*単語など含めGD要素が強いですが、パズルの紹介ですので「そういうパートなんだな」とご了承ください。
特に~~~~の間はその気が強いのですが読み飛ばして頂いても問題ございません。
装備更新パートについては3話を予定。
悲しみの絶望に暮れていたヘファイストスを餌付け……もとい、買収……でもなく御機嫌を取ったタカヒロは、ファミリアの自室で紙を広げつつ様々な数値を書き込んでいる。書かれている内容は、傍から見ても全くもって分からないことだろう。
書かれては消され、書かれては斜線が引かれと繰り返される様相は、終わる気配を見せていない。様々な項目、様々な数値を検証して繰り広げられる様相は、既に日の出前から続いている。
90階層におけるアセンションにて素材こそ確保したものの、どこの装備と入れ替えるか。全く同じものが出来上がったとの仮定だが物凄く強力なエンチャント効果を持つ防具だけに、装備する部位は慎重に選ぶ必要がある。
特に、アミュレット、メダル、指輪の3か所における装備個所の変換が選択肢に加わっているために組み合わせは無限大だ。事前に装備部位の変換について確認していた点については、ヘファイストスが口にした言葉の概要は「少しは性能が低下しそうだがイケる、むしろやってやる、と言うかやらせて」とのこと。
設計図については全種類をコンプリートしているタカヒロは、さっそく一面に広げて依頼するにヨサゲなものをチェックする。しかし神話級のメダルと指輪については報復ウォーロードにとって旨味が少なく、やはりキーを握る部位はアミュレットだろう。
アミュレットと頭部については特殊なエンチャント効果を持つモノが大半であり、特定のクラス、例えばソルジャーのスキルレベルを全て1上げるモノが多いのだ。モノによっては取得している2種類のクラス両方のスキルレベルを1上げるモノも存在しており、この効果を維持できるならば、ウォーロードの基礎を構成するスキルは更に強くなる。
ヘファイストスが作ったガントレットのように明確とした分かりやすいものではないが、基礎能力の向上は、土壇場で必ず生きてくる。今現在のスキル振りにおいては、例えばマックスレベル15に対してレベル10止めなどレベル上げ可能な上限にまで達していないモノが多いために、スキルレベル+1が与える影響度合いは猶更の事強いと言っても良いだろう。
最も有力な作成依頼候補、“
それがなくとも相当量の物理報復、及び報復ダメージの増加が加わるモノであるためにタカヒロお気に入りの装備の1つとなっている。現在の装備においては指輪で“応報”を3レベル上げているために、そのままの性能で指輪にすることができればスキルレベル低下による影響もないだろう。
もっともどうなるかとなると、全ては文字通り“神のみぞ知る”。ヘファイストスの機嫌が直った翌日、タカヒロは装備作成を依頼するためにヘファイストス・ファミリアへと訪れていた。
内容はヘファイストスにしか出来ない事であり、“ケアンの復讐者”をアミュレット、リング、メダルの3パターンで作成してもらうこと。オラリオには無い4種類の素材を目にした彼女は相変わらずのお目目椎茸で千切れんばかりに尻尾を振っており、こちらのやる気スイッチも
設計図があるために作成は早いらしく、なお無我夢中で徹夜となっており結果として1日で終了の連絡が飛び込んできたというわけだ。連絡役のヴェルフによると「超が付くほどの満足顔で爆睡中」とのことで、タカヒロは昼過ぎにヘファイストスのもとへと訪れることとなる。
並べられたのは、三種三様の“ケアンの復讐者”。サイズはさておきアミュレット部分の外観そのままに各々が作られており、装備する分には問題はないだろう。
もっとも重要なのは、ヘファイストスが「少し弱体化する」と言っていた部分となる。許可を得て手に取るタカヒロは、それぞれの効果数値を確認しているのか黙り込んだままだ。
「3つとも渾身の出来栄えよ、どうかしら?」
ヘファイストスの問いに対し、青年が向ける表情はあまり宜しくない。ガントレットの時のように驚く様相もないために、彼女は何かあったのかと僅かに首を傾げた。
「決して文句や苦情ではないと断りを入れさせてもらっての発言だが……」
「あら、何かしら?」
「作成してもらったアミュレット、リング、メダル。揃いも揃って奇麗に同じ値だが、それぞれのエンチャント性能が理論最大数値の7割にまで低下している」
「ええええ!?」
凛々しい声を捨てて甲高く叫ぶ神ヘファイストス、当たり前だが納得がいかないらしい。眉を八の字にして口を開き“ガーン”という擬音を奏でているが、数秒経てばすぐさま炎の灯った瞳へと切り替わり設計図を凝視する職人気質を見せている。
とはいえ彼女の視点においてもミスは皆無であり、やはり納得がいかないらしい。設計図とは異なるとはいえ、そもそも同じように作ったアミュレットですら性能低下を起こしているとなると、別の要因があるのではないかと考えている。
とここで、今更ながらこの装備が何なのかを聞いていなかったことを思い出したヘファイストス。凛々しい声に戻って問いを投げると、青年は装備の名前を口にした。
「“神話級 ケアンの復讐者”というアミュレットになる」
「神話級?その文字も含めて、装備の名前なのかしら」
「ああ、その解釈で問題は無い」
「なるほどね……。神話級ってことは神話に出てくる神々が使うような代物、つまり“神造”と遜色がないってことよ。それを地上で作ったから、性能が低下しちゃった訳だわ……」
一応ながらソコの装備キチが作れば、各々の装備効果が上限下限の範囲内におけるランダム数値になるも、全体的な性能低下は起こらない。とはいえ、ヘファイストスの理論を取り入れたとしても、設計図通りにアミュレットバージョンしか作れないのもまたケアン民の特徴だ。
なお、何故一人のヒューマンが“神造”に匹敵する装備の設計図を持っているのかは気にならないヘファイストス。彼女としては結果に納得いかないものの、今までにない装備を作ることができてご満悦なのである。
現状ではオリジナルの7割となったものの、試しに装着してみれば首と指の共存も可能であった。オリジナルよりは効果が弱いものの、装着することは可能なようである。
こうなると、他の神話級の装備についても部位変更をすれば7割の性能となることが予想される。「いっそ天界で作ってきていいかしら!?」と、ぶっ飛んだ言葉を発しているヘファイストス。そんな彼女に対して“依頼”しかけたタカヒロだが、色々と問題が起こるために流石に取り押さえている。
流石は、己の趣味にリソース全振りの神々と言えるだろう。残された眷属の事などをタカヒロが諭すと、頬を赤めつつしょんぼりした表情となった彼女は、舞い上がったことを反省するのであった。
そしてタカヒロも気付いていないのだが、ヘファイストスが作ったものは全てにおいて“最大値の”キッチリ7割。つまり天界で作ったならば、全エンチャント能力において、本来の性能を100%引き出すことができるのだ。流石は鍛冶の女神である。
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場所は戻って、ヘスティア・ファミリアのホーム、タカヒロの自室。書きなぐられているようで整理された羊皮紙がそこかしこに散らかっているものの、目にしても内容を理解できる者は居ないだろう。
置かれている水入りのコップが所有するスペースすら勿体ないと言わんばかりに机一面にも広がっており、
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内容は、ヘファイストスが作ったリングを装着したうえで、ガントレットと同じ能力の装備をショルダーで作成してもらった場合の仮想数値の割り出し。一部ざっくり計算の部分があるものの、こうすることで事前に過不足を見出すことができるのだ。
特に再分配ができないスキルレベルについては問題が大きく、初期に問題を洗い出さねばまた最初からやり直しとなるパターンとなるだろう。苦労が文字通りの水の泡となる瞬間であるために、それは避けたい内容だ。
最大値の7割の性能とは言え、元々が3レベル上がる“応報”はヘファイストス製のものでも2レベルが上昇する。ソルジャーの全スキルが1レベル上がるものは同じ性能となっているために、こちらも影響はない。
また、元々が4%上がる“最大全耐性”についても3%が上昇するために効果量は十分だ。例によってバランスを考えると全部が全部コレとはならないだろうが、少なくともリング1か所はコレで決定と言っても良いだろう。
これにより、84%の魔法や刺突、出血ダメージをカットする耐性は87%へと高まるわけだ。カット量の上昇はたった3%ながらも影響は大きなものがあり、タカヒロとしてはこのリングに大満足の結果となっている。
そんなこんなで、完成されていたパズルは更に崩れていると言っても良いだろう。黒竜の鱗で肩の装備を作ると仮定した状態における数値は以下の通りだ。
■黒いガントレット+黒竜鱗で肩の装備作成+2つあるうち片方を作ってもらったリングに入れ替えた場合
・各種耐性
物理:83.4%
エレメンタル:87+95%
毒・酸:87+19%
刺突:90+73.6%
出血 :87+33%
生命:87+93%
気絶:87+57%
カオス:90+54%
イーサー:97+122.6%
・その他
省略
もっとも、もたらされる内容はメリットだけではない。元々のリングの性能から比べるとパッシブスキル“応報”が1レベルが下がっているために自発火力は2~3%が低下している上に、リングについていた各種耐性も低下中。
物理耐性がとんでもない数値になっている点は良好だが、逆にイーサー耐性は明らかな過剰数値だ。そしていくらドライアドのスキルで実質常時64.8%の毒酸と出血時間を短縮できるとはいえ、毒酸と出血耐性についても心許ない。
一番のポイントは、“攻撃能力”の大幅な低下だろう。元の数値から4~5%が低下しており、報復型のために別に要らないといえば要らないのだが、自発火力に影響することは明白だ。
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これらが、とりあえずの一番の問題点。“更にどこかの装備を変更させたうえで”満たさなければならない内容のために、最適解を求めて色々と検証を続けていたのであるが、ここにきて一区切りをつけて溜息を吐いた。
少し離れた横側に他人の気配を感じ取ったのは、そのタイミングである。
「野郎、どう足掻こうとも(祈祷ポイント)1つが足りんとくるか……ん?うおっ!?」
「……10分経ってようやく気づいたか、馬鹿者」
行儀悪くテーブルに片肘を付きながら頬を支えるリヴェリアが、翡翠のジト目を向けていた。
完全に集中して己の世界に閉じこもっており、完全に油断していたタカヒロ。言われて時計を見ると開始から既に4時間が経過しており、ともかく気づかなかったことを詫びている。
空いている椅子に――――と思ったタカヒロだが相手は既に座っており、そこかしこに散乱する紙を片付けないことには手荷物を置くスペースもままならないだろう。要る物と要らない物とを分別し、2つの山を築いている。
口には出さないが実は小走りにてやってきた彼女曰く、難しい表情をして一心不乱に何かを書きなぐっている様相が、昼休憩で戻ってきたヘスティア・ファミリアのエルフ経由で彼女に伝わっていた模様。今までと比べて少し負担の軽くなった仕事を一時中断して、差し入れと共に相手のために馳せ参じるという
彼女も彼女で相方の部屋をノックをしたものの返事がなかったために、何事かと恐る恐る入室してみれば、紙の床が作られていたという惨状。うち一枚を拾って読んでみるも、専門用語なのか略語と数値だらけでまったくもって意味が分からない。
それでもって表には出さないが、何かに対して必死になる青年の姿は見ていて心地良いものがあったらしい。結局は彼女も近くの椅子に腰かけ己の世界に入っていたわけであり、似た者同士の二人である。
息抜きにと彼女が買ってきた焼き菓子と紅茶を並べると、彼は少し乱雑に頬張って紅茶を口にし溜息を吐いた。数時間ぶっ続けで頭を使っていた所であったために、この甘さは有難いらしい。
「随分と集中していたのだな、4時間も続けていたのか……どうしたタカヒロ、何か悩み事か?」
「悩みと言えば悩みなのだが……これは、自分が解決しなければならない類の悩みだ。悩みでもあるが、愉しみでもある」
「そうか、無理はするなよ。何か、私にできることがあれば言ってくれ」
「ああ、すまない」
相手に心配をかけまいとするタカヒロの意思は伝わり、彼女も無理に問うことは無い。二人の時は頻繁に表情を変えてくれる青年の姿によって、彼女の心もまた軽くなり仕事のストレスは吹き飛ぶのだ。
普段は不動の姿勢を保つ二人も、二人だけとなれば話は別。完全に“だらけ”モードに入っており、リヴェリアに至っては机に肘を立てて顔を支えている程だ。
その後、まさかリヴェリア本人がやってきているとは思わないエルフ3人が再びタカヒロのドアをノックするも、普通に「どうぞ」と返された上に目にした光景に対して全力で非礼を詫びている。うち一名は、今にもハラキリをしかねない程の形相だ。
しかしリヴェリアやタカヒロからすれば、彼等がロキ・ファミリアに伝えてくれたからこそ。こうして二人の時間を過ごすことができたわけで、互いの信頼を深めることができたわけだ。
故に、帰るまでの30分程の時間ながらも、リヴェリアは3人を場に誘うこととなる。ガッチガチで背筋が伸び切っていた3人ながらも、茶会を彼女と共に過ごすことは大変な名誉と言えるだろう。
色々と尋ねられた3人だが、現にリヴェリアが帰ってからも茶会の話で持ち切りだ。彼女がわざわざ会いに来るということで青年の立ち位置も上昇しているのだが、その点が表に出されることは無い。
文字通りのリフレッシュとなったタカヒロは、一度背伸びをして再びペンを走らせた。様々なパターンは未だ2-3割しか検証ができておらず、最適解とは程遠い。
リヴェリアもまた、黄昏の館において書類の丘と格闘中。息抜きが終わってからも互いに書類と格闘中ということで、やはり似た者同士の二人なのであった。
■設計図 : 神話級 ケアンの復讐者
材料:
8個:クトーンの血
1個:ヴェンデッタ
1個:オレロンの鎖
1個:イーサー ソウル
■神話級 ケアンの復讐者
・レジェンダリー アミュレット
+323/+485 ヘルス
+32/+48 防御能力
48/72% イーサー耐性
30/46% エレメンタル耐性
+4% 最大イーサー耐性
+4% 最大全耐性
646-940 物理報復
+53/+79% 全報復ダメージ
+2 ワード オブ リニューアル
+3 応報
+1 ソルジャーの全スキル
1500 物理報復 : メンヒルの意志
+120% 全報復ダメージ : ワード オブ リニューアル
(最新バージョンでは物理報復の値がナーフされています)
■神話級 ケアンの復讐者
・レジェンダリー リング
+340 ヘルス
+34 防御能力
+50% イーサー耐性
+32% エレメンタル耐性
+3% 最大イーサー耐性
+3% 最大全耐性
+658 物理報復
+55% 全報復ダメージ
+1 ワード オブ リニューアル
+2 応報
+1 ソルジャーの全スキル
1050 物理報復 : メンヒルの意志
+84% 全報復ダメージ : ワード オブ リニューアル
(理論最大値*0.7の四捨五入)