Bar-RE:St@rtへようこそ
トップジムリーダーキバナや無敵のダンデがよく行くバーがある。のちにSNSやメディアにて本人たちもそれを公認し、話題に火がつき、終いには三年連続『ガラル地方で最も美味しい飲食店Top10』堂々の1位を勝ち取った『Bar-Re:St@rt』
この記事を書いている私も、あのバーに魅了されてやまない者の一人だ。
かのダンデ氏が居合わせた際、たまたま食する機会のあった、バトルチャレンジメニュー『ホウセンのシザリガーのハサミのアヒージョ』を食べた際には、あの泥臭く食用に適さない筈のシザリガーのハサミがこれ程までに美味しくなるのかと驚嘆したものだ。
今日はそのRe:St@rtの店長兼料理長のホウセン氏からお話をお伺いした。
──インタビュー担当のミチです。本日はよろしくお願いします。
「はい、よろしくお願いします。あれ、今日はテルさんいないんですね?」
──彼は今日別件でシュートスタジアムの方に行っています。
「ああ、ユウリちゃんの。彼女も凄いですよね。ほぼ無経験から4ヶ月しかないジムチャレンジ期間の中、よくあそこまで練り上げたと思いますよ。というか、彼女の同期組(※1)といい、今年のチャレンジャーは全体的にレベルが高かったし、話題性に富んでた気がしますね。……流石に最年少チャンピオンの記録は塗り替えられなかったみたいですけど(※2)」
※1
ユウリ氏、マサル氏、ポップ氏、マリィ氏、ビート氏の5人。特にマリィ氏、ビート氏はそれぞれジムチャレンジ期間終了前後にジムリーダーに就任している。
※2
当時、ダイマックスが初導入された公式戦で、ダンデ氏は弱冠10歳にして前チャンピオンマスタード氏を倒してチャンピオンに就任した。現チャンピオンのユウリ氏は13歳。
──新チャンピオンのことをご存知で?
「あー、ダンデ君がチャンピオン交代の祝いとして此処を使いまして。その時にチャレンジメニューバトルに挑戦してくれたんですよ。いやはや、楽しかった」
──勝敗は明かしてくれないんですね?
「ご想像にお任せします(笑)。あれ、こういう部分も全部記事に書き起こすんでしたっけ?」
── 我々のスタンスとしては、メモと録音で記録して、その後編集完成稿は関係者皆で話し合いまずい部分は消してしまうので。
──記事として出す前に一度ホウセンさんに目を通してもらおうと思っています。
「良かった。場合によっては二人くらい出禁が増えるところでした(笑)」
──サラリとえげつない事を言わないでください!
「いやいや、タチの悪い質問を何度もされたくないしね。無理やりにでもうちの料理のレシピを聞き出そうとする輩、結構いますし」
──それは、同じインタビュアーとして謝罪します。
「ミチさんは関係ないから、謝られてもね(笑)。インタビューに来るって聞いて用意してたサンドイッチがあるので、良ければ」
──そうやって前みたいに新メニュー食べさせようとしてませんか?
「なぜバレた。まあそうなんですけどね。新メニューというか、新メニューを挟んだというか。カモネギの照り焼きサンドです。クラボ入りマヨネーズも入ってます」
──この場で食べるのは遠慮しておきます。インタビューが進まなくなってしまう(※3)ので。
「すでにぐだぐだ感ありますけどね(笑)」
※3
過去に新メニューを食べた際、インタビューの仕事できたにもかかわらず10分間ひたすら無心で食事をしてしまったインタビュアーの失敗談より。
──……では気を取り直して。Bar-Re:St@rtはエンジンシティに構えていますが、何か理由があるのですか?
「大きくまとめて二つほど。詳細は言えないけど、カブさんへの恩返し……と言えればいいんだけど。5年前、ガラルに来た当初かな。ちょっと問題を起こしてしまって。そのフォローをしてくれたのが、カブさんだったんです」
──その、一悶着、というのは、触れても?
「お恥ずかしい話、当時の俺はガラルのジムチャレンジの制度に詳しくなくて、他の地方と同じようなノリで、こう、ね?(苦笑)」
──やはりバトル狂と呼ばれるだけありますね。
「酷いけど何も言い返せないのが辛いところです(笑)。もう一つの理由が、ジムチャレンジ期間に合わせて一番知ってもらいやすい場所だから、ですかね。うちは基本バーだけども、未成年お断りって訳でもないですし」
──なるほど。確かに理に適ってますね。
「そこから、ですかね。カブさんが他のジムリーダーの方や、ダンデ君に教えたりして、そこからSNSで爆発的に情報が広まって。その関係で新鮮かつ大量の野菜や木の実、バッフロンやヨワシやバスラオの肉を仕入れられるようになったのは予想外でした。カブさんもそうですが、ヤローさんやルリナさん、あと、捕まってしまいましたが、ローズさんには頭が上がりません」
◆魅力は料理だけに有らず。個性的な店員たち
──Re:St@rtは従業員の方も個性的な方々が揃っていますよね。
「そうですね。俺は影が薄い方なので。最近だと3ヶ月前に入ってきたチャノちゃんが看板娘として張り切ってますね(笑)」
──店長のホウセンさんが一番濃い気が……いえなんでもありません。
──他の方々、シャラさん、ツバキさんもだいぶ、その、個性的ですよね
「否定できる要素がないですね(苦笑)。なんかこう、あそこまで大っぴらにかつ、拡散するように好きだと言える度胸と、行動力の高さには脱帽します」
──もともとチャノさん以外、ガラル外の出身と聞きましたが、本当ですか?
「ええ。シャラちゃんは遥々カントーのタマムシシティから。ツバキちゃんはジョウトのエンジュシティからですね。2人とも、ダンデ君、キバナ君の大ファンです」
──その関係か、バトルの腕前も相当高い物とお聞きしたのですが。
「あの2人はとにかくダンデ君、キバナ君のバトル動画や実際のジムチャレンジ、レイドバトルで磨きあげてますからね。2人曰く『ファンだからこそ、あの2人に強さの証明をしたい』とのことでした。今バトルしたら負けるかもしれないです」
──……申し訳ないのですが、ホウセンさんが負ける未来が見えないのですが
「そう言ってもらえると、嬉しいやら恥ずかしいやら……(笑)。トレーナー冥利に尽きます」
…………
………
……
…
──それでは、本日はありがとうございました。
「いえいえ、こちらこそありがとうございました」
これらの本文と脚注は一部編集された上でインタビューページとして出版されました。
紙がめくられる音が、部屋に響く。
とある雑誌のページを黙読していた3人のうちの1人が、読み終えたそれを膝の上に置きながら軽く頭を抱えていた。
「やっぱり店長の顔がダンデさんやキバナさんと並んでても同じくらいの年代にしか見えない違和感。なんなのあの人。カッコイイ訳じゃないのに、本当なんなの? 本当に30歳?」
他の2人も同調するように頷く。
髪の色、身長、生まれた地も、何もかもが違うはずの彼女らに共通点があるとすれば、3人が3人とも美女、美少女の類であり、ある店で働く従業員である、ということか。
黒い髪のジョウト美人が口を開く。
「しかも中身もできた人ときた。『私らみたいな境遇の人』が支え合える、そんな場所を提供したいとか、そんな理由だもんね。そもそものお店開いてる理由。手持ちがガラルだと目立ちやすいポケモン使ってるのも、そんな感じだったはずだし」
はーっ……と深いため息を最後にしじまが場を支配する。重苦しい空気、とはまた違う。
この空気に困ったのがもう1人の、唯一この場でガラル出身の小柄な少女だ。
居づらい訳ではないし、空気の理由も理解しているが、このままだとこの2人1日中こんな調子で過ごすんじゃないだろうかと不安になったのだ。
「こ、これでガチのバトルの時に豹変して『首置いてけ』とか言い出したりしなければ本当にいい人なんですけど、ね……」
「それな!」
「そういうとこだぞ店長!」
「私らの推しへ『その首置いてけ!』って言い放ったの忘れてないからな!」と憤慨する2人を見て少女は悟った。
『やべ、余計な地雷踏んだ』