2025年12月31日 多田織市
詩文「へっくしゅんっ!!!ぶ〜!さび〜!!……はぁ、今年は俺達2人だけか〜」
和澄「馬鹿!私達の事を考えて、駆君達が気をつかってくれたのよ。……夫婦になって初めての年越しだからって///」
詩文「ッ!?……そ、そうだな///」
???「すみません、そちらのご夫婦の方。少し尋ねても宜しいでしょうか?」
詩文・和澄「へっ!?……ど、どうぞ///」
今年もあと少しなった多田織市。そんな街を歩いていた駆達の友人2人に、高校生くらいの少年が話しかけてきた。
???「"時生 駆"と言う方を探しているのですが、ご存じありませんか?」
詩文「えっ?駆を探してるのか?……んっ?なんかあんた……駆に似てるなぁ?」
???「……あぁ、遠い"親戚"なもので」
黒い髪を短く切っている少年を見て、駆の親友である詩文は——他ならぬ親友の面影を少年に感じた。すると、少年はその理由を《遠い親戚》と伝えたので、詩文はすぐに納得した。
詩文「あ〜……なるほどな!どおりで似てる訳だ!じゃあ、年末で会いにきた感じ?」
???「まあ、そんなとこです」
和澄「でも、駆君たち、家には居ないんじゃない?ほら、今年も"あっち"に行ってるだろうし」
???「あっち?」
詩文「そうそう!毎年恒例になってるやつな!あか……あかしく……何とかって所に行ってんだろうぜ!」
???「"アカシック"……なるほど、分かりました。そっちに行ってみます。それでは、失礼します。お二人共、良いお年を」
丁寧に別れを告げて去って行く少年を見送る2人。礼儀正しい言葉遣いに、再び"親友"の面影を感じて笑う詩文とは対照的に、和澄はどこか腑に落ちない様子でいる。
詩文「じゃあな〜!……あの堅苦しい感じ、間違いなく駆の親戚だな。なあ、和澄……和澄?どうしたよ、考え込んで」
和澄「う〜ん……いや、結構前にさ、駆君の親戚について種ちゃんに聞いた事があるのよ。【"いとこ"とか居ないの?】って。確かその時、親戚は殆どいなくて……いとこの"女の子"しかいないって聞いたんだよね」
詩文「えっ?じゃあ、あいつ……あれ?」
ある疑問に気付いた2人は、向き合っていた視線を、疑問の原因である少年へ戻そうとしたが、ついさっきまで見送っていた少年の姿は——冷たい風が吹く、町並みの中から消えていた。
アカシック王国 アカシック城前
うた「はい、駆さん!クリームソーダです!」
駆「ありがとう、うたちゃん」
なな「あの、いいんですか?駆さん、20歳になるんですよね?」
こころ「こう言う時って、お酒を飲むんじゃないですか?クリームソーダじゃなくて」
駆「あはは……僕、お酒は飲まないって、おばあちゃんに飲まされた時に決めてるから。それに、あれを見てると……ね」
そう言って、駆は中央に集まった人混みを指差す。そこには、成人して大人になったプリキュア達に囲まれる種がいた。
種「んっ!んっ!!んっ!!!ぷは〜〜〜!!!!!えへへっ!おしゃけ、おいひ〜〜〜!!!」
なぎさ「おっ!種ちゃん、いける口だねー!」
ほのか「うふふっ!ビールも良いけれど、今度は日本酒もいかが?スッキリして美味しいわよ」
かれん「こっちにはワインもあるわよ。芳醇な香りを楽しみながら飲んでみて」
種「えへへっ!飲む!飲むっ!!!ぜ〜んぶ、持ってこ〜〜〜いっ!!!あはははっ!!!!!」
駆「ああは……なりたくないしね」
キミプリ「「「あ〜……」」」
駆の言葉に納得した3人は、苦笑いを駆へ返した。
プリルン「タコさんウィンナー、美味しいプリ!」
メロロン「ねえたま、お口が汚れてるメロ!」
駆「ふふっ、2人も楽しそうで良かった。……まあ、飲めないのもあるけどさ、来年は……僕にとっては"特別"なんだ」
こころ「特別?何が特別なんですか?」
駆「僕が過去に超えた……"行き止まりの未来"があった年だから……かな」
こころ「"過去"に超えた……」
なな「"行き止まりの未来"?」
うた「ん〜……過去なのか、未来なのか、よく分からないんですけど」
駆「ああ、そうだね。言葉にすると、分かりづらいよね」
駆は、過去に超えた——未来の自分"レクス"を思い出していた。当時、13歳だった自分が直面した20歳の自分。戦いが終わり、自分が20歳になってみて、今の自分が——どれだけ幸福なのかを噛み締めている。彼が生きた未来に、時代が追いついたから——この時代をしっかりと見据えていようと言う、駆なりの決意だった。
駆「……まあ、そんな理由で、来年が終わるまでは断酒しようかなって。飲む気もないけどね」
——バタンッ!
その時、話している後ろから何かが倒れる音がする。その音の方へ視線を向けると、そこには地面に倒れている”琴爪 ゆかり”がいた。
駆「ゆ、ゆかりさん!?どうしたんですか!?」
ゆかり「か、駆……に、逃げな……さ……」ガクッ
駆「ゆ、ゆかりさん!しっかりして下さい!」
こころ「あ、あれ?なんか……ゆかりさん、お酒臭くないですか?」
駆「ゆかりさんは、自分が飲める量を分かってるはずだ。酔いつぶれる量のお酒を自分で飲む訳……」
おに~ちゃ~~~ん!
倒れたゆかりの事を考えていた駆とキミプリの3人。すると、駆を”お兄ちゃん”と呼ぶ人物が、カラン、カランと酒瓶がぶつかる音を響かせてやって来た。
種「おに~ちゃ~ん!タネ~、酔っちゃったみた~~~い///」
こころ「わわっ!?種さん、そんなに酒瓶持ってたらあぶないですよ!」
なな「あれ?あのお酒の瓶、どこかで見た様な……」
うた「知ってるの、ななちゃん?」
駆「……おい、おい!おい!!おいっ!!!スピリタスに!エバークリア!サンセット・ベリー・ストロング・ラムに!ストローとロンリコ151!?誰ですか!?こんなアルコール度数の高い酒を持ってきたのは!?」
種「えへへっ!ありすちゃんに頼んでおいたんだ~!それでね~、これ全部をお口の中で混ぜ混ぜして~、みんなに口うちゅしで分けてあげたらね~……皆、寝ちゃったの~~~!」
駆「ッ!?そ、そう言えば……嫌に静かに……ッ!?」
種に意識がいって気付いていなかったが、よく見ると——倒れているのはゆかりだけではない。種にお酌をしてあげていたなぎさ達や、周りでパーティーを楽しんでいた他のプリキュア達が、端っこで話していた駆とキミプリの3人以外——種によって倒されていた。
うた「プ、プリルン!?メロロンッ!?あっ!」
プリルン「プ……プリ~~~///」
メロロン「メロメロ……メロ~~~///」
種「えへへ~!あっ!安心ひてね、おに~ちゃ~ん!ツバサ君にはチュ~じゃなくてね、瓶で……”ゴンッ!”って、してから~……瓶の中の飲ませたの~!私のチューは、男の人は~、おに~ちゃんだけだからね~~~!」
駆「いや、”ゴンッ!”もダメだって!うわっ!?」
——ガシッ!!!!!
種「つ~か~ま~え~た~~~♡」
駆「ま、待って!?話せばわかる!まずは瓶を置いて……!」
種「おに~ちゃ~ん、チュ~~~……!」
駆「うわぁぁぁぁぁっっっっっ!!!!!」
——ガチッ!
種によって直接”高アルコール全部混ぜカクテル”を粘膜接触させられそうになった駆。あと少しで接触しようとした瞬間、空間全体に”歯車が止まった”ような音が響く。すると、その音を聞いた駆だけが——その世界で動いていた。
駆「……止まってる。今の音、誰かが時間を止めたのか?」
良いザマだな……”僕”
駆「あ、あなたは……”俺”!?」
レクス「久しぶりだな、”僕”」
駆の目の前に現れたのは、先程思い出していた未来の自分——レクス。なんと彼が、駆の前にもう一度姿を表したのだ。
レクス「目線、漸く合うようになったんだな。あの時は、俺が見下ろしてたのに」
駆「どうして、ここに?」
レクス「”こっちの時間”にも、何か起きないかと思って最後の見守り。お前の場所は、詩文と和澄さんに聞いた。あの二人、結婚したんだな。幸せそうで良かった」
駆「……そうか」
レクス「”僕”、お前が掴み取って、お前が守ったこの世界は……どうだ?」
駆「……最悪かもしれない。争いは消えないし、互いを理解し合う事も……まだ完全に出来ていない。だけど、生きる価値のある世界だと思っている。僕が今あげた事だけが、世界の全てではないんだから」
レクス「……そうか、お前も大人になったんだな。もっと、世界を見れるようになった。お前がいれば、こっちは安心だな」
駆の言葉を聞いて安心したレクスは、身に纏った黒いコートを翻し——駆に背を見せる。
駆「……コルーリには会わないの?」
レクス「会わない。俺は……ずっと彼女と一緒にいるから」
駆「……分かった」
レクス「あっ!そうだ……プレゼントを用意しておいたから、後で確認してくれ」
駆「プレゼント?」
レクス「ああ、見てからのお楽しみだ。種の分もあるけど……お前なら、どっちが自分のか見分けられるだろ」
駆「……うん、やってみる」
レクス「ふっ……じゃあな、”僕”!」
駆「じゃあね、”俺”!」
——ガチッ!
空間の裂け目を開いて、その中に消えるレクス。彼と裂け目が消えた瞬間、もう一度——音が響く。そして、世界は再び動き出す。
種「チュ~~~……あ、あれ?おに~ちゃん?あっ!何でそっちにいるの!?」
コル―リ「はっ!はっ!皆さん、お待たせしました!準備に時間が……チチュン!?な、何があったんですか!?どうして皆さん、倒れちゃってるチュン!?」
うた「なんか変な音が聞こえた気がしたのにな……あれ?駆さ~ん!種さ~ん!ちょっと来てください!」
急な事態にそれぞれが驚いている中、何かを見つけたうたが、駆と種を呼ぶ。すると、先程まで何も置かれていなかったテーブルに大きめの箱が、カードを添えられて置かれていた。
なな「どうしたの、うたちゃん?」
こころ「うた先輩、どうしました……って、なんですか、これ?いろいろ書いてありますけど」
コル―リ「ハッピーバースデー、トゥー”ユー”とトゥー”ミー”と書かれてますね」
駆「……大丈夫、これが誰のか分かるよ。はい、種。”ユー”の方」
種「あ、ありがとう。お兄ちゃんは……”ミー”の方なの?」
駆「うん。これは……未来からの祝福だから」
Happy birthday!駆・種
Happy New Year!
如何だったでしょうか?今年は病院で年越しになったので、帰ったらゆっくり休みたいですね。なんて、自分の事はまた今度。どうか、今年もヴァールハイト・プリキュアをよろしくお願いします!