闇を抱えた提督がブラック鎮守府に着任するお話 作:はやぶさ雷電
大本営にいじめられた。
これは黒鋼が小2の頃だった。
「なぁ、おこづかい持ってるだろ?少し貸してくれよぉ。」
「おこづかいなんてもらってないっす。」
「嘘つけよ「やめろよ!」
いつものヤンキーがいつも金を持っていないのに絡んでくる。いつも通りまた殴られるかと思いきや、見たこともない少年が割り込んできた。
「あ?ガキは引っ込んでろ。」
「じゃあこの人もガキなんで帰って良いですよね?」
そう言って少年は黒鋼の腕を引っ張っていこうとした。
「おいおい、あんま調子乗んなよ?死にたくねぇならさっさと去れや。」
だが、少年は引かなかった。だからそこからは少年が殴られた。必死に殴り返すも力が弱く、全く効いていなかった。そして黒鋼は怪しんだ。何か企んでいるのかと。こいつらとグルで何かする気なのかと。
だが本気で殴られているところを見て少し違う気がした。じゃあなんだろうか、助けた礼として金を取ろうとするのだろうか。
この頃から、いやもう少し前から黒鋼は人を信じることができなかった。
「おい、お前は何が狙いだ?」
ゆっくりと低く、静かな声で。そんな声だがそれでも少年だけでなくヤンキーの耳にも響き、神経を伝い、危険信号を発させる程の破壊力があった。その声を聞いたヤンキーは少年の胸ぐらを掴んでいた手をうっかり放し、そのまま固まってしまった。
少年はこちらを見た。その目は恐怖の目だった。それはヤンキーに恐怖している目ではなく、
だがそれは一瞬だった。ヤンキーが胸ぐらを放した衝撃でいち早く我に帰った少年はまた思いきり目の前のヤンキーを殴った。大して効かなかったが彼は震える声でこう言った。
「君を助けたくてここに来たんだ。俺は君の味方だ。」
それを聞き、少しの間
いつの間にか目の前にいたヤンキーが拳を構えた。右手を引いて前に出してくる。黒鋼はそれを左手で受け止め、右手を引いて思いきり殴りかかった。腹を狙った拳はきれいに決まり、ヤンキーは2メートル程飛んだ。
この頃の力はまだ弱く、吹っ飛ばす程度だった。今の黒鋼が本気で人を殴れば、貫くか、5メートル程は軽く飛ばすだろう。
それを見た少年とヤンキーは
「いいよ、一緒に戦ってやる。」
黒鋼はそんなことを言って初めてこのヤンキーたちに反撃を開始した。ヤンキーは大体7人ほど、多いが一人は吹っ飛び一人は少年と戦ってる。現状は5人だ。
そこからは一人でずっと5人と戦った。殴ってきたらそれを上手く使ってカウンターをした。来なければこちらから仕掛ける。ヤンキーを倒すのに時間はあまりかからなかった。残りは少年とまだ戦ってる一人と目の前にいる一人だけになった。
一旦目の前のやつはおいておき、少年をいい加減助けた。
「まだやってるのか。」
ボソリと呟き、ヤンキーを殴り飛ばす。するとさっき無視したヤンキーがバタフライナイフを回していた。
「こんなガキに負けてられるか。」
その目は本気で殺しにくる目だった。回したあと左手に構え、走ってきた。このくらい大したことない。そう思い一歩前へ出るのだが少年は走り出していた。そして、ヤンキーに体当たりした。
赤い液体が滴り、少年は逃げてと一言言うとその場に倒れた。
「は?」
黒鋼はそれを見て
そんなことは無視してまたヤンキーは走ってきた。
「ふざけんなよ!」
黒鋼はそう叫んでナイフを避け、顔面を殴り飛ばした。
声には出なかったが心のなかでそう叫び、救急車を呼んでその場から立ち去った。その少年はナイフの当たりどころが悪く、救急車の中で亡くなった。
「・・・く・・・い・く・・・て・とく!・・・提督!」
はっと目が覚める。短く早い呼吸を繰り返す。どうやらここはボートの上だ。そして逆さに見えた叢雲の顔が上に消えていった。
「大丈夫?すごくうなされてたけど。」
叢雲がそう聞いてくる。
「あぁ、悪い夢を見ていた。」
いつの間にか寝ていた。とりあえず体を起こした。すごく汗をかいているのがわかる。海の上だからだろうか、すごく風が吹き冷たい。
「あれ?どうして止まっているんだ?」
そこで牽引していたはずの叢雲がそばいたことを思いだし、疑問が浮かんだ。
「提督がうなされていたからです。全く起きないから皆で起こしていたんです!」
五月雨が答えてくれた。まあ一緒に乗っているんだ。一番に気づいたのだろう。
「そうか、とりあえずここは危険だ。また鎮守府までの牽引頼む。」
そう言うと皆心配しながら元の配置に戻った。
ちゃんとしたボートであれば1時間もかからない距離を3時間以上もかけて進んだ。恐らくこんな海をのんびりと進む日はそう来ないだろう。少し得をした気分だった。そしてようやく鎮守府が見えてきた。
「夜か、皆が寝るときにうるさくなるのは悪いな。」
そんなことを呟くと五月雨がこっそりと聞いてきた。
「さっきうなされているときに『
そんなことを聞いてきた。心の声が口から出ていたのか。
「・・・そもそもあれは過去にあったことなんだ。あまり思い出したくないな。」
そう言うと、五月雨は申し訳なさそうな顔をしながらも聞いてきた。
「提督のこともう少し
「・・・皆にまとめて話すよ。鎮守府に着くまでは待ってくれ、といってももう遅いから明日とかになるかな。」
そう言うと五月雨は静かに下がっていった。
「意外と綺麗だな。」
鎮守府の前に立ち、そう言った。
「さっ早く入りましょ。」
叢雲がそう言うと皆門をくぐった。
「おい、貴様は誰だ?」
砲門をこちらに向けて睨み付けてくる女性がいた。
「えっと、今日からここに着任することになった提督です。」
「生きて帰りたければさっさと帰れ。」
そんなことを言って来たが叢雲達が言い返した。
「この人は私たちが信頼できると思って連れてきたの。まだ試してもいないんだから返すわけにはいかないわ。」
叢雲って強いなぁと思っていると仕方ないと諦めたのだろうか、自己紹介をして来た。
「私が戦艦長門だ。誰かに危害を加えた場合、容赦なくこの砲で
そう言ってものすごい眼光で睨んできた。
「ああ、勿論だ。」
そんなことを言って中へ入った。
ヘックシュン!
「すまん、ヘックシュン!」
黒鋼は入って早々くしゃみが止まらなかった。なぜなら、すごく埃っぽかったからだ。
「中は汚いなぁ」
そんなことを言った。とりあえず皆はそれぞれの部屋、艦娘は一部屋4人ほどのところで、同じ艦型の子達などと共に生活するらしい。心良はどこで寝るのだろうか、気付いたら憲兵用の部屋があると言ってさっさと向かってしまった。
黒鋼は執務室へ向かった。執務室のとなりが自室らしい。とりあえず荷物を執務室に置くことにした。自室も汚かった。とりあえず窓を開け、布団の埃などをひたすらはらって眠る用意だけして寝た。
・・・寝れない。
時間は大体3時くらいだろうか、埃っぽすぎて目が覚めた。それと元から自分のじゃない布団で寝るの自体苦手だったため、余計眠れなくなった。一応自分の布団は一生懸命運んできたが海でびしょびしょになったから洗濯中だ。
よし、掃除しよう。
窓を開け、できる限りうるさくならない掃除を自室だけすることにした。