ニンジャスレイヤー・ウィズ・ワンダラーズ   作:しゅたーじ

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(これまでのあらすじ)
ニンジャめいた少年は、恐怖パンクス二名を殺害した。そのまま、ネオサイタマをあてもなくさまようが…


レイド・オールド・トーキョーベイ

重金属酸性雨と工場煤煙が漂うネオサイタマに、少年はいた。少年の耳には、雨音に混じり広告音声が聞こえる。彼には、それでこの街の実情をおおむね知ることができた。暴力と欺瞞に溢れた、未来の成れの果て。ここは故郷に似ているが、しかし自分のいた世界ではないらしい…迎撃ヤクザを屠った少年は、自分の精神が()()()に回帰したように思えた。敵しかおらず、緊張と復讐が自分の心を支配したあの時に。

そしてそれ以上に、自分の鋭敏なニューロンが、ネオサイタマに渦巻く悪意を察知していた。

 

 

ネオサイタマに渦巻く悪意、それは必ずしも、少年の考えすぎではなかった。ソウカイヤ。この街、あるいは日本を裏から牛耳る団体。その構成員のほとんどが、ニンジャである。ニンジャはけして伝説でもなく、ましてカトゥーンの存在でもない。実在するのだ。そして―ここに一人、その組織の首領がいる。

 

「「「アーレエエエエ!」」」

ムッハハハハハ!ヨイデワ・ナイカ!」

 

―この男。老元 翰(ラオモト・カン)。彼もニンジャであるが、そのカラテは常軌を逸する。おそらく、いや必ず変身した少年でさえも、簡単に殺して見せるだろう。まさしくベイビー・サブミッションだ。そして彼は暗黒邪悪ニンジャ集団の首領にふさわしい、超人めいた統率力、経済への深い理解、そしてカリスマを持ち合わせている。ゆえに―

 

「はぐれニンジャの捕獲ないし討伐…よかろう、サンシタニンジャの良い訓練となろうて」

「御理解アリガトウゴザイマス」

 

おおよその判断は彼が下す。そしてソウカイ・ニンジャにより搾取が行われる―恐るべきタテワリ搾取構図。

それがこの世界の基本であり、覆されることはない。

そして、はぐれニンジャ―すなわち少年は、その犠牲者となるのだ。

 

 

 

少年は歩いた。ひたすらに。何処かもわからなければ、何処に向かうべきかもわからない……ただあてもなく。

ここはどうやら、「オールド東京湾第七埠頭」なる所らしい。文字が普通に読めて助かった。…その時!

イヤーッ!

 

狂人めいた叫び!その声の主は、街灯に立ち、金属製の星型円盤を投擲!これは―スリケンだ!

少年は身を屈め回避!そして…少年を強い風が包み込んだ!

 

風がやんだとき、少年の体躯は…おお、ゴウランガ!まさしく異形のものになっている!その胸、足は金属に覆われ、胴は青いサイバネワイヤめいて青く発光する。背中にはバーニアめいた翼が、そして頭部は…鳥!獣とも機械ともつかぬ体躯を、襲撃者は不思議に眺め、

 

「対象は体が大きく変化…ヘンゲ・ヨーカイジツの一種の模様。メンポなし。珍しいな」

 

IRCレコーダーに記録している。そして、

 

「ドーモ、初めまして。アサイラントで―グワーッ!?」

少年だったものはイナズマめいた速さでアサイラントに近づき蹴り飛ばした!CRAAAAASH!!!

 

「グワーッ…卑怯なり!アイサツ中にアンブッシュとは!スゴイ・シツレイだ!」

 

アイサツはニンジャの神聖不可侵の儀式であり、古事記にもその記述がみられる。だが…

 

「アイサツってなんですか」

「!…何たる愚の骨頂!神話に対する冒涜か!」

「…その、ぼくはニンジャではないので」

 

ナムサン!確かにニンジャでなければアイサツになど縛られぬ!だが…この体躯でニンジャでないだと!?

 

「嘘をつくなっ!イヤーッ!」

 

アサイラントの高速スリケン投擲!これは彼のカソク・ジツと習熟したカラテにより、アンタイ戦車ミサイル並みの威力を誇る!そのスリケンが5枚…いや、七枚!これを一撃でも食らえば、たとえニンジャでも実際致命傷は免れない。それを、少年は―HYUUUM!

 

「アイエエ!?バカナー!」

 

なんたる所業か!いかなる原理か、少年はイナズマめいて急加速、スリケンに突進し、それをすり抜けて超音速で突破したのだ!アサイラントは逃げながら、

 

「…敵ニンジャのジツは強大!急加速し、物体を透過!遠距離スリケンでの撃破は絶望的でグワーッ!」

 

少年の渾身の右ストレート!倒れるアサイラント!少年が倒れたアサイラントに、もう一度殴りかかる!カイシャクだ!しかし…

 

「負けるか!ウオオーッ!」BLAAAAAAM!

 

ウカツ!近付きすぎたか!?アサイラントの隠し持つキャリバー50重機関銃がブレーサーから現れ、火を吹く!重金属弾はスリケンには劣れど威力は高い。このまま少年は死ぬというのか!?

 

「ハッ!」POW!POW!

 

少年のサイバネめいた掌がひかった!その光は、重金属弾を反重力めいた力で弾き返す!そして、少年の腕から―

赤く発光する収束レーザーが放たれる!

 

アバーッ!

アサイラントの左胸を、心臓を貫いた。

 

「ク…貴様…名前を答えろ」

 

BLAM!IRCレコーダーが砕かれた。

少年は、静かに、されど貴族めいて気品のある声で答えた。

 

「フォウ・ミサキ」

「そう…か、フォウ=サン…サ…サヨナラ!

 

アサイラントは燃え上がるような叫びと共に、爆発四散した。

 

 

ーーーーーー

 

少年―いや、フォウは疑問がますます増えたように思った―ニンジャなる存在は、昔は聞いたこともなかった。けれど、あんな奇怪な存在は信じられない。やっぱりぼくは幻覚を見てるんじゃないか?つまりここも本当はネオサイタマでもなくて、ニンジャもいないのでは?

フォウは困惑し、思考を打ち切った。ともかく、今夜の寝床を考えなければ。この雨には打たれないに限る。

 

(((もう一度、ここから都市部へ行ってみよう。そうすれば、地図位は見つかるかもしれない。それに、寝床も不自由はしないだろう。まずは都市部に向かおう)))

 

フォウはまた、歩き始めた。ただし今度は、明確な目的地へ。

 

《レイド・オールド・トーキョーベイ》終




短編が多いですが、更新ペースは正直遅くなりそうですねはい。


《人物》
アサイラント
ソウカイヤのアンダーカード(下部構成員。したっぱ)ニンジャ。カソク・ジツという特殊なユニーク・ジツを使い、遠距離戦闘に非常に適正を得ている。反面、近接戦におけるカラテはほとんど有していない。ラオモトにはサンシタ呼ばわりされていたが、その遠距離攻撃は実際高い脅威になりうる。が、割りとそれだけ。
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