闇を抱えた提督がブラック鎮守府に着任するお話   作:はやぶさ雷電

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前回のあらすじ

掃除して燃料を食べた。


第7話 施設の確認 前編

朝になる。今日も総員起こしが聞こえない。やはりここではやらないのだろうか?そんなことを思いつつ自室を出て、隣の執務室を覗くと頼んでいた家具があった。

 

「妖精さんやってくれたんだ。あとで礼を言っておこう。」

 

そこには執務用であろう机と、書類を片付けたりするための棚が置いてあった。おまけに家具を全部廃棄するために仕方なく積み上げておいた書類も、綺麗に棚に仕舞われていた。

 

お礼は羊羹(ようかん)で良いかな。

 

そんなことを考えながら部屋に戻り身支度をする。身支度を終えて軍服を着て廊下を歩く。だが向かう先は執務室ではない。そのまま1階まで階段を降り数枚の書類を確認しながらとあることを確認していく。

 

と言ってもこの鎮守府にはかなり久しぶりに来た(・・・・・・・・・・)。初めてではないが、それでも来たのは5歳くらいまでの小さいときだ。いや、来たと言うよりは住んでいた。理由は色々あるが、簡単に一番大きな理由をあげるなら、

 

人間と艦娘のハーフと言うのを隠しつつ世話をすることができる。両親が仕事、出撃などで忙しくなれば周りの艦娘がある程度はお世話をしてくれる。

 

など非常にうってつけの場所だった。だがここは最前線。父親は初代提督の次に着任し、初代提督の方針にしたがっていたためまだ艦娘への問題はなかったが、近海を確保しているとはいえ危険である。それにここでは世間の常識といったようなものもあまり得られない。

 

だから両親はこの鎮守府から真っ直ぐ北上した日本本土にある、小さな町に住むことにした。ここはこの鎮守府が守ってくれると言うのもあって海からあまり離れていなかった。それでも危険ではあるが、どうしても離れたくなかった人達がここに住み始めたりしていた。

 

なのでこの鎮守府はこの町で買い物などもしている。また初代提督のおかげで艦娘と町との信頼関係は良好で、むしろこの状態にしてしまった大本営に怒る人が出てくるほどだ。

 

話が大きく逸れてしまったが今回は鎮守府の施設の場所などを把握するために実際にその場所に足を運んでいる。

 

鎮守府の隣にもう1つ大きな建物がある。これは工廠と呼ばれ、建造、開発、艤装の整備などをしていると書類に書いてあった。

 

鎮守府は2階~5階に居住スペースがある。1階には入渠兼風呂場、食堂など、意外と鎮守府には居住スペース以外はあまりない。入渠兼風呂場も、食堂も普通に使えばホテルとかと変わらないのではないかと思うほどだ。

 

会議室はない。会議は基本的にそれぞれの艦種代表としたり、旗艦がメインで行うことが多く、全員での会議はない。仮にやったとして恐らくは人数が多すぎてごちゃごちゃしてしまう。放送で会議の結果を報告し、何か意見があれば執務室に来る。これが基本になる。

 

まあこれでも艦娘からすれば大切な家、だからこそ初代提督は鎮守府には居住スペース以外減らしたかったのだろう。

 

そんなことを考えているうちに工廠の目の前に来た。現状何も音はしないが誰かいるのだろうか?ノックをしても返事はなく、堅く重そうなスライドドアを開く。だが見た目に反して簡単に滑りスッと開く。

 

中を覗くと薄暗く、広い空間に色々な機材がある。だがその中に人の気配はない。

 

「誰かいますか?」

 

その声も響くだけで返事はない。一応管理者の欄に明石と書かれているため挨拶をしておこうと思ったのだが、いないのではまた後程になる。とりあえずドアを閉め、次の施設を確認しに行く。

 

鎮守府内に戻り、すぐに到着する。一度来たことのある場所、食堂だ。掃除をしている時、燃料入りのカレーを食べに来るよう言われて来たが、あのときは床が汚れても良いようにか皆が食事する場所はあまり掃除されていなかった。

 

そのときに見たここは溢したりしたであろう汚れが、大量にこびりついていた。今までの提督が汚すようなことをしていたのか、掃除をしないよう言われたりしてきたのかわからないが、とにかく汚かった。食堂としての衛生は良いとは絶対に言えなかった。

 

だが掃除をしてくれたお陰でピカピカになっていた。とりあえずよかったと安心して次に行く。

 

入渠兼風呂場にやって来た。流石に覗くことはできないかと思っていたが、修理中立ち入り禁止という看板が立っていた。と言うことは誰かが入っている可能性は低い。それに修理中と言うことは工廠の管理者がいるのかもしれない。

 

なぜそう思ったか。明石とは恐らくは工作艦のことを指していると思う。一応ここに来るまでに艦種についての知識を得ている。そのときに工作艦といえば明石だと言われていた。いや、実は軍学校には行ったことはない(・・・・・・・・・・・・・)。だから実際言われていたというよりは、吹雪に教えられた。

 

工作艦である明石は基本鎮守府の施設も簡単なものは直せるらしい。もちろん妖精さんの可能性がある。むしろその方が高いはずだ。だが、ここに来てから妖精さんを見ていない気がする。小さいので見逃しているかもしれないが、工廠にもいなかった。こちらに来ているかもしれないが誰も残らないのは不用心すぎる。

 

とりあえず行ってみるしかない。そこまで考えてノックをしてみた。

 

「はい?」

 

浴室にいるのだろうか、反響する声が聞こえてきた。

 

「入っても大丈夫ですか?」

 

「い!?や!その、大丈夫ですけど・・・」

 

明らかに焦っている声が聞こえた。だが大丈夫だと言っていたということは裸ではないはずだ。

 

「失礼するぞ?」

 

そういって中へと入る。浴室への扉が開け放たれており、中にはこちらに背を向けて震えている人がいた。おそらく声の主は彼女だろう。そう思い声をかけようとしたとき、

 

「すいません!入渠ドックは私には直せません!」

 

そういって彼女はこちらに向き土下座をして来た。

 

「え?」

 

驚きから出た声を口から漏らしすぐに手元の書類を確認する。だがそこには、

 

入渠ドック問題なく稼働中

 

と書かれていた。つまり修理中なのはおかしいのだ。

 

「えっと、どれが何で壊れてるんだい?」

 

相手を落ち着かせるためにもそっと話しかける。これ以上パニックになっても仕方がない。

 

「4台が、原因は私にはわかりません・・・」

 

今にも溢れそうなほど涙が目に浮かんでいた。だが明らかにおかしい。この鎮守府は最前線ということもあって入渠ドックは5台あり、通常の鎮守府より1台多いらしい。だがそれがほとんど動いていないのは問題がありすぎる。

 

「妖精さんはいないの?」

 

「妖精さんは戦闘補助でいっぱいで・・・」

 

これで何となくの現状がわかった。妖精さんはそもそも悪い人には近づかない。艦娘は皆共に戦う仲として大切に扱う。だから妖精さんは戦闘補助をしてくれる。いじめたりすれば必ず離れていく。

 

人間も悪いことをしなければ必ず来てくれる。だが何をしても妖精さんが見えるようになることはない。妖精さんが見えないので詳しいことはよくわかっていない。だからここでの表現も曖昧になる。

 

黒鋼も母親が妖精さんを連れていたとはいえ、扱いを間違えれば必ず離れていく。そして妖精さんは何でもこなすことができる。

 

妖精さんは謎の技術を持っている。人間や艦娘にすら扱えない技術もある。入渠ドックもそのうちの1つだ。彼女もそれはわかっているはずだ。それなのに戦闘補助でいっぱいだということは過去の提督が妖精さんを失ってしまったということだ。

 

そして修理すらできなくなってしまった。

 

「わかった。僕の妖精さんに頼んでみるよ。」

 

「え?いや、でも・・・」

 

「大丈夫さ、実は妖精さんと話せるんだよ。ところで名前は?」

 

妖精さんに頼むといってから彼女の表情が一瞬緩んだように見えた。だが、黒鋼の顔を見てまた強ばってしまった。

 

「工作艦、明石です。」

 

「君が明石か!探したよ、工廠にいなかったからね。これからよろしく。それと、やっぱり妖精さんは工廠にもいないのかい?妖精さんを呼んだ方がいいかな?」

 

つい早口で大声を出してしまった。やはり明石は少し怯えているように見えた。

 

「で、できれば・・・」

 

「いいよ、まあすぐに妖精さんに頼むのは難しいかもしれないけど、今度人数とかの相談をしよう。」

 

そういうと気付けば明石の目からは涙が溢れていた。

 

「え、すまん、なんか不味かっただろうか?」

 

「いえ、妖精さんがまた来てくれるなんて嬉しくて。」

 

そういって一礼すると出ていった。一応と思ってここの構造を見ておく。入って左に5つの四角い穴があった。入りやすいよう階段もある。うち1つが水で満たされている。これが入渠ドックだろうか。その上には時計のようなものもかけられていた。

 

右にはシャワーがいくつも並んでいた。真ん中には大きな穴があった。こちらも階段が備えられている。これが普通のお風呂だろうか。

 

人間が触るとものすごい激痛に襲われると習ったが、どうだろうか。

 

そう思い水が満たされている1台に近づく。そして右手を少し入れてみる。すると体中から力が溢れてくる。

 

「なるほど、これは元気になるな。」

 

そう呟いて手を引き持っていたハンカチで軽く手を拭く。そのまま自室まで戻り妖精さんに入渠ドックの修理を頼む。

 

「入渠ドック壊れているらしいんだけど、直すの頼める?」

 

「机と棚作るので疲れたよー」

 

「そこをなんとか!」

 

「でもなー」

 

「羊羹2個買うから」

 

「のった!」「まかせとけー」

 

そういって妖精さんは入渠ドックへと向かった。

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