闇を抱えた提督がブラック鎮守府に着任するお話   作:はやぶさ雷電

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前回のあらすじ

光夢が目を覚ました。


第11話 冷たい中に灯る小さな暖かさ

「そうです、それで手を離してみてください。」

 

鳳翔に構え方などから教わり始め、ようやく一発目を放つ。風を切る音と共に矢が飛び的に命中する。

 

「一発で当てられるなんて驚きましたよ。」

 

鳳翔も俺も目を丸くする。まさか当たるなんてね。それにまだ本調子ではない。入渠したからと言って完全に回復したわけではない。勿論、傷は癒えたけれど。

 

「もう一度、今度は自力でやってみてください。」

 

鳳翔に言われもう一度矢を放つ。そしてこれもまた的に当たる。

 

「いくら艦娘の血が入っていると言ってもこれは・・・」

 

鳳翔も戸惑ってしまう。自分でもここまでできるとは思わなかった。

 

「俺も昔見てはいたけどな・・・」

 

そんなことを言って刺さった矢を眺める。とは言っても刺さった矢は、中心とは離れた端に刺さっている。うまい人からしたらダメダメなのかもしれない。

 

「的に当たっているとはいえ当たった場所がかなりバラけていますね。艦娘を相手にするなら全て中心に当てるくらいはしないと・・・」

 

すぐに切り替えた鳳翔が、顎に手を当てそんなことを言ってくる。

 

「艦娘ってほんとにすごいんだな。」

 

思わず感心していると、当たり前だと言って練習に戻される。その後もとりあえず的に当てられる程度の実力を身に付けた。部屋に戻ってくる頃には腕が震えた。ずっと弓を引いていたため、腕を酷使してしまったからだろう。それとも、生えてきた腕だからだろうか。

 

そんなことを考えつつも食事をし、風呂に入って布団にもぐる。今日はぐっすりと眠れそうだ。まぶたが重くなってきて目を閉じる。しかし暫くすると誰かの足音で目が覚める。その足音はこちらの部屋へと近付いているようだった。

 

そして足音が止んだかと思うと扉が開かれる。それと同時に、俺は音を立てないよう扉の裏に回り込んだ。開かれた扉から入ってくる人影を、後ろから関節技で動けなくする。

 

「いたたた、ギブギブ・・・」

 

そんな声と一緒に電気も点く。電気のボタンは扉の隣にあったはずだ。ということは2人来た。とりあえず押さえたこの艦娘は手にナイフを持っていた。

 

「俺を殺しに来たのか・・・」

 

「・・・」

 

2人とも黙り込んでしまう。

 

「少し執務室で待ってろ。」

 

小さくため息をつき、そう言うと2人は無言で出ていく。

 

 

 

 

 

執務室に行くと、来客用に妖精さんに用意してもらったソファーに2人とも座っていた。そして同じく用意してもらった机に持ってきたものを置き、この机を挟んで彼女たちの正面に座る。

 

「早速で申し訳ないけど、まだ顔と名前を覚えていないんだ、名前を教えてもらっても良いかな?」

 

「・・・私が村雨でこっちが白露です。」

 

そう言って机のものに目を向け警戒している。ナイフを持っていたのは白露で、電気をつけたのは村雨のようだ。

 

「なんで殺そうとしたんだ?」

 

何となく理由はわかっているが聞いてみる。

 

「それは勿論、この鎮守府の艦娘を守るためだよ。」

 

白露が答える。村雨の様子を見る限り、村雨は付き添っただけのようだ。

 

「そうか、偉いな。ところでココアは好きかい?」

 

俺の言葉に少し混乱しつつも、2人は警戒を解かない。警戒し続けていては普通に会話ができないだろうと思って、二人が気にしているものに手を伸ばす。

 

「名前くらいは・・・」

 

村雨が呟く。それを聞きながらコップに、お湯とココアの粉を入れて混ぜる、簡単なものを作って渡す。だが受け取ったものの、飲もうとはしなかった。

 

「毒はないよ。」

 

そう言って自分も飲んで見せる。このココアはたまたま持参したものだった。

 

「村雨達の処罰は何でしょうか?」

 

ココアを見つめながら村雨が恐る恐る聞いてくる。

 

「村雨はなにもしてないから、罰はあたしだけが受けます。」

 

村雨の声を聞いてすぐに白露が答える。

 

「そうだなぁ、正直今は眠いから10分だけ話をしよう。」

 

あくびをしつつもそう言うと、2人ともキョトンとする。

 

「まあ10分だけだし、悪いけど2人で受けてくれ。」

 

そう言って腕時計を確認し、視線を戻す。気付けば白露がココアに興味を持っているようだった。

 

「これ、飲んでもいいの?」

 

「構わない、むしろ飲んでくれないと捨てることになる。」

 

それを聞くと白露はそっと飲み始めた。

 

「熱っ!」

 

「熱いから冷まさないとだよ。」

 

それを見てうっかり笑いそうになる。普通だったらここでドジだと話すのだろうが、ここは普通の場所じゃない。

 

「仕方ないじゃん、暖かいものなんて久し振りだもん。」

 

二人の様子を見る限り、特に気に触っていないようであることに安堵しつつも、今後は気を付けなければならない。現状ここの艦娘にとって暖かいものは貴重なのだ。彼女たちが摂取しているものは全て冷えている。

 

「美味しい!」

 

白露はそう言うとゆっくりと飲み進めた。村雨もそれを見て興味を持ち始める。やがて村雨も少しずつ飲み進める。

 

「こんなに美味しいものを飲んだのは、何時振りかしら・・・」

 

村雨が呟く。

 

「でもどうして?村雨達はもっと罰されることをしたのに・・・」

 

「どうしてと言われても、俺が信頼を得られていないからだろう。それに、まあ今回は簡単になかったことにできる訳じゃないから見逃すことにするが、あんまりすぐ罰したって仕方がないだろう?」

 

そう言うと2人とも難しい顔をする。

 

「それよりここに来て1つ目的ができた。」

 

2人は何も言わずに俺の言葉を静かに聞き続けている。

 

「この鎮守府にいる艦娘が全員幸せな生活ができるようなんとかする。」

 

「それは信じてもいいの?」

 

ココアを飲み干した白露が聞いてくる。

 

「信じてもらえるよう頑張るさ。」

 

そう言って微笑んで見せる。そして腕時計を確認すると10分を軽く過ぎていた。

 

「さあ、飲み終わったら部屋に戻るんだぞ。」

 

そう言って席を立ち片付け始める。

 

「また来てもいい?」

 

白露にそんなことを聞かれる。

 

「まあいつきても構わないさ。対応できるかはわからないけど。」

 

「ココアは?」

 

そっと聞いてくるが恐らく本当の目的はこっちだろう。

 

「わかった、用意するよ。」

 

ため息混じりの返事をすると、二人の表情はいくらか和やかになった気がした。




前回の投稿からかなり時間があいてしまい大変申し訳ありませんm(_ _)m
次はもっと早く投稿できるよう努力します!
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