ニンジャスレイヤー・ウィズ・ワンダラーズ   作:しゅたーじ

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ハンマー・オン・ザ・シックル

ニンジャスレイヤー・ウィズ・ワンダラーズ

 

「ハンマー・オン・ザ・シックル」

ーーーーー

「エー、マイクチェック、オーケー」

 

「整列オーケーか?」

 

「オーケー!始めます!テツオ=サン、ドーゾ!」

 

赤マントと二本の巨大ノボリを背負う、テツオと呼ばれた男が前に。ゆっくりとした足取りで歩いていく。ゴーグルとスカーフで覆われた顔は、強そうには見えない。しかしその姿は、さながらゴルゴダの丘を歩むあの男めいて力強い。

 

「ミナサン、本日はお集まり頂き感謝します。この―イッキ・ウチコワシ第七十二回労働会議に

 

彼こそはバスター・テツオ。この共産主義団体、イッキ・ウチコワシの書記長―いわばトップというべき存在である。

 

ーーーーー

 

「…して、このところの暗黒メガコーポの暴虐は留まるところを知らず。特にオムラ社に至っては、新兵器を投入し、我々に対する掃討戦を行う模様です」

 

圧政に反対せよ!決断的闘争の時だ!

 

同志キンバシ!落ち着いて!今ここで革命を行えば、待つのは敗北のみ!」

 

「では何もしないのですか!?同志たちを見殺しにしようとも!」

 

キンバシが、震える手を抑えさらに叫ぶ。労働集会は、このような討論形式で行われるのが通例だ。

 

「同志キンバシ。それは組織の理念に反する。そのために、我々も手を打ってある。まずは―」

 

独立ホログラフィーに赤い文字列と写真が写された。

そこには…ブッダ!ニンジャめいた装束を纏った男!

 

「今後オムラ社による攻撃が予想されるトットリーヴィル。ここは実際プロレタリアートが多い。彼らを守るためなら暴力も辞さない。そのため―専属迎撃隊と、ラプチャー=サンを派遣する。彼は湾岸警備隊出の戦闘のプロだ

 

湾岸警備隊!

「何てことだ、我らにも光筋が!」

「来るべき革命の戦力となるぞ!」

 

「さらに、諸君。驚かないでほしいが―ラプチャー=サン以外にも、戦闘メンターは多くいる

 

会場は狂喜乱舞の声で溢れた。有るものは情報量の多さに涙しながらガッツポーズを行い、いつしか倒れていた。

 

ーーーーー

 

「キンバシ=サン!飲みませんか」

「おお、飲もう飲もう、同志!」

 

会議が終了し、過激派に見合わぬ温和なノミカイとなった会場にて、だいたい同い年であろう二人はパックド・サケを酌み交わした。

 

「仕事はどうだい、同志ノバシ」

 

「そりゃもう、実際順調ですよ!オルグ(勧誘)もね」

「おお、ずいぶん模範的な!わたしもやっとるが、やはり臆病なもんで、ちょびっとずつしかできなくて」

「それでも、決断的一歩ですよ!カンパイ!」

 

彼らは実際かなり温和かつ小市民的だが、共産主義を信奉し、その為には死も辞さない過激派でもある。そして、その戦闘力は高い。一つの目的のため、ニンジャでもない市民は戦えるのだ。

名誉という、麻薬めいた陶酔のために。

 

「それで…本当なんですか?その…オムラの」

ノバシの目付きが、酔っぱらいとは思えないほど鋭く光った。キンバシもそれに応える。

 

「本当だ。あいつらの新型兵器がロールアウトした」

「となると…実際我々の出番ですか」

「そうだろうな。全く、あいつらも懲りないもんだよ」

 

三十路半ばの男二人はハカマ姿から着替え、戦闘ジャケットに着替え始めた。そのジャケットには―

 

オムラ対策チーム

 

「実際革命的な」

など、威圧的な文言がショドーされていた。

 

ーーーーー

 

ノバシはやや感傷的に、すぐ近くの死体に目を向ける。キンバシの上半身はネギトロめいて原型を留めず、骨と肉の区別もつけられない。

 

対策チーム!点呼ォー!

「ハイ!」

「ハイ!」

「ハイアバーッ!

 

物陰に隠れながら、ノバシは叫んだ。十人の精鋭、オムラ対策チームは今や半数もいない。すべて―

 

「ピガ…投降を、受け入れます。オムラは、寛大です

 

すべて、今ノバシの目の前に居座る殺人マシーンによって、無残な死を遂げた。この殺人マシンの名はモーターヤブ。サスマタと自動ガトリングガンを装備し、いかなる悪路もカンガルーめいた逆関節の脚部で突破する、一台で一軍に匹敵する比類なき虐殺マシーンである!

ア…アイエエエエエ!

 

失禁しながら全力で逃げるノバシ!そこに大騒音を立てながら追うモーターヤブ!自動ガトリングが予備回転を始めた!

 

オムラは寛大、寛大です

BRATATATATATATA!

アイエアバッBRATTATATATATA!

なんたる狂気の制圧射撃!これでは蟻がイーグルに向かうようなものだ!

 

「アイエエエエエエエエ!アイエエエエエ!」

「アッ、ノバシ=サン!アバーッ!

 

しかし、幸運にもノバシは逃走する事ができた。生き残った仲間と、キンバシたちの死体を残して。

 

 

ーーーーー

 

「…それで、同志は逃げ帰ってきた」

 

バスター・テツオの静かな声が、会場に響く。

 

「…ハイ」

 

「スッゾコラー敗北主義!」

「自己批判せよ!総括だ!」

「総括!総括!総括!」

 

怒りに我を忘れた一般構成員たちの怒声が響く。「総括」とは、もともとは反省会めいたなんかを意味していたが、今やイッキ・ウチコワシ内での社会的ムラハチを意味する。

 

「皆さん、落ち着いて。同志ノバシはモーターヤブの写真を持ち帰った。実際、進歩的未来のためになっている」

 

バスター・テツオの深く寛大な言葉に、群衆は水を打ったように静まり返った。

 

「しかし、この愚行は敗北主義的。名誉挽回のため、同志ノバシへはトットリ村への異動を提案する」

 

「ハイ…ヨロコンデー!

 

明らかに死出の旅にもかかわらず、ノバシの眼は決断と喜びに満ちていた。進歩的未来。そのイデオロギーが、ノバシをはじめとする一般人に洗脳めいて強力に染み付いていた。バスター・テツオの高いカリスマ性が、それを助長する。ノバシは決意の足取りで、輸送ヘリコプターへと向かっていった。

 

ーーーーーー

 

「はあ…戻れるのは良いけど」

 

フォウは夜行バスの車内で力なく呟いた。一応ホームレスまがいの生活は出来ていたのだ。あの日までは。

 

(((またニンジャが出たら私を呼べ)))

「…ヤクザ天狗…?もうやだあの街…」

 

あのヤクザ天狗なる発狂マニアックに金を巻き上げられ、挙げ句ナゼかネオサイタマから遠く離れた中国地方まで運ばれたのである。

 

「何がしたかったんだ?ともかく、ネオサイタマに戻らなければ」

 

フォウはなぜ、ここまでネオサイタマに拘るのか?その理由は二つ。一つは、「そこでなければ暮らして行けない」事。日本で暮らす事は厳しい。ましてや常識を知らないフォウはなおさらだ。角を隠す理由付けも必要だし、働く事もできない。

そして、もう一つは。

 

(あそこは確かに危険なところだ。でも…何だかぼくは、離れたくない。いや、()()()()()()()()()()()()

 

根拠のない、全くの憶測。だが、ニンジャなる超自然的存在に絡まれ、更には狂人にも絡まれたフォウはすでに人間不信を発症していた。そのため、自分を信じてバスで再びネオサイタマに戻ろうと考えている。資金はオイランめいた退廃サービスで稼いだ。何ヵ月か続いた悪夢のような生活に戻りたくないのだ。だが―

 

「現在渋滞中。しばらく停車ドスエ」

 

はあ、とフォウはまたもため息をつき、燃えるように赤い空を眺めた。闇夜に不釣り合いな赤い空を―その時!

 

CRAAAAASH!

 

アイエエエエ!?

 

バスのすぐ右上を、鋼鉄の機械が踏み潰した!そいつから見て2時方向に、フォウの乗るバスがあった。逆関節の体は戦車程もあり、背面に威圧的なカタカナで「モーターヤブ」と描かれている。…おお、その効果か運転手は失禁している!マッポのパトランプのように、赤いLEDがひかった。

着地点、座標補正、ありがとうございます、ご迷惑おかけします

 

不快な合成音声が、雨音に混じり聞こえた。ああ、この暴力機械こそ、ノバシ率いるイッキ・ウチコワシ部隊を殲滅したモーターヤブである!

モーターヤブは蒸気を吹き上げながら、身を屈め、そして大ジャンプした。そして下り坂のハイウェイを、車を潰しながら下っていく。その先に、フォウは見覚えがあった。

 

「…トットリーヴィル!

 

そこはフォウがヤクザ天狗に降ろされた場所であった。そしてフォウは衝動的にバスを降り、トットリーヴィルへ走る…おおブッダよ、寝ているのですか!?この少年に慈悲の視線をも与えないというのですか!

ーーーーー

 

フォウがヤクザ天狗から解放され、錯乱状態にあったとき、トットリーヴィルの住民は余所者に優しく介抱をしてくれた。それはフォウにとってはこれ以上ない喜びだったのだ。それが今、踏みにじられようとしている!

HYYUUUM!

 

フォウの周囲に、変わった風切り音が響いた。鳥人と化したフォウの特殊能力、ゼロ移動である!

ハイウェイを駆けろ。急げ。モーターヤブまで、あと20メートル。さらにゼロ移動。あと17メートル。急げ!モーターヤブにRPGが命中。損害はない。近くにレジスタンス。一人が死んだ。あと10メートル。ゼロ移動。6メートル、3メートル―

 

CRAAAASSSSSH!

ピガガーッ!

間に合った!フォウのドロップキックがモーターヤブ右側面に炸裂!僅かによろめいたが、損害は軽微らしい、こちらに照準を定める。近くのレジスタンス二人は無事。バイクで逃げて行く。モーターヤブのガトリングが照準し―

「排除します」

BRATATATATATA!!

 

火を噴いた!フォウはゼロ移動で回避し、カンガルーめいた逆関節の脚部に手をかざし、オレンジ色の光弾を発射!

DROOM!DROOM!

一部は弾かれたが、脚関節部に命中!大きく抉れた弾痕がいくつも形成されていく!

「ピガガーッ!」

 

脚部に修理不能の大ダメージ!バクチクめいた連続爆発!モーターヤブはよろめきながら蒸気を噴き出し、立て直しを図るが…

DROOM!DRRRRRRROOM!

ナムアミダブツ!低威力といえど、装甲貫通には十分な火力の光弾がワン・インチ距離で無慈悲にモーターヤブを襲う!燃料ボックス貫通!人工頭脳部貫通!

 

ピガッピガガガ!ピガガーッccda/be^@::*sakjddd^d

断末魔のBEEP音をかき鳴らした後、モーターヤブはもんどりうって倒れた。煙を吐き、自動ガトリングは使い物にならないほど変形している。

「…!」

だが安心はできない。なぜなら、モーターヤブはあと三台あるからだ。

 

しかし一台倒せたことは大きい。トットリーヴィルの生存可能性は実際高まった。と言えども余韻に浸るヒマはない。フォウはすぐに、ゼロ移動でトットリーヴィルへと向かった。

 

―-----------------------------

 

ZZZZAP!

「ピガガーッ!」

CRAAAAAAAAAAAASH!!!

フォウの右手から放たれた赤く輝くレーザーがモーターヤブの装甲を貫徹した!すでに住民のグレネードで装甲がひしゃげていたモーターヤブはもはや虫の息!

あとはとどめを刺すのみ!フォウがモーターヤブに手をかざし、あのオレンジ色の光弾を―

「キエーッ!」

 

フォウの頬をかすめ、羽飾りのついた矢がモーターヤブの関節部に容赦なく突き刺さった!アブナイ!そしてこれがとどめとなったか、モーターヤブはセンコ花火めいた火花を散らし機能停止した。

フォウはそれより早く、矢の発射された見張り台を目視していた。そこにいたのは、長弓を携えた女ニンジャであった。

 

「…」

フォウはその女ニンジャに丁寧に感謝のお辞儀をした。彼女もそれに応えオジギしたが、垣間見えた眼光はぞっとするほど無感情であった。

「いいぞ、ガンバレ!気を抜くな!」

住民のリーダーが、せわしなく走り回ってメガホンで声援を送っていた。そのうちにフォウのところに近づいてから、立ち止まり、怪訝そうに離れた。

 

「ん?なんだ、あンた」

「ぼくは―」

そこまで言って、自分がまだ変身を行ったままと知り、すぐに姿を人間に戻した。

「えっと、数ヶ月前に介抱していただいたフォウ・ミサキです。村がすごい事になっていたので、帰ってきました」

リーダーは優しくほほえんだあと、フォウに向き直った。

「フォウ=サンも戦ってくれるのか、ありがとう。まずはラプチャー=サンに伝えねば」

「アイエエエエ!!」

KABOOOOM!

「アバーッ!?」

突如、ライフルでモーターヤブを迎撃していた家屋が根元から爆発四散!これはいかなる怪奇現象か!?そこを悠々と歩くのは、肥満したシルエットのニンジャ!ボムディフェンス装束を着込んだ、オムラ社の企業戦士ニンジャである!

「グッハハハハハハ!」

 

たちまち銃撃が大量に浴びせられるが、ニンジャはブリッジで流麗に回避!しかし、そこへ超音速で追いすがる鳥人を視認し、バック転で脱出!

ニンジャのいた所に着地したフォウが、速やかにニンジャを発見した。家屋の上に立ち、嘲笑の笑みとともにアイサツした。

「ドーモ、エクスプロシブです―おっと、ほれ!」

アイサツを完全無視してフォウが発射したオレンジ光弾をジャンプで回避し、カウンターに高分子バクチクを投擲!

 

HYUUM!

エクスプロシブ自慢の高分子バクチクも、当たらなければ効果は全くない。回避主体の戦闘スタイルであるフォウは、エクスプロシブが最も対処の難しい相手であった。

「コシャクな!イヤーッ!」

いかなる罵声を叫んでも、バクチクが当たる確率は変わらない。バクチクの狙いはみるみる逸れていく。

 

しめたーフォウは、エクスプロシブが集中力を失う時を待っていたのだ!建物を飛び移り、レーザーの射程内まで距離を詰めていく。

「オイ、そのオバケ!」

不意にエクスプロシブが、フォウに話しかけた。フォウは足を止めたが、攻撃姿勢は崩さない。話が終わり次第、攻撃するつもりである。

その家屋にはバクチクが仕掛けてある

「!!!」KABOOM!

 

その刹那、フォウのいた家屋が爆発四散!フォウは辛くもゼロ移動で脱出したが、それでも無視できぬダメージだ!。全身火達磨、身動きはとれないだろう。

「注意は一秒、後遺症が死ぬまで」

エクスプロシブは冷静そのものといった口調で、哲学剣士ミヤモト・マサシの格言を引用した。・・・おお、ナムアミダブツ!彼の罵声も、苛立ちも、全ては演技でしかなかったのだ!

 

「このトットリーヴィルは俺の庭も同然だ。この十分の間に、しっかり仕込ませてもらった」

フォウにゆらゆらと歩み寄るエクスプロシブは、余裕そのものであった。

「まったく、ニンジャのイクサの決着は一瞬よ・・・ロクな抵抗もできずに退場する気分はどうだ、鳥人間?」

「…貴様、それは撤回してもらおう」

フォウは少し口角を上げて、挑発的に言ってみせた。エクスプロシブが眉間にしわを寄せる。

 

「ほう?自分を見てそれが言えるかね」

「そうかもしれない、だが」フォウはそう言った後、エクスプロシブを指差した。

「予想外の出来事も、考えるべきだ」

「イヤーッ!」

横から飛んできたニンジャの飛び蹴りがエクスプロシブに炸裂!

「グワーッ!?」

 

エクスプロシブをけった青紫のニンジャは、フォウに向き直った。

「我々に手を貸していただき感謝します」

「いえ、こちらこそ」

フォウは言葉を返し、すぐにエクスプロシブに視線を向けた。

「やれやれ、サンシタが一人増えて面倒なことだ。ドーモ、初めまして、エクスプロシブです」

「ドーモ、エクスプロシブ=サン。ラプチャーです」

ラプチャー・・・そう、イッキ・ウチコワシのメンバーである。彼もニンジャだったのだ!

 

「ほれ!」

エクスプロシブがバクチクをアンダースローで投擲!ラプチャーは直立不動のまま掌をかざした。

「イヤーッ!」

奇怪!掌から発せられた空気は、バクチクを空中に押しとどめた。バクチクは空中で爆発し、ラプチャーには何もダメージがない。これがラプチャーのジツ、テレキネシス・ジツである!

…そして、静かにラプチャーが腰を沈める。腕は戦闘態勢へと移行し、足が力強く地面を蹴った!

「イヤーッ!」

 

ラプチャーのパンチがエクスプロシブに…届かない!エクスプロシブが体型に見合わぬ俊敏さでかわしていたのである!しかし、これを予想しなかった訳ではない。すぐに切り返し、エクスプロシブの進路を予測して再びパンチ!…だが!

 

BRATATATATTA!

「グワーッ!?」

ラプチャーをモーターヤブの銃撃が襲う!すかさずエクスプロシブが勝機とみて反撃!

「イヤーッ!」

エクスプロシブのバクチクが至近距離で炸裂!ラプチャーには致命傷だが、ボムディフェンス装束を着込んだエクスプロシブには全くの無傷!

「グワーッ!」

 

フォウは、無力さに歯噛みしながらこれを見ていた。身動きのとれないフォウにはどうすることもできない!

「さあさ、どうしてくれようか…グッハハハ!」

残酷な笑みとともに、悠々と歩くエクスプロシブ!・・・しかし、その首筋を狙う影がある。その影は、エクスプロシブに飾りつきの矢を放った!

「!」

 

エクスプロシブほどの玄人が、それを察知せぬ筈がない。首筋を狙った矢は、エクスプロシブの腕の中で折り取られていた。

「ニンジャの真似事か」

「キエーッ!」

「よせ、アムニジア=サン!」

アムニジアと呼ばれた女ニンジャはラプチャーの制止も聞かず、スリケンを投擲した。命中する筈もなく、エクスプロシブはアムニジアの目の前に立っていた。

 

「…設置完了!グッハハハ!」

「アイエエ!?」

次の瞬間、アムニジアの豊満な胸元に、首輪のごとくバクチクが備えられていた!

「さあ、花火を見せてもらおうか!

狂ったように笑うエクスプロシブ!この状況はラプチャーも、フォウも何もできない!

なるほど、確かに面白そうだな」

 

この場にいる誰でもない、ジゴクめいた声が響く。

「ナニヤツ!…いない」

エクスプロシブが辺りを見回しても、人影は見当たらない。

花火になるのはオヌシだ、エクスプロシブ=サン」

「アイエッ!」

 

そこにいたのは、新手のニンジャであった。赤黒いニンジャ装束、「忍」「殺」と描かれたメンポ。伝わる殺気。彼からびりびりと伝わる怒りに、フォウはめまいさえ覚えていた。

ドーモ、皆さん。初めまして。ニンジャスレイヤーです

そして言った。「ユカノ、迎えにきたぞ

 

「ユカノ…?」

アムニジアは困惑した様子で、苦しそうに繰り返した。

「お前は私を知っているのか?」

ああ

そう話すニンジャスレイヤーの手には、バクチクがある。アムニジアに付けられていたはずのバクチクが!現れると同時に彼が取り外したのだ!何たるハヤワザ!二人の会話に、エクスプロシブが割り込んだ。

 

「ドーモ、ニンジャスレイヤー=サン。ちなみに、そこのラプチャー=サンと鳥野郎にはバクチクを仕掛けておいた」

「何!」

フォウはすばやく首のバクチクを取り外し、放り投げた。着地するや否や爆発!だが、先ほどの戦闘で致命傷を負ったラプチャーは取り外すことも適わない。力を振り絞るフォウをラプチャーは制止した。

 

「フォウ=サン、俺はもうダメらしい。残念だが、お別れだ」

そして、ニンジャスレイヤーに叫んだ。

「ニンジャスレイヤー=サン!エクスプロシブ=サンを倒してくれ!

そして、壊れた足で誰もいない方向へ跳び、

「ラプチャー=サン!」

サ ヨ ナ ラ !

アワレ、バクチクの起爆でラプチャーは爆発四散!

それをせせら笑うエクスプロシブ、対峙する二人のニンジャ。時はウシミツ・アワー、苛烈かつ壮絶なイクサは、まだ序章にも過ぎなかったのである。

 

ーーーーーー

 

サヨナラ!!

バクチクの爆発の中で、エクスプロシブはこの叫びとともに燃え尽きた。残骸と化したモーターヤブが近くに鎮座している。アムニジアは負傷したフォウを連れて逃げ、ニンジャスレイヤーのみがエクスプロシブと戦った。逃げるとき、フォウは彼のイクサから目を離せなかった。あまりにも一方的。戦えば命はないだろう。()()()()()()()()()

フォウは一種の恐れに近い感情を抱いていた。かのヤクザ天狗に近い、底知れぬ狂気に触れていた。

   

「アタヤマ、アシ、イリダ、ホヤマ、ノバシ、カンダ、・・・」

 

戦いが佳境を過ぎ、最後のモーターヤブが倒された時、フォウは野戦病院めいた家屋で治療を受けていた。レジスタンスリーダーが戦死者の名前を名簿から消す傍らで、狂気のイクサがニューロンを巡りに巡っていた。子守唄のように響くリーダーの声が、フートン内のフォウを幾月ぶりかの安心した眠りにいざなっていった。

 

傷は一晩で完治した。フォウの回復速度は常人のペースを逸している。

 

「ニンジャスレイヤーさんは、どこに行きましたか」

「それが、我々にもわからない」

 

ニンジャスレイヤーは消えた、リーダーはそう形容するほかなかった。

 

「…フォウ=サンはこれからどうするんです?」

「とりあえず、なんとかしてネオサイタマに行きます」

 

フォウは淀みなくそう答えた。リーダーは、かねてから考えていた事を口にした。

 

「その、イッキ・ウチコワシに入る気はありませんか?ここなら身分もないし、安定した生活ができますよ。実力や努力次第で、ヨメも頂けるかもしれません」

「すみませんが、それはやめておきます。嫁なんて、ぼくにはいりません」

 

フォウは微笑していたが、リーダーはその寂しい表情に酷い空虚さを覚えた。少年の心には、狂気とも、怒りとも違う感情が巣食っていた。

 

「…それなら、仕方がありませんね」

 

リーダーは静かに、腰を上げた。フォウも立ち上がり、着替えて家屋を出た。

 

「今までありがとうございました。もしも縁があったら、また」

「「「「「オタッシャデー!」」」」」

 

見送りのレジスタンスに一礼し、ネオサイタマを目指し再び歩く。一年に数度しかない晴れの日光をさんさんと浴びながら、ケオスの町へ。

 

「ハンマー・オン・ザ・シックル」終

 




見りゃわかりますが、この話は「スシ・ナイト・アット・ザ・バリケード」とリンクしております。あわせて読むと、より細かくイッキ・ウチコワシが描写されるのでアブハチトラズな。

人物名鑑

ラプチャー

イッキ・ウチコワシの革命戦士ニンジャ。カラテはそこそこだが、未熟か、ジツの使い方が悪かったか、エクスプロシブには比較的すぐに倒されてしまった。テレキネシス・ジツは比較的白兵戦に向かないため、後方支援やサポートに徹すれば勝機はあっただろう。

エクスプロシブ

オムラ社の企業戦士ニンジャ。オムラ開発の高分子バクチクを扱う。なかなかのワザマエを持つ男であったが、ニンジャスレイヤーにはいかにシツレイな手を用いても勝つ事はできなかった。

ニンジャスレイヤー

「ニンジャを殺すニンジャ」。そのカラテ・ワザマエ・セイシンテキすべてが常軌を逸す強さを持つ。彼は師匠の孫娘である「ユカノ」を探し、トットリーヴィルに現れたようだが…

今回は本編とのリンクを重視して書きましたが、次話は完全オリジナルになります。



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