物語は原作と違い、原則時系列順で進めていこうと思っています。
「イヤーッ!」
HYUUM!
「イヤーッ!」
ZZZZAAP!ZAP!
「イヤーッグワーッ!」
ソウカイヤの末端ニンジャの左胸は、真っ赤なレーザーに貫かれる!迅速な一撃に、ニンジャ動体視力を以てしても対応は不可能!そのまま、ニンジャは崩れ落ち…
「サヨナラ!」
爆発四散!読者の皆様のために、この哀れなニンジャを紹介しよう。彼の名はモルフォ。生体移植したサイバネ四枚翼で空中から来襲するニンジャであった。
「…」
フォウはぼんやりと、ニンジャの遺した四枚翼がひらひら落ちていく様を眺めていた。ソウカイヤははぐれニンジャ掃討にあまり積極的ではなく、追っ手もおそらくこれで最後だろう。ようやく得た、束の間の安息。目深に被ったキャップとフードで角を隠し、都市部のホームレスのように過ごし続け、もうそろそろ一ヶ月が立つだろうか?
「…お腹すいたな」
このような狂気的状況においても、出る言葉は市民と何ら変わりない。ただし、フォウは市民とは違う、鋭敏な洞察力を持っていた。暗黒メガコーポの巧妙な罠に嵌まり、安易な大量消費に走る市民と違う洞察力。人間的なものではなくて、むしろ―ニンジャのような。そして彼は幸運なことに、自分の洞察力を信じる傾向にあった。わずかな12年の経験でも、その半数以上は地獄のような戦場で得たものだ。
「…ここにしよう」
フォウはその洞察力で、いつも有害成分含有の食品を無意識に避けていた。今日選んだのは回転スシ・バー。有害成分含有を最小限に抑えた、老人たちの憩いの場だ。ここウナギ・ディストリクトのスシ・バーにしては、なかなか治安が良い。
「イラッシャイマセ!」
「タマゴで」
「ハイヨロコンデー!」
イタマエの握ったタマゴ・スシが、テーブルに運ばれた。このスシ・バーは注文も可能な、半回転形式だ。
ショーユ・サーバーをプッシュし、少しのショーユをスシにかけてから、手で摘まんだスシを口に
「「「 金を出せ!
俺たちゃニンジャだ!!!」」」
唐突に現れたニンジャを名乗る三人組!だが、その身なりはフォウの知るニンジャのそれではない!
「ニンポだ!ニンポを使うぞ!」
ニンポとは、カトゥーン・アニメでニンジャが使う荒唐無稽な特殊能力である。むろん、現実のニンジャが使うハズがない!…しかし、日本人のニューロンには遺伝子レベルで「ニンジャへの恐怖」が刻み込まれている。それを突いた犯罪なのだ。とはいえ、実際安い悪事である。
「…払います」
「ワ、ワタシも!」
「アイエエ…」
店主を皮切りに、客も次々とクレジットやマネー素子を出し始めた。フォウは―ここで初めて、危機感を覚えた。彼が苦心して、追っ手の遺品を売ったり空き缶回収で得たなけなしのマネーだ。ここでとられるとつらい。
(ここはぼくが鎮圧してしまうべきか?でもそれはそれでまずい)
つまらないことを考えているうちに、狂言強盗団はフォウの元へ近づいていく。マズイ!ああ、もうすぐそこに
「「「ズラカルゾー!」」」
資金に満足した強盗団はフォウを気にも留めず、駆けていった。まだ市民たちは恐怖におののいているが、フォウは半ば安堵してスシを頬張った。
ーーーーー
食べ終わって、フォウはスシ・バーを出た。珍しく、雨は止んでいる。初めて、ネオサイタマの月夜を見た。フォウが月夜を見ることはあまりないが、月に行った事ならある。だが、その時の事をフォウはあまり思い出さない。思い出したくもない。その前後の出来事は、彼の強いトラウマであった。
「…大原や/蝶の出て舞う/朧月」
ポエット!江戸時代の伝説的ハイクの引用であるが―考えていただきたい。フォウはハイクの知識など無い!では、このハイクを詠んだのは―
「おお、なんたる気品とシンピテキか―ドーモ、初めまして、フォウ=サン。ツジギリ・マッシャーです」
ブッダファック!なんたる間の悪い来襲か!しかもニンジャ!あの実際チンケな強盗団等ではなく、本物のニンジャだ!
「また、追ってきたのか」
「追っ手がどうだか知らないが、私はその組織とは実際無関係だ。それよりも―私は
「…何の話を」
「その声」ツジギリ・マッシャーが指差した。彼の手は薄い長手袋が付けられている。
「その声。その目。その角!君に興味が尽きない」
「…そうですか」
フォウは風を纏い、鳥人となり―
HYUUUM!
風変わりな風切り音が響く!
「イヤーッ!」
ツジギリ・マッシャーが右に反れ回避!
「イヤーッ!」
振り返って真後ろのフォウの首に手を引っ掛ける!そして変態的に顔を近づけ、言った。
「そう、その姿も。ニンジャでないというなら何だ?
私はネェー…君に「恋」してるのかもねぇ」
ブッダ!フォウは底知れぬ悪寒を覚えた。首にかけられた手を…どうする!?レーザーめいた武器を使えば、自分もろとも絞め上げられる。さらに相手はカーボンナノタタミを応用した装甲装束!並のエルボーでは貫通できぬ!
それならば!
「ああ―今すぐ君と…何ッ!?」
今、フォウは全力の脚力でジャンプした!その脚力は常人の3倍を優に越す。そして、首にかかった手を軸に90度回転!ナムアミダブツ!このまま落下すれば、ツジギリ・マッシャーといえど衝撃に耐えられず死亡するのは必至!
「クソ、イヤーッ!」
ツジギリ・マッシャーは首から手を離し、地面に両足で着地した。
「成る程、あくまでも私の好意を拒否するのだね」
「何が好意だ」
着陸したフォウが答えた。彼にとっては、今戦う事が最優先だ。
「それならば―こちらも、少し手荒い事を。イ ヤ ー ッ !」
おお…ブッダも照覧あれ!ツジギリ・マッシャーの手に、超自然の力で巨大な鎖と鉄球が!
「さ、闘おうじゃないか」
フォウは、無言で構えて応じた。
「イヤーッ!」
右に反れ回避!そして攻撃チャンスを伺い、右手よりあの赤いレーザーを発射!ZZZZZAP!…だが!
「イヤーッ!」
なんたる強度!鉄球は真正面からレーザーを受け、弾いた!再び振り下ろされる!
「イヤーッ!」
左に反れ回避!そして攻撃チャンスを伺い、右手よりあの赤いレーザーを発射!ZZZZZAP!…だが!
「イヤーッ!」
なんたる強度!鉄球は真正面からレーザーを受け、弾いた!再び振り下ろされる!
「イヤーッ!」
右に反れ回避!そして攻撃チャンスを伺い、右手よりあの赤いレーザーを発射!ZZZZZAP!…だが!
「イヤーッ!」
なんたる強度!鉄球は真正面からレーザーを受け、弾いた!再び振り下ろされる!
ブッダ!これでは埒が開かない!くわえてバリキドリンクで疲れ知らずのツジギリ・マッシャーに対し、フォウは多少なりとも疲労していく。これでは
HYYUUM!
「ほう、一気に近づいたか…息のかかる距離に!」
ツジギリ・マッシャーのクサリ・モーニングスターをあの高速移動で回避し、一気に懐へ!
「ハッ!」
「グワーッ!」
渾身のストレート!カーボンナノタタミ装束によって威力は大幅に軽減されたが、間合いを崩すには十分!だがそこへ―
CRAAAASH!
ワッザ!?近辺のススキを薙ぎ倒し現れたのは…
ヤクザスーツに天狗の面を被った男!
何が起こったかまるで理解できない両者の元に、彼は歩み寄る。
「…神々の使者、ヤクザ天狗参上!」
この沈黙ををツジギリ・マッシャーが破る。
「…ド、ドーモ。初めまして。ツジギ
―BLAM!!BBBBBLAM!
「 ア バ ー ッ !?」
ナムアミダブツ!ヤクザ天狗の持つ赤漆塗りヤクザガンが、論理トリガによる高速射撃でツジギリ・マッシャーを肉クズに変えていく!ヤクザガンは個人兵器としてはトップクラス威力を誇る。それを2丁拳銃で発射すれば、ニンジャといえども当たれば実際死ぬ!
「ア…アバッ…貴様…イヤーッ!」
ツジギリ・マッシャーが最後の悪あがき!回避軌道をとり、腰のカタナを構えるが…
「…ニンジャは剣を持っていたので、それを抜いて、大祭司のしもべに切りかかり、右耳を落とした…」
ヤクザ天狗のサイバネ・アイは正確にツジギリ・マッシャーの進路を追従し…ヤクザガンで偏差射撃!
「…そして後にニンジャはユダと名乗り、あの男を暗殺した」
「 ア バー ッ !」回避不可能!ツジギリ・マッシャーは乱雑に切られた紙のようになり、血をぶちまける。ついに…
「 サ ヨ ナ ラ ! 」
爆発四散!
「…?……??」
目の前の事が全く信じられぬフォウは人間に戻り、その光景を眺めていた。ヤクザ天狗がこちらに歩み寄る。そして、争いで落としたフォウの財布を拾った。
「あ、ありがとうございます」
「…これはニンジャクエストの報酬として頂戴する」
なんだと!?フォウは耳を疑った。ニンジャクエストなど依頼した覚えはない!
「いや、それはぼくのお金で」
「頂戴する」
「大事なものなんです」
「ザッケンナコラーッ!」
右ストレートがフォウの顔面に命中!痛い!
「ザッケンナコラーッ!」
続き左ストレート!フォウの頬から出血!
「ザッケンナコラーッ!」
もう一度右ストレート!
「…本当にダメなのだな?」
「はい。これがなくなると―」
「ならばお前を」
「天狗の国に連れてゆく」
ヤクザ天狗の声はジゴクめいて輝いていた。ブッダ、この男は本気なのだ。
「…っ!わかりました!出しますから…」
そう言った時にはもう遅く、ジェットパックで飛び去るヤクザ天狗に連れ去られる。戦闘の疲労か、ニューロンの休眠現象か、フォウの意識は遠のいていった。
ーーーーー
「…ん」
車の音で目が覚める。…ここはヤクザ天狗の車?盗聴設備と顔写真が至るところに張られている。コワイ!
「カネを…聖戦のための寄付をしろ」
「はい」
財布からありたけのクレジットとマネー素子を渡した。結構な量で、一ヶ月は困らないであろう。
「…十分にあるな。釣りだ」
「えっ、ありがとうございます」
「泣いているな、まだニンジャの恐怖が抜けぬか」
確かにフォウは泣いていたが、それはニンジャではなくヤクザ天狗に対する恐怖の念だ。
「…っは、はい」
「これを使うといい」
ヤクザ天狗の手には…オモチとセンベイ?
「センベイを額にあて、オモチを咥えてみろ」
「はい」
「目を閉じてみろ。ピンク色の光が見えるか?」
「…っ見えっ、みえます」
もうフォウにはヤクザ天狗に従う以外の道が見えない。
「オモチを吐き出してみろ。ニンジャソウルが黒いシミになっているはずだ」
「なってます」
フォウは震える声でまたも嘘をついた。ただピンク色の光の代わりに、
(ああ、このひとはくるっているんだ)
という確信に近いものが見えていた。
唐突にドアが開け放たれ、車が止まった。
「またニンジャが出たら私を呼べ。この聖戦は困難ゆえ。また贖罪をせねばならぬ。サラバ!」
「ありがとうございました…うっ」
「オ…オイ、ダイジョブか?」
車が行き去るのを見ると、フォウは崩れ落ち泣いた。
その洞察力で彼の狂気をより敏感に知ったからか?明日の食い扶持に困ってか?真相はわからない。ブッダでさえも。ただ、フォウは心配そうに寄ってくる
《マン・クライビング・マッドネス》終
現在、次話の執筆が難航しております。おゆるしください。
人物名鑑
ツジギリ・マッシャー
ネオサイタマを夜な夜な徘徊し、気に入った子供を弄ぶ野良ニンジャ。強力なテレキネシス・ジツを使い、鉄球などによる攻撃を行う。ソウカイヤに目を付けられれば命がない事を把握していたため、あくまでニンジャ能力は趣味の子供虐殺以外には使わないよう注意を払っていた。
ニンジャ強盗団
本名はタロ、ジロ、サブロ。ニンジャに成りすます強盗で生計を立てている。彼らは後にニンジャとなり本物のアトロシティを働くことになるが、その話をここで語ることはできない。