闇を抱えた提督がブラック鎮守府に着任するお話   作:はやぶさ雷電

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前回のあらすじ

光夢のボロボロの体は入渠によって治りつつあった。


第10話 問題の解決への準備

「何があった?敵襲か?」

 

俺、心良(しんりょう) (まもる)は突然の爆発と振動に驚き外を見てみる。敵影は見当たらない。それと同時に艦娘達も何事かと部屋から出てきて音のした方に向かう。

 

俺は艦娘の様子を見守るため鎮守府内をうろつくことにしている。勿論ただうろつくだけではなく、問題点があれば黒鋼に伝えるつもりではいる。とはいっても鎮守府内の状況が良くない状態から見ているので、改善を急かすのも良くない。暫くは見守ることにした。

 

音の原因が気になるが、沢山の艦娘がごった返しているため見に行くのは難しそうだ。その中から1人の艦娘が出てくる。彼女はたしかここに来た時門番をしていた。今は俺が門で張っているが基本船でしかこれないから多少離れていても何もない。

 

「長門?」

 

声をかけようかと思ったが表情が明らかに怒っている。原因はここにありそうだ。

 

「なんだ?」

 

聞こえないかと思ったが届いてしまったらしい。少し自分の発言に後悔する。

 

「まあその、なんだ。機嫌が良くなさそうだからな。何かあったのかと。一応憲兵だからな。悩みがあるなら相談してくれ。もし提督が何かしたのなら取り締まるのが俺の」

 

仕事だ。そう答える前に長門は目の前に詰めてきた。これ以上喋れば何があるかわからない雰囲気が漂い、続きを飲み込む。

 

「他所から来た奴が私達の為だと?笑わせるな。」

 

そう言って長門は去っていった。艤装を着けていたところを見ると工廠に向かうのだろう。

 

とりあえず俺は一旦門の見張りに戻ることにした。だがもうまもなく昼になる。朝も食べていないので食堂が艦娘で混む前に食事をとることにする。

 

 

 

 

 

飯を終え戻ることにする。すると1人の少女が入渠ドックからこちらに向かってきた。だがその顔には涙が浮かんでいた。

 

「どうした?何かあったのか?」

 

そっと話しかける。

 

「いえ、何もありません。」

 

「では、その涙は?」

 

「涙?」

 

涙に気づかなかったのか、驚いた表情で目を擦り俯いてしまう。

 

「あの爆発のようなものと関係あるのか?」

 

一瞬震えたのが見えた。これは図星だろう。

 

「何があったのか知らないが、まさか、提督に何かあったのか?」

 

「入渠ドックにいますよ。長門さんは見ましたか?」

 

「・・・長門なら工廠にでも行ったんじゃないか?」

 

彼女は小さく会釈するとすぐに行ってしまった。なんだか嫌な予感がする。戻る前に提督の様子を見に行くことにする。

 

だがそこで見た提督はひどい状態だった。

 

 

 

 

 

ここはどこだろうか。真っ暗な中に1人でいるみたいだ。俺、黒鋼(くろがね) 光夢(らいむ)は死んだのだろうか。

 

「生きてどうするんだ?」「何故生きる?」

 

誰だか知らないがそんな声が聞こえてくる。人影に見えるが誰だろうか。

 

「死ねばいいじゃないか。」「お前さえいなければ!」

 

人影がまたそんなことを言ってくる。生きたくて生きている訳じゃあない。

 

「私達をこれ以上苦しめないで。」「私達を助けて。」

 

何かを背負った人影が見える。艦娘だろうか。これは幻覚か?考えすぎか?

 

「さっさと目を覚ませ。」「あなたにはやるべきことがまだあるはずよ。」

 

 

 

 

 

目が覚め上体が跳ね起きる。今まで息を止めていたかのように苦しく、何度も大きく息をする。ここは自室のベッドだろうか。落ち着いてきた頃に声がかかる。

 

「大丈夫でしたか?うなされていましたが。」

 

隣で様子を見てくれていたであろう朝潮がそっと声をかけてくれる。

 

「死にかけたんだ。大丈夫じゃないよ。」

 

「でもただの人間だったら跡形もありませんでしたよ。」

 

朝潮がホッとした表情を浮かべ、その後すぐに顔を引き締める。

 

「今回の件、大変申し訳ありませんでした。」

 

朝潮は姿勢を低くし、土下座をしようとしてくる。

 

「やめてくれ、そんなことをされたら今後どんな顔をすればいいかわからなくなる。」

 

俺はひとつため息をつきすぐに大切なことを思い出す。

 

「それより俺が気絶してからどれだけたった?」

 

「ほぼ丸一日寝ていました。まもなく1100(ヒトヒトマルマル)です。」

 

「そうか・・・」

 

時間がかなり無駄になってしまった。気絶する前の記憶がよみがえる。電話の内容についてだ。

 

「時間がない。長門の件は後だ。1週間、いや残り6日で弓道を習得しなければならないんだ。」

 

「どう言うことでしょうか?」

 

当たり前の反応だ。上官がいきなり弓道を習得する意味なんてわかるわけがない。

 

「大本営から電話があってな・・・」

 

電話の内容を説明する。この鎮守府の艦娘は大本営の人間を嫌っている。もしその人達がここの艦娘に手を出すなんてことがあれば何が起こるかわからないことも伝える。

 

「そんなことに・・・」

 

朝潮は腕を組み、困った表情を浮かべる。

 

「少なくとも艦娘と接触が少なそうな弓道場までで止めたい。」

 

「でもそんなに弓道は甘くないですよ?」

 

「こうなってしまった以上仕方がない。何とかしたいんだが問題はそこなんだよ。」

 

顎に手を当て暫く唸る。正直何も手段が浮かばない。

 

「なら、鳳翔さんに指導していただくのはどうでしょう?空母の皆さんに指導をしていたのを見たことがあります。」

 

「なるほど、わかった。じゃあそうしよう。」

 

そう言って立ち上がろうとしたその時だった。

 

「あら、目が覚めてたのね。」

 

叢雲が扉を開いて入ってくる。その後ろに俺が連れてきた初期艦が皆続いてきた。

 

「まだ治りきっていないのです。もう少し安静にするのです。」

 

ベッドから出ようとしている俺を見てか、電がそんなことを言ってくれる。

 

「だがそんな余裕は「じゃあ、ここに来るときに話してくれるって言ったことを話してください。」

 

五月雨が力強く言う。逃げないようにでもするつもりだろうか。

 

「それは安静なのか?」

 

「あっ。」

 

固まってしまった。だがこのまま時間をかけるのは避けたい。

 

「話したら俺は行くからな?」

 

そう言って有無を言わさずに話し出した。

 

「裏切ったの意味だが、昔面倒くさい奴等に絡まれたことがあってな。それを止めようとしてくれた少年が最後、俺に向けてきたナイフに刺されたんだ。」

 

「でもどうしてそれが裏切ったことになるんでしょうか?」

 

五月雨が不思議そうに聞いてくる。まあそうだろう。今では自分でもわからなくなる時がある。

 

「あの時の俺は少年に戦う力があるように見えていると思ったんだ。だからわざわざ犠牲になるために出てきた事にいらついたのさ。それに、」

 

「それに?」

 

吹雪が続きを促してくる。

 

「それに、当時の俺は死のうとしていたんだ。邪魔された、とか考えたりでもしたんだろうな。」

 

最後は曖昧に答える。正直ここは本気だったか、もうわからない。

 

「なるほど?」

 

恐らく五月雨は理解しきれていないだろう。難しい顔をしながら無言になってしまう。

 

「アンタ、修復剤で回復したけどどういう力?」

 

叢雲が質問してくる。話はあっさりと変わってしまうが、まあ良い機会だ。ここで話しておく。

 

「俺は人間と艦娘のハーフなんだ。人間より頑丈だし力もある。身体能力とか動体視力もそこそこ高いと思うよ。」

 

その後また何かを聞こうとしてきたが扉が開く。

 

「長門?」

 

俺が呟くと目の前まで来て土下座をしようとしてくる。

 

「いや待てよ、いきなり土下座をされても困るし、土下座は嫌いなんだ。」

 

無理矢理肩を押さえ頭が下がるのを抑える。

 

「朝潮から聞いた。初代からいる艦娘達が信頼できる人を、私は殺そうとしたんだ。どんな罰でも受ける。だから・・・」

 

次から次へと人が来る。きりがない。

 

「わかった。まあ正直いきなり来たんだ。情報が伝わりきっていなかったり色々あるだろ。今回は無かったことにする。異論は認めない。それに今はそれどころじゃないんだ。」

 

そう言って立ち上がろうとするがうまく力が入らずふらつく。

 

「食事がまだでしたね。簡単なものを用意してきます。」

 

そう言って朝潮が用意しにいってくれた。

 

 

 

 

 

皆と解散し食事を終え、鳳翔を執務室へ呼び出す。俺の隣には本人の意見で、何かあったときのためにと朝潮がいる。1人で問題はないと思うのだが。

 

「早速ですまないが俺に弓の使い方を教えてくれ。」

 

席を立ち頭を下げる。俺が食事と体の修復具合について見ている間に、朝潮が詳細を話しておいてくれたから話はスムーズにいくはずだ。

 

「・・・わかりました。鎮守府のためにもやらせていただきます。」

 

鳳翔も朝潮と同様俺を昔から知っている人だ。だからなんとか了承を得る。

 

「とりあえず時間がありませんし、起きている間はずっと弓を引き続けると思ってください。」

 

「ああ、よろしく頼む。」

 

そう言って鳳翔と共に弓道場へと向かった。申し訳ないがもう少しの期間、朝潮に提督代理をしてもらうことになった。

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