ヤンデレのヒロインに死ぬほど愛されて眠れない13日の金曜日の悪夢   作:なのは3931

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13日の金曜日なのにまだチャイルド・プレイですが投稿しますん。
待たせてすんまそん。


9

「それじゃあレオン、行ってくるわね」

「分かったよ。行ってらっしゃい母さん」

 

「ごめんね、数時間だけお仕事入っちゃったのよ。すぐに戻るからおとなしくしててね?愛してるわ」

「僕もさ」

 

マギーがレオンの頬に口付けをして名残惜しそうに仕事に向かって言った。

 

玄関の前で手を振っていたレオンだったが、マギーがドアを閉めて鍵を掛ける音を確認し去っていく足音を確認した後にその演技を解除した。

 

 

「……行ったか?」

「うん、始めようか」

 

部屋の裏からチャッキーがゆっくりと現れる。彼の手には長物が握られていた。

それと同じ物を部屋から取り出しお互いに向かい合う。

 

「……」

「……」

 

 

双方とも沈黙を保っていた。共にに相手が動き出すのを待っているのだろう。

長く続いた膠着だったが、ふとした瞬間。その膠着は破られた。

 

 

ピィシュゥウィィン!!

 

 

近未来的な音とともに互いに持っていた棒に淡い光が灯る。

 

 

「波ッ!!」

 

ブォン!!

 

先に仕掛けたのはレオンだった。彼の持った青い光の剣が音を立て縦の軌道の光の扇を作りだす。

 

「甘いッ!」

 

ピチュゥンッ!!

 

チャッキーはそれをいとも簡単に赤い光の剣を横に構えて抑えた。

 

「パダワンよ、それでは勝てぬなぁ」

「ちぃ!?」

 

レオンは果敢に攻め続ける。

だがそのどの攻撃もチャッキーを攻め落とす事は出来ない。

 

「動きは速いが単調で読みやすい、幾つもの修羅場を潜り抜けた俺からしたらあくびが出るような攻撃だ」

「なぁにぃ~?!」

 

彼の挑発に思わず感情が昂ぶりそうになるがそれこそヤツの思う壺だと言う事にレオンは気づいていた。

 

(落ち着け、チャンバラの極意はMANGAで見た筈だ…。呼吸を整えろ。心を燃やせ!)

 

「はああああ!!」

「っ!?おおおっ?!」

 

レオンの流れる様な攻撃の連打に思わずチャッキーも受けながら後ずさる。

 

(よし、MANGAの主人公がやっている『型』はチャッキーにも通じる!)

(このフォームは【アタル】…いや【シエン】か!)

 

(いける!)

流れる様な技の連携に勝機を見出したレオンはライトなセーバーを振りかぶる。

 

「と、でも思ったかぁ?」

「何ッ!?うっ!?」

 

チャッキーは床に落ちていた洗濯カゴを此方へ蹴り上げた!

奴は押されて下がるフリをしてソレがある所まで下がっていたのだ。

 

ブォンッ!!

 

カゴを払いのけたその瞬間に勝敗は決した。

チャッキーはその隙にレオンの頭に一撃を加えてこの戦いは決着を迎えた。

 

 

「イテテ、卑怯じゃあないか?チャッキー?」

「バーロー、卑怯も糞もあるか。どんな手を使っても勝ちゃあいいんだよ」

 

「シスのやり方だそれ」

「ジェダイの騎士道精神で勝てるか馬鹿。なぁ迷えるパダワンよ?戦いで一番大事なのはなんだと思う?」

 

チャッキーの言葉にレオンは顎に手を添え考えた。

 

「技術?精神?フィジカル?やはり呼吸?」

「素晴らしい、全て間違っている(あと呼吸ってなんだよ)。大事なのは勝つ事、戦いってのは大抵負けたらそれで終わりだ。相手の隙を突きどんな手を使ってでも相手を倒す。卑怯だのなんだの言われようが勝てば官軍よ。負ければ次なんてねぇんだからよ?」

 

卑怯ではあるのだろう。だが彼の言葉は中々に的を得ていた。

 

「お前は勝ってここに居る。お前の先生は負けておっ死んだ。それが全てでそれ以外は無ぇ。負けたらお前ぇもあいつみたいなる、それだけよ。だからどんな手を使ってでもいいから常に勝てる方法を考えろ」

 

「分かった!もっかいやろ!」

「話聞いてた?」

 

話を終えたやいなや()()を要求するその太々しさに思わず呆れながら再びライトなセーバーに光を入れた。

 

 

 

 

 

「ドアを開けて先に進む?」

「進むに決まってんだろ!罠なんて置きやがって、発動したら即死の罠をシレっと置いてんじゃ無ぇぞ。この先もどうせなんか有るんだろ?」

 

 

チャッキーは小さなフィギュアをチェスの駒のようにカツカツと前に進ませる。それを見たレオンは自作のルールブックを見ながらその後の展開を説明する。

 

「チャッキーの前には恐ろしい怪物が現れました。その名も怪物【デモゴルゴン】。デモゴルゴンは顔を此方に向けて今にも襲い掛かりそうです」

「…その化け物はどれだけ強いんだ?」

 

「…噛まれるとそのまま食べられて一撃で死んでしまいます」

「バランス考えろやクソが!これだからガキは!」

 

悪態を突きながらもゲームを投げずにチャッキーは付き合う。

 

「勝てなそうだし逃げるわ」

「ええ!?ゲームとしてそれは無いよ」

「こんなバランスにしたオメ~が言うな!撤退だ撤退!」

 

「しかしデモゴルゴンも追いかけます」

「来ると思ってたわ。そういえばここの部屋にはどんな生物も踏めば即死の罠があったよな?」

「えっ」

 

チャッキーの言葉は予想外だったのかレオンは驚きの声を上げる。

 

「デモゴルゴンが部屋に入った瞬間に床のスイッチに石投げて罠発動するわ。するとどうなる?」

「あっあっ、…デモゴルゴンは上から落ちてきた先の尖った大木に体を貫かれ爆弾で爆発四散します…」

 

「なっはっはっ!大事なのは(ココ)の使い方よ!悪党は頭を使わないと成り立たないのよ!かぁ~っ!!気分が良いねぇ!」

「汚い奴だ…」

「止せよ照れるだろうがよ!」

(褒めて無ぇよ)

 

 

レオンとチャッキーは勝負と称して様々な遊びを二人でしていた。

 

その中でこと戦いなどの要素が多いものではチャッキーはまるで指南をするような場面があった。

それほどレオンの中には目を見張るモノが有り、チャッキーはついつい口を滑らせてしまうのだった。

 

 

「キャッチボールなら互角の筈!」

「バァロォ!こんなんで負けてられるかよ!」

 

お互いが夕方まで汗を流し切磋琢磨し…

 

 

「ああああああああああああああ!!?」

 

「チャッキーは弱いなぁ~」

 

洗いっこで最後にはチャッキーがボロ負けするのがいつもの流れであった。

 

 

 

 

(俺は何をやっているのかねぇ…?)

 

 

レオンの部屋のベッドで寝そべるチャッキー…チャールズ・リー・レイは今の状況に疑問を感じていた。

 

一度死んでからここで第二の人生を謳歌し、ムカつくヤツを殺していけばいいと思っていたが実際の所一度たりとも外に出てもおらずあの警官もエディの糞野郎も殺せちゃいない。死ぬ間際の復讐を果たせてはいないのだ。

 

だが今の生活を心地よいと感じる自分が居た。レオンとのごく普通の生活、自分の荒んだ人生でこれ程まで穏やかで楽しい日々はあっただろうか?

 

 

「チャッキー、そろそろ寝ようか」

 

「…ああ」

 

レオンは生意気だが彼とのやり取りは決して怒りが爆発するほどではない。むしろ彼とのやり取りを楽しんでいた節があった。

 

「レオン」

「ん?」

 

「楽しいか?その、最近は?」

「楽しいよ、チャッキーが来てから毎日が楽しくなってきたんだ」

「…そうか」

 

そう言って笑顔を見せる彼を見てチャールズは思った。

ああ、自分は過去の自分を捨てれるかもしれないと。

 

彼と共に居る為なら殺人衝動も抑えて普通の生活を送れるかもしれないと。

わずかながら確かに、そう思った。

 

「俺も楽しいよ。お前と勝負するのは。人生でこれ程楽しかったのは初めてだ」

「うん」

 

「ずっとこんな日々が続けばいいな」

「そうだね」

 

「…でもお風呂入る時に擽るのやめてくれないかあれコチョいんだよ」

「え?やだ、チャッキーが悶えるの楽しいじゃん!」

「…クソが!!」

 

この会話も喋りながら楽しくなっている。まぁアレは自分が自分で無くなるようでガチでキツいのだが…正直気持ちいから仕方ない。アレを仕込んだ奴は相当変態だろう。

 

「寝たら明日になっちゃうね」

「明日また遊べばいいさ」

 

「でも眠れないよ」

「じゃあ子守唄でも歌ってやろう。…俺たちゃbuddy(親友)♪死ぬまで一緒♪」

 

「ふふっ、それグッドガイ人形が歌うバディソングじゃん」

「これしか歌えないからな。心配しなくても明日も、これからも」

 

 

 

 

「お前は親友だよ」

 

 

 

 

「うん…そうだね」

「ほら、お休みの時間だ。はよ寝ろ」

「うん、お休み」

 

チャールズの言葉に安心したのか、レオンはスヤスヤと眠りに落ちていった。

 

「ずっ友だよ、お前は」

 

そう呟いてチャールズも明日を思い寝床についたのであった。

 

 

 

 

だが平和な時というのは長くは続かない物である。

 

 

「レオン、今日は早起きだな?今から遊ぶか?」

「チャッキー、ごめん。今日から転校した学校の新学期なんだ…」

 

「え…?」

「だからお家に帰るまでは君とは遊べないんだ」

 

予想外の言葉にチャールズは狼狽える。そうか、レオンには学校があるのか。

 

「そ、そうか」

「ごめんね、帰ったら遊ぼう」

「…ああ」

 

彼は静かに窓の隙間からレオンが通学用のバスに乗るのを見ていた。

 

レオンはあのアンディという餓鬼の隣に座った。

何を話しているんだ?やけに楽しそうじゃあないか?

 

レオンが自分以外と楽しそうに話しているのを見ると、かつて自分の中にあった黒い感情が膨れ上がるのを感じた。

 

(いけねぇな。変わるって決めたんだろ?)

 

自分を抑えようと誰も居ない家で時間を潰すしかない。

くだらないワイドショーやら見たり部屋を探索したり。

 

(おや?この部屋はレオンの父親の部屋か?)

 

部屋には鍵が掛かっていたが、時間に余裕の有る自分なら容易にこの程度の鍵など開けられる。

 

「ほう、中々個性的な部屋だ」

 

安全ピンでサッと扉を開いて中を見た彼は少し驚きつつも中を見渡し面白い物でも見るように探索する。

 

「これは中々。いい趣味してんな…」

 

肌色の多い雑誌を見ながらアイツの父親も中々えげつない性癖してるなと感心してしまった。

レオンには近づけない様にしよ。

 

 

 

 

「ただいま~」

 

「よぅ、お帰りレオン!」

 

レオンが遂に帰ってきた!ようやく二人でまた遊べる。そう思った…が。

 

「それじゃあ…」

 

「ごめんチャッキー、学校から帰ったら宿題をやらなくちゃいけないんだ」

「え?そんなの別にやらなくてもいいじゃあないか?」

 

「駄目さ。やらないとウンと叱られるんだよ?」

「あぁん?そんな奴が居たら俺が…」

 

「何?」

「いや、なんでも無ぇ…」

 

そう言ってベッドに彼は寝転がった。

 

その後レオンは何とか宿題を終わらせたがその頃には母親が帰ってきてしまった。

 

その日はレオンと大して遊ぶことが出来なかった。

 

 

 

次の日、またレオンが登校するのを窓の外から見送った。

 

バスに乗り、アンディと会話する姿を冷めた目で見つめていた。

 

 

 

 

 

 

「チャールズ・リー・レイはどういった殺人鬼か」

 

ボサボサな髪の男性が大衆の前で話始めた。スクリーンにはチャールズの顔写真が映っている。

 

「衝動的な殺し屋、計算高い犯罪能力。それは彼の一面の一つでしかない」

 

「彼を怒らせた者には皆、死が待っていた。だが、彼が一番の狂気を生み出すのは人に怒りを覚えた時ではない」

 

スクリーンにどこかの家族の写真が映った。親しみやすそうな男性。お腹の膨らんだ女性。全身が少しぷっくりとした少女。

 

一見してとても幸せな、理想的な家族に見える。この先未来も幸せが待っている事は想像に難しくない。

 

「この理想的な一家はこの後チャールズによってズタズタにされた。チャールズはこの一家に憧れ、あろうことかその一員…いやその中心に自分が入り込もうとした」

 

写真がスライドしていく。葬式の写真だった。先ほどまで笑っていた妊婦が涙を流して棺に縋り付いており、子供は父を探すような挙動をしていた。

 

そして妊婦の女性の肩に手を置いてる男性が居た。そう、チャールズ・リー・レイである。

 

「彼は女性を慰めるように近づき、その悲しみを共有しようとした。…まるで旦那の代わり、いや、自分こそが彼女の夫のように」

 

新たな写真が映る。それは部屋だった。

 

そこには妊婦の女性が居た。ベッドで寝そべっており腹から血を流している。その周りには夥しい数の向日葵が添えてあった。

 

「彼女たち残った家族はその後チャールズ・リー・レイに監禁された。彼は自分を父親で有るかのように一家の妻と娘に振舞った。愛する妻に‶毎日"花をプレゼントし子供を勝手に幼稚園に連れていき、自分に従わない家族を容赦なく、躾けた。赤の他人が、だ。」

 

「彼は自分が一家の主だとまるで信じて疑わなかった。しかし彼はそうでも周りはそう思ってなど断じていない。結局この事件がきっかけで天才的殺人鬼のチャールズ・リー・レイはアシが付くことになる」

 

男はスクリーンから正面に向き直り言葉を投げる。

 

 

「彼はこの後シカゴで死亡が確認された。だがもし彼が生きていて誰かの目の前に現れた時、本当に恐ろしいのは嫌われた時ではなく、彼に好かれた時であろう事は想像に難しくない」

 

 

 

 

 

 

 

留守番をしているチャールズは唐突に口を開いた。

 

「俺たちゃ~友達♪死ぬまで一緒~♪」

 

彼は歌を歌う。

 

「只の友達じゃあない♪君は親友♪」

 

グッドガイ人形が歌う、バディソングを。

 

「どれほど愛してるかは分からないよね♪」

 

部屋を漁り彼の映った写真を見やって歌を続ける。

 

「君のことを絶対離さないよ~♪」

 

 

誰も聞いていない、親友に向けた歌を彼はひとりで口ずさんでいた。

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