STRONEST   作:螢司教

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遅くなりました 
三話目でございます。


知らされる真実

シーカの頭は真っ白になっていた。

自身の出どころは、じいちゃんやスラムにいる人達しか知らないはず。

しかしこの青年は、知ってか知らずか自分と同じ生まれだと言っている。

思考が戻ると、シーカは腰元に掛けているダガーに手を添え、青年に警戒した。

考えすぎかもしれないが、指名されてこんなこと言われれば誰しも身構えるだろう。

「心配するな。取って食おうとかはしない」

私の動きを察知してか、青年は敵意が無いことを示した。 同時に老人も大丈夫だと頷く。

老人を信じ、シーカは添えていた手をどけた。

 

少しの間、沈黙が訪れ緊迫した空気が張りつめる。

すると

「よし皆!もう夜も遅いし、寝よう寝よう!」

急に老人が明るい声で言う。

皆唖然としながら、諦めるようにそれぞれの寝床へ向かった。

シーカも戻ろうとしたが、老人が引き留める。

「シーカ、お前はまだ起きて、青年とワシの部屋に来てくれ

お前はあの子から聞かねばならぬことがある」

先ほどのふざけた雰囲気は無く、真面目な表情で頼む老人の指示に従い、シーカは共に老人の部屋に向かった。

 

 

◆

 

 

 

部屋に着くやいなや、老人は部屋の前で待つと言い二人を中に入れた。

…

……

………

き、気まずい………

何で一緒に入ってこないんだよ、じいちゃん!

さっき大丈夫だよとか合図するから、事情知ってるのかと思ったじゃんか!

くそう、ちょっと前に読んだ古本の見すぎで緊張する!

これからは少女マンガはたまに見るくらいにしよう!

い、いやいや、こんなことを考えている場合じゃない!そうだ、話を聞かなければ!こほん、まずは……

「話って何だ?二人きりでしか話せないほど重要な話なのか?」

「あぁ、察しが良くて助かる」

青年は全くぶれずにたんたんと述べる。

「さっきは名乗れずすまない。俺の名前はレベリオ・シュテルクスト STRONESTの一人だ」

!成る程、名乗れなかったのはそういう訳か!

STRONESTの人らは全員、政府によって世界中の人々に名前を知られている。

悪いことに、その名前はスラムのような無法地帯や裏社外にも行き届いているため、どこにいてもそう易々と名乗ることが出来ないのだ。

目付きの悪い仏頂面してるけど、こいつも苦しい思いをしてきたんだな…

しかし、レベリオ・シュテルクストかぁ。聞いたことが無いな…

でも

「そのSTRONESTの人が私に何の用だ?」

率直な疑問だった。

彼が来たのは私に話すことがあるからだろう。

でも何故私なんだ?

確かに自分が他の人と違うのは分かる。だけどそれはただ足が速いだけであって大したことないじゃないか。

考えている内に青年は衝撃的な発言をする。

「シーカ・ベンダバール 二ヶ月前にお前の父親が死んだ

よってお前がSTRONESTになった」

……

………は………

ハァ!?

 

 

ど、どうゆーことだ?

私の父さんが死んだ!?

私がSTRONEST?

何がどうなってる?

「急にこんなことを言われてさぞ混乱してるだろう」

レベリオはまた冷静に話す。

だが取り乱していたためか、私は青年に対し乱暴に発言してしまう。

「当たり前だろが!そもそも何でお前が私の父親を知っている!」

 

シーカは物心つく前からここ、スラムにいる。

運よくスラムと言っても暴力が支配する無法地帯ではなく、単に貧しい者たちがいるだけだった。

そしてここのスラムの人々は手を取り合って生きる優しい心の持ち主ばかりだった。

だから彼らはシーカを受け入れた。

そしてシーカは成長し、健やかに育っていった。

ある日、シーカは老人に自分の親はどうしたかを聞いた。

すると老人は、母親は事故にあって死に、父親はシーカをかばってどこかへ去ってしまったと教えてくれた。

その日、シーカは一日中泣きわめいたことを覚えていた。

だが今レベリオが言ったことは、二ヶ月前まで父親が生きていたこと、更に自分の父がSTRONESTであることを意味するのだ。

知らぬ内に自分を助けてくれた父親を尊敬し、帰ってくることを信じていたシーカには、そんな情報がとても本当だとは思えなかった。

 

「嘘だ!そんなこと!テメェの話なんざ聞く必要もねぇ!」

感情を抑えられないシーカは直ぐ様部屋を出ようとする。

だがレベリオはシーカの肩を掴みそれを阻止した。

「シーカ・ベンダバール 最後まで話を聞け」

「何なんだよテメェは! いきなり訳わかんねぇこと言いやがって!」

激情が止まらない。

「だって私の父さんは!」

メラメラと怒りが煮えたぎってくる。

「私の父さんは…」

嘘だ。絶対に信じないぞ。

「…父さん、は…」

死んだなんて、絶対に

「……父、さん………」

父さんが、死ぬわけない

 

シーカはその場にうずくまり、すすり泣いた。

だがレベリオはお構い無しに、しかも全く変わらぬ様子でシーカに語りかける。

「シーカ・ベンダバール、話を聞いてくれ

父の意志を、お前は知るべきだ」

シーカは静かに頷き、顔を下に向けたままレベリオと向かいあった。

 

 

 

 

 

 

 

 

◆

 

 

 

 

 

 

 

 

 

シーカの父親の名前は、ラーミナ・ベンダバールという。

何でも、STRONESTによるレジスタンス組織『レギオンフォアリベルター』の頭領だったそうだ。ちなみにレベリオもそこの一員だったらしい。

彼はリーダーシップや統率力は無かったものの、人情深い性格から他のSTRONESTからも慕われていた。

彼らはレジスタンス組織だからと言って暴力で訴えるのではなく、貼り紙や慈善活動によって改革をもたらそうとした。組織には、血気盛んなSTRONESTが多かったが、ラーミナの存在が彼らにそうさせたのだ。

ラーミナは、争うこと無くこの問題を解決できると信じ、ひたすら活動を続けていた。

だがそれも虚しく、無慈悲な政府による弾圧によって壊滅させられた。

この時、レベリオを含む数人のSTRONESTは逃げ切ったが、その後の行方は知らない。

そしてこの逃がしたSTRONESTたちを守り、ラーミナは亡くなった…

 

 

 

 

 

 

◆

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…以上が、お前の父親の生きざまだ」

レベリオは、シーカに父親のことを全て話した。

そうか…私の父さんは………

やっぱり………

「優しい、人だったんだなぁ」

涙ぐみながらもシーカは言う。

父さんはやっぱりすごい人だった。

私に会いに来てくれなかったのは心残りだけど、でもちゃんと知れて良かった!

シーカは心の底からレベリオに感謝した。

「さて、この話を踏まえてなのだが…」

レベリオが次の話題に進もうとする、が。

「?他にも何かあんのか?」

シーカは記憶にない様子で聞き直す。

思わずレベリオも困った顔をした。

「忘れたのか、まったく…

お前がSTRONESTになることについてだ」

シーカは思い出したかのように頷く。

そしてレベリオが次の言葉を発そうとした時、シーカはストップの合図を出した。

「その話は、また明日にしてくれねぇかな?

まだ心の整理が出来てないんだ」

それを聞いたレベリオは一瞬考え込み、承諾した。

「ありがとう。さてちょっと疲れたから、もう寝るわ」

シーカはドアに向かって歩く。

「シーカ・ベンダバール」

ドアノブに手を掛けようとした時、突如レベリオに呼び止められる。

何事かと後ろを振り向くと、レベリオはシーカに

「おやすみ」

とだけ言った。

最後までピシッとした顔だったので、吹き出してしまった。そしてシーカも「おやすみ」と返し、部屋を出た。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◆某市場にて…

市場から人がいなくなった頃、入り口にある警察官が来た。

彼は市場を見上げ怪しく微笑むと、市場に向かって歩き始める。

「ここね…?やつが現れたって所は」

その巨大でガッシリした体格に似合わぬ口調で呟く。

「今度はちゃんと捕まえてあげる…」

 

 

 

ー最強の反逆者、レベリオ・シュテルクスト!ー

 

 

 

 

 

そう言うと、彼は手に持つ手配書を握りつぶした。




我ながら、最後のまとめ方がイマイチだなぁ…
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