闇を抱えた提督がブラック鎮守府に着任するお話   作:はやぶさ雷電

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前回のあらすじ

秋津洲が着任しました。


第21話 食事はお腹と心を満たす

「朝潮!大丈夫か!?」

 

「はい、特に問題はありません。」

 

帰る途中に深海棲艦と遭遇した。相手は駆逐イ級1隻だけだった。朝潮が難なく撃破し、その後も特に何事もなく帰還する。

 

「では、私は報告書を用意しますので。」

 

朝潮は工廠に艤装を戻した後、執務室に向かうと言っていった。

 

「私も訓練してくるわね。」

 

瑞鶴もそう言って弓道場に行った。

 

買ってきた食料は巨大な冷蔵庫に入った。冷蔵庫はとにかく大きく、まだ余裕はあるようだった。

 

「じゃあ、用意するか。」

 

カレールーだけは常に届いているようで、今でも大量に余っていた。

 

買ってきた食材とカレールー、巨大な鍋を使って料理する。昔母さんの手伝いをしていた時のことを思い出して、母さんがしていたことを真似てみる。大分記憶は薄いが、それっぽくはできているようだった。

 

「いい匂いがするっぽい。」

 

カレーの匂いにつられたのか、聞いたことのある声が近づいてきた。

 

「夕立か?」

 

「あ、て、提督さん?何してるっぽい?」

 

まだ少し怖がられているような感じがする。

 

「料理と言うものだ。あまりやらないからうまくできてないかもしれないが、とりあえずやることはやった。夕飯の時に食べるつもりだが、夕立も食うか?」

 

「え?いいの?」

 

「まあ、そういう予定だからな。」

 

艦娘全員に与える予定ではある。それに夕立が食べれば他の艦娘も続いてくれるかもしれない。

 

「期待してもいいっぽい?」

 

「まあ、それなりにな。」

 

 

 

 

 

「なあ、光夢。試しに建造をしてみたらどうだ?」

 

執務室に戻ってすぐ、唐突に爺ちゃんに言われる。執務室には爺ちゃんしか見当たらず、朝潮はまだ戻っていないようだった。シャワーでも浴びているのだろうか。

 

「今すぐなのか?」

 

「建造には少し時間がかかるからね。今建造を依頼しておいて、できた頃に迎えにいくんだよ。と言っても、失敗するかもしれないけどね。」

 

建造ではその鎮守府に所属している艦娘と、同じ艦娘が出てくることはない。成功と言うのは、新しく艦娘が生まれてくることを言う。失敗と言うのは、艤装のパーツだけが出てくることを言う。出てきたパーツを使えば、他の艦娘の艤装を強化することができる。

 

しかし、戦力の面で考えれば一人を強化するより、新しく一人迎えた方が良いと言う考えだ。だから成功と失敗と言われる。

 

そしてこの鎮守府には既に多くの艦娘が建造され、所属している。今更新しく出てくる艦娘もそう多くはないはずだ。だから失敗の可能性の方が大きい。

 

「なるほど。建造してみるか。」

 

そう言うと、爺ちゃんと2人で工廠に向かう。

 

「そういえばこの鎮守府で轟沈した艦娘っているのか?」

 

「いないが、朝潮に聞かなかったのか?一応提督代理を勤めていたはずだが。」

 

「なかなか聞く暇がなくてね。資料は見つけたけど。」

 

資料は爆撃で書類が散乱した執務室から、たまたま見つけ出したものだった。この鎮守府の今までを考えると、正直いるのではないかと疑ってしまう。だが、見つけた資料には轟沈した艦娘は確認されていなかった。

 

「さて、ついたぞ。」

 

色々考えている内に工廠についた。扉を開けて中に入ってみたが、誰もいなかった。現状考えられるのは鎮守府の修理だろうか。

 

「まあ、明石がいなくても問題はないからな。建造して戻ろうか。」

 

爺ちゃんに言われ、そのまま建造を依頼する。

 

「資源はとりあえず、最低限でお願いするよ。」

 

建造用の設備の隣にいた妖精さんにそう伝える。すると1度敬礼して建造を始めた。しばらく使われていないはずの設備だ。綺麗に整備されているようだが、まだ使えるかわからない。

 

「後は妖精さんに任せよう。」

 

そう言われて工廠を出る。気が付けばそろそろ晩飯の時間だ。食堂で準備をしておこう。

 

 

 

 

 

「それではよろしくお願いします。」

 

間宮さんにご飯とカレーの盛り付けを頼んだ。俺がやるよりも、皆が受け取りやすくなると考えたからだ。

 

「・・・わかりました。」

 

ため息を吐いて渋々了承してくれた。

 

「無駄だと思いますけど。」

 

「まあ無駄だったらこれきりにします。でもうまくいったら、今後は間宮さんに担当を任せますよ。」

 

そう言って俺は早速、1皿間宮さんに盛り付けてもらい席に座る。先に食べてこの場を去っておこうと考えた。ここに俺がいたら他の皆が食堂に入りづらくなると思ったからだった。だが、食べ始めてすぐに1人入ってきた。

 

「こ、こんばんは。提督さん。」

 

入ってすぐ俺のもとに来たのは夕立だった。

 

「まだ呼んでないけど、もう来たのか?」

 

「早めに食べたくて・・・」

 

そういう夕立はきょろきょろと周りを見渡していて、なんだか落ち着きがないようだった。

 

「なら間宮さんに頼んで盛り付けてもらっておいで。」

 

試しに夕立にできるかどうかと、間宮さんがちゃんと対応するかを見てみる。食べる量を伝え、それを盛り付ける。戻ってきた夕立のカレーを見て大丈夫そうだと判断する。そして夕立が正面に座り、カレーを食べようとした時だった。

 

「何してるデース?」

 

その声で夕立が一瞬震え、動きが止まるのが見えた。

 

「食事だ。見ればわかるだろう?」

 

「なぜ夕立もいるデス?」

 

「そ、それは・・・」

 

夕立が微動だにしないまま震えた声を発する。

 

「俺が来るよう指示を出した。問題あるか?」

 

「困りマース。そういう勝手なことをされると。」

 

気付けば食堂の入り口に、匂いにつられたであろう艦娘達が集まりつつあった。

 

「何故困る?」

 

俺は彼女の目をまっすぐ見返した。だが彼女からの返答はなく、沈黙が続いた。この沈黙の中誰も音をたてず、気が遠くなりそうなほどの静寂が訪れた。だが、この静寂を破った者がいた。

 

「司令官、お隣失礼します。」

 

そう言って俺の隣にカレーを置いて座ったのは朝潮だった。席に着くとすぐに一口食べた。

 

「美味しいです。」

 

感想を言ってくれるのは悪いことではないけど、まるで俺達のやり取りが無かったかのようだ。

 

「朝潮、これはどういうことネ・・・?」

 

この状況に対して先に声を発したのは彼女だった。そして呼ばれた朝潮は口の中のものを飲み込むと、俺に向けて話してきた。

 

「彼女の名は金剛。過去の提督達に食事を禁止されても、艦娘の中で最も長く食事を用意し提供していました。」

 

そこで金剛の名前を聞いて違和感を覚えた(・・・・・・・)が、考えるのは後にする。それよりも気になることがある。何故、食事の提供をしていた彼女が、逆に邪魔をするのか。

 

「それなら尚更何に困るんだ?」

 

金剛に聞いてみるも、何も答えない。だが俺が何か言う前に朝潮が返してくる。

 

「食事を提供したことがばれるたびに、彼女自身とここにいる艦娘全員が罰を受けていたせいだと思います。」

 

「あ、朝潮!」

 

流石に金剛も朝潮が暴露していく状況に黙っていられなかったようだ。表情から焦りが見える。その後俺と朝潮の顔を交互に見た後、うつむいてしまった。

 

「仕方がないじゃないデスカ。私が皆のためと思ってしたことが、全て皆を苦しめてしまったんデス。ならもう二度と同じことが起きないように・・・。」

 

「これも皆を苦しめないためか?」

 

続きが出てこなくなった金剛にそう聞いた。

 

「提督に何をされるかわかりませんからネ。」

 

話を聞けば聞くほど、過去の提督にはうんざりする。だがその時に何も出来ず、知りもしなかった自分にも腹が立つ。

 

「俺はそんなことをしないし、俺以外の提督はもういない。過去の命令はもう無いと思って良い。他にも不満があれば俺に言ってくれ。俺に不満だったら殺してくれて構わない。」

 

「司令官!?」

 

金剛だけでなく、ここに集まってきていた艦娘にも聞こえるように言う。さっきまで冷静だった朝潮は俺の最後の一言で動揺していた。その後再び静寂が訪れる。

 

「・・・美味しいっぽい。金剛さんも、食べますか?」

 

意外にもこの静寂を破ったのは夕立だった。まだ声も手も震えていたが、表情は笑顔だった。それを見て金剛は泣き崩れた。どれだけひどい目に遭わせてしまっても、仲間は誰も裏切りもせず、問い詰めようともしなかったのだろうと思った。

 

「今ここで食べる人が多ければ今後も続ける。食べないのであればこれきりだ。」

 

そう言うと、真っ先に赤城がとんできた。

 

「とても美味しいです!」

 

気付けばとんでもない量を食べていた。そしてそれに続いて入り口にいた皆も食べ始めた。

 

「後は任せますよ。」

 

間宮さんにそう一言言って俺は食堂を出た。

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