッ!!……シード、出来ればもう少し加減して欲しかったよ」

 

シード「ご、ごめんなさい……えへっ!」

 

エクス「まあ、助かったからいいけど……ん?えっ!?トゥモロー!?何でいるの?エクシードとリンクを繋いで情報共有してたけど、君がいるとは聞いてなかったぞ」

 

トゥモロー「おじさまーーーっ!」ガシッ!

 

エクス「ぐえっ!?!?トゥ、トゥモロー、力強っ!?……あ〜、なるほど。僕達のミライクリスタルと2026年で受け取ったトゥモローの力が、僕のAqライトに当てられて実体と意識を持ったのか。どおりで2043年のパラレルワールドであった君に性格が寄ってる訳だ。……いや、要因は僕のAqライトだけって訳でも……」

 

 トゥモローに抱きつかれて、たじろいでしまうエクス。しかし、それもそこそこにして何かを考え出す。その何かに自分なりの考えがでて納得したかと思ったら、私に目線を向けてきた。

 

はな「えっ?な、何っ?」

 

エクス「なさそうだね」

 

あっ!野乃さーーーんっ!!!

 

はな「えっ?や、薬師寺さん!輝木さん!」

 

 駆け寄ってくる人影に声を掛けられる。誰かと思って振り向くと、それはクラスメイトの"薬師寺 さあや"さんだった。それに"輝木 ほまれ"さんとルールー・アムール、ことりの同級生の"愛崎 えみる"ちゃんがいる。

 

さあや「外に出て助けを呼びに行ってたんだけど、タワーが崩れたのを見て戻ってきたの!」

 

 薬師寺さんと輝木さんは、街がこんな風になってすぐにタワーから出て、助けを呼びに行っていた。後ろのえみるちゃんとルールーは、恐らく外で見つけてきたのだろう。

 

ほまれ「そっちの子はルールーが保護したらしいんだけど……って、その前髪はどうしたの?」

 

はな「えっ!?こ、これは……」

 

ほまれ「へ〜……結構、イケてんじゃん」

 

はな「そ、そうかな?」

 

ほまれ「うん。前のも可愛かったけど、そっちの方も良いんじゃない」

 

はな「あ、ありが……」

 

——ドッゴーーーーーンッ!!!!!

 

 輝木さんにお礼を言おうとした瞬間、町全体を震わせるほどの揺れが起きる。原因が分からない私達の中で、それに真っ先に気付いたのは——えみるちゃんだった。

 

えみる「み、皆さん!アレを見るのですっ!!!」

 

クライ『ウオォォォォォォォォォォッ!!!!!』

 

シード「な、何アレ!?黒い巨人!?」

 

エクス「あれは……ジョージ・クライのようだね。この時間停止を行なっている人物だ」

 

ルールー「間違いありません。あの人はクライアス社の社長……プレジデント・クライです。しかし、あの姿は一体?」

 

 海の方に現れた黒い巨人。エクスの発言から、あれがこの世界の時間を止めてしまった張本人の様だ。そんな彼が発する雄叫びを聞いた私は——ある事を感じていた。

 

クライ『明日など要らぬっ!!!未来など要らぬっ!!!!!』

 

はな「あの人……」

 

エクス「はなさん?」

 

トゥモロー「ママ?」

 

はな「……"泣いている"みたい」

 

 あの巨人——ジョージ・クライと言う人の叫びは、まるで泣いている様だった。何と言うか——大切な人を亡くして、未来への希望も無くしてしまった様な、そんなふうに感じてしまうのだ。

 

クライ『ウオォォォォォォォォォォッ!!!!!』

 

えみる「あわわわわっ!?!?こっちに手を伸ばしてるのです!?」

 

さあや「あっ!見て!何か光が飛んでくわ!」

 

——ドシンッ!!!!!

 

ほまれ「光がぶつかったみたいだけど……と、止まったの?」

 

ルールー「はい。謎の生体反応がプレジデント・クライの攻撃を受け止めている様です……"一人"で」

 

「「「「一人で!?」」」」

 

 はぐくみ市へと伸ばされた彼の手を、何処からか飛んできた光が受け止める。ルールーによれば、それは生き物で、たった一人であの巨人の一撃を受け止めていると言うのだ。それを聞いて驚く私達とは対照的に、プリキュア達は落ち着いた様子である。

 

エクス「エクシードが受け止めてくれてるみたいだね。それなら問題はないよ。シード、のびのびタワーを修復する。今の僕だとAqライトの出力が足りないから、シードのQaライトを僕に流してくれ。トゥモロー……はなさん達の事、任せても良い?」

 

トゥモロー「は、はい、おじさま!」

 

 エクスはそう言うと、シードを連れてのびのびタワーの方へと進みだし、謎の"七色の光"を使ってのびのびタワーを修復し始める。すると、私の横にいたトゥモローが私に話しかけてきた。

 

トゥモロー「ねえ、ママ……ママの"夢"って何?」

 

はな「えっ?」

 

トゥモロー「お願い……教えて、ママ」

 

はな「私の……"夢"は……」

 

 私を"ママ"と呼び続けるプリキュアの少女——キュアトゥモロー。彼女は真剣な眼差しで私を見つめながら、私に——"将来の夢"について問いかける。

 

はな「私は……【格好いいイケてる大人】になりたい」

 

トゥモロー「……うん」

 

はな「ママみたいに沢山頑張ってて、格好良く働いてて、誰かの力になれる様な……自分になりたい」

 

トゥモロー「うんうん、とっても良い夢!さあやさんは?ほまれさんは?えみるさんは?ルールーは?みんなの"夢"も聞かせてよ!」

 

 私の夢を聞いて嬉しそうに笑うトゥモロー。その興奮が冷める間もなく、質問の矛先は私以外のみんなに向かう。

 

さあや「わ、私も!?え、えっと……お母さんみたいな女優になりたい……かな」

 

ほまれ「なに正直に教えてるわけ?……まあ、良いけど。私は……プロのフィギュアスケーターになりたい」

 

えみる「はい!は〜い!私は皆さんが安全に過ごせるサポートがしたいのです!ヒーローなのです!」

 

ルールー「私は……そういった明確な希望はありません。強いて言うならば……"お父さん"とまた……笑えたら良いですね」

 

トゥモロー「世界が"彼女達"を忘れても、それで歴史が歪んでも、別の次元であったとしても……やっぱり、心の中に"思い"はあるよね!」

 

——ピカーーーーーンッ!!!

 

 トゥモローの胸から光が溢れる。すると、その光は私達の胸からも溢れ出し、トゥモローと抱き抱える赤ちゃん以外の私達5人の前に、ハート型の宝石を出現させる。

 

トゥモロー「みんなのアスパワワの光を……一つに!」

 

——シュンッ!シュンッ!シュンッ!シュンッ!シュンッ!シュンッ!

 

 トゥモローの光から現れた透明な宝石。その宝石に、私達の宝石の光が注がれ始め——虹色の光を宿す。光が注がれ終わると、トゥモローや私達の光は消え、トゥモローの手の中にある宝石だけが輝いていた。

 

さあや「……綺麗」

 

えみる「それは何なのです?」

 

ルールー「"ミライクリスタル"……ですね。父の資料で見た事があります」

 

トゥモロー「そうだよ。おじさまのミライクリスタルに、ママ達のミライクリスタルの光を分けてあげたの。これでおじさまのアイテムに光を戻せて、そして……止まった今の時間を動かす力になってくれるはず」

 

——キラ――――ンッ!!!

 

 ”ミライクリスタル”と言う宝石の事を話していると、今度は私の抱いていた赤ちゃんが光り出す。七色に光った赤ちゃんは一瞬で私の手の中から消えていなくなってしまった。

 

はな「き、消えちゃった!?あ、赤ちゃんは何処っ!?」

 

エクス「大丈夫……お母さんの所に戻っただけですよ」

 

 驚いている私に話しかけてきたのは、さっきまで何かをしていたエクス。お母さんの所に戻ったと言うのは——どう言う事だろう?

 

さあや「もしかして……赤ちゃんが消えたのって貴方が何かしたの?」

 

エクス「のびのびタワーの修復に伴って、避難させてた人たちをタワーの中に戻したんです。時間が動いた時に不都合がないように」

 

シード「だから、赤ちゃんはタワーの中に戻ったお母さんの元に移動させたって訳!あっ!ついででタワーにシールドも張っておいたから、避難するならタワーが一番安全だよ!」グッ!

 

ほまれ「壊れたタワー、もう直ったの!?……ホントだ、直ってる」

 

振り返ってのびのびタワーを見ると、そこには傷一つなく、光線で破壊された部分も直っているタワーが建っていた。シールドが張られているらしいけど——透明で見えない!本当に張ってあるのかな?

 

エクス「トゥモロー……ミライクリスタルは?」

 

トゥモロー「はい、おじさま……ここに」

 

シード「うわ~~~!光が戻ってるよ、お兄ちゃん!」

 

エクス「うん……これなら大丈夫だ。皆さん、すぐにタワーに避難してください。後は僕達が……彼を止めます」

 

 トゥモローからミライクリスタルを受け取り、私達に避難を促すエクス。そんな彼の視線の先には——この世界の時間を止めてしまったと言う”黒い巨人”に向けられていた。

 

エクス「行こう、シード。トゥモローも……一緒に来てもらうけど良いかな?」

 

トゥモロー「はい、おじさま!」

 

シード「待っててね、みんな!ちょっと世界を救ってくるからさ!」

 

はな「待って!!!!!」

 

エクス「・・・・・・はなさん?」

 

 強大な敵に向かうエクス達を私は呼び止める。

 

はな「エクス……さっきはありがとう。こ、今度は私が応援する!フレフレ!エクス!がんばれがんばれ!おー!!!」

 

エクス「……ありがとうございます、はなさん!」グッ!

 

 瓦礫の中で私に掛けてくれた"エール"——それを今度は、戦いに向かうエクスに私は返す。それに応える様に、エクスはサムズアップをした。すると、その様子を見ていたトゥモローが、私を強い眼差しで見つめている事に気づき、彼女の方に身体を向ける。

 

トゥモロー「……"ママ"」

 

 トゥモローが私にまた——"ママ"と語りかける。出会ってからずっとそうだ。ずっと——気になってはいた。彼女と話す時に感じる"親しみやすさ"、その理由がもしかしたら——と。

 

はな「トゥモロー、もしかして貴女って……」

 

——ギュッ!

 

はな「ッ!?……トゥ、トゥモロー?」

 

 私の言葉を遮って、抱きついてくるトゥモロー。彼女は私を抱き締めながら、優しい口調で語り出す。

 

トゥモロー「それは……まだ分からない。"未来は無限大"だから……ママが描いた数だけ、沢山の未来が生まれるの。私は……そんな未来の一つの可能性。だから、私の事は忘れても良い。だけど、これだけは忘れないで。誰かの為に、みんなの未来の為に戦ってる人がいる事……それだけは忘れないで」

 

はな「"はぐたん"……え?」

 

 意図せず口から漏れた——"はぐたん"と言う言葉。人か物かも分からない言葉なのに、知らない事のはずなのに、私は——この"名"を呼んでいた。

 

さあや「"はぐたん"……私も、その名前を知ってる。だけど……」

 

ほまれ「私も……聞いた事ある。でも……ダメ!思い出せない!」

 

えみる「知ってる筈なのです!?何で思い出せないのです!?」

 

ルールー「記憶メモリーに該当する項目無し……ですが、何故でしょう?大事な名前だと、私の心が……感じています」

 

 "はぐたん"——この名前に覚えがあるのは、私だけじゃなかった。私以外の薬師寺さん達も、何故かこの名前を知っていた。

 

エクス「トゥモロー、そろそろ……」

 

トゥモロー「はい、おじさま」

 

はな「待って!」

 

トゥモロー「ッ!?……ママッ!!!」

 

はな「ッ!?」

 

 私の呼び止めに一瞬だけ止まるトゥモロー。彼女はもう一度、私を"ママ"と呼び——。

 

トゥモロー「未来で……待ってるね、ママ!」ニコッ!

 

はな「ッ!!……待って!待ってよ!!」

 

——シューーーンッ!!!

 

 呼び止めようとする私の言葉を聞かないエクス、シード——そして、トゥモロー。3人は再び黒い巨人に視線を戻すと、光の玉となって空へと飛んで行く。彼らが言っていたもう1人の——"プリキュア"がいる場所に。

 

 

side:エクシード

 

クライ『ナゼ守ル!?自分ノ身ヲ傷ツケテマデ!!』

 

エクシード「……」

 

クライ『ナゼ戦ウ?ナゼ戦ウ?!プリキュアァァァァァ!!!!!』

 

 街に手を下そうとする彼を止めているエクシードに、クライは問いかけてくる。【何故、自身を犠牲にしてまで戦うのか?】——と。エクシードは右手の人差し指で彼の攻撃を止めながら、微笑みながら答えを返す。

 

エクシード「僕が……みんなの手を借りないと何も出来ないみたいに。私が……僕がいないと悲しいみたいに。人は……1人じゃダメなの。赤ちゃんと一緒だよ。赤ちゃんは……みんなで育てるでしょ?未来だって……1人じゃ育めない!」

 

 

はな「フレフレ……プリキュア」

 

 

 のびのびタワーの展望フロア、そこからプリキュアを見つめる——はなと他の4人。その中ではなは、小さなエールをプリキュアに呟く。

 

エクシード「きっと……心にトゲパワワが満ちる時もある。もう頑張れないって時もある

。だけど……きっと!」

 

エクス「そんな時は!」

 

シード「いつだって!」

 

トゥモロー「私達が!」

 

エクシード「そばにいるっ!!!」

 

 エクシードの傍に現れるエクス、シード、トゥモローの3人。クライの手を受け止めるエクシードの手の横に、3人の手が加わり——4人でクライの手を受け止める。

 

「「「「アスパワワは輝いてる!みんなの心!!みんなの未来にっ!!!」」」」

 

 トゥモローの身体から出てきたミライクリスタルがその輝きを更に大きくし、その輝きは——クライの手にも収まらないほどに光を増す。

 

 

現代のトラウム「未来……!」

 

???「……」

 

——ポタッ、ポタッ

 

 

クライ『ウオォォォォォォォォォォッ!!!!!』

 

——ドンッ!!!!!ドゴンッ!!!!!

 

エクシード「……聞こえる」

 

 

はな「フレフレ!プリキュア!」

 

「「「「フレフレ!プリキュア!」」」」

 

 小さなエールが——プリキュアに送られる。

 

シード「どんなに小さな声だって!」

 

エクス「集まれば……"エール"になる!」

 

トゥモロー「みんなの想いが、集まれば!」

 

エクシード「未来は、きっと……変わるっ!!!」

 

「「「「はあぁぁぁぁぁっ!!!!!」」」」

 

クライ『ウオ、ウオォォォォォォォォォォッ!?!?!?』

 

 アスパワワの輝きが、更に光を増し——。

 

 

はな「フレフレ!プリキュア!」

 

「「「「フレフレ!プリキュア!」」」」

 

——"フレフレ!プリキュア!"

 

はな「えっ!?」

 

はぐくみ市のみんな「「「「「フレフレ!プリキュア!」」」」」

 

——"フレフレ!!!プリキュア!!!"

 

——"フレフレッ!!!!!プリキュアッ!!!!!"

 

 少しずつ動き出す時間。動き始めた人々。プリキュアの放つ未来の光と、5人の小さなエールが、いつの間にか——大きなエールへと変わっていた。"プリキュア"の存在が忘れられていても、その言葉の意味が分からなくても——目の前で戦っている"プリキュア"に、"エール"が送られる。

 

——シューーーーーンッ!!!!!

 

 人々から生まれるアスパワワが、エクシード達の光に集まっていく。

 

エクシード「みんな……!ありがとう!ありがとう!!みんなの記憶にプリキュアはいないけど……だから!今だけは!エクシード達が頑張る!!!」

 

トゥモロー「エクシード、コレを!」

 

エクシード「これ……ミライクリスタル!キラキラ、戻ったんだね!」

 

トゥモロー「おじさま、シード、エクシード……みんなの想いがあれば、きっと出来る!私も一緒に頑張るよ!フレフレ!みんな!フレフレ!わたしーーーっ!!!」

 

エクシード「それなら……すぅ〜!いっくよーーーーーっ!!!!!」

 

 受け取ったミライクリスタルをQaフォーンSに戻す。すると、カイザーン戦以降は使えなかった"HUGっと!プリキュア"のプリキュアプリが起動し、それをエクシードは素早くタップする。

 

エクシード『プリキュアプリケーション!アップデート!!インストーーール!!!』〈HUGっと!〉

 

エクシード『ミライクリスタル!ハート、キラッと!』

 

 エクシードから発光すると、周囲にいたエクス、シードを取り込んで一つに戻ると、次はエクシードが5人に分身する。5人のエクシードを包む光が消え、新たな姿をしたエクシードが姿をみせる。

 

Xs・エール「超越せよ、無限の未来!元気のプリキュア!キュアエクシード・エール!」

 

Xs・アンジュ「知恵のプリキュア!キュアエクシード・アンジュ!」

 

Xs・エトワール「力のプリキュア!キュアエクシード・エトワール!」

 

Xs・マシェリ「愛のプリキュア!キュアエクシード・マシェリ!」

 

Xs・アムール「キュアエクシード・アムール!」

 

「「「「「HUGっと!プリキュア!」」」」」

 

 5人になったエクシードは、エールからアムールまでの"HUGっと!プリキュア"全員の姿を模した衣装へと変わり、高らかに"HUGっと!プリキュア"を名乗る。

 

Xs・エール「スパークロックブレス!プリキュアプリード!!!」〈HUGっと!〉

 

ミライパッド……〈アップデート〉:メモリアルキュアクロック……プリブート!

 

エクシード's+トゥモロー「「「「「「メモリアルキュアクロック!マザーハート!ミライパッド・オープン!」」」」」」

 

 ミライクリスタル・マザーハートがセットされた状態で現れたメモリアルキュアクロック。その画面の中にあるトビラが開かれると、6人のプリキュアは更なる姿へと変化する。マザーハートスタイル——HUGっと!プリキュアの最高の姿をエクシード達は、その身に纏う。

 

エクシード's+トゥモロー:MHS『『『『『『HUGっと!プリキュア!今ここに!』』』』』』

 

 6人の掛け声に答える様に現れる光の女神——【マザー】。6人は目の前に浮かぶメモリアルキュアクロックに手を掲げる。

 

Xs・アムール:MHS『ワン・フォー・オール!』

 

Xs・マシェリ:MHS『オール・フォー・ワン!』

 

Xs・エトワール:MHS『ウィーアー!』

 

Xs・アンジュ:MHS『プリーキュア―!』

 

Xs・エール+トゥモロー:MHS『『明日にエールを!』』

 

エクシード's+トゥモロー:MHS『『『『『『ゴーファイ!みんなでトゥモロー!』』』』』』

 

 眩い光となってクライへと向かうマザー。強大なクライの胸にぶつかった光は、再びマザーの姿となり、心の中のクライを——その優しい微笑みのまま抱き締める。眩く輝くアスパワワの光は、クライを光の中へと溶かし——浄化していく。

 

——カチッ

 

 そして、どこかの時計が針を進め——時を刻み始める。止まっていた時間が——完全に動き出したのだ。

 

——ビキビキッ!ビキビキビキッ!!!ガタガタガタンッ!!!!!

 

 崩れ始めるクライアス社のビル。そのビルを見つめるエクシードとトゥモロー。戦いが終わった事を察して海岸に戻って来たプリキュアカーシャから、コルーリが下りて来て、二人に駆け寄る。

 

コル―リ「エクシード!終わったんですね!」

 

トゥモロー「ううん、まだ……」

 

コル―リ「えっ?トゥモロー……どうしてあなたが!?」

 

トゥモロー「・・・・・・エクシード」

 

 真剣な表情でエクシードを見るトゥモロー。彼女の視線に目を向けたエクシードは、すぐに何かに気付いた様に言葉を返す。

 

エクシード「……分かってる。コルーリ、出発の準備をお願い。トゥモローは?」

 

トゥモロー「・・・・・・」フルフルッ

 

エクシード「そっか。……ちょっと行ってくるね。最後の仕上げが残ってるから」

 

 エクシードは、崩れ始めたクライアス社のビルの中へと向かう。あの中にいる——まだ【”未来”に進めていない男】を救う為に。

 

 

クライアス社内部

 

エクシード「……ここかな」

 

 大きな扉の前に立ち、エクシードは呟く。開いている扉を抜けると、そこは大きな会議室のような場所。その中央に目的の人物——ジョージ・クライは座っていた。割れてしまっているガラス張りの窓の向こうを眺めている。

 

クライ「……やあ、また会ったね」

 

 エクシードに、まるで知り合いにでもあったような軽い挨拶をするクライ。その表情は——彼の名前の様な泣き顔【CRY《クライ》】ではなく、どこか満足でもしている様に微笑んでいた。

 

クライ「僕の負けだ。早くここから離れた方が良い」

 

 こちらの心配までしてくれるクライ。そんな言葉を受けたエクシードは、立ち去ることなく、彼の傍らに腰を下ろす。

 

クライ「永遠の城は崩れ行く……夢を見ていたのは、僕の方だったのかも知れないな」

 

 窓の向こうの空を見て——彼は言葉を続ける。

 

クライ「永遠など……」

 

エクシード「永遠は……あなたの言う通り、夢の様な物。それを可能にするのは……神様くらいだと思う。だから、人は……明日に向かうの。今の幸福が……明日も、これからも続く様に。頑張って、失敗して、悪い結果が待っていても……進むんだ」

 

 クライに語り掛けるエクシードは——クライに手を差し伸べる。

 

エクシード「……行こう?」

 

クライ「……何処に?」

 

エクシード「……未来へ」

 

 エクシードの言葉を聞いて立ち上がるクライ。そんな彼を見たエクシードも、すぐに立ち上がる。

 

クライ「無理だよ。ボクは未来を信じない」

 

エクシード「嘘だよ。貴方の心は……明日を見ている。貴方は進めるよ……あと一押しが足りないだけ」

 

 彼の背中に語り掛けるエクシード。しかし、表情が見えない彼の感情が分からず、彼への最後の”一押し”が思いつかない。そんな時、エクシードの中に”声”が響く。

 

——私に任せて、エクシード

 

エクシード「えっ?……分かった」

 

 心の中に響いた”彼女”の声に従い、エクシードは”主導権”を——”彼女”に渡す。

 

——ギュッ

 

クライ「・・・・・・え?」

 

 クライの背中を——ゆっくりと抱きしめる”彼女”。”彼女”は——エクシードの身体で彼に語り掛ける。

 

エクシード(???)「貴方は……未来を信じてる。だって、貴方は……あの時、私に"またね"って、言ってくれたから」

 

クライ「……あぁ」

 

——ポタッ、ポタッ

 

クライ「……ははっ。君は……本当にいたんだね。どうして……ボクは忘れていたのかなぁ?」

 

 クライの頬を伝う涙。彼はまるで、何かを思い出した様に——小さく笑う。

 

クライ「君は……変わっていない。君は……本当に素敵な女の子だね」

 

 抱き締めていた"彼女"の手をゆっくりと外し、クライは"彼女"を見る。

 

エクシード(???)「あの時は、ちゃんと言えなかった。でも今度は……貴方に言うよ」

 

 "彼女"も——クライを見つめる。

 

エクシード(エール)「……またね」

 

クライ「ああ……またね。ボクも……もう一度」

 

 突如、視界の中に舞い始める黄色の花弁。その向こうで微笑むクライを、昇ってきた朝日が包む。あまりの眩しさに瞑ってしまった瞼を開いた時には——彼はもう、目の前には居なかった。

 

エクシード「……あっ」

 

 ゆっくりと周囲を見ていたら、彼が居た場所に何かが落ちていた。そこにあったのは、一輪の黄色い花。それを拾うとエクシードは、心の中の"彼女"に問う。

 

エクシード「彼は……本当に未来へ進んだのかな?」

 

エール(進んだよ……きっと、ね)

 

エクシード「……分かった。そうだ、エール。それから、まだ喋ってないHUGっと!プリキュアの皆さん」

 

HUGっと!プリキュア(((((ん?)))))

 

エクシード「……お帰りなさい」

 

HUGっと!プリキュア(((((うん!ただいま〈なのです〉!)))))

 

 朝日の中に消えたクライが、何を思ったのかは分からない。だけど、エクシードの心の中に——彼女達《プリキュア》が帰ってきた。その真実を胸に、エクシード達の戦い——その始まりは、静かに終わりを告げた。

 

 

——2019年 はぐくみ市〈海岸〉

 

side:駆

 

コルーリ「……あっ!カケル!タネ!」

 

トゥモロー「おじさま!種さん!……あの、ジョージ・クライは?」

 

駆「……大丈夫。彼は……未来に歩き出して行ったから」

 

トゥモロー「そう……ですか」

 

 海岸に戻った僕らを迎えるコルーリとトゥモロー。すると、トゥモローはすぐにクライの事を尋ねる。僕は目の前で起きた事を伝えると、トゥモローは安心した様に、ニコリと微笑んだ。

 

駆「うん。コルーリ、すぐに出発する」

 

コルーリ「言われた通りに準備は出来ています。いつでも行けますよ」

 

駆「分かった。トゥモローも早く僕の中に……」

 

トゥモロー「……おじさま」

 

 プリキュア達を助ける事を優先する僕は、すぐにこの時代からの出発を考える。それに伴い、恐らく自分の力で実体化したトゥモローを僕の中に戻そうとする僕の言葉は、目の前の彼女によって遮られる。

 

駆「……どうしたの?」

 

トゥモロー「私……消えるまで、この時代にいても良いですか?」

 

種「えっ!?でも、それじゃあ!」

 

駆「種、やめよう。トゥモローにとって、この時代も、この場所も……かけがえの無い物なんだ。……分かった。ただ、君を実体化させているAqライトは、どれくらい保つのか分からない。それでも良いかな?」

 

トゥモロー「ありがとうございます、おじさま」

 

 僕達に一礼するトゥモロー。そんな彼女を背に、僕らはアカーシャに乗り込む。すると、僕らの背中に——。

 

トゥモロー「フレフレ!おじさま!フレフレ!種さん!フレフレ!コルーリさん!私、未来で待ってます!ママ達を助けてくれて、ありがとうございました!!プリキュアの事、宜しくお願いします!!!」

 

 未来を生きる明日《トゥモロー》からの"エール"が——送られていた。

 

 

side:トゥモロー

 

トゥモロー「頑張って下さい、ヴァールハイト・プリキュア」

 

 夜明けの朝日に照らされた快晴の空を、"碧色の流星"が駆け抜ける。おじさま——クロノ君のお父様達が、他の時代に向かって行くのを、私は海岸から見送った。

 

トゥモロー「・・・・・・あ」

 

 海岸の近くにやって来た人影。見慣れたその姿を——私は離れた場所から見つける。

 

はな「はぁ……はぁ……いない。さっきの流れ星は……やっぱりエクスたちだったのかな?」

 

 ——ママだ。全てが終わって、おじ様たちが最後にいた場所へやってきたのだろう。

 

さあや「私達を助けて、すぐにいなくなっちゃうなんて……」

 

ほまれ「これじゃあ、まるで……」

 

えみる「”ヒーロー”!まさにヒーローなのです!」

 

ルールー「プリキュア……誰も知らない謎の戦士。彼らは、何者だったのでしょうか?」

 

はな「分からない。知ってるような気はするんだけどね。でも……エクス達のおかげで、私達は……今を生きてる。すぅ~~~……フレフレッ!!!プリキュアーーーーーッ!!!ありがとーーーーーーーーーーっ!!!!!」

 

 おじさま、あなたに——このママの”エール”は届いてるかな?もし届いてなくても——消えるまで私が覚えておきます。

 

はな「……届いたかな?私の……」

 

さあや「届いたよ、きっと」

 

ほまれ「うん、”はな”のフレフレ……ちゃんと届いたと思う」

 

はな「えっ?輝木さん、いま名前で……」

 

さあや「わ、私も……野乃さんの事、”はな”って呼んでも良いかな?」

 

はな「~~~ッ!?うん!勿論だよ!さあや!ほまれ!」

 

 笑い合う3人を見ていると、急に朝日に"七色の光"が混じり始める。よく見ると——それは"私の身体"から出ているみたいだ。

 

トゥモロー「……時間みたいだね」

 

 どうやら、今の私を実体化させているおじさまの"Aqライト"が、遂に消え始めたみたいだ。

 

はな「みんな!コンサートの後、私の家に来ない?えみるちゃんとルールーもおいでよ!」

 

さあや「本当?!是非!」

 

ほまれ「うん、悪くないんじゃない!」

 

えみる「はい!お邪魔いたしますのです!」

 

ルールー「私も行きます。おせちにお雑煮……じゅるり」

 

 私は消え続ける身体で、歩き出す5人が去るのを見届ける。完全に見えなくなったのを確認して、私はみんなに向けていた視線を、輝く朝日に向ける。

 

トゥモロー「良かった。これで……ひと安心。……ばいばい、ママ」

 

 笑顔のママ達に安堵し、私は消えようと——聞こえもしないお別れの言葉を口にする。

 

——1人で行かせるかよ

 

トゥモロー「えっ?」

 

 すると、誰かが私の右手を握る。視線をその方向に向けると——ここに居るはずの無い"彼"が、そこに立っていた。

 

トゥモロー「なんで……ここに居るの?」

 

???「"あっちの父さん"が、【はぐみちゃんを1人で残せないから】って、俺を創ったんだ。父さん達は無事に次の時代へ向かってる所さ」

 

トゥモロー「えへへっ、そっか……ありがとう」

 

???「お礼なんて良いよ。俺が……好きな子を1人にしたくないだけだ」

 

 いつものどこか強気だけど、私の事を誰よりも考えてくれる優しい所は、私が知ってる"彼"のままだ。

 

???「はなさん達、大丈夫だったか?」

 

トゥモロー「うん。おじさまがなんとかしてくれたよ」

 

???「そっか。これで俺達の世界にも影響が出る筈だ。はなさん達、HUGっと!プリキュアが戻ってくる可能性は高い。そうすれば、はぐみ達に起こってる発作も改善する」

 

 私が覚えている最後の記憶は、"彼"を戦いに見送った事だった。私や世界の為に——戦いに行った。本当の"彼"は、今も戦っているかもしれない。

 

トゥモロー「……ねえ、"クロノ"君」

 

クロノ「……なんだ?」

 

トゥモロー「消えちゃったらさ、ここで見た事も、おじさま達が頑張っていた事も、私にとって無かった事に……なっちゃうのかな?」

 

 私は——おじさまの力を借りて出来た"偽物"だ。本当の私は、今も苦しんでいて、ベッドの上で——戦っているクロノ君が帰って来るのを待っている。私が消えても、本当の私の中に、この出来事を知らせる事なんて出来ない。無かった事に——なるしかない。

 

クロノ「俺は……そうはならないと思う」

 

トゥモロー「えっ?」

 

クロノ「今、お前の中にある心は……偽物か?俺は、こうやってはぐみと話して嬉しいと感じる心は”本物”だと思ってる。俺が創られた存在でも……俺の中にある心が本物なら、きっと……今も戦ってる本物の俺の心とも、繋がっているんじゃないかな。だから、俺達は消えるんじゃない。俺達は……帰るだけなんだよ」

 

トゥモロー「帰る……そっか。そうだね。でも、クロノ君らしくない精神論すぎない?」

 

クロノ「どんなゲームを作る時も、俺の才能が何処まで出来るのか分からない。だから、俺は絶対に出来るって信じるんだ。やってみなくちゃ分からない」ニコッ

 

 消え続ける私達。そんな中で、クロノ君は私に笑顔で語る。

 

クロノ「信じろ、はぐみ。お前が帰ってきたら……”おかえり”って、言ってやるよ」

 

トゥモロー「……うん。それじゃあ……」

 

 虹色の光の粒子になって消えていく私達。

 

トゥモロー「……また後でね、クロノ君」

 

クロノ「ああ、また後で……な」

 

 私達は、2019年の時代から——消えていった。

 

 

——2043年 MUGENコーポレーションビルあざばぶ支社ビル 医務室

 

はぐみ「・・・・・・んん?」

 

ルールー「はぐみ!?お父さん、はぐみが起きました!」

 

トラウム「本当かい、ルールー?!……はぁ、良かった。発作も消えているね」

 

はぐみ「ドクター、あの……私……」

 

 私が目覚めたのは、医務室の様な清潔感のある部屋。私は……どうしてこんな所にいるのだろう?

 

トラウム「君は、以前にでた発作によって倒れてしまったんだ。例の”プリキュア消失現象”の影響だね。だが、なんと朗報があるんだ!君のお母さんが戻って来たんだよ!さやちゃんやテルちゃんのお母さん達もだ!きっと、正史の駆君たちがプリキュアの忘却を解消したのだろう!」

 

はぐみ「あっちのおじさまが……あれ?」

 

 なんだろう?心に何かが引っかかる。大事な事を——忘れてるような気がする。

 

トラウム「はなちゃん達はこっちに向かっているそうだ!おっと、いけない!それよりも、”彼”の方が先だね!」

 

——ガチャン!

 

 医務室の扉が開き、そこから人が入って来る。そこにいるのは——クロノ君だった。洋服には土汚れや傷が数カ所もあり、”ボロボロ”と言う表現が一番ピッタリかもしれない。でも、その理由を私は知っている。だって、私はぼんやりだけど彼にお願いしたから。【みんなを守って】——きっと、その願いを叶えてくれたんだよね。

 

クロノ「・・・・・・」

 

 疲れ切った足で、ゆっくりと私に近寄るクロノ君。そして、私の前に辿り着いたクロノ君は——ゆっくりと右手を私に差し出して——。

 

クロノ「……”おかえり”、はぐみ」

 

はぐみ「・・・・・・あ」

 

 私の心から溢れてくる——記憶。あっちのおじさまと一緒にママ達を助けた事。クロノ君との約束。その全てを私は思い出していく。それ寄って生まれる感情の爆発で——私の瞳に涙が溢れてくる。でも——この言葉をちゃんと返さないと。

 

はぐみ「……うん!ただいま、クロノ君」

 

 私達の未来、ママの未来、おじさまの未来——そして、プリキュアの未来。みんなの明日《トゥモロー》が笑顔でいられるように。私は忘れない——おじさまの活躍を。この後、クロノ君と、ママと、みんなに——話してあげるんだ。プリキュアを守る——”ヴァールハイト・プリキュア”のお話をね。

 

 

To Be Continued……




如何だったでしょうか?可能な限り本編を意識し、自分の書いてる物語の状況によって生まれた変化をうまく合わせられましたかね?次回は、キラキラ☆プリキュアアラモードの時代へ!好きも嫌いもない”空っぽ”になった世界に辿り着いたヴァールハイト・プリキュアの3人。彼らは、世界にキラキラルの光を満たすことは出来るのか!?乞うご期待ください!

もしかしたら、雑談回を挟むかもしれません!ちょっとまだ忙しいですが、かける様なら進める前に書きたいと思います。
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