闇を抱えた提督がブラック鎮守府に着任するお話   作:はやぶさ雷電

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前回のあらすじ

深海棲艦との戦いは終わったようだった。


第18話 訪れた僅かな平和

「司令官、大丈夫ですか?」

 

朝潮がそう訪ねてくる。そして倒れそうになる朝潮を、1人の艦娘が支える。

 

「あとは任せて。」

 

そう言って朝潮を赤城に頼み、俺の拘束を解いた。

 

「入渠ドックに行くわよ。」

 

執務室を出て暫く喋ること無く歩く。灯りはろうそくを使い、建物がかなりダメージを受けているのがゆらゆらと見えてくる。

 

「・・・なぁ、瑞鶴だよな?」

 

「そう言うあなたは、本当に黒鋼光夢なの?」

 

「そうだよ。瑞鶴は何処から来たんだ?」

 

「基地航空隊の妖精さん達と、ずっと隠れていたの。」

 

「基地航空隊?」

 

「そう、ここに来た爆撃機はそこから来たの。もちろん私も。」

 

爆撃機を見た覚えはあまり無いが、恐らく気絶している時だったのだろう。

 

「まあ隠れてたのは私だけじゃ無いけどね。皆で資源を調達して、飛行場を何年も守ってきたの。」

 

「何年も?」

 

「そうよ。だって鎮守府がまともに動かないんだもん。大本営がこの基地航空隊だけでも、機能させようと来るに決まってるじゃない。」

 

基地航空隊のことはあまりよく知らないが、きっと何か大きな戦力であるのだろう。

 

「また戻るの?」

 

「多分それはないわね。ここも機能し始めてるし、あの人に呼ばれたんだし・・・。」

 

あの人?誰のことなのだろうか。聞き返そうとした時、瑞鶴が先に話し始めた。

 

「光夢は黒鋼(くろがね) (まさる)からどこまで聞いているの?」

 

黒鋼 勝とは、俺の父さんの名前だ。

 

「何が?」

 

「あなたの事とか、艦娘と深海棲艦の関係とか。」

 

「俺は人間と艦娘のハーフだってことくらいかな。」

 

「そう。じゃあ入渠ドック(お風呂)についたし、ゆっくりしてきてね。」

 

気付けば入渠ドックまで来ていた。鎮守府はボロボロになってはいたが、ここは無事だったようだ。

 

中は真っ暗だったが、入渠の機能だけは非常用電源でもあるのだろうか、稼働していた。入ってみると左腕は回復していき、たいした痛みも感じなかった。

 

 

 

 

 

「あ、提督!どういうことですか!?」

 

入渠を終えて出てくると、赤城が待っていた。何事かと思えば、赤城が物凄い形相で問いかけてきた。

 

「美味しくない!」

 

「は?」

 

返す言葉は浮かばなかった。いきなり何を言っているのだろうか。

 

「補給に出てきたご飯が美味しくないんですよ!ようやくゆっくりできると思ってたのに。」

 

さっきの執務室であった事は何だったのかと思うほど、内容が関係なかった。

 

「補給用じゃなくていいんで、何か作ってください。」

 

「俺が作るの?」

 

「支援に行ってた鎮守府は美味しくなかったんで、自炊してたんですよ。たまには他人(ひと)の作ったものが食べたいなー。」

 

そう言いながらすごくこちらをちらちらと・・・いや、凝視してきた。

 

「でも赤城だけに作ったら他の娘達が可愛そうだろ?それに手の凝った物も作れないぞ。」

 

「じゃあカレーにしましょう。」

 

いや赤城が決めるのかよ。

 

「作れるけど、材料があるかも分からんし。」

 

「ならばこれでどうでしょう。」

 

赤城が何処からか出したのはレトルトカレーだった。

 

「完成してるよね。」

 

「すいません、これは夜食用です。」

 

「使えないです。」

 

レトルトカレーから全く目を離さず、震えながら渡してくるそれを見て、受け取ることはできなかった。拒否した時、ほっとしていたように見えたのは気のせいだろうか。

 

「じゃあ、明日の夜ご飯ということで。」

 

 

 

 

 

執務室の扉を開け中に入る。空が見え、真っ暗だった。静かな空間に突然電話の音が鳴る。これも非常用電源を使っているのか、それとも別に何かあるのか分からないが、受話器を耳にあて相手の声を待つ。

 

「もしもし、提督殿はおるかい?」

 

「それは俺だが、誰だ?」

 

「どうも、大本営の者だ。前回は私の部下が失礼したね。」

 

前回とは恐らく、弓道場を奪おうとして来た提督の事だろう。

 

「そんなことを言いにかけてきたのか?」

 

「本題は違う。そっちで襲撃があったらしいが、大丈夫かね?」

 

「何でそんなことをあんたが知ってるんだ?」

 

この鎮守府が、大本営とまともに情報を共有しているとは思えない。つまり、この鎮守府の人以外に襲撃があったことを知っているはずがない。

 

「うちの部下の仕事が早くてね。」

 

つまりどこかに監視している人がいたということだろうか。

 

「ところで、1人艦娘を送ってあげようか?人手も足りないだろうし、戦力も足りないだろう?」

 

「何が目的だ?」

 

「目的なんか無いさ。強いて言うなら、この艦娘は全く戦力にならない役立たずだからさ。君に譲ろうと思ってね。」

 

「役立たず?」

 

「そうさ。どうせなら特攻でもさせようかと思ったけど、君が受け取るなら生かしておくよ。」

 

「役に立つかどうかは、そいつをどう使うかで変わる。あんた、提督向いてないんじゃねぇか?」

 

「君ならどんな艦娘でも役に立てられると?」

 

「少なくとも、あんたよりはな。」

 

「ならばこの艦娘を役立てて見せよ。」

 

そして電話は切れた。

 

護衛はいるのだろうか。もし戦闘が苦手なら、単独では危険だ。そして今の電話の主がわざわざ護衛をつけるとは思えない。そこですぐに朝潮を探し、護衛を送り込むことを考えた。

 

 

 

 

 

「朝潮、話があるんだが。」

 

回復したのか、廊下を普通に歩く朝潮を見つけた。

 

「どう致しましたか?」

 

「実は明日、大本営から艦娘が送られてくるんだが、万が一もあるかもしれないし護衛を送りたいんだ。」

 

「わかりました。手配しておきます。」

 

朝潮はいつも通りだった。だがそれが逆に怖くなった。

 

「朝潮はあの時の俺を見て、怖くないのか?」

 

俺があの主砲を使ったと仮定して、なんとも思わなかったのだろうか。

 

「司令官は司令官です。私は例え、黒鋼光夢が深海棲艦であっても構いません。」

 

そう言って朝潮はそっと微笑んだ。

 

「少し頭を下げてもらってもよろしいですか?」

 

「ん?こうか?」

 

片膝をつくと朝潮は俺を抱き寄せ、そっと頭を撫でてくれた。

 

「司令官はもう、1人ではありません。そしてもう、1人にはしません。」

 

たったそれだけだったが、それがとても暖かかった。

 

 

 

 

 

朝潮と別れた後は食堂に行ってカレーを作った。間宮さんに赤城に言われたことを話すと、食料の使用、道具の使用などを渋々了承してくれた。ずっと気絶して(眠って)いたからか、眠くはなかった。

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