闇を抱えた提督がブラック鎮守府に着任するお話   作:はやぶさ雷電

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前回のあらすじ

黒鋼光夢の父、優志はまだ生きていたようだった。


第20話 サポートの形

一度執務室に戻る。執務室につくと、先に口を開いたのは爺さん・・・いや、俺の祖父だった。

 

「まずは感情のコントロールだな。このままではいつここの艦娘達も裏切るかわからん。それでは何も救えない。」

 

確かに何度も殺されかけたが、それが変わるのだろうか。

 

「感情のコントロールって言ったって、具体的にはどうすればいいんだ?」

 

「まあ適当に楽しいことを考えればいいさ。優志とあった時は、いくらか正の感情に傾いていたからな。」

 

そんなことを言われ、渋々考える。楽しかったのはやはり昔の記憶だった。それを懐かしく思い出していると、執務室の扉をノックする音が聞こえた。

 

「誰だ?」

 

「護衛対象を連れてきたっぽい!」

 

聞いたことがある声が聞こえた。護衛対象と言うのは、電話にあった艦娘のことだろうか。

 

「わかった。入っていいぞ。」

 

そう言うとゆっくりと扉が開き、1人の艦娘・・・と何かが入ってきた。艦・・・いや、航空機だろうか。

 

「えっと、ここの鎮守府の提督をしてます。黒鋼光夢です。」

 

とりあえず自己紹介をしておく。

 

「水上機母艦、秋津洲よ!この大艇ちゃんと一緒に覚えてよね!」

 

この何かは大艇ちゃんと呼ぶらしい。

 

「何か、この鎮守府かなりボロボロみたいだけど、大丈夫?」

 

「まあ色々あってね。」

 

詳しく説明するのも面倒だと思い、適当に終わらせてしまう。

 

「それより秋津洲は何が得意だ?戦闘が得意なら出撃を優先するし、他に何かあれば善処するが。」

 

そう言うと秋津洲は目を輝かせた。

 

「えっいいの!?私戦闘苦手だけど、戦闘以外したことなかったかも。後方支援とかしてみたいかも!」

 

かも?と言うのは他にも、やりたいことがあるのだろうか?そんなことを考えていると、隣にいた朝潮が意見を出す。

 

「では、明石さんのところでお手伝いをする、と言うのはどうでしょうか?」

 

「あ、ああ、いいんじゃないか?」

 

「おそらく、かもと言うのは口癖なのではないかと思います。」

 

秋津洲にばれないように、朝潮が教えてくれる。俺が考えていることはバレバレのようだ。

 

「じゃあ明石のところまで案内するよ。ついてきて。」

 

そう言って執務室を出る。朝潮も一緒に来てくれた。そして執務室には爺ちゃんだけが残った。

 

 

 

 

 

「・・・もしもし。」

 

「元帥殿?どうなされました?」

 

「もう私は元帥ではないよ。」

 

「いえ、元帥殿は元帥殿ですので。」

 

「そうか。それより光夢君の件だが、無事武装を展開できたそうだよ。」

 

「もうそんな段階までいったのですか。予定より早いですね。」

 

「まあ早いことに越したことはないだろう?だが念のため、あり得ないこととして話している。嘘はないがね。」

 

「なるほど、私も話す際は気を付けますね。」

 

「ああ、頼むよ。」

 

「もちろんです。これは人類を、艦娘を、深海棲艦を。」

 

「そして私とあの人を助けるための計画だからな。」

 

「そうだ、ついでに大本営の調査経過の報告を・・・」

 

 

 

 

 

「ここが工廠だ。とりあえず明石の手伝いをして、自分がやれそうなことを見つけたら教えてくれ。」

 

扉を開け、中に入る。すると明石は作業していた手を止め、俺たちを出迎えた。

 

「ど、どうしたんでしょうか?」

 

「実はな・・・」

 

秋津洲の事を軽く説明する。すると明石はあっさりと了承してくれた。

 

「人手が足りなかったので、ありがたいです!」

 

「よろしくお願いするかも。」

 

「では後は任せる。」

 

そう言って工廠を出る。この後、晩御飯のカレーを作る予定だったのを思い出す。

 

「俺は1度食堂に行ってくる。」

 

「では先に執務室に戻ってますね。」

 

そう言ってお互いに別れた。

 

 

 

 

 

「食材はこれしかないのか?」

 

間宮さんに調理場に入ることを渋々了承してもらい、準備をしようかと思ったのだが、全く食材がなかった。

 

「使うことがなかったので。」

 

「なるほどな。」

 

食材が少ないと予想し、準備を早めにしようとして正解だった。すぐに足りないものを用意しないと間に合わないだろう。しかしここまで少ないとはな。

 

執務室に戻り、朝潮に食材の調達について話すと、今晩に間に合うのは俺の故郷だろうとのことだった。自室に戻り、私服に着替えてもう一度執務室に行く。

 

 

 

 

 

朝潮に護衛してもらいながら、執務室にたまたまいた瑞鶴と船で故郷に向かう。船の操縦法がわからないため、瑞鶴に操縦してもらっている。この船は鎮守府とこれから行く村を行き来するためのもので、最初は食料等を運んだりしていたため少し大きい作りになっている。

 

「何だか雰囲気変わった?」

 

瑞鶴にそんなことを言われたが、いまいち心当たりがない。

 

「そうか?気のせいじゃないか?」

 

「そうかな?まあでも、今のほうがずっといいわ。」

 

瑞鶴は何だか楽しそうで、嬉しそうだった。

 

村にはそんなにかからずに着いた。朝潮には船を見張ってもらい、瑞鶴と村に入っていった。

 

「へいらっしゃい!」

 

八百屋に着くと大きな声が聞こえた。

 

「ありゃ?瑞鶴じゃねぇか。久しぶりだな!」

 

かなり元気な主人だ。この村がどれだけ平和かがわかる気がする。

 

「八百屋のおじさん!久しぶり。今日はカレーの材料を買いに来たの。」

 

「それはいいが、隣のやつは誰だ?また提督か?」

 

提督に対して良い印象は持っていないようだ。

 

「まあ、私たちに似た者よ。形だけ作って大本営を騙してるの。」

 

「それならいいんだが。」

 

色々聞きたいことはあるが、ここは黙っておくことにしよう。それにしてもここは値段が全体的にかなり安い。じゃがいもは特売で、5個入り1袋450円。ニンジンや玉ねぎは1袋700円程度だ。内陸では1000円は軽く越える。安い理由は危険なかわりに広く土地を得られるからだろうか。

 

そういえば、深海棲艦との戦争が始まってから餓死者が大量発生している。内陸に人が集まり、食料の生産する場所が減り、更に徴兵によって人手も限られているらしい。戦前はこれらが200円から300円で買えたと聞いたことがあるが、粗悪品も多いのではないかと疑ってしまう。

 

「じゃあこっち、ついてきな。」

 

店の奥へと誘われる。瑞鶴は迷うこと無く入っていった。俺もそれを見てすぐに追いかける。するとそこは食料庫のような場所だった。

 

「表から持ってかれるのは目立つからな。裏から持っていきな。」

 

迷うことがない辺り、やはり昔に使われていたのだろうか。そんなことは一旦置いておき、使っていいと言われた台車に食材をのせ、瑞鶴が支払いを済ませているうちに俺は先に船に積みにいった。

 

その後は台車を返しに行く。支払いを済ませたのか、瑞鶴とすれ違う。店には先程のおじさんが1人だけ残っていた。

 

「なあ、ひとつ聞いてもいいか?」

 

俺は台車を片付けた後、おじさんに声をかけた。するとおじさんは黙ってこちらを向いた。俺はそれを肯定と受け取って話を続ける。

 

「もし、俺が瑞鶴達の提督だったらどうする?」

 

それを言った瞬間胸倉を掴まれ、壁に押しつけられる。

 

「そう言うことは冗談でも許さねぇぞ。」

 

しばらく無言の時間が流れる。その間俺は抵抗することもなく、真っ直ぐ見返した。そしておじさんはゆっくりとつかんでいた腕の力を緩め、ひとつ溜め息を吐いた。

 

「俺は許さねぇが、瑞鶴達が信じた奴ならいいんじゃねぇか。」

 

そう言って倉庫を出ていく直前に、こちらを見ずに話した。

 

「もしお前が提督なら、大本営に1発食らわせてくれ。」

 

「あくまで、もしの話であって俺は提督ではないですよ。」

 

一応瑞鶴の考えもあるだろうと考えて、提督ではないことを言っておく。

 

「言ってろ。」

 

おじさんは鼻で笑い出ていった。

 

 

 

 

 

「大丈夫?」

 

再び船に戻ると、すぐ瑞鶴に声をかけられた。

 

「何が?」

 

「服が乱れてるから。」

 

ここに来るまでにある程度直したつもりだったのだが、瑞鶴にばれてしまった。

 

「大丈夫だよ。」

 

「・・・なら良いけど。」

 

そう言うと瑞鶴は船へと向かっていった。俺もそれに続く。朝潮も気付けば護衛任務に戻っていた。

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