闇を抱えた提督がブラック鎮守府に着任するお話 作:はやぶさ雷電
黒鋼光夢は提督になるために地獄の第3次審査までやった。
目が覚めると、そこには1人の憲兵がいた。何度か口論をしていたあの憲兵だった。
「・・・飯をやる。こちらに来い。」
椅子に座っていた憲兵は腰をあげ、扉を開けて来るよう促す。
「他の皆は?まだ寝ているが?」
「お前に話がある。」
そう一言言うとさっさと出ていってしまった。ここはまだ大本営でどこに何があるのかもわからないため、憲兵を見失う前に追いかけた。
そして食堂らしきところへ来たが、時間が遅いのか早いのかまだほとんどいなかった。
「・・・そういえば今は何時なんだ?」
「1600だ。貴様らが眠ってから
「・・・つまり28時間くらい寝ていたのか・・・」
「貴様は最初に起きた、よかったな。」
「喜ぶところなのか?」
「まあ少なくとも、貴様は過去最高点を叩き出した。快挙だ。そしてその結果合格だ。喜べ。」
そんなことを話ながら憲兵から今日の定食を渡される。
「・・・一応聞くけど、あんたは食べないのか?」
「こんな時間に食うわけないだろう。にしてもお前口悪いな。」
「す、すまん。」
「まあいい、その感じで喋って貰った方が喋りやすい。」
なんとなく言い争ってから友達な感覚があった。何だろう、この感じは・・・気を引き締めないと。
とりあえず適当な席に座った。憲兵は正面に座った。
「・・・貴様が俺に言ったことは本心か?嘘か?」
突然そんなことを言ってきた。憲兵にいったことと言えば心当たりはひとつしかない。
「艦娘に対してのあれか?あれは本心だよ。それともなにか問題でもあるのか?」
「いや、それなら俺も心は決まった。」
は?
思わず口に出そうになり何とか押さえたが、みっともない顔をさらしてしまった。
「・・・まあその顔をどうにかしろ。言いたいことはわかる。俺はここからの話をしたかったんだ。」
言われてようやく表情を直した。すごく恥ずかしい。
「だがまず、今の大本営について話さなければならない・・・」
艦娘が現れる前、深海棲艦が出てきたときの事だ。突然奴等は現れ、客船を沈めた。突然の事に救出が遅れた。だが、救出ヘリたちも救出中におとされた。奴等は機銃しかなくミサイルみたいな追尾機能がついたものはなかったが、救出中のホバリングしているヘリは所詮動かない的だ。あっさりおとされた。
その後すぐ船で救出に向かった。その時点で時間が大分たっていたから大半が溺れ死んでいた。だが、近づいた瞬間砲撃してきた。全部が沈む前にある程度情報を軍に送ることに成功したから、軍はそれを聞いて即出撃した。だが、そこに向かった者、客船に乗っていた者は全員亡くなった。
その間日本の方では、どこかの国が戦争を仕掛けてきたのではと予想し連絡を取っていた。しかし、
しかし、出撃した軍艦もあっさりとやられてしまった。当たらなかったなどというわけではない。というより、命中率で言えばこちらの方が
逆にあちらは弾がバラけてはいたものの、当たればこちらは
そのうち制空権も奪われ、旅客機、輸送機、輸送船、客船、軍艦など、海に近づくものすべてをおとし、沈めた。日本は他国との貿易が不可能になったため、急速に衰退した。漁も出来ず、沿岸も砲撃を受け始めたため、死人も数多かった。
衰弱しきって危機に立たされた日本は
最初に艦娘と出会ったのは、初代
そしてこの大本営を作り、ここを中心に各所に防衛基地、鎮守府を作った。あの時は状況が状況だったから、陸軍に基地の守備、憲兵役を頼んでみたら案外すんなりと受け入れてくれた。だから対立が生まれることもあまりなかった。
そして今の第3次審査はあのときの名残で、いかに早く海域を攻略し、安全を確保するかというものだ。それが今でも続いている。
だが最近、兵器と見なす奴等が出てきた。そして初代元帥が軍を辞めてからそいつらがしきり始めた。もちろん、初代元帥は艦娘を人として扱っていた。だが、下心をもって来る奴等も増えた。なんせ艦娘は女性だからだ。
そう言う奴等で軍は乱れ始めている。
「それで俺はまともな提督を探していたのさ。」
そこで話はようやく途切れる。彼も話続けて疲れたのか、水を取りに行ってしまった。長い話ではあったが、有意義な時間だったと思う。
そして彼が戻ってくる。黒鋼も話の間に食べ終えたが、もう少し話があると言われたので、もうしばらくゆっくりすることにした。
「それで、鎮守府の運営には、安全のためにも憲兵を雇わなければならない。大抵下心をもっている奴等が契約を交わそうとする。君の事だからあまり心配はしていないが、それだけは避けてほしい。」
「当たり前だ。そんなやつ、うちにはいらない。」
いつから信頼されているのか、気にはなるも今は話の方が大事だ。
「だが、必ず憲兵が必要となる。そこでひとつ提案だ。いや、頼みだ。お前の鎮守府に雇ってくれないか?」
彼は黒鋼の目を真っ直ぐに見てきた。過去に散々人間に殺されかけてきたが、彼の目は奴等とは明らかに違っていた。
「・・・そんなこと、頼めるなら是非頼む!」
憲兵にニヤリと見せて答える。憲兵もそれを見てか、決断が早いことに対してか、少し驚いた顔をしていたが、すぐに右手を差し出し
「俺の名は
「あぁ、こちらこそ。」
こちらも右手を差し出し握手をした。
その後、心良はとある部屋まで黒鋼をつれていった後、信頼できる部下を数人つれて行くと言って去ってしまった。
そして、他の憲兵にここでやることの説明を受け、ついに艦娘を選ぶところまで来た。