ヤンデレのヒロインに死ぬほど愛されて眠れない13日の金曜日の悪夢   作:なのは3931

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一時期ランキング2位とかなっててビックリ。実質世界1位です。
ホラー美少女の記事の閲覧数が上がっててフィギュア紹介する人が不思議がってたけどもしや皆見に行ったのか…?


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夢を観ていた。

 

砂場で子供が楽しく遊んでいる。

 

間違える筈の無い。愛する我が子だ。

 

自分が迎えに来た事を伝える為にその名を呼ぶ。

 

【レオーン!迎えに来たわよー!こっちにいらっしゃーい!】

 

その声を聴いて直ぐに黒髪の少年が振り向き駆け寄ってくる。

 

 

ああ、なんて愛しい子なんだろう。

 

彼の為なら何でもできる。この命だって投げ捨ててもいい。

 

ふと彼の後ろに立つ女性の姿に気付いた。

 

地元でも評判の高い先生だ。

 

【お仕事お疲れ様です。レオンくんはとてもいい子にしていましたよ】

 

【本当ですか?ウチの子は活発だから何か迷惑かけて無いか心配だったんですけど…】

 

本当に、活発な我が子も彼女の前では借りてきた猫のようだ。

 

 

 

【ええ、本当に――――

 

 

 

 

―――――可愛らしい子ですわ♡】

 

 

 

 

そう言うと彼女は自分の右手を頬に添え、恍惚な表情を見せた。

 

あの時、私が気付いていればあの子は―――

 

 

 

 

 

 

 

フレデリカ・クルーガーの逮捕から、連続行方不明事件への関与を裏付ける証拠はスムーズに集まっていった。

 

彼女の娘キャサリンと一際親交の深かったレオンの証言、地下室で見つかった事件の残虐さを物語る証拠の数々が彼女の犯行を証明しており、被害を受けた子供は数十人もの数に及んでいる事が分かった。

 

この恐ろしい事件はスプリングウッド中を震撼させ、この恐ろしい殺人鬼を有罪にする事を求めた。

 

実際にフレデリカ・クルーガーの有罪判決を皆が確信していた。

 

だが事態は思いもよらない結果を迎える。

 

 

「警察は令状の無いまま逮捕に踏み切っており、逮捕は不当な物と判断します」

 

「精神鑑定の結果当時の被告は精神に問題があり、責任能力が無いと判断されます」

 

「証拠はいずれも被告人を事件の直接的な犯人と結びつけるには不十分であると…」

 

「事件の参考人は子供であり物事の判断を正確に出来ているとは言えず…」

 

 

雲行きが怪しかった。裁判官も、弁護士もまるで彼女の味方であるかのような発言を繰り返していた。

 

傍聴席は被害者の遺族で埋まっており、彼等がざわつくのが感じ取れた。

 

 

「静粛に!以上の事から被告を証拠不十分により…無罪とする」

 

 

 

裁判長の驚きの発言により裁判所は騒然と化した。

 

被害者の遺族は泣き叫ぶ者、異議を申し立て怒鳴り込む者、被告や裁判官に掴みかかろうとして取り押さえられる者などでごった返した。

 

その中心で、口元を上げるフレデリカの余裕の表情があった。

 

 

 

 

 

逮捕直前、誰かと待ち合わせる女性の姿があった。

 

フレデリカである。

 

彼女は普段の姿からは想像もできないファッションをしていた。

 

普段は露出を抑えた糞ダサセーターにデニム、動きやすいスニーカーなど女らしさを隠した格好だった。

 

 だが今の彼女は胸元を大きく開いたVネックの服を着て、下はお尻が見えるのでは無いかと言わんばかりのホットパンツを穿き、足元は黒のブーツを履いた全体的に扇情的な姿が目立つファッションであった。

 今の姿を見ても誰も普段の彼女を連想する事は出来ないだろう。

 

彼女のその美貌と経産婦とは思えない魅力的なスタイルを表に出したまま、車に乗った男性と接触した。

 

そこに居たのは彼女に無罪判決を言い渡した裁判長その人であった。

 

彼女は知っている。自分が途方もなく魅力的な存在であると。

 

フレデリカはその美貌を遺憾無く発揮し利用する狡猾さを持っていた。

 

身体を押し当て、普段子供達をいたぶっていた右手で男の胸元から下腹部まで軽く撫でるだけで、この世の男共を自分に服従させる事が出来たのだ。

 

裁判官、弁護士、精神科医、警察内部まであらゆる人間にまで手が及んでおり、自分が捕まってからも彼等は自分の手足の様に動いてくれた。

 

子供を持たない独身男性程その傾向は強かった。

モテない男には彼女の毒牙を耐える事が出来なかったのであろう。

 

逮捕される事を恐れた彼女の対策はとっくの昔に出来ていたのである。

 

 

 

 

「あのアバズレめ、裁判官共を篭絡しやがったな」

 

判決に納得のいかない遺族達が集まって愚痴を溢していた。

 

「あいつが犯人だって事は皆分かってる!なんで有罪にしない!?」

 

「色目なんか使いやがって!そんなんでうちの子を殺した罪が無かった事にされてたまるか!」

 

全体が怒りに震える中、ドナルド・トンプソンは一人の女性に申し訳なさそうに語りかけた。

 

 

「すまない、俺が先走って逮捕しようとしなければあんなことには…」

 

「自分の子供が傷付けられたんですもの、冷静になれなくたって当然よ…」

 

「だが、君は一番許せない筈だ、奴にレオン君を辱められたのを知ったんだからな…」

 

「まさかあの子があんな目にあってたなんて…母親失格だわ…!?」

 

女性の名はグヴェンと言いレオンの里親になった女性だった。

 

「どうして気付かなかったのかしら!?毎日送り向かいしていた筈なのに!気付いていればあの子は!!」

 

「あの女の正体に気付かなかったのは皆同じだ。皆が悔やんで、あの女に怒っている」

 

ドナルドはグヴェンを落ち着かせた。そして言葉を続けた。

 

 

「あの女を追い詰める方法はまだある…!」

 

そう言うと彼はチラリと、車の上に乗った男を見た。

 

 

「皆聞いてくれ!!あのクソったれの司法はあの女を裁かなかった!!」

 

 

男は大声で叫び、皆の注目を集め、そして言葉を続けた。

 

「皆はそれでいいのか!?あの女を野放しにして!!」

 

「いいわけない!!」

「ショタコン女を許すな!!」

 

周りの遺族も彼の言葉にヒートアップしていく。

 

「なら行動しよう!司法があの女を裁かないなら、俺達がアイツを裁くんだ!!」

 

「皆で武器を持ってあの女に復讐するんだ!奴が釈放された事はむしろチャンスだ!俺達であの女をぶっ殺すんだ!!」

 

男の言葉に周囲の人間はざわついた。

 

殺す。

 

それはあの女と同じ事をするという事だ。

 

「俺には息子が居た!あの子は俺の人生の全てだった!息子の命を奪われた借りを返す為なら俺のこの後の人生全てがムショで終わったってかまわない!我が子の未来を奪ったあの女の未来を奪ってやるんだ!!」

 

「そうだ!俺も戦うぞ!!」

「あの女を殺せ!!」

 

皆が男の言葉に同町し始め集まったのを見てドナルドが動いた。

 

 

「お前ら、聞け!」

 

 復讐に湧きだった遺族が静まりかえった。

ドナルドは警官であり、目の前で犯罪予告をかましているのだから逮捕される恐れもあったからだ。

 

なによりその手に握られたショットガンが彼に反抗する勢いを奪っていた。

 

 

「俺は警察だ。悪事を働く人間をしょっぴく立場にある。…お前らが犯罪を犯そうとするならば俺は止めなければならない」

 

ドナルドの言葉に車の上の男を始め皆が息を呑むのを感じた。

 

「だが警官の本分は悪人の蛮行を止める事だ。あの女は()()()()人を殺す。警官をやってきたから分かる。アイツは子供を殺さなければ生きられない存在だ。どんな手を使ってでも止めなきゃならん」

 

ドナルドは男の胸にショットガンを投げ渡し、パトカーのトランクを開けた。

 

そこには銃や鈍器、刃物といった警官の武器や押収品が沢山入っていた。

 

「何より俺も警官の前に人の親だ。娘を傷付けられて黙っちゃおれん」

 

 

彼は拳銃を手に持ち、叫んだ。

 

 

「警察はあの女に対する報復には目を瞑る!!二度とこのエルム街で子供を殺せないようにしてやれ!!」

 

警官がその職務を放棄し、殺人を全面的に認めた。

 

これにより迷いがあった者達も武器を持ちフレデリカ・クルーガーの殺害に一致団結した。

 

 

『キル・ザ・フレディ』をスローガンに掲げ皆がフレディの家へと向かった。

 

 

 

フレデリカは荷造りの用意をしていた。

 

大人共の様子がおかしい。何かを企んでいる。

 

自分は殺しのプロだ。殺意には人一倍敏感なのだ。

 

車や人が同じ場所を目指していれば自分の事について話しに集まっていると分かる。

 

今日中に姿を消さなければ。

 

最低限の物と金、そして逮捕される前に唯一隠した我が身の一部といえる鉤爪を持った。

 

 

(必要な物は揃った、後は一番大切なモノが一つ)

 

キャサリンが施設に預けられた為、彼女に必要な者はたった一人だった。

 

 

車でいつもの道を進む。

 

目的地に着いた時、車が無いのを確認して扉の窓を叩き割った。

 

その後は一目散に階段を駆け上がり扉を開け、そこに居た少年の口を薬品のかかったハンカチで覆った。

 

少年はなす術もなく昏倒し、フレデリカは彼を一しきり撫でると自らの肩に乗せて車に連れ込んだ。

 

 

「パーペキね♪」

 

流れるような作業。子供をいたぶるのを我慢したフレデリカの犯行はものの一分程度で達成しており誰にも感づかれていない筈だった。

 

 

「……!?レオンくんが!パパに連絡しなきゃ!?」

 

隣に住む少女ナンシーはその犯行を偶然にも見ていた。

 

ナンシーだ。

 

またナンシーである…。

 

 

 

 

「クソッ!出し抜かれた!?」

 

フレデリカの自宅は既にもぬけの殻であり大人たちのイライラが募った。

 

そんな中ドナルドのパトカーに無線連絡が入った。

 

「何だ?こっちはフレディの家がもぬけの殻であの女を探すので忙しいんだぞ?」

 

 

『こっちもその件についてだ。あのアマ、グヴェンさんのお子さんを誘拐して逃げたらしい!ナンシーが教えてくれた』

 

「なんだと!?あのビッチめ!!最後にやりやがった!?」

 

『ホシは閉鎖された工場の方に行ったらしい。奴の旦那が働いていた所だ』

 

「分かった、すぐ向かう!」

 

ドナルドは無線を切ると皆に叫んだ。

 

 

「フレディは廃工場に居る!!レオンを攫って隠れているらしい!!」

 

「なんですって!?」

 

「皆行くぞ!?これ以上アイツに子供を殺させるな!!」

 

パトカーのサイレンを点灯させ、車を発進した。

 

皆がその後ろを追従する形で車の行列が出来た。

 

 

 

 

 

 

 

「う、ううん…?」

 

レオンは薄暗い空間で目が覚めた。

 

機械の作業音が鳴り響き、ボイラーの蒸気の音が吹き鳴っている。

 

立ち込める熱気は不快感を露わにさせた。

 

腕は縄で固く縛られており自由にもがけない。

 

「あら♪目覚めたかしら?」

 

「先生……」

 

そこに居たのは自分の先生だったフレデリカ・クルーガーであった。

 

 

「もう先生じゃなくなったんだけどね」

 

「…なんで僕を攫ったの?」

 

「…一緒に逃げる為よ」

 

(一緒に、逃げる…?)

 

彼女が何故逃げようとするのか分からない。

 

「どういうこと?」

 

「私は裁判で見事にも無罪を勝ち得た。私は世間一般では悪い事をしてないと証明されたのよ。なのにこの町の大人共ときたら…今度は自分達が法を破って私を殺しに来ようとしているわ!」

 

 

大人たちが…?まさかそんな事をするなんて…。

 

 

「だから私はこの町から逃げる事にしたの。お願いレオン、私と一緒に来て!」

 

「なんで、僕なの?」

 

「貴方は私の全てよ!キャサリンもいなくなった!私には貴方しかいない!貴方が傍に居てくれるなら人殺しだって止めれる!だからお願い!!一緒に逃げましょう!私は今も貴方を愛しているわ!!」

 

フレデリカの悲痛な訴えはほとんど真実の様に思えた。

 

 

「僕も先生が好きだよ、大好きだ。…でも一緒には行けない。ママやパパを置いていけないよ」

 

「……」

 

「大体いきなり攫うなんて更生してないって言ってるようなものじゃないか!家のドアまで壊して!人殺しはしないなんて言葉信じられ無いよ!」

 

 

「……しゅん」

 

 

幼稚園児に説教される成人女性(元先生)の姿がそこにあった。

 

 

「ええ、そうね。やっぱり受け入れてはくれないのね。…でもいいわ。無理やりにでも貴方を連れていくわ。私が貴方を大人に育ててあげる♡理想の相手にならないのならせめて愛玩動物といて私の元に置いておくわ」

 

「お断り……だねッ!!」

 

「ッ!?」

 

 

レオンは縄を壊れた機械の尖がった亀裂で切り、手元にあったスパナを投げた。

 

フレデリカはかろうじて右手の手袋部分で自身の顔に飛んでくるそれを防いだ。

 

「…やるわね、流石私が見込んだ子♪トロい奴なら当たってたわ♪」

 

フレデリカが手を退けた時には既にレオンは逃げ出した後だった。

 

 

「捕まえたら手足を捥ぐ事も視野に入れなきゃならないかしら…?」

 

(体の全てが美しいあの子の体を削るのは気が引けるけど…あ、でもダルマにしたら赤ちゃんみたいで可愛いかも…♡)

 

と、自分が脱線している間にレオンを見失いかけている事に気付き慌てて後を追いかけた。

 

 

 

 

「待ちなさ~い♪」

 

「くっ!?もう来た!?」

 

やはり大人と子供ではコンパス(歩幅)に違いがあり過ぎる。

 

レオンは機材や荷物を載せるパレットを道に倒し時間稼ぎをした。

 

「ああっ!?もうじれったいわねぇ!!」

 

フレデリカはブーツでそれを蹴り飛ばして道を作って進んだ。

足を上げてパレットを割る際に見えたホットパンツの合間に目を奪われそうになるが、止まってしまったらゲームオーバーである。

 

レオンは進んだ先の非常扉を閉めた。

 

「非常扉なら鍵なんてかけれないっ!ってキャアンッ!?」

 

フレデリカがそう判断しドアを開けた瞬間、鉄パイプの殴打が彼女を襲った。

 

咄嗟に右手の鉤爪で防いで事なきをえた。

 

「ふっふっふっ、惜しかったわねぇ♪でももう終わりよっ♡」

 

「ッ!?…ていッ!」

 

レオンは攻撃が防がれた瞬間扉を蹴り上げ、フレデリカを扉に挟みこんだ。

 

「アイタァ!?」

 

咄嗟の連撃に対応できず腕を挟まれたフレデリカは痛みで悶絶した。

 

 

その隙にレオンは距離を取り逃げ出した…が

 

 

 

進んだ先は何も障害物が何も無く、そのまま進んだら追いつかれる事が必然だった。

 

「見つけたわよぉ♪オイタをする子はお仕置きしてやるんだから~!」

 

フレデリカの姿が視界に映る、どうする!?辺りを見回したその時、熱く熱を吹かすボイラーの配管を見た。

 

レオンはフレデリカの方へ逆走し勢いをつける。

 

「あら♡諦めてくれたのかしら?」

 

フレデリカは一瞬レオンの真意に気付かなかったが目線の先のボイラーの配管を見て気付いた。

 

「ちょ!?まさか飛ぶ気!?」

 

配管の丁度レオンの首元くらいに、子供一人がギリギリ入れる程の隙間が空いていた。

 

ボイラーを稼働していたのは演出の為もあるがこのような隙間を通れない様に熱する為であったのだが…。

 

「ハッッ!!」

 

レオンは失敗したら捕まるどころか、当たった所を火傷、最悪皮膚が鉄にくっつき焼け死ぬ恐れのある道を平然とチョイスした。

 

そして見事にボイラーの隙間を抜け大きく引き剥がす事が出来た。

 

もしも彼の行動に迷いがあったら、ボイラーの隙間に僅かばかり届かずその体をバーベキューにしていただろう。

 

 

「あぁん、もうっ!?敵に回したら本当に厄介だわ!」

 

 

フレデリカは改めて自分の意中の少年のポテンシャルに驚愕した。

 

(あの子大人になったら無数のレーザー光線をその身一つで全部回避しそうね…)

 

 

「大分距離を取った…これなら!」

 

パイプの隙間を抜けた道を突き進む。

 

まだまだ彼女の姿は見えない。

 

これは撒けるんじゃないか?

 

そう思ったが曲がり角を抜けた先を見た時その考えは消失した。

 

 

 

(行き止まりッ!?)

 

 

通路はそこで終わりだった。

 

隙間を探して最奥まで進むが、ここは奥の奥であり他に通ずる道など見当たらなかった。

 

(逃げ切れなかった…?違う、逃がされてる様に見えて、最初からこの場所にフレデリカから誘導されたんだ!?)

 

 

ギ…ギギギ…

 

「…ッ!?」

 

 

金属が擦れる音がする。

 

間違いなくフレデリカの鉤爪の音だ。

 

 

ガリ…ギギギギギギギィ…

 

 

「フ~ン♪フンフンフンフフフン♪」

 

フレデリカは鼻歌を歌いながら壁に爪を擦りつけ、自分が近づいていることを逃げる獲物に聞かせ恐怖を募らせていた。

 

 

場数が違う。

 

彼女は同じような追いかけっこを何度も繰り返してきた。

 

そして生存者が居なかったという事は一度たりとも逃がした事が無いという事だ。

 

 

ギギギ…、ギ……

 

爪が壁を擦る音が止んだ…?

 

 

 

 

 

「見ぃつけた♡」

 

 

 

その時、フレデリカが壁の向こうから姿を現した。

 

「手こずらせてくれたわねぇ?僕ちゃん?でももうチェックメイトの段階よぉ♡」

 

仁王立ちをし、ツメをシャキシャキと鳴らす彼女は最早勝利を確信した様子だ。

 

 

 

 

だがその時レオンは気付いた…。彼女のホットパンツと生足の隙間に見えるイチモt、…一抹の希望を。

 

 

 

 

(あれは、排気口だ…!)

 

そう、完全な密室空間を作る事などできない。

 

進む時にはその姿は見えなかったが、振り向けばそこに道はあったのだ!

 

 

「なぁに?私の体をジロジロ見ちゃってぇ?まぁいつもはこんな恰好しないんだけどぉ、愛する彼との駆け落ちだしぃ?攻めた格好も良いんじゃないかって思ったのよぉ♡」

 

「……」

 

「ノーコメントォ?」

 

「…いいや、セクシーだとっても。えっちだ、凄く」

 

「ふふん。ありがとぉ♡…それじゃあいくらでも見せてあげるから、私の元に来なさぁい?」

 

「鬼ごっこなら最後まで勤めを果たそうよ」

 

「仕方ないわねぇ?捕まえてあげるわぁ♪」

 

フレデリカが一歩ずつ近づいて来る。

 

一歩、また一歩。

 

そして目の前にやって来た。

 

 

「それじゃあこれで…ゲームオーバーよッ!!」

 

 

フレデリカが此方に手を伸ばす。

 

 

(今だ!)

 

 

「貴女がな!!」

 

「?!キャアッ!?」

 

 

レオンが叫んだその時フレデリカの顔面に唐突に蒸気が吹き出した。

 

レオンがバルブを捻りパイプから蒸気を噴出させたのだ。

 

そしてそれは身長差がある為レオンには当たらずフレデリカの上半身だけを焼きだした。

 

 

「ギャアアアアアアアアッ!?!?」

 

 

高熱の蒸気でフレデリカが身をもがかせている内にレオンは排気口の取っ手を開けて外に逃げ出す事に成功した。

 

「待ちなさあああああい!!レオオオオォンッ!!」

 

 

逃げるレオンに対して敗北したフレデリカは呻き声をあげる事しかできなかった。

 

 

外に出たレオンが見たのはサイレンを鳴らしながら近づくパトカーの姿だった。

 

 

「お~い!?」

 

「レオン!?無事だったか!!アイツは!?」

 

自分の姿を見せると中から警官が姿を現した。

 

たしかナンシーの父親である。

 

 

「フレデリカなら中に居るよ!」

 

「中に居るだと?皆!奴は中に居るぞ!!」

 

「何!?よし皆、武器を持て!」

「ぶっ殺してやるぞ糞が!」

「フレディを殺せ!」

 

 

警官の言葉で皆がいきり立ち銃や刃物を取り出した。

 

「ね、ねぇ?何してるの?」

 

「もう大丈夫だから、子供は下がっていろ。ここからは大人の仕事だ」

 

 

オカシイ、なにか良くない事がおきようとしている。レオンはそんな気がした。

 

 

 

 

 

(マズい、あいつ等…皆銃を持ってるじゃない!?)

 

 

遺族の殆どが武装しており鉢合わせたら最後、自分の命は無いだろう。

 

慌ててフレデリカは出入口を全て封鎖しに回った。

 

 

「クソ、ドアを閉めやがった!」

「回り込め!」

 

「ああ、駄目だ全部閉められたぞ!?」

「撃て、撃て!」

 

小五月蠅い銃声や殴打する音が絶えまなく響くがこれで一安心だ。

 

 

「おい、何をやってる?」

 

「あの女入り口を閉じやがった!」

 

そうこうしてたら警官が姿を現した。私を捕まえたドナルド・トンプソンだ。

 

「自分から逃げ道を無くしてくれたなら丁度いい、入り口を全て見張れ!」

 

「そうだ!車からガソリンを持って来い!!ここに撒いてアイツを焼き殺すんだ!!」

 

「そうだ!今から持ってくる!」

 

(ヤバい…!このままじゃ殺される…!?)

 

フレデリカは自身が絶体絶命である事を理解した。

 

 

「ねぇ!レオン!?先生を助けて!ねぇ!?」

 

「皆どうしちゃったの?可笑しいよ!どうして殺そうとするのさ!?」

 

「あの女を生かして置いたらまた人が殺される」

 

「もう誰も殺せないよ!チェックメイトだ!勝負はついたよ!簡単に捕まえられる!」

 

「逮捕しても有罪に出来ないんじゃ意味が無い。こうするしかないんだよ!」

 

「違う、違うッ!!殺さない方法なんて幾らでもある!!本当はあんた達が殺したいだけだ!!」

 

 

レオンの言葉に皆がたじろぐ。

そう、なにも殺さなくてもいい、自分達で監禁してもいいしダルマにしてしまえばもう殺しは出来ない。

皆怒りのあまり殺すこと以外の選択肢を取らないのだ。

 

 

「そうよ殺さないでくれたら何だってするわ!?貴方達私をいやらしい目で見てたでしょう?許してくれたら毎日好きなだけ奉仕するわ!?いい条件でしょう!?」

 

「ふざけんなクソビッチ!!」

 

「やっぱ殺そうぜコイツ!!」

 

駄目だ、このままでは先生が殺されてしまう。

その時、母親のグヴェンの姿が見えた。

 

 

「ッ!?母さん!!お願い皆を止めてよ!こんなの絶対おかしいよ!!」

 

「…っ!レオン…!?」

 

母さんならきっと聞いてくれる。きっと皆を止めてくれる。

 

「怒りに任せて殺すなんて駄目だ!それじゃあ皆が憎んでいる殺人鬼と同じだよ!」

 

「グヴェン、耳を貸すな!」

 

「レオン…!」

 

「母さん!!」

 

「思い出せ!この子を里子にした原因はなんだ?お前の本当の息子を殺したのは誰だ?」

 

 

「ッ!?」

 

 

 

 

 

【お母さぁ~ん!】

 

愛しい我が子を思い出す。

 

黒髪で可愛らしい愛しの我が子。

 

あどけない表情で向かってくる我が子を抱きしめる。

 

私がお腹を痛めて産んだ最愛の子。

 

この子の為なら何だって出来る。そう思った。

 

 

【本当に、可愛らしいお子さんですわ!】

 

この子の幼稚園の先生が話かける。

 

 

【ええ、私の自慢の息子なんです!】

 

そう言って、息子と手を繋ぎ、車に乗った。

 

一日で最も幸せな時間。私はそう思った。

 

 

自分達を見続ける邪悪な視線に気づかずに…

 

 

【ええ、なんて可愛いんでしょう…本当に――――】

 

 

 

 

 

 

【殺しちゃいたいくらい♡】

 

 

 

 

【レオ~ン?雨激しくなってきたからお家の中に入りなさ~い!】

 

外で雨合羽を着てはしゃぐ息子に叫ぶ。

 

新しくプレゼントした合羽、パラソル、長靴。

 

それらを身に着けた息子は元気に外に飛び出して行った。

 

 

【レオン?聞こえないの~?雨で聞こえないのかしら?】

 

 

そう思い傘を持って外に出た私が見たのは恐ろしく残酷な光景だった。

 

 

【レオン?…ッレオン!?嘘…嫌ああああああっ!?】

 

 

そこに居たのは、刃物で全身をズタズタに切られ、冷たくなった我が子の姿だった。

 

 

 

【ッチ…!死体を処理できなかったわ…!】

 

初めての殺人、その興奮に気を取られ証拠の隠滅にまで手が回らなかった。

 

【次からは上手く殺らないと…もっと沢山の子を殺す為に…】

 

フレデリカは雨で右手に着いた血を流しながらそう誓った。

 

 

 

 

【落ち着いて、君は悪くないよ…】

 

【いいえ、私が目を離してさえ居なければ…】

 

 

子供用の小さな棺。ここに入るのはどう考えても早すぎる。

 

 

【本当に、災難でしたわね…】

 

【先生…。】

 

【彼は私のクラスでも一際輝く存在でした…。それがこんな事になるだなんて…!】

 

フレデリカが感情の爆発に耐え切れず口を右手で覆い、顔を逸らす。

 

【本当に…ウッ…犯人の事を許せませんわ…幼稚園の生徒は皆我が子の様に思っていたのに…ウウッ!】

 

【息子の為に、ありがとうございます…!】

 

【絶対に、これ以上うちの子供達を傷付けさせませんわ…ウッ!バダム幼稚園の子たちは必ず守ります…!】

 

【そう言っていただけると息子も少しは浮かばれます。では…】

 

レオンの葬式で彼女は言った。もう二度とこんな目に子供達を合わせないと。

 

 

 

 

 

【ウッ、ウウッ、……ウックク!ア~ッハッハッハッ!!ありがとうですって!殺した本人に向かってンフフ!バッカみたい!!】

 

 

それが嘘だったと気付いていれば…。

 

 

 

 

 

【養子ですって?私の子供はあの子だけよ!】

 

【いい加減前を向くんだ!レオンもそう思ってる!】

 

【そんなわけないわよ!】

 

【あるさ!あの子は君の事を思える優しい子だった!あの子の為にも前を向いて生きるんだ!殺人鬼に屈しちゃいけない!】

 

【そう、そうね…分かったわ。養子縁組を受けるわ…】

 

私はようやく前を向いて、そしてあの子に出会った。

 

 

 

何故か印象に残った金髪の可愛らしい少年。言われなければ男の子と気付かない者もいるだろう。

 

【あの子は?物静かな子ね?】

 

【ああ、あの子。彼は、あの、訳ありの子なの…その、家族が殺されて引き取られたのよ…】

 

【そう、なの…。……私と同じね…名前はなんていうの?】

 

【レオンという名です】

 

【レオン!?】

 

只の偶然、私にはそう思えなかった。

 

 

 

【決めたわ。私あの子を養子にするわ…!】

 

【…分かった】

 

 

 

 

【レオンくん、私が今日から貴方のママよ。よろしく】

 

【…よろしくお願いします】

 

彼は無垢で純粋な子供だった。

 

せめてこの子には世界の残酷な部分を知ってほしくないと思った。

 

 

 

 

 

【この子をよろしくお願いしますね、先生】

 

大切な新しい我が子。

 

その子から離れるのは怖かったが、息子の為に泣いてくれた、子供たちを守ると誓った先生を信じて、レオンをバダム幼稚園へ再び預けた。

 

 

 

 

【ええ、レオンの事は私に任せてください…!】

 

彼女はそう答え、あの時の様にほほ笑んだ。

 

全て、全て嘘だった。あの女は私達を騙していた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「――――母さん?」

 

 

「ッ!?レオン…?」

 

 

「決断しろグウェン!あの子の仇を取るんだ!」

 

夫が即席の火炎瓶を差し出す。

 

 

「ええ、そうね。ごめんなさいレオン。貴方の為なら何だってできるってそう言ったのに…」

 

 

レオンはそんな事を望んでいない。

 

 

あの子はそんな事を望む様な子供じゃない。

 

 

 

 

 

 

 

「でも…あの女だけは許しはしない……!!」

 

 

「ッ?!母さん!!」

 

「御免なさい()()()。母さんを許して…」

 

 

 

 

そう言ってグヴェンは火炎瓶を手に取り、工場の窓へと放り投げた。

 

 

 

「なんてことを…ッ!?」

 

 

 

火炎瓶は工場のガラスを突き破り、フレデリカの体を燃やした。

 

 

「ぎゃあああああっ!?あつっ、アツイィィィィッ!?」

 

 

フレデリカの絶叫が響き渡る。

 

 

「誰か、助けてェェェェェェ!?レオン!?レオーンッ!?」

 

燃え広がるセーターを右腕で引き裂きながらレオンに助けを求める。

 

彼女にはもうそれしか出来る事が無かった。

 

「先生!?センセェェェェェェェッ!?」

 

「行くなっ!君も死ぬぞ!?」

 

炎は入り口にかけたガソリンに引火し、もはや消す事も出す事も出来ない状態と化していた。

 

「ざまぁみろぉ!」

「いい気味だ!」

「死ね、苦しんで死ねぇ!!」

 

遺族達の恨みのこもった言葉を吐く姿を見て、レオンは狂気を感じた。

 

 

今までフレデリカから殺人の訓練を受けてきた。

 

だが本当に人を殺した事は一度も無いしその死を見た事が無かった。

 

あのフレデリカでさえもレオンに人を殺す瞬間を見せた事は無かった。

 

歪んでいる。

 

火を着けて苦しむ彼女を見てあざ笑う彼等の顔を見て、そう思った。

 

なんて恐ろしい顔をするのだろうか。

 

 

「レオーン…!?レオ…ン…」

 

「先生!」

 

「おい、危ないぞ!?」

 

壊れた様に自分の名を呼び続けるフレデリカの声に居ても立っても居られず飛び出した。

 

 

「先生!どこなの?先生!」

 

レオンはドアの前で彼女を呼び続けた。その時。

 

 

「ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ッ゛!?」

 

「うわぁ!?」

 

フレデリカは扉を開けて目の前に飛び出してきた。

 

恐ろしい姿だった。

 

服は焼け落ちたのか自分で裂いたのか殆ど全裸の状態だった。

 

だが最早その美しい容姿も見る影もなく、全身は焼け爛れ、美しかった金髪も全て焼け落ち、まるで焼けたゴブリンの様な顔になっていた。

 

 

「許さないわ、貴方達…。必ず復讐してやるぅ…!」

 

「危ないぞ!寄るなっ…!うっ!?」

 

ドナルドがレオンを庇う様に立ち塞がると彼女のその姿に戦慄した。

 

 

「この私を、殺した程度で終わらせたと思うなよ…!これは始まりなのよ!私は先程悪魔と契約したわ…!お前らの子供を、全員!!お前らの目の前で醜く殺してやるぅ…!一人も逃しはしない、泣き叫びながら死ぬ我が子を見ながら後悔して死ねェッ!アッハッハッ、ア~ッハッハッハッ!!」

 

 

右手の爪を指しながらそう言うと満足したかのように前に倒れた。

 

 

「先生!?」

 

「ああ、レオン。貴方をあんな醜い大人になんかさせないわ…。貴方がもう少し大きくなったら必ず迎えに行く…!そして若く美しい姿のまま私と永遠に生きるの…。だからそれまで待っててね…?」

 

「何を言ってるの?!訳が分からないよ!?」

 

「ああ、レオン。愛してるわ……」

 

そう言って、フレデリカは倒れ、そのまま動かなくなった。

 

 

「先生!?センセェェェェェェェッ!!」

 

レオンがいくら呼んでも、返事は返ってこなかった。

 

 

 

「レオン!?大丈夫なの!?」

 

母親のグヴェンを始め、レオンの父、ナンシーの母マージなども集まってきた。

 

 

「…何が殺人鬼だ、人殺しはお前たちじゃないか…」

 

 

フレデリカは殺人鬼だったかもしれない。

 

だが彼女を殺したのは他でも無い彼等だ。

 

 

「必要の無い殺しをして、満足して!悪魔はお前たちの方じゃないかァッ!?」

 

 

少年の悲痛な叫びが焼け跡で木霊した。

 

 

フレデリカは殺人鬼であったが間違いなく彼にとって最愛の人であった。

 

奇しくも彼にとって命の大切さを教える要因になった存在は、この世で最悪な殺人鬼であったのだ。

 

彼の最愛の人を殺し、人の人生を奪う邪悪な殺意を見せたのはあろうことか自分の親たちであった。

 

こんな皮肉があるだろうか?

 

 

 

 

彼はこの先、誰かを助ける為にこの先命を懸けるようになるだろう。

 

誰かの命を奪おうとする悪意と戦うだろう。

 

 

最悪の殺人鬼フレデリカ・クルーガーは、

最善の英雄を死をもって生み出した。

 

 

彼にはこの先どれ程の不幸が待ち受けているのだろうか?

 

それはまだ分からない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「これが例の殺人鬼の証拠品か?」

 

「趣味悪ぃな、股間にディルドー付けてやがる」

 

『君は死ぬ~まで、僕のバディ~!』

 

「うおっ!?喋った!」

 

「おいおい、気味悪ぃな。」

 

 

『アメリカの人形は…キモ過ぎて萌えなあああああああああいっ!!』

 

「おい、丁度CMやってんぞ」

 

「喧嘩売ってんじゃねーか」

 

『グッドガイ人形に加えて、新たなトモダチ!』

 

『グッドガール人形!これぞ、メイドインジャパン!!』

 

 

「おいおい、今度は女の子売り出したぞ」

 

「日本人はイッちゃってるよ。あいつら未来に生きてんな」

 

 

『どれだけ~愛してるか~分からないよね~』

 

 

「おうおうこんな可愛い子に愛されたらたまんねぇな」

 

「お前ロリコンかよ…?でもかなり可愛いよな。絶対買った後股に穴開けられて突っ込まれるわ」

 

 

まるで本物の美少女のような少女が歌う映像を眺めながら男たちは片付けに戻った。

 

 

 

 

 

 

 

『キミのこと~ぜぇったぁい~放さないよ~♡』

 

 

 

 

 

テレビの向こうを見つめる少女の映像だけがそこに残った。




アッベンジャーズ!アッセンボゥ…!

何とかフレディ存命期編終わりました。
彼女とはしばらくお別れです。

主人公って基本舞台装置なイメージあるけど、レオン君を思うコメントもあって嬉しかったです(小並感)
正直チョイ・ボンゲとか変なあだ名付けられると思ってました。

殺人鬼を女の子にしたら、映画で単純な悪役でしかなかった殺人鬼をまた違った視点で観れるんですよね。

中でもレザーフェイス一家の逆襲は視点が途中で生存者から殺人鬼に移ってるんですよね。
大分自分の価値観に影響を与えたと思います。
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