その迷宮にハクスラ民は何を求めるか   作:乗っ取られ

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いったい何が暑いんですかね(すっとぼけ)

それはさておき、全国的に突発的な豪雨となっているようです。
皆様、ご自愛くださいませ。


56話 暑くなってきた

 24階層の一件から2日が経過した。最近のベルは専らアイズとの鍛錬を続けているが、頻度は少なけれど、タカヒロとの鍛錬も継続して行われているのが現状である。

 その時は基本としてアイズとの鍛錬で行った立ち回りの検討などとなっており、昔と違って内容としては易しいものだ。その分、アイズとの鍛錬が原因で特定のステイタスが急上昇しているのはご愛嬌である。

 

 レベル2へとランクアップしたとはいえ技術力が変わるわけではなく、ベルとタカヒロの鍛錬が終わるのはもう少し先の話になるだろう。この日は午前中の鍛錬を終えたのち、午後から例のサポーターとダンジョンに潜るようだ。青年の記憶が正しければ10日目であり、初回契約の最終日となっている。

 鍛錬としてはアイズがやってくる前に準備運動がてら軽いおさらいをしており、二人とタカヒロはそこで別れている。先日の一件があった故に、二人きりの方が良いかと、リヴェリアもタカヒロも気を利かせているというワケだ。

 

 ヘスティアは相変わらずのアルバイト家業中であり、青年はガントレットの作成待ちであるために自由の身。こちらは既に5日が経過しているのだが「未だどうにもならない」とはヘファイストスの弁であり、不安げな空気が漂いつつも延長戦となっているようだ。

 先日にエンカウントしたフェルズからの連絡も未だなく、こちらから連絡しようにも連絡先が不明である。この点に関してはそのうち事が進むだろうと、今のところはあまり深く考えていない。

 

 

 ということで、今日は彼女の教導もないためにやることがない。北にある秘密の訓練所から教会までは距離があるため鎧を着たまま市場へと赴き、掃除用具一式にティーバッグと簡単なお菓子を買って秘密基地へと足を向けた。距離の問題だけではなく、着替えるのが面倒というズボラでもある。

 秘密基地に足を向けた目的は、半月ほど前におけるサーキュレーターの制作過程で出た木くずや廃材を処理するため。放置してしまったゆえに綺麗とは言えない床の現状となっているために、試運転の名の下に楽しむには掃除が必須だろうと重い腰を上げた格好だ。

 

 流石にフードは外して作業をするらしい。モップ、ヨシ。ゴミ袋ヨシ、水inバケツ、ヨシと、自分自身の周囲の一通りを見回している。

 掃除機などという便利な代物は無いために、これまた原始的ながら至高の発明である掃除用具MOP(モップ)を水に漬け。その段階で、まずはガラクタをゴミ袋に仕舞う作業が先だったことに気づき、作業に入ろうとした時だった。

 

 

「――――む?」

 

 

 木製の扉が、規律が良いノックの音を響かせる。強さも響く音量も屋内に居る彼からすれば非常に適切であり、妙に品のあるように感じ取れた。

 

 とはいえ、訪ねてきたのが誰かが分からない。滅多に使わないこの家の事を知っているのは、ヘスティアとベルを除けば不動産会社ぐらいのものである。

 しかし、その二人ではない。ヘスティアはアルバイト中である上に、もしベルの予定が変わって来たならば、大きな声で訪れたことをアピールするはずだ。先ほどの洗練されたノックとも釣り合わないだろう。

 

 それでも、別にこの家が周りから見えなくなるようなステルス性能を備えているわけではない。訪問販売然り、誰かしらが訪れることもあるだろうとは思っていた。

 今開けるとの旨を声に出し、彼も入口へと歩いて行く。鍵を解除し扉を手前に引いて開き、少しだけ青年よりも背の低い緑髪の人物との対面と相成った。

 

 

「……」

「……」

 

 

 互いに真顔のまま、目と目が合う。やや下方に向いている仏頂面の漆黒の瞳が、やや上を向きつつも同じく仏頂面である彼女の翡翠の如き瞳と交わり、そこらへんの神をも上回る程の精細な顔立ちを間近で見る。

 まみえる高尚(こうしょう)さは普段と変わらず。肌きめ細やかで白いなー。睫毛長いなー。すっごい瞳キラキラしてるなー。髪の毛サラッサラだなー。男が抱いたのは、そんな程度の感想だ。

 

 そして数秒後。

 

 

 バタン・ガチャッ。

 

 

 このまま家に上げれば床の惨状を目にして、絶対にガミガミと説教垂れる。そんな結末が容易に想像できたタカヒロは、勢い良く、先の2つの音を連続して鳴り響かせたというわけだ。

 

 

「おい!」

 

 

 まさかの反応に対する、彼女の驚きの言葉もなんのその。青年は玄関先に誰も居なかったように扉を閉じ、鍵をかけて部屋へと戻った。掃除が自分を呼んでいると小言を口にしているが、只の言い訳に他ならない。

 

 そして相手方も、先ほどまでの品の良さはどこへやら。ドンドンと扉を叩く音が、徐々に強くなっている。

 それに混じって、何かしら声も聞こえている。念のために彼は少し玄関に近づくと、つい先日にも感じた気配と共に、とんでもない言葉が聞こえてきた。

 

 

「――――閉ざされる光、凍てつく大地」

「おい待て冗談じゃねぇぞ……!」

 

 

 つい先日の24階層での戦闘において彼女が見せた、氷魔法による攻撃を行うための詠唱であった。借り物件とはいえ、せっかくの隠れ家を氷塊にされては、たまったものではない。

 いや、それで済めば逆に万々歳であるだろう。暑くなってきている世間一般に対し、この家と周囲だけがイイカンジに氷河期に突入することは明白だ。

 

 でも家そのものが、間違いなく消し飛んじゃう。建て直しと言う名の、莫大な違約金が発生しちゃう。

 正直なところ金銭面の方はどうでもよく、工面することは容易だろう。しかしながら、不動産屋のブラックリストに登録されるのだけは御免被るというのが青年の心境だ。

 

 そんな危機感を抱くタカヒロだがドアを叩く音は続いているために、相手は並行詠唱を使ってコトの準備を進めているのだろう。見る者が見れば、文字通り、才能の無駄遣いに他ならない光景であった。

 とりあえず、止めさせる以外に道は無い。魔法の前に腕力でドアが吹き飛ぶ方が先ではないかと思える程に強くなってきたドアを叩く音を耳にしながら、彼は勢いよく鍵を解除して、流れるようなスムーズさを兼ね備えつつ、迅速に玄関扉を引き開いた。

 

 

「あっ――――」

「っ!?」

 

 

 威力を抑えるために、魔力を絞りに絞っていたとはいえ。詠唱していたリヴェリアからすれば、突然の事態である。

 勢いよく手を振り下ろした直後、叩きつける対象は手の届かない程に後方へと移動した。まさにピンポイントというタイミングで内側へと開け放たれた玄関ドアを叩くために乗せられた体重は、支えを見失って前へとつんのめり―――

 

 しかし、練り上げている魔力は止まらない。並行詠唱とは、炎の海の中を爆弾、彼女ほどの魔力ともなれば、引火性の燃料が入った樽を持って駆け回る程に危険な行為なのだ。

 

 そんな火薬庫まではいかない今回の詠唱だが、いくらか少量の火薬という魔力を乱れた集中力で扱ったならばどうなるか。他ならぬ彼女の授業で習った“魔力の爆発”が起こることを察知して、ウォーロードは床を蹴る。

 本来は対集団用の突進スキル、先の15階層において怪物の宴(モンスターパーティー)の波を真っ二つにした“堕ちし王の意志”でもって彼女の身体をかっさらい、一瞬にして軒先の更に先へ退避する。彼女は敵と判定していないために、スキル使用によるダメージは発生しないのはお約束だ。

 

 直後、暴発した氷魔法が玄関ドア及び周囲一帯を破壊した。魔力を絞っていた事だけは幸いし、玄関ドアの破損で済んだのは奇跡的と言えるだろう。

 

 

「……すまない。助かった」

「……」

 

 

――――(はしゃ)ぎ過ぎだ。小娘か君は。

 

 意外と素直に謝る彼女に対してそうでも言いたかった彼だが、流石に今回は溜息しか生まれない。右手でもって彼女の腰回りを抱えたままでいるのだが、そんな現状にも気づかない程に呆れている。

 一方の彼女はそんな状況に気づいており、顔を右に傾げてその手を見る。理由はさておき助けられたことは事実であり、かつ彼が回している手も、いやらしさは見られない。傍から他のエルフが見ればヒューマンがハイエルフに触れているという怒り心頭からの阿鼻叫喚の地獄絵図になる状況だが、誰も居ないためにセーフだろう。

 

 また相手の前で素直になれず、何かと一言を口にしたくなってしまうのは彼女も同じである。一応は感謝の言葉は口にしたものの相手は呆れており返答がないために、気になっていた2つ目のことを口にした。

 

 

「それにしても、この鎧の棘は何とかならんのか?棘の部分の圧迫具合が、コート越しでも分かるぞ」

「注文が多いな、生憎と棘はそこかしこにある。だったらこの格好にする、かっ!?」

「なあっ!?」

 

 

 一歩だけ後ろに下がったかと思えば、持ち得る筋力を発揮して右手だけで彼女の身体を仰向けになるように宙に浮かべる。そして左手は、膝の裏に手を入れて体勢を維持したわけだ。

 確かに、鎧についているトゲが当たることは無いだろう。とはいえ逆に、そんな程度の事は、どうでもよくなってしまうような状況へと変化した。一瞬の出来事により、レベル6とて反応するスキが無い。

 

 説明をする必要があるだろうか。俗に言う“お姫様だっこ”、なお彼女にとっては初体験である。

 目を見開きつつ思わず両脇と肘を畳んだリヴェリアだが、それこそ若い女性がやるような仕草をしていると自覚したが故に恥ずかしさは一入だ。一方でフードの下から見える彼の表情に感情は無く、何を考えているのかは読み取れない。

 

 彼の表情や感情はさておき、こんな状態で誰かしらの他人、特に知人と遭遇したらどうなるか。それはもう彼女が持つ羞恥心がバーサーカーになることこの上なく、下手をしたら酒を飲んだアイズのように何を仕出かすか分からない。先程までに見せている乙女な反応はどこへやら、間違いなくナインヘルとして暴走を始めるだろう。

 しかしながら、実際はオーバーヒートにて行動を停止することとなる。視線を逸らし、か弱い声で「下ろしてくれ」と抵抗する彼女の対応にドキっとしたタカヒロは、調子に乗ったことを一言詫びると彼女を降ろした。

 

 

 なお、勢いで青年がやっちまったこの対応。やった本人も、最後にはフードの下で頬を少し赤らめ恥ずかしがっていたのはご愛敬である。

 

=====

 

 

「……で。君は、こんなところで何をしているのだ」

 

 

 まだ、うっすらと頬が高揚しているような気がする若干半目なハイエルフ。余っていた廃材を打ち付けて応急処置的に玄関ドアを直したタカヒロと共に、二人はリビング―――らしき部屋に入って、彼女は引かれた椅子に腰かけ口を開いた。

 一方の彼は椅子を引き終えるとゴチャゴチャとした床を簡易的に片づけており、ガチャガチャとした金属音や木材同士が当たる音が響いている。なお、そこには彼の着る鎧が発する音も含まれているのはご愛敬と言ったところ。もはや、どちらの音か分からない。

 

 

「見ての通り、後片付けと掃除さ。作りたかったモノが無事に出来上がってね。季節的には少し早いが、是非とも堪能しようかと」

 

 

 その言葉と共にテーブルの上を指さす先には、四角い箱のようなもの。料理の煙を屋外に逃がす煙突に似ている。

 というのが、彼女が抱いた率直な感想である。何に使うのかサッパリ分からず、顔の位置を動かして様々な角度と距離から眺めていた。

 

 

「で。リヴェリアこそ、なにか自分に用事でもあったのか?」

「ん……いや、大したことではない。ゴミを入れる袋を抱えて歩いていたところを偶然にも見かけてな。鍛錬に付き合わないとなると、何を始めるのかと気になっただけだ。まさか、こんな家を買っていたとはな」

「買ったのではない、半月ほど前から一年間の借家となっている。早速だが誰かさんに壊されたせいで、違約金モノだ」

「……」

 

 

 相変わらずタカヒロは煽る言葉を残し、モップの水をきって床を拭く。もともと方向を変えるギアの作成については屋外で行っていたために、木くずも僅かなものとなっていた。

 口をへの字に曲げるリヴェリアだが、毎度の如く事実であるために言い返せない。いくら出会い頭に鍵を掛けられたところで、街中で魔法をぶっぱなす理由にはならないのは当然のことだろう。

 

 物言いたげな目線を彼に向けているうちに、簡易的な掃除は終了する。モップは洗えば再利用できるために台所に、ゴミ袋は部屋の片隅に留置された。捨てる気になるまで、更に数日を要する奴である。

 その後、清掃終了後に楽しもうと事前に淹れていたアイスティーを、買ってきた焼き菓子と共にテーブルに並べている。カップが適当なのは許してくれと口にするタカヒロに対しお茶の礼を述べるリヴェリアだが、ともかく目の前の装置が気になって仕方ない。

 

 

「ところでタカヒロ。なんなのだ、これは」

「さっきも言ったけど、自分が作った便利品だよ。名づけるならサーキュレーターと言ったところか。これを左右に動かせば向きの変更。で、ここに加工された魔石を置くと……」

 

 

 ブオッ、という空洞内で空気が動く独特の音と共に風が生まれる。微風より強い程度ながらも、安らかな心地良い風を生み出していた。

 目を開いて感動した表情を浮かべるリヴェリアは、目の前で動いているコレがいかに偉大な発明かを瞬時にして感じ取った。夏場に苦労する暑さも冷却用に加工された魔石で乗り切るのが普通だが、自然と共に暮らしてきたエルフからすれば、“風”を生むこの装置の重要さは語るまでも無いだろう。

 

 ――――エアリエルがある?死ねるのでやめましょう。

 

 十数秒サーキュレーターを眺めて開発者の顔を見るも、既に目線は机の上。本人の前にある紙に何かしらを書き込んでおり、彼女も横から覗き込むが内容はサッパリわからない。そのために、椅子1つ分の隙間を挟んで隣にある座席に腰かけた。

 

 サーキュレーターの吹き出し口は二人の間を向いているため、互いに風は微かに当たる程度となっている。それでも無風の時から比べれば快適度合いは段違いであり、爽やかさが生まれるには最低限のラインはクリアしている。

 しかしそうなると、マトモに当たればどうなるか気になるのが未経験者というものだ。加えて日頃の言い合いに負けている彼女は、誇りなんぞ投げ捨てて、とある行動を選択する。

 

 ぐいっ。

 

 リヴェリアはサーキュレーターの土台に手を掛け、自分に一番風が当たるようにその向きを変えてしまう。タカヒロの物言いたげな視線によって無言の抗議を受けるも何のその。むしろ何故か、誇らし気にバッグから本を取り出している始末である。

 

 ぐいっ。

 

 当然と言えば当然だが、青年によってサーキュレーターの向きは戻された。それを予測していた彼女は、相手の手が引っ込んだことを確認すると、再び先ほどの行動に出る。

 

 ぐいっ。

 

 

「いつっ」

 

 

 中々のドヤ顔で子供の悪戯のようなことを繰り返した手の甲に、跡も残らなければ痛みもあまり感じない物凄く弱いデコピンが放たれた。まさかの一撃に、彼女はポカンとした表情を浮かべている。

 

 ぐいっ。

 

 そもそもコレは自分のモノだ。と言いたげに、青年はサーキュレーターの向きを中央に戻す。気持ち、最初の状態よりも自分向きだ。さらさらと流れていた緑の髪が肌につき、先のデコピンもあって彼女は口をへの字に曲げている。

 リヴェリアが向ける物言いたげなジト目による無言の抗議を受けるも、メンヒルの防壁は揺るがない。何事もなかったかのように、記した計算式を見て唸っているだけだ。

 

 直後。ガタッ。と、椅子が動かされる音がした。

 

 左方より感じる他人の息吹。彼が座る場所のすぐ横に椅子を移動させたリヴェリアは、そのまま椅子に腰かけ携帯していた本を読み始めたのである。

 互いの距離はほとんどなく、少し大きめに腕を動かせば相手に当たってしまうだろう。ピッタリ揃って机に向き合うわけではなく少しだけ斜め方向になっている椅子の向きが、逆に“いい味”を出している。

 

 そんな状況ながらも、今のタカヒロは計算式を組み進めることに夢中であるために反応は無い。一度だけ目線を向けるも何事も無かったかのように視線を戻し、少しだけサーキュレーターの向きを彼女に向ける。そして、何かの数値を書き込んでは斜線で消したりの繰り返しを再開した。

 

=====

 

 

「ベル、大丈夫……?」

「あ、はい、大丈夫で、す……」

 

 

 北区にある、西区へと続く裏路地のような移動通路。二人きりということで例によってテンションの上がった少女に打ち負けた少年ベル・クラネルは、アイズの肩を借りて路地を進んでいた。

 密着状態にあるとはいえ、心を占める嬉しさは3割程度。逆に情けなさが7割ほどを占めており、以前のようにボロボロにはなっていないものの、完膚なきまでに負けてしまった自分を嘆いている。

 

 ともかく現状ではバテバテであり、ゼンマイが切れる寸前のカラクリ人形の様相。午後はダンジョンに潜るためにどこかで休む必要があると判断し、最も近くて人気のない己の師の隠れ家へと向かっているところである。

 心のどこかで永遠に続いて欲しいなと思っていたアイズの介護も、道半ばで終わることとなる。レベル2になって(アミュレットを装着して)から随分と体力の回復が早くなったと感じている少年は、アイズと並んで雑談交じりに残りの道を進んでいた。

 

 やがて見えてくる、ポツンと孤立した小さな一軒家。他ならぬ己の師の隠れ家であり、ベルも何度かお邪魔したことがある場所であるものの、いつもと様子が違っていた。

 理由は不明なれど玄関ドアとその周囲は非常に傷んでおり、何かあったのかと窓から中の様子を(うかが)う。建物を建てる際に基礎で嵩上げをするという概念がなく屋外と屋内の床がほぼ同じ高さとなっているこの世界においては、少年程度の背丈でも窓から中の様子を覗き込むことは可能なのだ。

 

 しかし、1秒ほど覗いただけですぐに窓から離れてしまう。何かあったのかと可愛らしく首をかしげるアイズに、少年は苦笑しながら返事をした。

 

 

「いやー、その……ちょっと、近寄りづらくて……」

「……?」

 

 

 ベルの背中越しに覗き込む彼女の目に、寄り添う二人の姿が飛び込んでくる。室内だというのに不思議と互いの髪が微かに揺れているが、そんなことは気にならない。

 

 優しく透き通るような時間が、それこそ恋人が寄り添うかのような穏やかな空気がそこにある。

 一緒に居て当然、近くに居て当然。それが必然であり自然体でもあるかのような雰囲気が、外から見ていても分かる程に強く在った。

 

 

「あんな感じなんです。やっぱりあのお二人、仲が良いですよね」

「うん……驚いた。リヴェリアが、あそこまで……男の人とくっついてるなんて、初めて見る。良い、雰囲気だね」

 

 

――――でもそんなの関係ねぇ。

 

 とでも言わんかの如く、アイズは扉へと足を運んでいた。てっきり良い雰囲気のためにしばらくそっとするのかと思えば、言動の不一致に動揺する少年である。

 あくまで彼女は、休憩を取るというベルの用事を済ませるために優先して行動をしているのだ。なぜだか非常に傷ついており取って作られたようなドアである点は不思議に思うも、特別気にすることなくノックしている。

 

 数秒程してタカヒロがドアを開き、アイズとベルを出迎える。そして必然的にサーキュレーターの説明を行っており、来客の二人は文明開化の代物にすっかり虜となっていた。リヴェリアのポジションはそのままに開発者のタカヒロが追い出され、アイズが席に着き、その後ろからベルが堪能したのは必然である。

 風の当たらない位置に追い出されて不貞腐れた反応を見せるタカヒロを、リヴェリアがいつもの口調で宥めるという構図が発生しており、タカヒロは「2つ目作るかー」と呑気なことを呟いた。それに対しアイズが間髪入れずに「3つ目も!」と要求するなど、和やかな場面となっている。

 

 

 しばらくして昼も手前となり、そろそろダンジョンへ向かうとベルが切り出し、この団欒も仕舞いとなる。階層は違えどアイズもダンジョンへ行くようであり、タカヒロとリヴェリアは玄関にて、二人の背中を見守りつつ送り出すのであった。

 




普段はオトナなのに、二人になると羽目を外すギャップ

だいすき



さて、平和パートも一区切り。
次回から数話、とある人物のパートになります。
誰の話かは、この話にヒントがありますのでお楽しみに!




P.S.
10点評価を頂いた事が嬉しくてホイホイ投稿しちゃうガバガバ投稿スケジュール()
ストックの貯蔵は十分か?(白目)
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