モンスターな俺は鎧武に変身する。   作:猫舌

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TSした主人公ってどれだけ曇らせても愉悦になるからすごいよね。まぁ僕はハッピーエンドが好きですが(手のひらクルー)


弱者

「ムカつくぜ…今度会ったら一回〆る」

 

何をどうしたら男の体がこんなモンスターチックな女の子になるってんだよ。

 

しかも産まれたてで頭がぼんやりするときた。

 

そのせいか、

俺が今まで何してたかってのが思い出せん。

 

仮面ライダーを知っていたってことは少なくとも文明人ではあるはずだがな。

 

「はぁ…いつまでも愚痴るわけにゃあいかんな」

 

とにかく今はあのヘルヘイムの果実を探していつでも武装できるようにしねぇと危ねぇ。

 

実際、同じモンスターだから言葉が通じると思い熊に話しかけたら襲われたしな。

 

普通に共食い…いや種族が違うから一概にそうは言わねぇか。

 

このダンジョンと思われる場所ではどうやら戦わなければ生き残れないようだ。

 

さっきの熊の時は運良く冒険者っぽいパーティに押し付けることができたが……なんか、あいつら俺に超ビビってたんだよな。

 

 

〜回想〜

 

『グォォォォォオ!』

 

「うおおおおお!?

 そこのお前らぁっ!助けろぉぉぉぉお!!」

 

「なっ、モンスターが喋った!?」

 

「嘘でしょ!?」

 

「なんでもいいだろそんなこたぁ!

 って訳で後は頼んだ!」

 

「はぁ!?モンスターが

 怪物進呈(パス・パレード)かよ!」

 

「ど、どうなっているのぉ!?」

 

『グォォォォォオ!!』

 

〜回想終了〜

 

 

まぁ、モンスター押し付けたのはどう考えても俺が悪いんだが、ひとまず置いておく。

 

ひとまず、喋るモンスターは珍しいってことはわかったな。

 

喩えんなら、ドラクエとかで井戸の中にいるスライムとか、ボスクラスのモンスターとかだろう。

 

「ってことは俺、結構スゲーモンスター?」

 

外見からはそうは見えんが。

特別なモンスターって意味なら、鎧武に変身できる俺は充分特殊で特別だろーな。

 

「まぁ今んところ変身できねぇが…」

 

今の俺はホイミが使えない

ホイミスライムみたいなもんだ。

 

さっさと見つけて……げっ、モンスターだ。

なんか炎纏っててカッケェーが俺にとっては死の鳥にしか見えんぞ。

 

逃げるが吉。

戦う術見つけてからひと狩りしようぜ。

 

 

〜移動〜

 

 

……あ、あった…!

やっと見つけたぞオラァッ!

 

木の影とか見つけにくい場所に自生しやがって!

 

お陰で何度襲われたことか…!

しかも途中でモンスターだけでなく人間にもおそわれたしな!

 

モンスターの脚力を生かして逃げ回ったおかげでなんとか撒いたが…。

 

あの目。

俺を性的に舐め回すような視線は初めてだぜ…。

 

まぁ、確かに今の俺の体は女みてぇだが…うぅ、気味が悪りぃ…。

 

身の毛がよだつってのは、

こういうことを言うんだなぁ…。

 

(お陰でちょっと漏らしかけ…いやなんでもねぇ。

 なんでもねぇったらねぇ!)

 

「だが、これでようやく変身ができる…!」

 

3つしかないが、

それでもないよりマシだぜ。

 

対抗手段があると無いとじゃ大違いだ。

 

「まず一つ」

 

ブチッともぎ取ると、紫の色彩をした果実は光を放ちながら錠前へと変化。

 

「これは…」

 

記念すべき最初のロックシードはパンダみてぇな色合いしたヒマワリだった。

 

最低ランク。

確か、ベルトにつけて栄養補給にしか使えんクソ雑魚なめくじだった筈。

 

一応インベス召喚はできると思うが。

ここのロックシードも同じ仕様かは知らんけどな。

 

「二つ目……ど、ドングリかよ…」

 

なんとも微妙な…。

なんていうか、ネタ度に欠けるというか。

 

これで二連続ヒマワリとかだったら大いに突っ込めたのだが…なんとも言えん。

 

変身できるが、俺の力量で扱えるかは分からん。

そもそも、武器の時点でリーチが短すぎるしな。

 

扱いにくいことは確かだろう。

 

「最後だ…頼むぞ…!」

 

最後の果実をブチッともぎ取る。

……そして現れたロックシードは…!

 

「たんぽぽぉ…」

 

オイオイオイ。

まぁヒマワリよりはマシだけどもよぉ。

 

「俺に操縦できるのか…?」

 

問題はそこなんだよなぁ…。

バイクにすら乗ったことないのにいきなりこんな空飛ぶやつに乗るとか無理難題だろ。

 

しかも戦闘しなけりゃいけないときた。銃撃できるから大抵のモンスターなら穴だらけだろうが…万が一人間に流れ弾が当たったら即死レベルだから迂闊に使えねぇ。

 

「え、俺鎧武じゃなくてグリドンになんの?」

 

ウッソだろオイ。

だがないよりはマシだよな。

 

その内オレンジロックシードを手に入れたらその時改めて変身すりゃあいいさ。

 

「…ここは群生地じゃあねぇみたいだな……違う階層に行ってみるとするか」

 

仮にもアーマード・ライダーなんだから、スペックゴリ押しでも人型相手なら多少はなんとかなんだろ。

 

どうにもなんねぇ場合は……。

 

タンポポに乗って逃げるか。

ってかそれしかねぇ。

 

この木の根があちこちに広がる足場最悪な所を走るよりは早く逃げられるはずだ。

 

「…さて、そろそろ行くか…」

 

いつまでも留まってちゃまたあいつらややけに追いかけてくる火の鳥に見つかっちまう。その前にさっさとここから離れるとしようじゃねぇか。

 

……ん?

なんか羽の羽ばたく音が聞こえたような…。

 

『グゥェェェッ!』

 

「なっ、見つかった!?」

 

嘘だろなんでだ!?

いや、んなこと考えるより!

 

「に、にげねぇと!」

 

そう言って足を踏み出した瞬間。

 

「うわぁっ!?」

 

木の根に足を引っ掛けた。そのせいで下り坂をゴロゴロ転がっちまったぜ…。

 

「痛つつ…って本当に痛てぇ!?」

 

………まさか…これ、足を挫いたのか…?

嘘だろ…?

 

た、立ち上がれないって相当だよな!?

 

オイオイオイオイオイオイ!

ヤベーよ!どうすれば…!?

 

「ってそうだ!

 ヒマワリロックシード……無い!?」

 

さっき拾ったやつ軒並み落としちまったのか!?

探せばまだあるとは思うがこの足じゃ…!

 

ってか、あの鳥は追っかけて来て…。

 

「…………ぁ」

 

『ゲェッ…ゲェッ…』

 

俺がさっきいた場所から見下ろすようにこちらを見ている。

 

無駄に横に長い目がしっかりと俺を捉えて…。

 

「ひっ…く、くるなぁ!!」

 

俺の叫び声を無視して飛びかかって来た。

なんとか体を捻って体当たりを回避。

 

「っぁあっ!」

 

激痛が走った。

 

そりゃそうだ、

足挫いてんのに無理して動きゃあこうもなる。

 

「お、おい!くるな、こっちに、俺のそばに近寄るなっ…!!」

 

蹲った俺を見たモンスターは絶好の機会と言わんばかりに大きく口を開き、火の鳥らしく口の中に炎を溜めている。

 

(近寄らなければいいって話でもねぇよ!?)

 

俺というモンスターの皮膚がどれほど炎に耐性があるかわからねぇ以上、こいつの一撃を喰らうわけにはいかねぇんだよ!

 

あぁ、くそっ動けっ!

恐怖で体が動かないよりはマシだろうが!

 

「うぁぁぁぁぁぁ…っ」

 

自分でも信じられない情けねえ声が出た。気合いを入れて叫んだつもりだが、やけに弱々しい。

 

「あぁぁぁぁぁぁ…」

 

俺の頬に水のような何かが伝った。

汗…じゃねぇな……これ、まさか…。

 

「な、泣いてんのかよ…おれぇ……」

 

———あぁ、こりゃ駄目だ。

 

頭の中で冷静な俺がそう呟く。

 

———うるせぇうるせぇ!俺はまだ動ける!

 

———無駄だ。どれだけ奮い立とうとしても、心の芯がポッキリと折れている…涙がその証拠。

 

———黙れ!黙れ黙れ黙れぇ!!

 

「こんなところで終われるかよ!

 呆気なく散れるかよ!

 俺はまだ——–——生きていたいんだよぉ!」

 

(立て。立って…!頼む、俺の体!

 お願いだから…この攻撃だけでもぉ…!)

 

だが、火の鳥のモンスターはそんなこと知らぬ存ぜぬと炎を吐き出す————。

 

 

「やめ、ろぉ!」

 

 

——寸前、モンスターの首は胴体と別れを告げた。

 

火の鳥のモンスターは断末魔をあげる間も無く生き絶える。もう、恐怖は感じない……。

 

…いや、トラウマって形で残ってやがる。

くそっ、まだ震えが止まらねぇ…!

 

「だ、大丈夫?」

 

そんな俺に、さっきモンスターを切断した白髪で赤目の少年が話しかけて来た。

 

軽装であり、手元にはこいつの獲物と考えられるナイフが握られている。

 

「………ぁ」

 

…くそっ、さっきの啖呵が限界だったらしい。

声すら出ない。小さな呻き声が精一杯だ。

 

だが、

どうしても言っておかなきゃいけねぇこともある。

 

「……ぁりがと…」

 

「…うん。もう、怖く無いよ。安心、してね」

 

俺の見た目にギョッとしつつも、白髪の少年は俺に布をかけ、その上から抱きしめてくれた。

 

(あったかい…)

 

よかった…どうやら伝わったみてぇだな。

ヘヘッ…しっかり誰かにお礼を言えたのは…いつぶりだったかなぁ。

 

…覚えてねぇや。

そもそも記憶が抜け落ちてるしなぁ。

 

(あぁ…これヤバイな…

 安心感が段違いだ…眠ぃ…)

 

そのまま俺は、白髪の少年の暖かさに溺れるように意識を暗闇へと落としていったのだった……。

 




痛みと恐怖で動けなくなったところを颯爽と現れた白髪のイケメンショタに助けられたTS主人公…これは墜ちましたね間違いない。

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