ヤンデレのヒロインに死ぬほど愛されて眠れない13日の金曜日の悪夢   作:なのは3931

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ハーメルンホラー界隈の13日の金曜日を目指してハーメルンにおける彼岸島ぐらいのポジに立つのが夢です。


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とあるお店で二人の女性が世間話をしていた。

 

 

 

「グッドガイ人形ってあるわよね?何ドルくらいするっけ?」

 

「グッドガイ?ああ、たしかサイズによって違うけど、どれくらいのを選ぶの?」

 

「ちょっと待って、サイズが何種類かあるの?」

 

 

チラシに乗っている一つの人形だけだったので彼女は複数のバリエーションがある事を知らなかった。

 

 

「もちろんニーズに合わせてあらかじめ大きさを変えれるのよ。一応死ぬまで一緒とは謳い文句で言ってるけど実際には子供が大きくなるにつれてニューモデルやワンサイズ上の物を新たに買わせる読みも込めてるわね」

 

「中々にきたn…強かな販売戦略ね。なんて会社だったかしら?」

 

「え~と、タ〇ラ?ト〇ー?それともバ〇ダイだったっけ?」

 

「ストップ、これ以上はちょっとまずいわ」

 

「ああ、思い出した!名前はプレイパルス社だったわ!かなりがめつい商売してるわよ」

 

「そうなの?」

 

 

プレイパルス、日本の玩具メーカーの中でもかなり大きな規模を誇る企業だ。

 

グッドガイ人形の成功によって前述の企業らを含めてもトップ争いに食い込める程にまで業績が拡大した。

 

複数のバリエーション、関連グッズ、そして女児向けのグッドガイ人形の女の子バージョンを最近発売し、他企業を追い抜こうと画策しているのだ。

 

 

「目安としてはたしか3歳以上からの小さいのは27.56㌅、6歳以上の中くらいのは39.37㌅、8歳以上対象の最大サイズは50.906㌅だったかしら?」

 

 

「ずいぶんと細かいわね…?」

 

「元の単位が㎝換算なのよ。やーよねぇ、面倒臭いんだから単位をヤード・ポンドに変えればいいのに」

 

「本当よね、なんで変えないのよ。馬鹿なのかしら?」

 

 

彼女達はマイノリティという言葉を辞書で引くべきである。

 

 

「確か㎝換算だと70㎝、100㎝、129.3㎝に分けられるわね」

 

「129.3!?なんで元の単位でも微妙な数値なのよ!?」

 

 

 

※ジャップの国の某ネコ型タヌキロボのサイズである。

 

 

「まぁ大きい程金がかかるわね、コストもその分増えるし。小さいので100ドルは掛かるわ。後はサイズ上げるごとに20ドルずつ値上がりしてくわね」

 

「100ドルか…ちょっと厳しいかも」

 

 

 彼女はシングルマザーであり、お金に余裕が無い。

旦那が不幸にも天国に旅立ってしまった故に余裕が無くなってしまった為である。

 

故に愛する子供には愛情を注いであげたいが、旦那が居ない以上自分が働いてお金を稼がなければならずそうもいかない。

 

子供の世話でさえ友人を頼らねばならないことも多い。学歴も無い女では薄給の仕事にしがみ付いて働くしかないのだ。

 

 

「言っとくけどグッドガールの方は更に10ドル上がるわよ」

 

「嘘でしょう!?ああ、もう全然足りないわ…」

 

新製品とは言え男の子のより高くしなくてもいいじゃないかと内心愚痴る。

 

 

「女の子っていうのは金がかかる物なのよ」

 

「人形じゃないの…」

 

「グッドガイ人形より機能が増えてるからね」

 

「へえ、どんなハイテク機能が付いてるのかしら?」

 

さぞや凄い機能が付いているんだろう、アッと言わせる程の。

 

 

 

 

 

 

 

 

「おしっこができるわ」

 

 

「意味分からないわ」

 

 

おしっこ?何?日本人は変態なの?

何を考えてこの機能を付けたの?

 

 

「ちゃんと理由があるのよ。おしっこする人形を子供がお世話することによって女の子の母性を育てる役割があるの」

 

「そんな深い理由があったの…日本では大和撫子を育てる為に幼い頃から教育をしているのね…」

 

 

 

 

「因みに129.3㎝(小学4年生の平均身長)の方にも付いてるわ」

 

 

「なんでよ!!?いつまでお漏らししてるの!?」

 

 

なぜその年の少女にまでお漏らし機能を付けたのか、コレガワカラナイ

 

 

「言っとくけどすごい機能なんだからね?戦場で遭難した米兵が人形に入っていた水を飲んで無事生還した記録がもう残っているわ」

 

「どんな状況よ!?絵面が酷過ぎるわ!なんで持って行ってんのよ!!」

 

「精神衛生の為に許可されたらしいわ。第二次大戦では捕虜になったフランス兵が架空の少女を愛でることでナチスの虐めにも精神を壊される事なく生還したという記録があるのよ」

 

「いや脳内ぶっ壊れてるじゃない」

 

 

※実際にあったらしい

 

 

「買えるのはグッドガールの道具セット位しか無いわね…後は洋服にしておきましょう…」

 

 

これなら40ドル程で収まるだろう。

 

 わが子がグッドガイやグッドガールの出てる番組を毎回欠かさず観ているのは知ってるし、お人形が欲しいのも分かっている。

 

でも無理な物は無理なのだ。

 

 

ああ、どこかその辺にお人形が落ちてたりしてないだろうか…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

路地裏の掃き溜めで浮浪者がゴミを漁っていた。

 

先日玩具屋が吹っ飛んで中の玩具もゴミとして廃棄されていたのだ。

 

ほとんどが使えないものだろうが中には元の製品と遜色ない物もあるかも知れない。

 

売りに出せば小銭位稼げるだろうと踏んでいた。

 

 

「ガラクタ、ガラクタ、どれもガラクタだ。まともな物は流石に持ち帰るから当然だが…ん?」

 

 

人形の箱だ、それも今話題のやつだ。

 

少し折れ曲がったり潰れたりはしているが中身もちゃんとある。

 

 

「ワァオ!当たりだ!しかも裏でも大人気のグッドガールじゃあねぇか!大当たりだ!」

 

 

グッドガール人形、裏では変態紳士に改造されたものが売られたり、秘密のポケット(意味深)にヤクを隠して子供に密輸させたりとやりたい放題の大ヒット商品である。

 

「状態も良いな、そのまんまでも売れるぜこれは」

 

中の人形は損傷が全く無い。流石は日本製だ。

 

 

男は気分よくその箱を持ち出してゴミ置き場を後にした。

 

(へへ、上手くいったな…)

 

 

 

 

 

 

 

「カレン!ちょっと、聞いて例の人形を浮浪者が持ってたのよ!」

「ええ?なんで浮浪者が?」

 

 

「とにかく今売りに出してるから早く買いに行きましょう!」

「でも今は仕事中よ?」

 

「こどもの為でしょ?ほら、早く!!」

「分かった、分かったわよ」

 

 

二人が仕事場の裏口を抜け路地裏に出るとそこで廃品を売っている浮浪者が居た。

 

浮浪者が持っている商品を入れるショッピングカートの中には確かに例の物があった。

 

「これ、これよぉ!!」

「ね?言った通りだったでしょ?ねぇコレいくら?」

 

 人形の箱を手に持って喜ぶ。

ああ、あの子もこれで満足してくれるわ!

 

 

「50ドルだね」

 

「50!?廃品でしょ!?10ドルで十分よ!!」

 

「おたくこいつの価値をわかっちゃいないね、40」

 

「冗談じゃないわよ!!」

 

「嫌ならやめな。こいつが欲しい客はいくらでもいるんだ」

 

親友のマギーが何故浮浪者ごときがここまで偉そうにボッタクろうしてるのかと憤慨するが元より手に入れるならここしか無い。

 

 

「マギー、いいのよ。買うわ」

 

「いいの!?壊れてるかもしれないのよ!!」

 

「あの子の為だもの」

 

「はいよ奥さん。お子さんきっと喜ぶよ」

 

「不良品だったらどうすんのよ!」

 

「これくれてやるよぉ!」

 

 男が自分の股間を指さして馬鹿にしてくる。

これがなかったら絶対に関わりたくない屑である。

 

 

「最低!」

「いいわよ、別に。仕事に戻りましょう♪」

 

カレンは我が子へのプレゼントが手に入った事で気分が良かった。

 

 

 

 

「ずいぶん長い休憩だね、バークレイさん」

 

仕事場に戻った先に居た上司の姿を見るまではだが…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「今日は貴方にプレゼントがあるの」

 

「うわぁ!ありがとママ!開けていい!?」

 

「ええ、もちろんよ」

 

 

何とか用意したプレゼントを渡した時の我が子の笑顔を見て笑みが零れる。

 

頑張って用意してきて良かった。

 

心からそう思えた。

 

 

ビリビリと包装を破ると例の物が姿を現した。

 

 

「これ、グッドガール人形!?」

 

「ええ、そうよ」

 

 

 

 

 

中身を見た()の感激した顔を見て日々の辛い疲れも吹っ飛ぶのが分かる。

 

父親を失ってから満足に欲しい物を買ってあげる事も出来なかった。

 

我が子のこんな笑顔を見たのは本当に久しぶりだ。

 

 

 

 

「ありがとうママ!!愛してる!」

 

「ええ、私もよ……アンディ」

 

 

 今日はずっと一緒に遊んであげたい。

だけどそうも言ってられない。

 

「ごめんなさいアンディ、ママは今日ちょっとお仕事があるの。誕生日なのにごめんね?」

 

「ううん、大丈夫。グッドガール人形がいるから!」

 

 本当に嬉しいのね、私が居ない寂しさも何のそのと言った感じだ。

ちょっと嫉妬してしまいそうだ。

 

 

「マギーが貴方の事預かってくれるからね」

「うん、分かった」

「あ、そうだ」

 

アンディにはまだ伝えてないことが一つだけあった。

 

「マギーに新しく子供が出来たから、その子と一緒に遊んであげなさい」

「マギーおばさん赤ちゃん生んだの?!」

 

「うふふ、違うわよ♪里子って言ってね、親の居ない子供を引き取ったのよ」

「へぇ~、なんて名前の子なの?女の子?」

 

 

 

「男の子なんだって、名前は……『レオン』よ♪」

 

 

「レオン…かっこいい子かなぁ?」

「すごくカッコいい子よ!期待しちゃっていいわよぉ~♡」

 

「もう、そんなんじゃないよママァ…」

 

 

 親友の子供だ。

お互い会う機会も多くなるだろうし、正直そういう事ももしかしたらあり得るかもなんて心の中ではちょっと期待している節があるかもしれない。

 

 

プップッゥ―――――!!

 

 

「あら、マギーが来たわね!それじゃあママはもう行くから!」

 

「行ってらっしゃいママ」

「ええ、行ってくるわ」

 

カレンが出ていくのと入れ替わりでマギーが入ってくる。

 

 

「アンディ、いらっしゃい。車に乗って」

「うん、マギーおばさん」

 

車の後部座席のドアを開けるとそこには金髪の可愛らしい少年が座っていた。

 

「やぁ」

「はぁい。あなた、レオン?」

 

少年の隣の席に座って話かけてみた。

 

「そうだよ」

「わたし、アンドレア。アンディって呼んで」

「よろしく…アンディ」

 

 彼の横には人形が置いてあった。

オレンジがかった赤髪をしており、ブルーの眼に、鼻先にはソバカスが付いている。

 愛らしい顔をしたこの顔を見間違えるわけがない。

 

「ねえ、それグッドガイ人形?」 

「うん、そうだよ。今日貰ったんだ」

 

「私もね、ママに買ってもらったの!」

 

そう言って自分のグッドガール人形を見せる。

 

「へぇ女の子か、可愛い顔をしてるね」

「そうなの!!」

 

「ふふ、レオン。アンディより先にお人形口説いてどうするのよ?」

「あぁ…アンディも可愛いと思うよ」

「そ、そう…?」

 

(この子女の子引き込むの早いわね、将来刺されなきゃいいけど)

 

出会って速攻口説いていく天然タラシの片鱗をマギーはレオンから感じ取ったのであった。

 

 

それからはアンディがレオンにお人形の話をして盛り上がっていた。

レオンはアンディの言葉にその都度相槌を返して付き合っていた。

 

家に着いてからは一緒にお人形で仲良く遊んでいた。

 

(本当に良かったわ、アンディも楽しそうだし、レオンも仲良くできる友達が出来ればきっと良くなると思う)

 

 

マギーはこの出会いを素直に喜んでいた。

 

この出会いが悲劇の始まりだと知らずに。

 

 

 

 

 

(あのガキと毎日ままごとして遊ぶだと?冗談じゃねぇぜ)

 

 

 

 

「二人とも、ご飯よ~早くいらっしゃ~い!」

 

「は~い!」

「分かった」

 

ダイニングから聞こえたマギーの呼び出しに従い二人はリビングを後にした。

 

 

「やれやれ…ようやく行ったか」

 

去り行く子供を確認するかのように少女の人形のプラスチックの目玉がギョロッと動いた。

 

 

 

 

 

 

 

「ねぇレオン、ご飯食べたらお人形喋らせてみようよ!」

「ああ、そういや喋らせれるんだっけ…」

 

 何だかんだで彼は人形と喋る機能を使っていなかった。

前に喋らせた時はなんか腹立つ喋り方してたからだろう。喋らせたいとは特に思わなかったのだ。

 

 二人は食事の後に人形の元へと向かった。

二人で人形に話しかける事にしたのだ。

その様子をマギーは後ろで眺めることにした。

 

 

「私アンディ、貴女の名前を教えて?」

 

アンディは少女の人形を抱いて話しかけた。

 

すると…

 

『やぁ、I'm(僕は) ルーク!君の友達さ!ハイディホ~!』

「え?」

 

「おばさん、この子おかしいよ?この子は…」

「本当ね…男の子みたいな名前ね…?まぁそういう子もよくいるわよ。アンディみたいにね」

 

アンディが感じていた違和感に自分も気づいた。

あの浮浪者、ガワだけグッドガールのグッドガイ人形を売り付けやがったのね!

 

マギーはカレンが騙されたことを悟ったが名前以外はさほど差は無いことは分かっているのでアンディをわざわざ悲しませることも無いと黙っている事にした。

 

 

「ほら、レオンも喋らせてよ!」

「うん、分かった」

 

言われた通りに、人形を抱きかかえて喋らせるボタンを探ろうと体を弄る。

 

『んぁ…♡』

「ん?今喋ったかな?おーい?」

 

反応があったので喋りかけてみるが、返事が無い。

 

「気のせいかな?もっと弄ってみる?」

『やぁ、僕と友達になってよ!』

 

「わぉ、喋った!?」

 

喋らないと思ったら急に喋り出した。なんなのこれ。

 

「ようし、じゃあ友達になろう。君の名は?何て呼べばいいかな」

『僕h…』

 

「あ~待って、その声聞いた事あるな。よし、君はハン=ソロだ!」

『待って』

 

「嫌?じゃあオビ=ワン」

『いや待って』

 

「じゃあアナキン?」

『それ前の話の君のモデルだよね?いい加減スターウォーズから名前取るのやめない?』

 

「そう言えば日本の国民的アニメのパロディに出てたダーク・シディアス役のヤクザに声が…」

『チャッキー!!僕の名前はチャッキーだよ!!』

「おおう…」

 

 えらく人間臭い反応をする人形である。

良く出来ているなぁとレオンは感心した。

 

 

 

『君はバディ~死ぬまで~一緒~♪』

「あははっ!」

 

 チャッキーの歌を聴きながらレオンが踊る姿を見てマギーは微笑んだ。

お人形と楽しく遊んでいる彼はとても楽しそうだ。

 

 彼がこのまま元気になってくれればいいけど…。

 

 

「アンディ、お家に帰るわよぉ」

「うんママ、今行く!」

 

 カレンがアンディを迎えに来たようだ。

アンディに帰り支度をさせて玄関まで届ける。

 

「じゃあね、レオン。また遊ぼうね?」

「うん、待ってるよ」

 

 二人共すっかり仲良しになれたようで安心である。

去り行く車を見送った後にレオンを寝室に連れて行った。

 

「さぁ、もう寝る時間よ」

「うん、でもチャッキーは?」

 

そう言えばあの人形はどこに行ったんだろうか?

 

マギーが家を探すとリビング方ででテレビの明かりが見えた。

 

テレビの前のソファーにはチャッキーと呼ばれた人形が座り込む様に置いてあった。

 

(こんな所に置いたからしら?)

 

 

『次のニュースです。【フレディ】に続いて現れた連続殺人鬼【湖畔の絞殺魔】ことチャールズ・リー・レイが逃走中に警官の手によって射殺されました。共犯のエディ・プルートは未だ逃走中です』

 

 フレディ…その名を聞くと彼の事を思い出す。

彼女にどんな残酷な目に遭わされたのか…。

 詳しくは語られなかったがきっと彼も辛いだろう。

 

「ほら、レオンの元に戻りなさい」

 

仮にも我が家のお金で買ったレオンの物なので優しく持ち上げてレオンの部屋へと連れていく。

 

「ほら、チャッキー連れて来たわよ」

「ありがとう、母さん」

 

(母さん、か…)

 

 自分が彼にしたことは玩具を与えたくらいだ。

母親として上手くやれてるだろうか…?

 

(ええい、これから母親らしくしてあげればいいのよ!)

 

「お休みレオン。愛してるわ」

「僕もだよ、母さん」

 

レオンの顔にキスすると電気を消して扉を閉めた。

 

あの子の為に明日からまた頑張らないと!

 

 

 

 

「僕たちも寝ようかチャッキー」

 

レオンはチャッキーにキスをしてベッドに入った。

 

またこの時間だ、静寂の時間。

 

誰かが一緒に居る時は気が紛れていたが一人になるとあの時の事がよぎる。

 

「うぅ…先生ェ…!」

 

思わず涙が流れてしまう。

人形を抱きしめて気を紛らわすも体の隙間から悲しみが溢れるようだ。

 

孤独感に苛まれる。今夜も彼女の夢を観るのだろう。

 

誰も本当の僕の気持ちを分かってはくれない。

 

誰も、誰も…。

 

 

「うるせぇな、おちおち寝ても居られねぇ」

 

「…誰?」

 

何処からか声がしたが辺りに人は見当たらない。

 

「ここだよ、ここお前が抱いてる奴だよ」

「…チャッキー?」

 

ハッと自分が抱きしめていた人形を見やる。

 

そこには先程よりも表情豊かなグッドガイ人形が居た。

 

「君は…何なの?普通の人形、じゃないよね?」

「勿論よ、俺はチャールズ・リー・レイ。訳合ってこの人形の中にお邪魔させて貰ってるんだよ」

 

チャールズ・リー・レイ?最近テレビよく出てた人だ。

 

「確か、先生と同じ殺人鬼だってニュースでやってた…」

 

「なんだ知ってるのか?まあいい、言っておくが俺は人を殺めた事があるが殺しを楽しんでいるわけじゃねぇぞ?俺が信仰してる神様が悪い奴を殺せって俺に命じたのさ。そのおかげで死んだ後も再び蘇らせてもらったわけだ!」

 

「神様…?」

 

神様、という事は偉い存在なんだろう。

 

そんな方に命じられたってことは間違ってないの?

 

「でも誰かを殺したら駄目だよ…」

「そりゃそーだ、ごもっとも。だから例え神様の命令でも、もう一度貰った命は誰も殺したりなんかしないクリーンな生き方をする事に決めたのさ。今俺の所に来たのもお前を助ける為さ」

 

「…僕の為?」

 

「そう、お前…大切な人が居なくなって悲しんでいるんだろう?先生が居なくなって悲しくて涙を流してる。でも誰にも言えやしねぇよなぁ?何せ自分が死んで悲しんでいる相手は子供を20人以上殺した最低最悪の殺人鬼だ。俺でもここまで殺しちゃあいねぇ」

 

「…うるさいな」

 

「だから誰にも話せない。話してもどうせ理解なんてされない。マギーって母親もアンディってガキもお前の本当の心の傷を分かってなんかくれねぇんだ。あいつ等は所詮何の不自由もなく悲劇にも出会わず、邪悪の世界を知っちゃあいねぇんだ。お前の理解者なんかになれはしないしお前の心を慰める事なんてできりゃしねぇ」

 

「だからなんだよ!もう黙ってろよ!」

 

そんな事言われなくても分かってる。

 

「落ち着けよ、俺はお前の友達になりに来たんだぜ?」

 

「だれがお前なんかと!」

 

「ヒッヒッヒッ!まぁ待て。俺はお前さんの気持ちがよぉ~く分かる。他の平和ボケした奴らとは違う。お前の大切な【フレデリカ】の事も嫌ってなんかいねぇしな。俺も()殺人鬼だ、誰かを殺さなきゃいけなかった奴の気持ちもよ~く分かる。文句を言う奴なんか人生ぬるま湯に浸かってるような平和ボケしたカスだけよ。本当に修羅場に出会って生きて帰った奴はそんな事言いやしねぇ!本当に命懸かってる時に残るのは決断して生き残った奴と迷った挙句死ぬ奴の二種類だけだ!お前さんの先生もどうしようも無い理由があったのさ」

 

「まるで知ってるかのように話すね…」

 

「知ってるのさ!俺は一度あの世に行ってフレデリカと出会った」

 

「っ!?本当!?」

 

こいつが先生と!?本当に!?一体何を話したのか?!

 

「ああ、本当さ。あの女言ってたぜ?レオンが悲しんで無いか心配だわ!誰か彼を慰めてあげて!本当は私が慰めてあげたいけどそれは出来ない。ああ、誰か彼を助けてってな!それを聞いた神様が徳を積んだ俺様を蘇らせてお前を慰めに来た訳よ。蘇れないフレデリカの代わりにな」

 

「そんな、事が…?」

 

「だから俺にだけは本音を隠す必要は無ぇ。俺だけが本当のお前を理解してやれる。さっき歌ったろ?俺はお前のバディだ。お前と毎晩一緒に寝てやる。だからもう泣くなよ、親友?」

 

 

何故だろう?彼の言葉はとても心地よくて心に響く。

 

チャッキーが本当に先生に言われて来たのかな?

 

神の使いだって言っていた。

 

なら悪い奴じゃないのかな?なら…

 

「うん、分かった。僕もう泣かないよ…」

 

 

彼を信じよう。

 

信じたいと思った。

 

彼と友達になろう。そう思った。

 

「分かったならもう寝るんだぞ?ママが起きちまうぞ?」

 

「うん、お休み。チャッキー!」

 

そう言って僕はチャッキーの口にキスをした。

 

「…ぁあ?」

 

ポカンとしたチャッキーの顔を後目に眠りの世界へと落ちていった。

 

 

「やれやれ、とんだマセガキだなぁこいつは…」

 

フレデリカとかいう女はこいつに何を仕込んだんだろうか?なんだか気になってしまう。

 

 

「しかし、クッ…うっへっヘっ!ガキを騙すなんてチョロいモンだなぁ?」

 

 

エディの糞野郎がどうなったか気になって、ニュースを見た時にあのガキが映っていたのは驚きだったが、こいつも驚くべき過去を持っていたものだ。

 

 

(だからこそ簡単に騙せるってもんよ…)

 

闇を抱えた人間を普通の人間が理解する事なんて出来ねぇ。

 

だが同じく闇を抱えた人間なら簡単に理解できる。

 

都合のいいカモにするのも簡単よ!

 

精々俺の為に都合よく動いてくれよ?()()

 

 

チャッキーは子供向けの人形とは思えない醜悪な顔でニヤリとほほ笑んだ。

 

 

 




レオン「チャッキー…マイ、フレンド!」

チャッキー「嘘やぁ~!?」(CV:山崎○正)

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