闇を抱えた提督がブラック鎮守府に着任するお話   作:はやぶさ雷電

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前回のあらすじ

伊58(ゴーヤ)と出会った。


第30話 犯人捜し

「すみません司令官、取り乱してしまって・・・。」

 

ゴーヤが居なくなってから朝潮が謝ってきた。雰囲気はとても暗く、反省するのと同時に自分の言動に困惑しているように見えた。

 

朝潮があそこまで怒るのは正直驚いた。それだけストレスが溜まっているのか。それともなにか別の原因があるのか。

 

「わっ、ちょっ、司令官!?」

 

俺はそんな朝潮を見て無言で頭を撫でた。この出来事を忘れるくらい、ちょっと激しめに。

 

「気にしすぎ。なんとなくわかるよ。・・・大変だったでしょ。」

 

撫でるのをやめて手を離すと、朝潮の頭がボサボサになっていた。ちょっとやりすぎたか?今度はそっと撫でて髪を整える。

 

「朝潮は頑張りすぎたんだ。もっと周りに頼ってもいいんだよ。そのためにも、今後は朝潮ももう少し皆と関わりを持とう。仲間を作っておくのは大事だぞ。あんまり人の事言えないけど、俺もやっていくから。」

 

「・・・はい。」

 

いつまでも一人でいるわけにはいかない事はわかっているはずだ。ただそれを分かっていても、過去の記憶が邪魔をする。

 

「辛いことがあっても俺がいる。頼りにしてくれ。」

 

親指を立て、ニカッと笑って見せた。朝潮にはいつも頼りにさせてもらってるからな。何があっても、朝潮が一人にならないように、朝潮が必ず帰る場所になろう。

 

「ほら、暗いのは終わり。俺は明るい朝潮の方が良いと思うよ。」

 

すると朝潮が大きく深呼吸をして、両頬を叩いた。

 

「え、大丈夫?」

 

突然の事にちょっと驚いた。

 

「はいっ。大丈夫です。ありがとうございます。」

 

両頬が赤くなっていたが、いつもの明るい朝潮に戻っていた。

 

 

 

 

 

「じゃあ俺はゴーヤが言っていた通信の件を確認してくるよ。他の鎮守府に行ってる皆に帰還するよう言わないとだし。」

 

そう言って俺は改めて放送室に向かおうとした。ちなみに艦娘との通信や外部との連絡等の通信関係も、放送室で行われている。

 

「ところで司令官。大淀さんとはもう顔を会わせましたか?」

 

「いや。扉越しに声だけは聞いたけどね。」

 

大淀との会話を思い出しながら答えた。彼女の名前だけは知っている。昔の記憶でも大本営と連絡を取ったり、出撃中の艦隊と通信をしたりしていた。忙しそうだったし、ほとんど俺と関わったことはなかった。勿論、どこかですでに顔を見ている可能性はあるが、憶えていない。

 

「大淀さんはあまり顔を出さないんです。私ですらたまに扉の隙間から顔を見る程度なので。」

 

俺以外にも顔を出さないなんて。朝潮が苦手なのだろうか。

 

「それは朝潮以外にも?」

 

「私以外はわかりませんが、ずっと放送室に籠ってますよ。」

 

よっぽど忙しいのだろうか。ゴーヤの話を聞いた後だと色々疑ってしまうな。

 

「せっかくなので話すだけではなく、直接顔を会わせに行きましょう。通信関係は彼女の担当なので、今後も関わると思いますから。」

 

そう言って朝潮は歩き出した。俺もおいていかれないようにすぐ後について行く。

 

「司令官、扉が開くまで静かにしててください。」

 

放送室の前にたどり着くと、朝潮が小声で言った。理由はよく分からなかったが、それに黙って頷くと扉をノックした。

 

「朝潮です。大淀さんいらっしゃいますか?」

 

朝潮が呼び掛けると、少し慌ただしい物音がした後、ゆっくり扉が開いた。

 

「はい、どうしまし・・・。」

 

その開いた扉の隙間から見えた大淀と目があった。その瞬間すぐに扉が閉まりかけたが、朝潮が隙間に足を挟み込む。

 

「だいじ「何閉めようとしてるんですかっ、司令官がいるんですよっ。」

 

朝潮に心配の声をかけようとしたが、タイミングが被ってしまった。朝潮は力を込めた声で喋りながら、そのまま扉をこじ開けようとする。・・・この様子なら足は問題無さそうだ。

 

「えっと、少し話をしたら帰るから。」

 

そう言うとゆっくり開きつつあった扉が急に開き、朝潮がバランスを崩し転びそうになる。

 

「そういえばまだ顔見てなかったなぁと思って。それと通信について確認したくてね。」

 

そう言った瞬間大淀が再び素早く扉を閉めようとする。閉まりそうになった扉の隙間に今度は俺が足を挟み込む。

 

「だいじ「まだ話の途中なんだけどっ。」

 

朝潮の声が一瞬聞こえたが、また被ってしまった。とりあえず、力を込めて扉をこじ開けようとした。だが扉はあっさり開いた。あまりにも勢い良く開いたため、開いたところから大淀が飛んできて慌てて受け止めた。

 

「えっ、ご、ごめん?大丈夫?」

 

突然の出来事に、ここにいる三人は皆何が起こったのかよくわからなかった。

 

「えっと、それで話なんだけど、潜水艦のゴーヤに聞いてね。通信が出来なかったらしいんだけど、何か知ってるかな?」

 

ひとまず落ち着いたところで本題に入る。

 

「何も知りませんが、深海棲艦の仕業ではないですか?」

 

大淀がそう言った瞬間、俺の勘がはっきりと断言した。大淀は嘘をついている。

 

「うん、そっか。」

 

今までこんなにはっきりと嘘だと感じたことはなかった。こんな時何と言えば良いのか、言葉が何も出てこない。

 

黙っていたら怪しまれる。早く何か言わないと。焦れば焦る程何を話せば良いのか、どんな顔をすれば良いのかも分からなくなった。ここで変に問い詰めようとしても、証拠があるわけでも無い。下手なことをすれば証拠が消されるかもしれない。考えれば考える程わからなくなっていく。

 

大淀は顔をそらして言った。だから今こっちを見ていない。こちらを向いたら、今の俺にうまくやり過ごす術が思い浮かばない。そのままこちらを見ないでくれと必死に願う。

 

「司令官?」

 

俺がそれ以上何も言わないのを見て、朝潮が声をかける。俺はその声をきっかけに何とか動き出した。

 

「それと、他の鎮守府に行ってる皆に帰還命令を出しておいてほしい。それだけ。」

 

「えっ、司令官?」

 

大淀がこちらを向く前に俺はその場を足早に立ち去った。朝潮も急いであとを追ってくる。

 

もっと話を続ければ何か手がかりが掴めたかもしれない。もし本当に犯人ならボロを出したかもしれない。今冷静に考えると、あそこで話を終わらせたのは良くなかったのかもしれない。でも今更考えてももう遅かった。

 

「司令官?司令官!」

 

黙って歩き続ける俺を朝潮が無理矢理止める。

 

「いきなりどうしたんですか。」

 

朝潮には話しておいた方が良いだろうか。ちらっと後ろを振り返るが、既に大淀の姿はなかった。部屋からも離れているので、ここなら聞かれないだろう。

 

「・・・多分、ゴーヤの言っていた通信の件は大淀が犯人だ。大淀は嘘をついていた。少なくとも何か知っているはずだ。」

 

周りに聞かれないように少し小さい声で話した。

 

「何故嘘だとわかったんですか?」

 

朝潮も俺に合わせて小さい声になる。

 

「それは・・・。」

 

朝潮の問いに答えようとしたが、言葉が詰まってしまう。説明をしようとしたが、はっきりとした理由が無い。

 

「正直、俺も良くわからない。でも勘が、何故か間違いなく嘘だと感じた。」

 

我ながら酷い理由だと思う。怪しいから犯人だと言っているのだから、最低なやつだ。

 

「そう、ですか。」

 

流石に朝潮も難しそうな顔になる。やっぱりこんな理由で犯人扱いは駄目だと思う。もう少しまともな理由を見つけてから話すべきだった。

 

「ごめん、やっぱり聞かなかったことにしてくれ。」

 

これでは朝潮も今後の関わり方に影響が出てしまう。何をしているんだ、俺は。

 

「いえ、きっと何か訳があるんだと思いますし。」

 

朝潮も何とか俺の発言をフォローしようとしてくれる。でも朝潮がそうやって気を遣ってくれると、尚更発言を後悔してしまう。自分が惨めに感じてしまう。

 

「いや、確証もないし、やっぱり今は気にしないでくれ。」

 

「いいえ、気にします。」

 

朝潮の力強い返答に思わず驚いてしまう。

 

「私も彼女が通信関係を担当している以上、無関係だとは思えません。それに、あの対応は怪しかったですから疑われて当然です。」

 

朝潮の言う通りだ。俺もそれを確かめるために大淀に会いに行った筈だった。本当に、何をしているんだろうな。

 

「司令官。きちんと調べて、白か黒かはっきりさせましょう。」

 

「・・・そうだな。」

 

仲間に疑いがある状態はすぐに対処しなければならない。今後の作戦に大きく関わってくる危険性がある。

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