その迷宮にハクスラ民は何を求めるか   作:乗っ取られ

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239話 歩む道は

 

 予想外だった、というような言い回しは、誰しもが一度は口にした事があるだろう。つい反射的に口にしてしまった場合は、本当に予想していなかったケースに当てはまる。

 大抵は、何かしらの不利益が生じた際に使われる言葉の一種だ。それを許してもらう為の言い訳、免罪符のようなものを得るための防護措置の一種だろう。

 

 

 ではそれが、王の御前という厳格な場所で発生したならばどうなるか。

 

 

 この場で最も偉い者について住民たちに問いを投げれば、満場一致で答えが返るだろう。王であるハイエルフ、ラーファル・リヨス・アールヴ。

 の筈であるが、世界に住まう全てのエルフが崇め称えるドライアドが出現した上に、伝記を超えて聖典にしか載っていない天の大樹(ユグドラシル)の加護を持ったヒューマンとかいう規格外(自称一般人)が登場した。もしもドライアドが居なければ、証言しなければ、誰もが持ち得る加護や祝福を信用しなかった事だろう。

 

 

 ということで、エルフ一行にとって対処方法など欠片も思い当たる節は無く、キャパシティを超えたラーファルがフリーズした。汚れた血だけではなく、場の雰囲気すらも洗い流してしまった一般人が与えた影響は計り知れない。

 玉座という部屋の主がこのような状況である為に、当然ながらエルフ達は行動も言葉も示すことができていない。そのような空気も手伝って、ドライアドは、ラーファルへと向かって要望を出そうと思いつく。

 

 なお真の狙いについては、ラーファルからタカヒロへの謝罪を行わせる為である。国王が自発的に行ったとなれば体面的に色々と面倒なため、ドライアドという名前を使って強制的に行わせた、という結果にするのが彼女の狙いだ。

 もっとも彼女とて、己の祝福を持ち、加えて天の大樹を持つほどの者をコケにされて僅かばかりにご立腹。だからこそ全くの穏便には収まらず、精霊らしく“いたずら”の含む内容となっていた。

 

 

「ところでラーファルよ。手前の家臣がタカヒロに働いた無礼の数々、よもや忘れたわけではあるまいなぁ?」

 

 

 言葉を受けて即座に再起動したラーファルは、タカヒロに向けて謝罪のために素早く頭を下げる。続けざまに音よりも早く土下座(DOGEZA)に移行する他の貴族や衛兵達は、顔色もまた同様の速度で悪くなっている。

 なんせ己が罵った者、剣を向けた者が、まさかドライアドと生命の樹(ユグドラシル)の加護持ちだったなどと、一体だれが予測できるだろうか。とはいえ行いは取り消せない為に、こうして精一杯の謝罪を見せている。

 

 下手をしたら、一族の全てがハラキリしても許されない程の大罪だ。ようやくその事実が把握できたようで、顔を青く染めて涙を流し許しを請いている者まで現れている。

 とはいえ、呑気な精霊からすれば関係のない事だ。光景が面白いのか、もうちょっとイジる選択肢を取っている。

 

 

「そのあとはもっと頭を下げて、生命の樹(ユグドラシル)恩恵(聖水)を大聖樹に授けてくれたことを感謝せねばなるまいなぁ?」

 

 

 さらに頭を下げ、直角になるラーファル。腰回りがプルプルとしており、結構つらそうだ。

 

 

「そのあとはもっともっと頭を下げて、わざわざこの様な所にまで足労頂いた謝礼をせねばなるまいなぁ?」

「も、もう曲がりませぬ……」

 

 

 見た目はさておきエルフの基準においても老体に足を踏み入れ始めたこともあってか、あまり身体は柔らかくないらしい。そよ風が吹いただけで倒れそうな状況ながらも、ラーファルは謝罪に必死である。

 ともあれドライアド自身に対する内容が全く触れられていないあたり、少しの配慮が見受けられる。一方、精霊の気まぐれ故にスルーしていたタカヒロだが、そろそろ辞めさせるべく口を開いた。

 

 

「ドライアド。揶揄(からか)いも度が過ぎれば洒落にならん、その辺りにしておけ」

 

 

 ヘスティアが耳にしたならば、女神が披露してはいけない表情を繰り出していたことだろう。

 

 

「すまぬすまぬ、ここまで愉快な催しは久々じゃ。つい、こ奴らが面白くてのぅ」

 

 

 ケラケラと笑う大精霊は、久々となる人々との交流を満喫中。まるで田舎から都会に出てきた子供に少し毛が生えた程度のはしゃぎ具合が収まるには、まだ少しの時間が要るようだ。

 ヒーリングレインを受けた事によって、テンションが上がっていることも要因だろう。そしてどうやら、違う者がターゲットに選ばれる事となる。

 

 

「ところで小娘、その者は(わらわ)の祝福を持っておる。いつまでも野放しにするならば、(わらわ)が攫ってしまうぞい?」

 

 

 唐突として行われた爆弾発言。大精霊ジョーク、またの名を“リヴェリアいぢり”である。

 とはいえ、権力者のジョークほど(たち)が悪いものはない。目を見開いて驚きの表情を隠せないリヴェリアだが、彼女とて、どうすることも叶わないのだ。

 

 

「……ドライアド様。どうか、どうか、お控えいただきたく」

 

 

 リヴェリアはエルフである以上、ドライアドの言葉を明確に否定することはできない。故に部屋の床に片膝をついてひれ伏し、どうにかして言葉を撤回してもらう他に道がないのだ。

 テンション上がって“いぢり”すぎた精霊に対し、自称一般人から釘が刺される事となる。鋭い視線をドライアドに向け、タカヒロは非常に重い口調で言葉を発した。

 

 

「最後通告だ。二度目は無いと思え」

 

 

 直前、レリックは通常装備に戻される。消えるデス・ストーカーと共に、再び現れ輪をかけて強くなったこの世のものとは思えない程の強烈な怒り(オレロンの激怒)。ドライアドとて、ゾクリと背中が震え目を見開いた程だ。

 同時に現れる、身の丈2メートルを少し超えた程の、半透明な赤い騎士。アクティブスキル名“サモン ガーディアン・オブ エンピリオン”と称される存在は、間違いなく原初の光である“エンピリオン”に仕えるガーディアン。

 

 

「っ――――」

 

 

 目を見開いたままの彼女は、固まるほかに道がない。彼女が木々の精霊だというならば、光とは必須の存在だろう。

 だからこそ、ソレの化身に逆らうなどと、本能のレベルから行えるはずがない。なんなら植物にとって、もう一つの必須要素である“大地(メンヒル)”の化身であることを告げたならば、恐らくヘスティアが天に返る事だろう。

 

 今までにない存在は、容赦をする気配は見られない。リヴェリアと大精霊の祝福とを天秤にかけた際に僅かな迷いも見せず前者を選ぶ存在は、例えドライアドとて怒らせてはならない者。ここに来て初めて見せた明らかな怒りの感情は、周囲の驚愕と共にドライアドにも伝わっている。

 もっともドライアドとて“戯れ”の一環であり、リヴェリアを筆頭にエルフ達を貶すつもりなど欠片もない。片腕を失った阿呆だけは例外だが、そちらについては自業自得だ。

 

 

「御仁すまぬ、調子を上げすぎた。許せ小娘、そして案ずるな。我等精霊の祝福と、そなた等の婚姻とは全く違うものじゃ」

 

 

 ドライアド曰く、ようは他の精霊共が手を付けぬための祝福とのこと。例えばの話だが、炎の精霊を司るサラマンダーがタカヒロに手を出そうとしても、既にドライアドによる祝福という宣言があるために無効となるモノらしい。

 どうあれ、自称一般人が生命の樹(ユグドラシル)の加護持ちということで、ドライアドとしても何があっても絶対に手放すつもりはないらしい。その点だけは念押しをしており、リヴェリアも納得できる内容だ。

 

 

「愛されておるのう、リヴェリア・リヨス・アールヴよ。羨ましい限りじゃ、大切にするのじゃぞ?」

「改めて、胸に刻みます」

「じゃが、所詮は男。多少の羽目外しについては目をつむるのじゃぞ。どっしりと構え、器の大きさを示す事も妻としての仕事の内じゃ」

「……」

「そうじゃ、側室も考慮せねばならぬのう」

「し、しかしドライアド様……」

 

 

 端的に述べるならば、無粋で下品な話である。少し前に疑惑となった事件が生じていた事もあり、リヴェリアは何も言い返せない。

 

 ともあれ、勝手に暴走しているドライアドは止まる気配が見られない。そして止めることが出来るのはタカヒロだけであることと、彼に関する話でもある為に、強引に割り込んで釘をさす。

 

 

「ドライアド。自分は、王の立場とは程遠い」

「なんじゃツマラン、玉座には興味がないかえ?」

「興味が無い点も事実だが……もしも自分が座ったならば、この国が持つ影響は地に落ちる事だろう」

 

 

 エルフの始祖、アールヴ一族。その血を継ぐ者によって、この国は遥か昔より栄え、存続を続けてきた。そして、一族が王の座につくという歴史を紡いでいる。

 もしも玉座の歴史において、無造作に有象無象が入り込んだならばどうなるか。ドライアドや天の大樹(ユグドラシル)の加護という一撃必殺級の武器があるものの、その者はアールヴの血を引いていない。

 

 ハイエルフが、この国の王であり続けたからこそ。この国の王とは、ハイエルフ以外にはあり得ない。

 

 単なる婚姻とはワケが違う。結末は、先程タカヒロが口にした通りの内容となるだろう。そうすれば、なし崩し的にアルヴの森、そしてアールヴ一族、連動するようにしてエルフという種族は衰退する事になる。

 エルフスキーな事もあって、タカヒロが最も望んでいない結末の一つに他ならない。とはいえリヴェリアと離れる事などそれ以上に在り得ない為、円満にはならないと知りながらも、最良の結末を模索している。

 

 

 相も変わらずの仏頂面にて彼が胸の内を告げると、控えめにワタワタと落ち着きが無くなるlolエルフ。そんな彼女が珍しいのかフォターナは薄笑みを浮かべている一方、ラーファルの表情は真剣そのもの。

 もしもそのような道があるならば、父もしくは王のどちらかを捨てる結末は生まれない。つまるところタカヒロが口にした腹積もりでは、今後アルヴの森の玉座に就くのは、今と変わらずラーファルだ。

 

 そして下種な言い方をすれば、王の子として生まれたリヴェリアにある責務は、子を成してアールヴの血を紡ぐこと。王族としての責務、ハイエルフとしては難しい部類となる責務を彼女が果たす事で、周囲の理解の一つとする算段である。

 その相手が色々と祝福を持っている為に、アールヴの一族にとって彼を婿に迎える事は誉であると対外的にも発表しやすいことが幸いだろう。いずれにせよ大なり小なり批判もあるだろうが、それはどの道を辿ろうが同じ事。

 

 これらタカヒロが口にした考えを援護するかのように、ドライアドが口を開く。「リヴェリアの子に祝福を授ける」的な発言が飛び出したために、リヴェリアを含めたエルフ一行は驚きを隠せない。

 アールヴ一族、ひいてはエルフが栄える為の大義名分が用意されたのだ。これに口を挟む者は、例え居たとしても片手で数える人数だけだろうとラーファル達は考えている。

 

 

「それほど生きておれば察しておるだろう、保持などいつでも行える。されど変わる機会は、そう易々とあるまいぞ」

 

 

 ポツリと零れたドライアドの言葉に、ラーファルが眉を動かして反応した。

 いい機会、という表現が適切かはさておき、外から血を取り込もうとしている今のタイミングこそ、少し大きな革変をするべきではと考えを巡らせているのだ。幸いにも周囲は協力的であるために、根本的な失態さえ行わなければ憂いは無い。

 

 

 今までは保守的であったものの、ここで動きを見せるべきかと、ラーファルは決意を大きく固める。まさに想定外の事態が連発したものの、幸いにも、最も頼りになる大きな武器は彼に味方している状況だ。

 リヴェリアが見てきた“外の世界”、彼女の目と耳と口は、彼にとって大きな武器の一つとなるだろう。その為に意見を述べるようリヴェリアへと言葉を掛けたラーファルだが、返答は予想の範囲を超えた内容だった。

 

 

「父上。僭越ながら……同じエルフの私ではなく、タカヒロの意見が宜しいかと」

「なるほど」

 

 

 王の同意によって、視線が一人のヒューマンに集結する。無茶振りとも言えるリヴェリアからのパスであるが、どうやら彼の中では既に答えが出ているらしい。

 

 

「まず認識の擦り合わせですが、前提として……出来る事とは、行わなければならない事と同一ではありません」

「然り。続けてくれ」

「では、大雑把ですが簡潔に。世界が歩んでいる、大きな道を侮る事は愚策でしょう。古き装備(伝統)を継承する点は承知しているつもりですが、装備(時代)の進化を侮る奴は、瞬くうちに孤独となります」

 

 

 間違ってもいない上に良いことを言っているかもしれないが、あくまで基準が装備であることは揺るがない。もしくは、ビルドという3文字で置き換える事も出来るだろう。

 とはいえ、オラリオで産出される魔石を用いた数々の道具。少なからずここアルヴの森にも商人を通じて流れてきており、それがどれ程に便利で効率の良い代物かはラーファルとて知っている。

 

 出来る事の全てを行うワケではないとタカヒロが示したように、逆も然り。エルフの伝統の全てを捨ててまでオラリオに合わせるなどして変わる必要などどこにもなく、誰しもが望んでいない結末の一つだろう。

 噛み砕いて言えば、ラーファルの考えとリヴェリアの考えが共存する事が最良だ。間違っていないとラーファルが信じていた保守的な部分、アールヴが栄える事によってエルフの伝統と繁栄が守られる事が、何よりも優先されるべき事象である。

 

 

「皆、聞いてくれ」

「「「「ハッ!」」」」

 

 

 方針は、ここに決まった。今すぐに、今ある何かを大きく変えることはない。

 しかし一歩ずつ確実に、皆で意見を出し合いながら、外の世界へと交流を深めていくことを宣言した。この場に居たエルフたちは片膝を付き、王の言葉を受け入れている。

 

 もっとも、ドライアドとタカヒロが揃って同様の考えを口にしているのだから、反論できる者など存在しない。この点は、現時点におけるエルフの悪い点の一つだろう。

 しかし形はどうあれ、エルフの里が大きな一歩を踏み進めた歴史である。方向性を違えなければ、彼等は一躍の発展を遂げるはずだ。

 

 

 その中心に誰が居るかとなれば、ラーファル王。次点として、その身でもって外の世界を見てきたリヴェリア・リヨス・アールヴだ。

 オラリオで暮らしている事もあって、言うなればアドバイザーのような立ち位置だ。無論その際は、オラリオで暮らすエルフを含めて様々な人物が力を貸すこととなるだろう。

 

 

「リヴェリア、ちょっと……」

「なんでしょうか、母上」

 

 

 大きな問題の方向性が定まったものの、静かにリヴェリアを呼びつけたフォターナは、親として不安とする要素が一つある。それは種族差ゆえに生じる、どうしようもない寿命の差だ。

 生粋のエルフ同士の婚姻でも50年、長くて3桁の年数が夫婦間で生じたとしても一般的というのが、エルフという種族にとっての常識である。

 

 

 しかしやはり、リヴェリアとタカヒロは全く気にも留めていない。「仕方ない」の類の言葉が同じタイミングで出たこともあり、二人は横目の視線を合わせて軽く口元を歪めていた。

 このようなやり取りを見ていた、もう一方。返答を耳にしたドライアドは、疑問符を浮かべるように片眉を少し歪める事となった。

 

 

「なんじゃ、気付いておらんのか?ともあれ問題はなかろう、結末は最良か。さてラーファルよ。先より持て成す用意が見えんのじゃが、よもやこれほどの者を無下に扱うつもりではなかろうな?」

 

 

 思わせぶりなドライアドの言葉だったが、ラーファルに対する一言で場が騒がしくなり流れてしまう。確かに予想だにしていなかった賓客が二名も居るワケであり、当然エルフ陣営では持て成す用意の欠片もありはしない。

 今までにおける話の途中、数名は「準備しなくていいのかな」と思いつつも、口をはさむ勇気が出なかった。おかげさまでハードルの高さは最高に匹敵する程であり、だからこそ騒ぎは広くなる一方である。

 

 そんな空気が流れる方向を沈めたのは、やはりタカヒロの一言だった。いつもは余計な――――もとい、彼の根底に基づいた言葉で場を引っ掻き回すのだが、此度においては幸いにも“普通”である。

 

 

「待てドライアド、目的は済んだ。自分たちは、このままオラリオへ戻る予定でいる」

「む、そうか。だとしても同様じゃ。ラーファルよ。よもや往路と同じく、片手で数える迎え送りで済ますつもりならば相応であるぞ」

「此方としては気にしていない、それよりもラーファル王。歓迎を受ける事は有難いのですが、別の日程にしては貰えないでしょうか。自分とリヴェリアは、オラリオの問題が優先と捉えております」

「のっぴきならない事情と……いう、事でしょうか」

 

 

 静かに頷いたタカヒロとリヴェリアに、ラーファル王は状況を察している。オラリオが抱える状況については、リヴェリアに関する報告とセットで少量程度ながらも報告を受けているのだ。

 無駄なことは行わない娘と、その娘が選んだ伴侶が頷いたのだ。オラリオで何が起こっているかまでは把握していないラーファルだが、戯言ではないと信頼を置いている。

 

 

「大筋の事情は届いておるが、地上も争いが絶えぬのう」

「戦い食べ続けるは、生き物の定めだろう」

 

 

 そうでもしなければ生きていけないと、タカヒロは皮肉交じりに口にする。“生き物”のくくりに定命の者ではない精霊や神々が含まれていない事を感じ取り、ドライアドはフッと軽く笑って同意した。

 

 

 もっともドライアドが述べたように、このまま“見送りなし”というワケにはいかない。一応ながらも諸外国の重要人物を出迎えるときの作法はアルヴの森においてもある為に、ラーファルは各位に指示を飛ばす。

 

 

「各位、厳に命ずる!」

「ハッ!」

「我等にとって、最も大切な客人のお帰りだ。警備を厳に、すぐさま配備せよ!」

「ラーファル王のご意向のままに!」

 

 

 ブレイクショットされたビリヤードの球のごとく駆け出す、エルフの貴族や兵士たち。いくら彼等とはいえ、準備には数分の時間を要するだろう。

 

 

「どうしたタカヒロ、帰るのだろう?」

 

 

 なお催促するリヴェリアは、全く気に留めていないようだ。しかしタカヒロには考えがあるらしく、盾を仕舞って腕を組んだままで口を開く。

 

 

「下種で無粋な言葉を並べる事になるが、呼びつけた上に問題を生じさせて適当に帰したとなれば、この国の威厳は丸潰れとなる。数分の差だ、待つとしよう」

 

 

 ものすごーく内心で頷いているラーファル王は、気を利かせてくれたタカヒロに対して盛大な感謝の念を口にしたい程だ。繰り返しとなるが、適当にあしらった者が生命の樹(ユグドラシル)の加護持ちとなれば猶更である。

 気を使っている事は明らかなタカヒロだが、もしも今すぐに帰ると言い出してもラーファルは止められない。先にリヴェリアが口にした言葉通りにならないかと不安が強く、再び胃の辺りが痛み出している。

 

 

 それでも数分もすれば用意は整い、迎えの衛兵が最敬礼と共に入室してきた。先導に従い、タカヒロとリヴェリアは玉座の間を後にする。

 

 

 しかし、そんなラーファル王の相方。フォターナは至って真面目な表情を見せており、タイミングを見計らって口を開いた。

 

 

「タカヒロさん」

「はい」

 

 

 今までとは違う気配を前に、静かに振り返って返事を行ったタカヒロも改めて背筋が伸びる。続けざまに作られた数秒の空白によって、周囲の意識が二人に向いた時だった。

 

 

「不器用ですが、私達が自慢する娘です。リヴェリアを、宜しくお願い致します」

 

 

 両手を股の前で重ね合わせ、フォターナは深く頭を下げる。慌てた様子を隠しきれなかったラーファル王もあとに続き、同類の言葉を発していた。

 

 5W1Hのように具体的な内容こそないものの、何に対するどのような言葉であるかは、全員が察している。今回はバタバタとしていた為に改めて報告に上がろうかと思っていたタカヒロだが、予想に反して先手を取られた状況だ。

 ともあれラーファルやフォターナからすれば、娘を格上の者に貰って頂く、と表現して過言は無い状況なのだ。ワタワタと落ち着きが無くなるポンコツの横で普通の家庭の娘を貰う感覚でいるタカヒロとは随分と温度差があるものの、いずれにせよ、その男が返す言葉は一つである。

 

 

「改めて、心得ました」

 




なんとか、自分の中で纏まりました。
本パートは、これにて最後です。
そろそろ終わりも近いですね……さて誰の終わりなのやら。
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