その迷宮にハクスラ民は何を求めるか   作:乗っ取られ

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151話 即戦力ってレベルじゃ

 

「どう言う事かなタカヒロくうううううううん!?」

 

 

 壊れるのではないかと心配してしまうほどに強く開かれる、一室の扉。かつて誇り高き某ハイエルフがぶっ放した魔法によって玄関ドアを破壊された実績があるタカヒロは、割と真面目にそのあたりを心配している。

 

 なお部屋の中では上半身を晒しているレヴィスが居るのだが、男二人はドアから離れた場所へと移動済み。どれ程の反応を示すかは不明ながらも、普通の結果にならずにヘスティアが飛び出してくることは察知していたが為の行動だ。

 そんな彼の前で荒ぶる黒髪ロングツインテール。ややガニ股なスタイルで出て来たヘスティアの様相は般若であり、炉の女神と表現するには程遠い。もっとも原因の予測がついているタカヒロは、正論ながらも矛先を受け流してしまうのであった。

 

 

「何故自分だ。リリルカ君の時然り、最初に手を出したのはベル君だぞ」

「もちろんベル君もだああああ!!」

「はいいいい!?」

 

 

 事の発端は、ヘスティア曰く“新しい眷属レヴィス君”に対して恩恵を刻んだこと。冷静を通り越して冷酷ながらも落ち着いた表情と少し素っ気ない態度は既に一部の男団員の間で話題になっており、スタイルの良さもあってさっそく人気が生まれているらしい。

 ベル・クラネル直々の推薦とのことで面談にこぎ着けた点については、さほど問題ではないだろう。かつて戦いに従事していたことを口にしており、このファミリアに従事して再出発するとレヴィスも意気込みを返していた。

 

 問題はそこではなく、例によってレベルを含めた“ステイタス”周り。漢字二文字で現わせば“化物”と呼んで差支えのない古代の人間が、神の恩恵を授かったのだ。

 更には怪人になってからも、ダンジョンの深層。それこそ60階層以下においても死線を彷徨ってきたレヴィスは、相当の経験を積んでいたのである。

 

 トドメとして、そこの装備キチが使った“再構成のトニック”。これによって人の身体に戻りつつも経験値は残されており、こうして“ステイタス”へと反映されてしまったワケだ。

 恩恵を刻んだ際に明らかになったレベルを目にしたヘスティアは、一瞬で頭と胃が盛大に痛くなり。この女性が普通の経緯で二人と知り合ったワケがないと、コトの真実を瞬時に読み取っていたのだ。

 

 

レヴィス:Lv.10

・アビリティ

 力 :C:658

 耐久:C:612

 器用:H:153

 敏捷:D:539

 魔力:I:0

 破砕:C

 魔防:D

 耐異常:C

 

・魔法

 【 】

 

・スキル

 【 】

 

 

「器用さを、鍛えた方が良いな」

「そうですね」

「くっ……。分かってはいたが、不覚だ……」

「呑気に考察してないで(ひと)の話を聞けええええ!!」

 

 

 2桁となるレベル10であることなど、二人にとってはどうでもいい事らしい。そして、例え同じファミリアの者でもステイタスは絶対に他人に開示しないのが定石だ。

 しかしレヴィスに冒険者に関する常識などある筈もなく、彼女はタカヒロに羊皮紙を見せ、二人で意見を交わし合っている。ベルも横から覗いており、レベル10である彼女をキラキラした瞳で見つめていた。

 

 とはいえ、ベルが焦がれる程の実力がステイタスに反映されている為に無理もない。3つしかないながらも、発展アビリティのうち破砕Cランクという超がつく程の前衛アタッカーである点は明白だ。

 同じくCランクの耐異常と魔防も持ち合わせている為に、耐久型としても機能する。600台となっている耐久のステイタスとも、相性が良いだろう。そこのレベル100が頭オカシイだけで、通常ならば、このレヴィスのステイタスですら“ぶっ壊れ”だ。

 

 

 極彩色の魔石かドリーグの魔石かポーションの副作用、もしくはその他要因による影響なのかは不明なものの、スキルの項目は空白そのもの。スキルというモノが神の恩恵を得ている影響下においてのみ発現するならば、空白も納得できるかもしれない。もっともスキルと言うのはレベルアップ以外でも発現するために、彼女の頑張り次第でどうにでもなるだろう。

 ということで、ポジションは文句の無い最前衛かつタンク職。もっとも他のヘスティア・ファミリアのメンバーとはレベルの差が著しいために、単純に他の前衛と混じって行動というわけにはいかないだろう。

 

 例によってヘスティア・ファミリアの眷属第二号と同じく、冒険者登録はせずに一般人枠で隠し通すことが決定された。冒険者登録を行わない点はレヴィスも了承しており、タカヒロと同じく気にする様相を見せていない。

 

 色々と特出しすぎている、レベル順でソートした時の上から約3名。新生ヘスティア・ファミリアがさっそく抱えている爆弾そのものであり、どれか1つでも爆発したならばヘスティアの胃が吹っ飛ぶ程の代物だ。

 更には一番上は、日刊で神殺しをやったことのある核弾頭。その爆弾が爆発するのも、もしかしたら時間の問題なのかもしれない。

 

====

 

 一方此方は、そんな隠し事をする対象の地下エリア。相も変わらず闇を朱色に照らす松明が、状況を笑うかのように揺れている。

 

 

「は?え?」

「なんと……」

 

 

 爆弾を抱える事になる対象は、もちろん裏ギルドならぬウラノスやフェルズも同様である。レヴィスが魔石を埋め込まれた怪人であることは24階層の映像やその後の情報でも知っていたために、今こうして目の前に居ることが不思議で仕方がない。

 更には、そこの“ぶっ壊れ”が口にすることを鵜呑みにするならば、怪人ではなく人に戻ってヘスティア・ファミリアに所属中。それでいてレベル10だという事実は、微細な程度の驚きを追加している。

 

 「どうすんのコレ」と言いたげな目線をウラノスに向けるフェルズだが、ウラノスもウラノスで「何とかしろ」と言いたげに責任を擦り付け合っている最中だ。そんな二人を見て、簡易なローブのフードだけを脱いだレヴィスは呆れかえっている。

 ともかく、レヴィスは闇派閥ともソコソコの繋がりのあった人物である。故に闇派閥に対しては、俗に言う“パンツの中”まで知っており、様々な情報を持っているのだ。

 

 

 レヴィスの口から出された情報は、多すぎることもあって纏めるのに一苦労を要したほどだ。しかしながら、重要な情報がギッチリと詰まっている点は言うまでもないだろう。

 

 ・オラリオの地下に、“人工迷宮(クノッソス)”と呼ばれる人工のダンジョンが数千年前から作られている。

 ・ダンジョン側の入り口は18階層、及び他にいくつか。外に繋がる通路は多数があり、18階層以外を使用したことのないレヴィスは場所を把握していない。

 ・オラリオの出口は“ダイダロス通り”にあり、各階層にあるオリハルコンの扉を開けるためには“D”の文字が書かれた球体の鍵が要る。

 ・人工迷宮(クノッソス)は、バベルの塔の下にあるダンジョン18階層にまで伸びており、モンスターが配備されていたり各所に様々な仕掛けがある。発動したところを見ていないので詳細は不明。

 ・ダンジョンを作る資金源は神が提供している。姿や名前は不明だが、常にアマゾネスらしき眷属を率いている神。

 ・闇派閥もこれを拠点としており、そこかしこに人員が配置されている。

 ・闇派閥の主神は“タナトス”であり、信者から信仰を集めている。

 ・6体の精霊の分身を準備中。魔法を用いてオラリオを地下から消し飛ばす算段。

 

 

「なんと、いうことだ……」

「これ程までか……」

 

 

 神々ですら予測できなかったイレギュラー、その全容と言える数々の事実。よもやオラリオを町ごと吹っ飛ばそうとしているなどとは、今この時まで誰一人として微塵にも思わなかったことだ。

 扉がオリハルコンとなれば、オッタル等を派遣して破壊することも不可能である。故に突破するには鍵を手に入れなければならないが、一般人に紛れ込んだ闇派閥を探し出すだけでも不可能に近いというのに、鍵を持っている者を探し出すなど輪をかけて不可能と言えるだろう。

 

 イレギュラーを前に唸る、ウラノスとフェルズ。これらの案件は今夜ロキに伝えられることとなり、その時はロキが「どこから情報を仕入れたのか」と突っかかるも、ウラノスは何も答えない光景が繰り広げられることとなる。

 

 

 ところで、そうなった理由の1つとして。

 

 

「鍵とはコレのことか?」

 

 

 インベントリから呑気に取り出された“D”マーク付きの球体が乗っているタカヒロの手を見て、レヴィスは「なんで持っているのだ」と呟き呆れていた。やはりあの時18階層で拾ったマジックアイテムは、人工迷宮(クノッソス)の扉を開く鍵らしい。

 ともあれ、これにて鍵は確保できたということだ。レヴィスによると使い捨ての鍵ではないために、これ1つあれば人工迷宮(クノッソス)にある全ての扉を開くことができるという。

 

 場所、方法、戦力のうち、前2つのパズルは完成したと表現しても問題はないだろう。突撃となればオラリオにおける全ファミリアを使う程の意思の強さを見せるウラノスは、妙案がないかと悩むこととなる。

 なにせ相手は、7年前にオラリオを壊滅一歩手前に追い込んだ“闇派閥”。前回と同じく何かしらの“ジョーカー的な存在”が相手に居ないかと自然と強い警戒を抱いてしまっているために、慎重に慎重を期しているのだ。

 

 

 なお、すぐそこにジョーカーすらも片手間に壊していく“ぶっ壊れ”が居る点については、本当の最終兵器ということで秘匿するつもりらしい。そのうち神とやり合うことがあれば実力は公となり、ヘスティアの胃は爆発することだろう。

 そんな爆弾を抱える、と言うより爆弾そのものとなるタカヒロは、先程レヴィスが口にした要件の最後から2つ目を気にしている。以前においても“コルヴァンの地”で信仰を集めた神が力を付けていたことがあったため、「まさかな」と思いながらも警戒の心を抱いていた。

 

 強く多量の信仰を得て力を蓄えていた、偽りの神。もっとも偽りというのは語弊があり、信仰者の親玉が表面上はエンピリオンに崇拝しているように見せかけて、信者もろともまったく別の神を崇拝していたのが真相だ。

 ではその連中は、何を、何のために崇拝していたのか。ケアンの地に蔓延っていたモンスターを一掃することが主目標の一方で、手段、つまるところ敬拝していた神については地上を支配しようとするヤベー奴だったというのが真相だ。

 

 この期に及んで当時における“偽りの神”が出てくることは無いだろうと内心思うタカヒロは、信仰が集まることについてはあまりよく思っていない。18階層で闇派閥のエルフが呟いていた言葉を思い返し、眉間に少しの力がこもっている。

 単なる闇派閥の戦力強化だというならば、彼の思い過ごしであるために問題はないだろう。最悪はどこかの神とやり合うことになるかと、かつての“日常”の思考を抱いていると、レヴィスが顔を向けて言葉を発した。

 

 

「タカヒロ。人工迷宮(クノッソス)を攻撃する際は、当然私も参加させて貰うぞ」

「今の段階では確約はできんが、可能な限りは掛け合おう。しかし相手の警戒を考えると君の存在は表に出せない上に、事情を知らないロキ・ファミリアと敵対関係にあるのが一番の問題でな……」

「……その点は面目ない。だが、参加となれば必ず」

「武器と防具も無い身で何をする」

「うっ……」

 

 

 元怪人レヴィス。一見すると落ち着いているようで、熱中すると中々に脳筋(ポンコツ)でもあった。肩をすぼめてショボンとした表情で下を向いてしまっており、プルプルと小さく震えている。

 やる気は十分であるものの、怪人であった頃との“ズレ”はあるだろうし、何よりタカヒロが言うように武器と防具が無い状況。流石のレベル10とて、素手と素っ裸で立ち向かうのは無理があるだろう。

 

 

 ということでローブで全身を隠す彼女と共にタカヒロがやってきたのは、お得意様のヘファイストス・ファミリアというわけだ。レベル10ともなればそこら辺の武器防具では少し心許なく、何よりその選択(妥協)はタカヒロが許さない。

 基本としてオーダーメイドよりは“鍛冶師が作った武具を並べる”ことが多いヘファイストス・ファミリアだが、依頼があれば話は別である。流石に一見さんお断りである上に鍛冶師と相当仲が良くなければ依頼は受けないが、その点についてタカヒロは心配無用と言えるだろう。

 

 なんせ、ファミリアの主神とはwin-winな関係と呼んで過言は無い程だ。それでも“親しき中にも礼儀あり”の姿勢は崩さないようで、交渉の場面となった現在も背筋を伸ばして応対しており、決して据わった表情を崩さない。

 ワケあって今は顔と名前を晒せないとの(くだり)をまず最初に説明し、それでも武具を作って欲しいと言葉を発した。しかしそれで終わりではなく、更なる言葉が続いている。

 

 

「もちろん素顔も名も晒さぬ輩に己の一振りを“委ねる”など、言語道断と罵られる覚悟はある。それでも今は、ヘファイストス・ファミリアの一振りと防具一式が必要なのだ」

 

 

 “売る”や“買う”ではなく、“委ねる”と言う単語。鍛冶師にとっての丹精込めた一振りはまさに“子”と同様であり、己もまた装備が好きだからこそ、そのような表現として口にするのだ。

 もちろんその表現は、ヘファイストスや椿からしても好印象。今までの行いもあって、二人は今のところ前向きな姿勢を見せている。

 

 

「……普通なら在り得ないけれど、貴方の紹介だものね。いいわ、ファミリアとしては受けましょう。作るかどうか、あとは椿に任せるわ」

「では手前からも少し。希望する武器の種類はあるか?あとは実力を知りたい、レベルも教えては貰えぬのか?」

「希望武器は要相談。この者は超が付く程の前衛型でパワーファイター、レベルは10だ」

「おお!?」

「レベル10ですって!?」

 

 

 まさかの高レベルに驚く椿ながらも、ヘファイストスは別の点に驚きを見せている。あれほどまでに秘匿と言いながらも、鍛冶師にとって必要な情報は簡単に口に出すのだから無理もない。

 相手の信用を得るための、話術の一種と表現してもいいだろう。今後において付き合いが生まれるだろう冒険者と鍛冶師における互いの信頼関係を大事にするという、かつて青年が学んだ内容だ。

 

 要望する武器や防具の詳細はレヴィス本人の口から椿へと伝えられ、サンプルを手に取ったりするなどして煮詰められている。これにより、数日を要するがレヴィスの武器防具の調達は問題ないこととなるだろう。

 となれば、あとは予算との兼ね合いだ。金にモノを言わせれば上限こそないものの、ここでタカヒロは満を持して、金では買えない“カード”を切ることとなる。その実、先程の「レベル10」という単語を頭から消し去る目的もあるのだが。

 

 

「これらを持ち込むことで、交渉材料としてはどうだろうか?」

 

 

 インベントリから取り出したのは、ヘファイストスとて未だ見たことのない牙や爪、そして鱗。市場に出回るドロップアイテムとは明らかに一線を画す存在を面敷いて、職人二人の瞳には一瞬にして強い力が込められた。

 そう。今この場に出されたのは、94階層に居たモンスターが落としたドロップアイテムなのだ。二人どころかオラリオにおいて目にしたことがあるのはそこの青年と兎のような少年だけであるために、知らないのも当然である。

 

 

「こ、これを、これを持ち込んでくれるのか!?手前に打たせてくれるのか!?」

 

 

 いつかのヘファイストスと同じく、どこで手に入れたのか、先程のレベル10発言はどうでもよくなったらしい。それよりも、己が未知の素材を使えることに対する興味が疑問を遥かに上回るのだ。

 そしてそれを持ち込んでくれるような人材は、「ヘファイストス・ファミリアがいい」と言ってくれている。ここでもし椿が難色を示すならば、この素材がゴブニュ(競合相手の)・ファミリアへ持ち込まれることになるかもしれない。

 

 

「ああ、協力は惜しまない。予備もいくつかある、失敗を気にせず挑んで欲しい」

「勿論だとも!この椿の名を懸け、全身全霊で挑ませて貰おう!!」

「ぐぬぬ……ず、ずるいわよ椿!私にも」

「ならぬ、ならぬぞ主神様!この素材は手前のモノだ!」

 

 

 故に、ヘファイストス・ファミリアの団長が出した回答は1つだった。そしてタカヒロの口から出てくる頼もしい言葉は、前例がない素材を扱うという点においては何よりの保険となるだろう。

 この主神にして、この団長あり。お目目シイタケとなって身を乗り出す椿とハンカチを噛み締め当該ドロップアイテムを使うことができる点を羨ましがるヘファイストスに対し、タカヒロは有利な交渉を進めることとなる。

 




レベルについては“古代の人間”に今の恩恵を与えたらこうなるかなー、という作者の完全な妄想です。1000年間ダンジョンを彷徨ってたわりには低いかな…?
スキルというのは神の恩恵を受けて発現するものなので、現時点では空欄。。
エアリエルと真っ向からぶつかっていたので力系と防御系の発展アビリティにしてみました。

そもそもレヴィスが味方なんて二次創作でもアリエネーのでツッコミどころがあるかと思いますがご了承ください。
ちょいちょいGDコラボを匂わせる台詞が混じっていますが、原作コラボアリだとここらへんが活きてくる感じですね。
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