ヤンデレのヒロインに死ぬほど愛されて眠れない13日の金曜日の悪夢   作:なのは3931

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世界に蔓延るコロナウイルスの影響で遅れました。

嘘です本当はT-ウイルスのせいです。


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子供というのは純粋だ。

 

大人の様に濁ってはいない。いや、染まっていないという方が正しいか。

 

 子供は無限の可能性を秘めている。というよりは大人が自身の可能性に見切りをつけ諦めていくのがほとんどであり、ある程度は子供の頃から決まっているのだが。

 子供の頃は見える世界が狭く、大人になればもっと色んな事が出来ると思っていたが…実のところ大人になって一見世界が広がり行動範囲が広まった様に見えても、実際に行動するのはとても狭く窮屈な世界でしかない。

 仕事や家庭、世間の評判などに縛られ子供の頃夢に描いた冒険などは更に夢のまた夢となってしまう。

大人とは既に完成品であり進む先にあるのは成長ではなく調整である。

 ほぼ決まった未来を上手く行く様に合わせるだけでとても退屈なものだ。

 

 だが、子供は違う。

決まっていない様々な未来を進む事が出来る。才能、環境、運。

 色々な条件があるがそれらがまだ未確定な以上あらゆる可能性に満ちていると言えよう。

スポーツでほぼ結果の分かり切った後半の展開よりも前半の何が起きるか分からない状態の方が楽しいものだ。

優れた完成品以外は完成品よりも未完成の作品の方が引き付けるのである。

 

 

 

 だからこそ私は子供が好きだ。

 

 

そんな子供達を見守り彼等が望む道に進める様に、

 

彼等が見たがった遠い世界を見れるように、

 

彼等がより良い形に完成するように。

 

 彼等を導く存在になりたい。

だからこそ私は先生になったのだ。

 

 

 

 

 

……というのが()()()の理由である。

 

 実際は違う。創るのが、完成させるのが好きなのではない。

本当は壊すのが好きなのだ。

 

 

 ほぼ決まった未来を歩む大人よりも可能性に溢れた子供の未来を奪う方が何十倍も気持ちいい。

 見たかった世界の狭さに絶望する前に、世界の先を知らぬまま命を奪う方が残酷だろう。

優れた名作でもなければ完成品よりも、作っている最中の未完成品を壊された方が人は絶望するものだ。

 生まれながら壊れており、より良い未来など無かった自分だから、子供の未来を壊す事に快感を感じる様になったのであろう。

 

 壊すことが、殺すことが生き甲斐だった。

一時期結婚し、創る事もしてみたがやはり本能は壊す方を望んでいたのだ。

 

 

 だが彼を見てから私はその奥に眠る才能に惹かれて創り、育てる存在となろうと思ったのだ。

 

 

子供というのは純粋だ。

 

 だからこそ平気で大人がやらない事、やれない事もしてくるのだ。いいことも…悪いことも。

 ある日子供が外でトンボを捕まえてくる事があった。

そんな時子供はトンボの翅をむしり取り、水辺に落とし、トンボが溺れるのをケラケラ笑いながら見ていたのだ。

大人になったら虫に触るのも嫌な人間も多いし道徳的に殺しを好まなくなるものだ。

 純粋無垢故の残虐性、嫌悪感や恐怖心の欠落…それ等は子供特有の事であり大人になったら価値観の変化で矯正されている場合が多いが、ごく稀に存在する。

 邪悪な因子を持った子供が…

そう言った子供は普通の子供でもある程度持っているリミッターが働かず、害虫を殺す様に平然と人を殺せる人間に育ちやすいのである。

 育った環境、もしくは本人の性格故に殺人鬼へと変貌するのだ。

私やレオンの姉のミシェルは後者であるがレオンは前者の方であろう。

 とても素直で疑いを知らない、彼と接して分かった事は良い意味でも悪い意味でも有望な精神性であるという事だ。

 彼を幼い頃から教育すれば強盗、殺人、強姦、食人嗜好あらゆる犯罪を嫌悪感無くこなす怪物へと成長する事だろう。

 

 だが彼は純粋だ。それも異常なまでに。

もし無垢な彼が邪悪に染まる前にそれらの行為に拒否感を持ってしまったとしたら、たとえどんな状況でも闇に染まる事のない光の存在になってしまうだろう。

 彼が悪を許さない正義の者になったら生まれながらの悪人である自分とは袂を分かつ事になる。

それだけは避けねばなるまい。

 

 

そして彼を殺人鬼にする為の教育が始まった。

 

 始めは普通に接するだけだった。優しく、好意的に。

彼に好かれる様に。

 

 レオンが絵を描いたら褒めてあげた。砂場で遊びお城を作ったらまた褒めた。

彼の好感度を上げるとともに正しい事をしたら褒めてあげる事を教え込んだ。

 

彼を誉めて撫でてあげると顔を赤くして照れてるのがとても可愛らしかった。

 

レオンは褒められる事を喜び、褒められる事を積極的にするようになった。

 

そうだ、それでいい。

 

そして次のステップへ進む機会が来た。

 

 幼稚園内に蜂が入ってきた。

それをレオンに駆除させる事にした。

 

 彼は「どうして?」と疑問を持っていたが蜂は先生達を傷付ける。

だからアレを殺して先生を守ってほしいと訴えた。

 

 

 まるで姫を守るナイトの様な気になったのだろう。

そうすると彼は即座に蜂をスリッパで叩き落とした。

その後足で捻り潰して殺した事を報告にきた。

 

なんて手際の良い子だろう。彼を誉めてあげまた頭を撫でた。

 

 

 その後は彼に虫の駆除をお願いする事にした。

蜂に刺されることもあったが彼は褒められるとケロッとしてまた蜂を駆除しに行った。

 

 

その後はゴキブリを駆除してほしいと伝えた。

 

彼は「ゴキブリも危害を加えるの?」と聞いてきたが危害を加えるのではなく『気持ち悪いから』殺してほしいと訴えた。

 

 この言葉には周りの人間も同意しており彼は疑問なく忌々しいGを駆除した。

勘違いしないでほしいが私だって女の子なのでゴキブリは普通に嫌いである。

やろうと思えばできるがやってくれるなら純粋に駆除してほしい。

 

彼はゴキブリを駆除し個人の感情で生き物を殺していい事を知った。

 

それからは彼と一緒に虫などを殺す事が増えた。

防衛や感情だけでなく知的好奇心を引き出し虫をバラせばどうなるかを教えてやったりもした。

虫をイグアナなどの餌にして食わせる事で殺す事に意味を持たせたりもした。

 

 

そして遂には虫の脚を全てもぎ、その悶える様を観て喜ぶようになった。

 

ああ、これでいい。

人間は合法的な動機があれば、その過程で悪意ある振る舞いを平然と行えたりするのである。

 

その後は殺しの対象が少しずつ大きくなっていった。

虫からミミズ、カエル、蛇。爬虫類まで進化した。

 

 休日にレオンをアライグマの狩りを手伝わせた。

ライフル銃でアライグマを撃ち殺すとその姿を見て彼は目を輝かせていた。

 

男の子という生き物はやはり銃に惹かれるものなのだろう。

 

 アライグマ、そして兎なども彼と一緒に狩った。

レオンに銃を握らせ撃ち殺したりもした。

 自分の肩にストックを当てて彼の後ろから抱きしめるとレオンが照れてるのが分かった。

 

なんて可愛いんだろうこの子は…

 

その後、私の前でそのキレイな顔をふっ飛ばしてやるとばかりに銃を構えたレオンが引き金を引き見事に兎を撃ち殺した。

 

ああ、やはりこの子は殺しの天才だ。

 

凄い凄いと撫でてあげると彼は褒められた喜びだけでなく獲物を仕留めた快感に打ちひしがれているようだった。

 

その後兎を彼の目の前で調理して食べた。

 

目の前で兎の内臓を引きずり出した時のギョッとした顔はとても痛快だった。

 

おいしいという事は重要だ。

彼は生き物をその手で殺したが、平然とそれを受け入れて殺した兎の肉を頬張っている。

 

 いい傾向だ、動物の血や内臓を見ても平然としてる辺りかなり素質があると言える。

彼に対する想いが昂っていくのがわかる。

 

ふと彼を見ると口元にソースのようなものが付いているのが分かった。

 

「ほら、付いているわよ?」

 

そう言って彼の顔に手を伸ばし…

 

 

 

 

 

彼の顔に手を添え口元を舐めとっていた…

 

「先生、汚いよ…」

「先生の舌はばっちくないわよ」

「でも僕お顔汚れてるから…」

「だから綺麗にしてるんじゃない♪」

 

自分でも無意識にやってしまった。

だがやってしまった以上もう突き進むのみだ。

 

「ねぇ、キスって知ってるかしら?」

「キス?」

 

「そう、キス…大好きな人と唇と唇を合わせるの」

「どうして?」

「それが儀式だから、そして心地いいからよ」

「儀式?」

「そう、儀式…結婚する時とか恋人さん同士になる時とか、大好きって気持ちを確かめ合う時とか」

 

彼はちょっと考えてキスの事を理解したようだった。

 

「ねぇ…レオン、先生とキスしてくれない?」

「えっ?」

 

「先生、レオンの事が大好きだから…キス、したいの…レオンは先生の事好き?」

「…うん、僕、先生の事好き…」

 

「っ!じゃあキスしてくれる!?」

「う、うん…!」

 

「じゃあ…!」

 

 

ギュっと目を瞑ってソレに備える。

 

顔が熱い、自分の顔が赤くなっているのが分かる。

これほどドキドキしてるのは何時ぶりだろうか?

 

いや、今までこれ程緊張した事はなかった。

初めて女になった時や人を殺した時でさえ興奮はしていたが緊張はしていなかった。

 

こんな気持ちは初めてだ。

 

「じゃあ、やるよ?」

「う、うん!いいわよ!」

 

彼が迫ってくるのが分かる。

 

彼の吐息を感じる。

 

生暖かい体温を感じる。

 

(ああ、来る!レオンのが私のに!)

 

 

―――そして

 

 

……ちゅっ♡

 

「っ!?♡」

 

(触れた!?今確実に触れたわ!)

 

柔らかい感触が触れた時、体に電気が流れたようだった。

 

ああ、なんて気持ちいいんだろう…!

 

「…これでいい?」

 

レオンも心なしか頬が紅い、彼も満更でもないのであろう。

 

 

「…もっと」

 

「えっ?」

 

だがまだ触れただけだ、一瞬、ちょんっと。

 

「キスっていうのはもっと唇を合わせ続けるの!触れただけじゃ足りないわ!」

「そ、そうなの?」

 

やはりよく分からないか。

仕方ない、こうなったら

 

「私から行くしかないわね…!」

「先生…?んっ!?」

 

有無も言わさず唇を合わせた。

 

そのまま唇をこじ開ける様に舌を滑り込ませ彼の口内に差し込んだ。

 

「っ!?~~~~!?」

 

「っぷはぁ…!これが大人のキスよ…♡」

 

 唇を離して顔を見ると彼の目がトロンとしてるのが分かった。

まだ互いの舌先には名残惜しそうに糸が引いていた。

 

 

(なんて気持ちいいのだろう、好きな人とするキスというものは…!)

 

 心が幸福な気持ちで満たされていくのが分かる。

人を殺した時でさえ味わった事の無い高揚感を感じた。

 

 

…もしも人を殺す前にこの感覚を知っていたら、私は殺人者にはならなかったかもしれない。

 

しかし私は人殺しだ。

 

今までも人を殺してきたしこれからも人を殺すだろう。

 

 ウーパールーパーやトンボなど、水生生物が陸に出てしまったせいで肺呼吸に頼る事になったが故に、以前の様な水中での暮らしには戻れないのと同じだ。

 最早殺人鬼は殺し抜きでは生きられない、普通の生き方など到底出来っこないのである。

 

 

 だからこそ彼を殺人鬼(自分と同じ)にしたい。

彼と共存する為に。彼に認められる為に。

 

自分が殺しを止められないのなら彼にも殺しの味を思い知らせればいい。

 

 

 きっと彼だけには自分を偽り続ける事は出来ない。

彼の前だと自分は冷静でいられない。いつかきっとボロが出る、だからこそ。

 

自分の全てを見て認めてほしい。

 

殺人鬼としての自分を愛してほしい。

 

だからこそ彼を同じ目線に立つまで育てる必要があるのだ。

 

 

(生き物を殺す事の抵抗感は十分に薄れた…後は人を殺すのみね…)

 

 

常人と人殺しの明確な境界線。後はそこを越えるだけだ。

 

 

 その後照れ臭くなって今日は解散する事にした。

フレデリカは上機嫌でレオンを彼の家に返し、自宅のベッドの上で枕に顔を埋め、今日の出来事を思い出しながらはしゃぐのであった。

 

 

その後フレデリカとレオンの関係はエスカレートしていった。

 

休みに会っていちゃつくのはもちろんの事、幼稚園の中でもなんとか時間を作って彼との時間を作っていちゃついた。

 

とうとう自分の欲望を抑えきれなくなりシャワールームで裸の度の越えたいちゃつきをするようになった。

 

 

これはもうあれだ、行くところまで行くしかないわね。

 

レオンには殺しでもアッチの意味でも更に進ませてやりたい。

 

そう思ったフレデリカはレオンを遂に自宅に呼んだのであった。

 

 

 

 

 

 

今日は先生のお家に呼ばれた。

 

幼稚園やお外で遊ぶことは多かったが先生の自宅は初めてだった。

 

 自分の家で待っていると玄関からインターフォンがなった。

母親がドアを開けると玄関に居るのがフレデリカである事が分かった。

 

「おはようございます、朝早くから申し訳ございません」

「いいえ、いいんですよ!むしろありがたいわ。幼稚園が休みの日なのに面倒見てもらって」

 

「大丈夫です。私()()()()()()()()なので♪お宅のレオン君は転園してきた時からずっと仲良くやってきて、もう自分の子供の様に思っているんです!だからうちの娘ともぜひ仲良くなって欲しいんですよ!」

 

「あら、お宅にもお子さんがいらっしゃるの?」

「ええ、娘が一人、レオン君と年も近いですわ」

 

 

母親と先生が会話を始めた、自分も先生とお話ししたいのに。

 

「あら、もしかしたらうちの子のお嫁さんになるかもしれませんわね!」

「それは無いです。絶対。」

 

強い口調と笑顔だった先生の顔が能面の様になるのを見て母が一歩引くのが分かった。

 

「そ、そう?でも仲良くはなれますよね?」

「ええ、もちろん。ですがうちの子と恋人になろうなんて私の目が光ってる内はさせませんわ♪」

 

二コリとほほ笑むが目が笑っていない。

 

(過保護なんだろうか…?)

 

その後変な疑念を持った母をよそに先生の元にようやく呼ばれる。

 

 

「先生!」

「レオン君、おはよう!」

 

やっと会えた喜びから先生の体に抱き付くと彼女も僕の頭を優しく撫でてくれた。

 

「それじゃあ行きましょうか。レオン君」

「うん!」

 

彼女に促されて車に乗り込み先生の自宅に向かった。

 

車を運転する先生をそっと見やる。

 

 肩まで伸びた眩しいまでの金髪を隠す様に帽子を被り、サングラスで目元も隠した姿はミステリアスな印象を受ける。

なんでも自分の姿をなるべく隠しつつ印象を残したいという変な思考を持っているらしい。

自分だとバレたくは無いが自分の姿を皆に知ってほしい…?変わっていると思う。

 その糞ダサセーターもその一環なのかと聞いたが顔を真っ赤にして、仕事中にはしたない女だと思われない為だとか‶作業"をする時などに汚れが目立たない様に敢えて着ているのだと言っていた。敢えてね。

 

 よくよく見ると明らかにショックを受けていた気がする。

『女の子の服装を悪く言っちゃ駄目なんだゾ☆』と彼女に言われてからはふれないようにしてるが…。

 

百歩譲っても糞ダサいと思う。

 

 

それから少しして先生の住んでいる家に辿り着いた。

 

中々に広い家だ。綺麗な庭に大きな倉庫の様なものもある。

 

「広い家だね」

「ええ、とても快適よ。入って、どうぞ」

 

家の中に案内され、そこに住む彼女以外の住人に出会った。

 

「初めまして、君がレオン君だね?」

「おはようレオンくん、わたしキャサリン!よろしくね!」

 

先生の旦那さんと、一人娘のキャサリンだ。

 

 二人共とても優しくいい人という印象だった。

なんでも旦那さん曰く妻には頭が上がらないらしい。

 

まぁ如何にも気弱そうな主人とグリズリー相手でも嬉々として銃を持って挑み、刃物で平然と内臓を引きずり出しそうな先生ではそうもなろう。

 

「それじゃあ私は仕事に行ってくるよ。後を頼むね」

「ええ、行ってらっしゃいアナタ」

 

それから少しして旦那さんは出かけていった。

 

「今日一日はレオン君を預かるからキャサリンも仲良くしてね」

「はーい!」

 

先生は娘に僕の事を告げた後にこちらに来て本題について告げた。

 

 

「今から準備するからそれまで娘と遊んでてね?」

「うん、待ってる」

 

そう言うと彼女は『ヨシ!』と笑って倉庫に入っていった。

 

 

「レオンってママと凄く仲良いよね?」

「そう?仲は良いと思うけど普通じゃない?」

 

適当にボカシてみたがやはり家族が見ても明らかに態度が違うらしい。

 

「ううん、だってママは私達の前でもあんな顔しないもん」

「そうなんだ…」

「そうだよ!」

 

キャサリンに言われた事がうれしくなって笑みがこぼれそうになる。

 

自分は先生の特別なのだ。家族よりも、もっと深い。

 

それがとても嬉しかった。

 

 

 

それからしばらくキャサリンと遊んだ後に先生がやってきた。

 

「キャサリン~!ちょっとレオン君に手伝ってほしい事があるから借りるわねぇ?」

 

そう言うと僕を倉庫の中に連れて行こうとした。

 

「ママ、もしかしてレオンを地下室に連れてくの?」

「ええ、そうよ?」

 

「私やパパも入れてくれないのに?」

「お仕事に関する事だからレオンは良いの、絶対に覗いちゃだめよ?」

「む~~~っ!」

 

 

キャサリンは明らかに不満げだったが構わずに僕を倉庫まで連れて行った。

 

そこには地下室へと続く階段があった。

 

「この家はあの人のお金で建ててもらったものだけどこの地下室の設計には私しか口を出してない、秘密の場所よ」

「秘密の場所?」

 

「そう、秘密基地みたいで素敵でしょ?」

「たしかに、クールだ」

 

「女っていうのは秘密がある程美しくなるのよ。自分だけの空間を持つ事が家族で仲良くするコツでもあるわね」

 

この先が先生だけのプライベートな場所なのだ。

 

そんな所に僕を連れていってくれるのはとても嬉しい。

 

「鍵が開いたわ、どうぞ」

 

そこは変わった空間だった。

 

薬品やらガソリンやら何か分からないものやらの独特な臭い。

 

様々な工具や器具、刃物などが置いてある。

 

ただの物置かと思えばシャワーやベッドまで置いてある。

 

「この部屋に住んでるの?」

 

「まさか!あのベッドは一時的に休みたい時に使うの、シャワーは作業で汚れた体を綺麗にしなきゃならないからつけたのよ」

 

「作業ってここでは何をするの?」

 

「貴方といつもやってることよ、生き物をバラシて楽しむの。でも血塗れで戻ったら怖がられちゃうでしょ?」

 

そうか、狩りや解体か。そう言われるとこの中の物の用途も説明がつく。

 

思考に耽ってる自分をよそに先生は本題を語り始めた。

 

 

 

 

「ねぇ?レオン…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「人間を殺してみたいとは思わない?」

 

 

 

 

何とも返答に困る内容だった。どう答えればいいのか。

 

「人を殺しちゃ駄目ってママもパパも言っているよ?」

 

「そう、法律上はね?でもパパもママも法律をちゃんと守ってる?」

 

「それは…」

 

 

 僕は知っている。ママは信号をこっそり無視しているし、パパは変な葉っぱを焼いて吸っている。

それは所謂犯罪で悪いことだ。

 

「誰だって本当はこっそり法を破ってる、必要だったり欲望の為にね。それに…」

 

そう言って先生は近づいて僕の前で屈み唇にキスをした。

 

「こうやって大人の私と子供のレオンが愛し合うのは犯罪、法律違反なのよ?」

 

「そうなの?」

 

「そう、それって本当に悪い事かしら?法に違反してるだけで私はこんなにも貴方のことが好きなのに…レオンは法に反してるから嫌だっていうの…?」

 

「そんなこと…!ないよ……」

 

そう言うと彼女はニッコリとほほ笑んだ。

 

「そう、本当に信じるべきなのは法律や決まり事じゃなくて、『自分の心』よ?」

 

「そう…かな?」

 

「そう…何もあたり構わず殺せばいいという訳じゃないの。私達の‶愛"を邪魔しようとしたり、私や貴方を傷付けようとする人間には躊躇せずに戦いなさいという事よ。それが必要なら躊躇っちゃ駄目。殺さなきゃ守れないモノもこの世にはあるのよ」

 

彼女はそう語った。言い分もそうだが先生が言っているからこそ正しいという説得力を感じた。

 

 

「それじゃあもしもの時の為に練習しよっか♡」

 

そう言うと先生は奥から人形を取り出した。

 

 

 

「ジャ-ン!!グッドガイ人形~!」

『やあ、ボクはフレッド!』

 

グッドガイ人形だ。この前発売したものだ。テレビCMで見た事がある。

 

「この子を悪い奴に見立てて試してみよっか♡」

『仲良くしてね!』

 

そう言うと人形を床に置いて此方に促した。

 

「さあ、ここにある物を好きに使っていいわよ♪あのキモイ人形を殺っちゃいなさい!」

『お休みの時間かな?』

 

そこにはいろいろな武器があった。

 

バットに包丁、マチェット、斧、ハンマー。十分に凶器になりそうなものから、釘打ち機や鞭などの特殊な物もあった。

 

時おり先生が置いてある鉤爪をチラチラと見ているのが分かったが僕はウルヴァリンよりサイクロプス派なので無視する事にした。

 

「いっぱい武器があるんだね、サムライソードやシュリケンは無いの?」

 

「さ、流石にジャパニーズソードやスリケンはないわね…」

 

 

がーんだな、出鼻をくじかれた。

 

「じゃあライトセーバーは無いの?」

 

そう言うと先生はため息を吐いた。

 

「あのねぇ?これは遊びじゃなくて特訓なのよ?おもちゃじゃ人間は殺せないわ」

 

「でも、正直いきなり言われても気乗りしないよ」

 

「がーんだわ、出鼻を挫かれたわ…」

 

先生は僕の反応にガックリきていたがやがて諦めたように気持ちを切り替えていた。

 

「あ♡じゃあじゃあ!別の勉強をしましょう!」

 

「別の?」

 

一体何をするのだろうか?僕は先生の反応を伺った。

 

 

「んふふ、せっかくベッドもある事だしぃ~。そろそろ大人の愛し合い方について学びましょう♡」

 

「大人の…愛しあい方?」

 

「そう、キスは子供でもできるけどその先は大人しかできない領域があるの!だからこのグッドガイ人形君で実践してあげるわぁ♡」

『大人しくしててね?』

 

そう言うと先生は人形の口にキスをした。

 

「っ!?」

 

「今は私とこの子は恋人さんなの♡」

『キミは友達~僕のバーディ~♪』

 

その後先生は糞ダサセーターと下着を脱いでツルツルになった。

 

グッドガイ人形も同様だ。

 

ていうかグッドガイ人形の下になんかドえらいモノが付いていた。

 

なんだあのでっかいモノ…♂

 

どうやら特殊な改造をしていたらしい。

 

その後先生は人形の顔に跨った。

 

「お互いの部分を綺麗にしなくちゃね…♪」

『吐き気がするよ!』

 

グッドガイ人形が跨った先生から殴られたが本来の工程には必要ないようだ。

 

「んふふ、レオンはまだ子供だからここまで大きく固くもならないのよねぇ♡」

『しゃぶれよ』

 

 

 

 

この光景を見ていると自分の中の感情のナニカが沸き上がる気がした。

 

怒り、悔しさ、劣等感、嫉妬。それらが自分の感情を黒く染めているのが分かる。

 

それは僕と先生だけがする事だ。

 

キスも、先生の裸も、キレイキレイも。

 

全部僕だけのモノだ…!

 

 

 

「ほらぁ、よく見てレオン!これが大人の愛し合い方よおおおお!!」

『楽しいね!』

 

 

先生がグッドガイ人形に抱き付いてカクカクする様はまごうことなき変態である。

 

 

だがその姿を見た時自分の中のナニカが切れた。

 

 

「先生から…離れろぉぉぉぉぉぉっ!!」

 

 

「キャッ!?」

『グエー』

 

 

気が付けば包丁を手に取りグッドガイ人形の眉間に突き刺していた。

 

先生が離れたのを確認してグッドガイ人形についた黒光りのテカった棒を金属バットでへし折った。

 

 

『アッー!』

「この!デカいからって調子のんな!作り物がァッ!!」

 

(性欲を持て余した結果、とんでも無い事になったわね…)

 

レオンの嫉妬心が彼の良心を押しのけ破壊衝動へと昇華したのだ。このことはフレデリカにとって思わぬ収穫だった。

 

 

その後レオンは斧を頭の上まで大きく振りかぶり、グッドガイ人形のその両腕を切断した。

 

 

「この!どうだ!参ったか!」

『楽しいね!』

「ぷっ…アハハ!まだまだ足りないそうよ、レオン殺っちゃいなさい♪」

 

「舐めやがってくそったれぇ!!」

 

その後は凄惨な光景だった。

 

アイスピックや刃物でめった刺しにし。マチェットやチェーンソーで切りつけ、ハンマーで叩き潰し、ケツにツルハシを叩きこんだ。

 

 

そして…

 

 

 

『ブルスコ…ファー…』

 

「はぁ…はぁ…」

 

「レオ~ンそろそろ決めちゃいなさ~い♪」

 

フレデリカはレオンに鉤爪を投げた。彼の手に合う専用のものだ。

 

お風呂でのやり取りもこれを使う為の布石に過ぎない。

 

これは自論だが人を殺す感覚はその手で直接味わうものなのである。

 

「私とお揃いの鉤爪よ!それでトドメを刺しちゃいなさい!」

 

彼はその鉤爪を右手にはめ込み、グッドガイ人形の髪を掴み頭を持ち上げた。

 

 酷い面だ。髪は半分以上引き抜かれ、目元は抉り取られ、頬はドリルで開けた穴だらけ、口の歯はボロボロだ。

 

 

レオンは右手を横に大きく振りかぶり――――

 

 

 

―――――人形の首を切り落とした。

 

 

 

 

 

 

『モルスァ』

 

「ざまぁみろこの野郎…」

 

(やったわ。)

 

 

 

 レオンは立派に成し遂げたと言えよう。惚れ惚れする程の殺人術だ。

天性の才能だ。彼がこのまま育てば世界で最も恐ろしい殺人鬼になる事だろう。

 

「よくできたわね。偉いわレオン」

 

「先生…」

 

フレデリカはレオンの鉤爪の付いた手を取り頬ずりをする。

 

「今の感じを大事にしなさい。貴方は優秀になるわよ。私と一緒に居るのに相応しい位に」

 

「本当!」

「ホントよ、ホント」

 

レオンが顔を輝かせるのを見て微笑ましくなる。

 

これでいい。

 

大人の愛し合う行為はまだできないがそれよりも深いモノで二人は繋がっている。

 

彼はもう殺しを問題なくこなせるだろう。

 

後は()()を調達して実践するのみだ。

 

 

フレデリカは楽観的に、この後の未来を予想しながらシャワーでレオンと復習していたのだった。

 

 

だが彼女の想定は思わぬ所から音を立てて崩れて行くのだった。

 

 

 

 

 

 

 

「ママ…変だよ…地下室で何をやっているの…?」

 

 

娘のキャサリンは二人の様子を扉の裏から見ていた。

 

明らかにあの二人のやっている事は異常だ。

 

(パパに伝えなきゃ…!)

 

彼女は地下室の秘密を知ってしまった。見てしまった。

 

そしてその中身が母親の真実の中の氷山の一角でしかない事を幼い彼女はまだ知らなかった…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 レオンは優秀で純粋な子だ。

だから悪意を学ばせれば彼はそれをいとも容易く吸収する。

このままいけば最悪の悪人になれる。

 

正義という光あるモノに歪まされさえしなければ……

 

フレデリカは気付いていなかった。

 

自分のような邪悪な存在が身近に平然と過ごしているのなら。

 

 

 

 

 

 

 

「やぁ、ナンシーだったっけ?そんな所で突っ立って何をしてるんだい?」

 

「……レオン、くん…?」

 

 

光り差す聖なる存在もまた身近に居るのだという事を…

 

 

 

 




未完成の作品をぶっ壊されるのはお前の方だよクルーガー!


あぁ^~早くフレディぶっころころしたいのに無駄なパート入れでぐだっちまったぜ

一度殺人鬼になったら一般人には戻れないっていうのはティファニー辺りがピッタリはまりますね。

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