闇を抱えた提督がブラック鎮守府に着任するお話   作:はやぶさ雷電

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前回のあらすじ

大体の施設は確認し、明石と出会った。


第8話 施設の確認 後編

自室を出てまた外へ出る。もうひとつの施設を確認する。それが訓練施設。海岸に備え付けられており、そこから海へと出ることもできる。だがその海は訓練用となっており、そのまま出撃などはできない。あくまで訓練用である。

 

訓練施設に入ると扉がある。更衣室、プール、弓道場、訓練場と書いてある札が扉のとなりにある。更衣室は私服などから戦闘服などに着替えたりするためである。プールは来たばかりの艦娘や、艤装の調整などに使う。遊びにも使えるとは思う。弓道場は主に空母が使う。

 

空母は航空機の発艦に弓を使うことが多いらしい。弓の調整や、訓練で使う。日々の訓練によって不安定な海上でも射るのがうまくなるらしい。射るのが不安定だと墜落することもあるとか。

 

訓練場は訓練用の海のことだ。この海には浮きを浮かせてコースを作ったり、的を浮かせたりして訓練ができる。全て無くして艦隊を編成して艦娘同士で撃ち合う演習もできる。

 

 

 

それぞれの部屋を少し覗き執務室に一度戻る。今朝確認した新しい執務用の机、そこに備え付けられていた椅子に腰を掛ける。するとずっと歩き続けていた足がようやく楽になる。それぞれの施設の資料を眺める。

 

工廠についてあまり見ていなかったが、ここで艤装の着脱もするらしい。艦娘は艤装をつけている間は展開も格納もできるらしい。格納でコンパクトにはできるらしいが、見ればわかるくらいにしか格納はできないらしい。つけ続けても邪魔になったりもする。

 

他の資料も眺めているといつの間にか机に備え付けられていた電話が突然鳴り始めた。それを聞き慌てて出る。

 

「もしもし?」

 

「おぉ、この声は噂の新しい提督かね?」

 

嫌な感じがする声を聞き、出たことを後悔する。

 

「あの、どちら様で?」

 

「そちらの訓練施設、その中の空母が使う弓道場、こちらを貸していただきたい。」

 

こちらの質問には答えず、そんなことを言ってくる。だがその要求をのむ気はなかった。

 

「こちらも使っていますので。」

 

「しかしそちらに空母は少ないでしょう?我々が使ってたくさんの艦娘を訓練させる方が良いと思うのだがね?」

 

この要求をのんでしまえば恐らくはこの鎮守府の皆が嫌っている人間が来ることになる。そうなれば最悪ここ以外の鎮守府を敵に回してしまう。そうなってしまえば最後、ここはすぐにつぶれるだろう。

 

「いえ「そこには確か軽空母が4人だったはずですよね?正規空母もいないのにそんな贅沢な施設はいらないでしょう?」

 

自分が言い始めてすぐに好き勝手に喋ってくる。この鎮守府には正規空母はいない。いや、資料によると他の鎮守府で一時的に運用されているとのことだった。所属はここになっているため呼べば必ず帰ってくることができる。だが今帰ってきても元の鎮守府ではない。呼ぶのはまた今度だ。

 

軽空母は瑞鳳、鳳翔、龍驤、祥鳳の4人だ。だが貴重な戦力として近海の警備で皆忙しい。全員での訓練なんてほぼない。資料の出撃表を見れば皆忙しいのがよくわかる。

 

「基本誰もいないのだから良いだろう?」

 

「自分が使うので。」

 

「は?」

 

これ以上使えないと言ったところで終わらない。だからなんでも良い、理由を作る。

 

「弓道は集中力を鍛えられます。それにかなりの運動にもなる。集中力を鍛えれば作戦遂行をスムーズに行えますし、運動不足解消により、執務の効率も上がる。」

 

「むぅ・・・」

 

うねり声のようなものが受話器の先から聞こえる。そしてようやく止んだかと思うと吐き出すように言ってきた。

 

「一週間後だ。」

 

「は?」

 

「一週間後に艦娘を連れていく。そのとき貴様の弓道の腕がどれ程かを艦娘と比べる。艦娘が勝てば貴様は死刑だ。そこの鎮守府の艦娘はすべて我々の戦力とする。」

 

「おい、ちょっと」

 

そこで無理矢理切られた。弓道なんてやったことがない(・・・・・・・・)。そもそもあちらの提案は明らかにおかしいものだ。だが必ずあっちは来るだろう。こうなってしまった以上、急遽練習をしてここを守らなければならない。

 

「俺の命はどうでも良い、だが、ここの艦娘に手を出すのは許さない。」

 

ツーツーと鳴り続ける受話器に、もう聞こえないはずの相手に向けてそう言い受話器を戻す。そして席を立ち上がると同時に扉が開く。

 

そこには書類を抱えた見たことのある少女がいた。

 

「誰!?」

 

そう言って彼女は身構える。艤装をつけていないらしく、睨み付けてくるだけだった。

 

「まてまて、ここの提督になった黒鋼だ。怪しいものじゃない。」

 

「黒・・・鋼?」

 

そういうと突然動きが止まった。それと同時に黒鋼はその少女のことを思い出した。

 

「もしかして、朝潮か?」

 

少女は驚いた顔を向けてくる。

 

「ほら、俺の父さん、黒鋼 優志(ゆうし)の息子だよ。」

 

「まさか、うそ・・・」

 

その目からは涙が溢れていた。

 

「久しぶり、まったく変わらないね。」

 

そう言って微笑む。久しぶりに会うのがこんなに嬉しいなんて初めてだった。

 

「こんなに大きくなったんですね。」

 

朝潮は涙を流していた。そこには喜びや嬉しさと、悔しさや申し訳なさなどがたくさん入り交じった表情が見えた。

 

「朝潮!どうした!?」

 

声を聞きつけてきたのだろうか、聞いたことのある声が聞こえた。

 

「長門さん!?」

 

朝潮が声のした方を見てそう言う。

 

「泣いているじゃないか、まさか!」

 

そう言って長門は執務室を無理矢理覗き込む。その目線の先に黒鋼がいた。

 

「貴様!!」

 

ものすごい怒声と共に艤装の展開が始まる。

 

「な、長門さん待って!違うの!」

 

朝潮が声をかけるも長門には届かなかった。気付けば襟を掴まれ、体が浮いていた。

 

「貴様、朝潮に何をした?」

 

「なにもしていない!」

 

首が絞まりかけ、声が出づらくなる。

 

「そんなわけないだろう。言ったよな?この鎮守府の艦娘に危害を加えたら殺すと。」

 

襟を掴む手に更に力が加わる。そして気付けば轟音が鳴り響き意識は一瞬でなくなった。

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