その迷宮にハクスラ民は何を求めるか   作:乗っ取られ

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70話 ロキの悪戯

 本日のヘスティア・ファミリアにおける仕事はお店が開くと同時の買い出しであり、主神を含めて3人しかいないもののファミリア総出で任務を遂行している。ベルがダンジョンで使うポーションなどの備品の調達もさることながら、玉ねぎなどの日持ちする食材を買い出すことが目標の1つだ。

 その他で言えばジャガイモなどいくらか重量物が多いために、ファミリア揃って買い出しに来ているというわけだ。ヘスティア曰く、ベルが食材まみれになって必死に運ぶ姿は、市場の奥様方に対してウケが良いらしい。要は“おまけ”や“サービス”狙いの面も含まれているのだから隙が無いコトだ。

 

 この3人、先日はロキのところの食事会に呼ばれていた。そのために一日だけとはいえ食事が不要となるタイミングを見計らって、ストックしている食材を消化しきるという涙ぐましい効率化の努力も見せている。

 もう一人の眷属に一言お願いすれば数年分の食費など一瞬なのだが、節約についてはベルとヘスティアが持つ病の類と言っていいだろう。何にせよ、無駄遣いをしないのは良い事である。

 

 しかし、向けられる視線が多い。

 

 そう感じるのは、黒い棘付きの鎧に身を包んだ一人の青年だ。フードで表情は読み取れないが、その実は軽く冷や汗が流れている。なぜ買い出しで鎧姿かというと、単にフードで顔を隠して落ち着きたいというだけでのポンコツさ。強敵相手に僅かにも怯まない大きな背中も、今日ばかりは形無しだ。

 なお、結果としてフルアーマー故に目線を向けられているという理由で落ち着けないというオチがつく選択ミス。内心で選択を誤った点を後悔するタカヒロが後ろから気配を感じ、年貢の納め時かと軽く溜息を吐いたタイミングだった。

 

 

「な、なにうちのママに手ぇ出してくれとんや棘々ェ!!」

「ぬおっ!?」

 

 

 突然と発生し後ろから直撃した突進の一撃に、タカヒロは“くの字”に折れ曲がった。ガチガチの防御力の反面、意外と身体は柔らかいらしい。

 このような事態に陥った経緯は、本日における朝食の時間帯にまで遡る。

 

====

 

 身体はセクハラで出来ている。血潮は美少女で心はスケベ――――

 

 

 などと詠唱が始まりそうな魔法を体現している者はまさかの女性であり、悪戯の神。オラリオにおいて双頭を張る片割れ、最強と謳われるロキ・ファミリアを束ねる神ロキそのものだ。セミロングな長さの赤髪を短いポニーテールでまとめており、デニムなど露出が多いボーイッシュな服と糸目な表情が特徴である。

 なお、最強の名に惹かれてロキ・ファミリアの狭き門を潜りぬけた女性冒険者がセクハラを受け幻滅するのは最早”日常”となっている。潔癖の傾向が強いエルフに至ってはビンタで挨拶する者も多いが、それが”ご褒美”になっていることを知るのは極僅かだ。

 

 そんなロキも、流石にボディタッチ系のセクハラは(はばか)られる団員が居る。レベル6でありナイン・ヘルの称号を持つ緑髪のハイエルフ、リヴェリア・リヨス・アールヴだ。

 そのために、彼女は毎度の如く別の方法。具体的に言うならばリヴェリアに対する呼び名でもって、セクハラというよりは揶揄って楽しんでいた。本日の朝食後、またいつもと同じことを口にする。

 

 

「やっぱり、リヴェリアはウチらの母親(ママ)や!」

「だ、誰が母親(ママ)だっ!!」

 

 

 もはや、ロキ・ファミリアにおいては通例の問答である。口に出される文言もセオリー通りであり、文字に起こせば違和感は無い。

 

 しかし本日一発目となる今回は、何かがおかしい。セオリーとの違いを述べるならば、リヴェリアの声が力強くやや上ずっている点だろう。気持ち薄赤い頬も、通常とは程遠い。

 普段からセクハラを仕掛けているロキは反応に対して即座に疑問を抱いて真顔に戻り、横に居た弟子であるレフィーヤに目を向ける。すると同じタイミングで逸らされたために、昨晩から今朝にかけて何かあったことは把握した。

 

 が、何かは分からない。リヴェリアは普段から団員の事を心配し、発言する傾向がある。滅多なことでは素を見せず時によっては自らが悪者になろうとも団員を心配するその姿は、ファミリアの母親と呼んで過言ではない代物だ。

 本人は毎度の如く母親という代名詞を否定し、故にロキは面白がって揶揄っている。いつもは「ハイハイ」という二言目が加わりそうなほどに冷酷に否定されるのがセオリーで、今回のような初々しい反応は初めてだ。しかも、何故かやや顔を赤らめている。

 

 

「ああ。そこのババア、昨日の夜に口説かれてたぜ」

「く、口説!?」

 

 

 そこに通りかかったベートが真実をぶちまけてしまい、エルフ群団を筆頭にリヴェリアの行方を見守って(監視して)いた団員にタコ殴りにされ蹴り飛ばされている。リヴェリア直伝で彼女達が習得したロープによる“逆さ吊るし”を受け、ロビーの上空で漂うこととなった。メーデーコール(緊急事態宣言)を行うも、昨日の所業もあって生憎と周囲は敵だらけであるために状況に変化はない。

 

 一方で、天界のトリックスターとの異名はどこへやら。事実を耳にしたロキは、まさかの事態にテンパっている。それでも昨夜の状況を整理している辺りは、彼女らしい思考回路の働き方だ。

 

 昨日の夜となればよく覚えており、ヘスティア本神が居た点は不本意ながらも、その眷属のために立食会が開催された日だ。終わってから後にリヴェリアが外出したとは思えず、また、ファミリアにおいて彼女に突撃できる程に肝の据わった男は在籍していない。

 そもそもにおいて、そんな空気は始めから終わりまで一切なかった。流石のロキでも、言葉足らずによる勘違い発生からのソレを補うと言わんばかりの“ぶっ壊れ発言”が出たことは予想だにしていない。

 

 ポンコツの口から出された発言はともかく、己のファミリアではないならば。可能性として浮かび上がるのは、その招かれた3人。

 奇遇にも、3名ともにロキ・ファミリアとはソコソコ深い仲にある。うち一人は女神であるために除外するとして、白髪コンビのどちらかと断定して良いだろう。

 

 

「ほ、ホンマかリヴェリア!?口説かれたって、あの白髪のどっちかか!?マジか!?」

「……私だって……あのように褒められたのは、初めてだ……」

 

 

 堕ちてる。いや、ギリギリセーフで堕ちる寸前か。桜が色づくかのように顔を赤らめ少しだけ身をよじって顔をそむける彼女の姿はナインヘルには程遠く、ロキが鼻血を出すか吐血しかねない対応を見せている。

 とここで、アイズ曰く「兎みたいな少年」もヘスティア・ファミリアであったことを思い浮かべる。その少年がアイズに視線を送っていたことは知っているため、節操のない者ではないと仮定するならば、リヴェリアを口説いた者は残り一人だ。

 

 タカヒロ、と名乗っている青年。エルフどころか全く違うヒューマンであり、普段においてリヴェリアとの接点は教育以外に見受けられない。リヴェリアも彼の事を少しは意識していた点はロキも分かっており仲が良いなとは思っていたが、空中散歩を楽しんでいる狼人が口走った内容が事実ならば、驚天動地の展開だ。

 それにしても、あのリヴェリアが。一体何を言われたのかと気になって仕方なく、ロキはコソコソと逃げようとするレフィーヤの肩を片手キャッチし、首に手をまわして耳元で内容を聞いている。リヴェリアは「やめろ」と小声で呟きロキの肩を剥がそうとするが、その力は恩恵がない時と同じようにひ弱であった。

 

 

「ぉ、ぉぅ……」

 

 

 当時の状況を思い出して顔を赤くしていたレフィーヤから“ぶっ壊れ発言”の内容を聞いたロキは、額に汗を浮かべながら目を見開き、真顔のままで唸ってしまう。堅物妖精(ハイエルフ)の心を動かすなど、どんな文句かと考えながら耳にしたのだが……予想を遥かに超えて核心に迫り、というよりは届いており、口説いている内容に唸るしかなかったのだ。

 

――――完璧や。

 

 もし彼本人が居たならば、そう口にしているであろう内容。事あるごとに母親(ママ)と口にしてちょっかいをかけるロキが見出していたリヴェリアの魅力を、青年は見事に言葉として表していたのである。これが向けられた相手がもしもロキ自身だったらどうなるか、となれば、最低でも少しは胸がときめいていただろうと思えてしまう。

 

 では、そんな言葉を掛けられた本人はどうなのだろうか。興味本位から「どうなんや」といつもの口調で後ろに居るリヴェリアに問いを投げたロキだが、全くもって反応がない。

 思わず身体ごと振り返り、軽く下げられた顔を覗き込む。すると、いつもは凛とした口調を声に出す口から、ボソボソと何かが呟かれていた。

 

 

「……嬉しかったさ」

「……なんやて?」

「ああ、嬉しかったさ!彼が言うように年輪を長く重ねてきたが、今までにないことだ!私に対して遜るわけでもなくいかがわしい目線を向けるわけでもなく、いつも気を遣ってくれる彼から先の言葉を掛けられて嬉しかったさ!!」

 

 

 聞き間違いかと思ったロキに、二度目の感想を言わされて。ロキすらも見たことのない赤面のまま、普段はクールな姿しか見せない彼女は吹っ切れていた。

 

 奇しくも最後は、悪戯好きの神に、イタズラに心をトンと押され。

 

 抱く感情が恋心の類だと気づいていない恋する乙女、ここに爆誕である。

 

====

 

 

「な、なにうちのママに手ぇ出してくれとんや棘々ェ!!」

「ぬおっ!?」

 

 

 あの場において「リヴェリアに春が来たでー!」と叫ぶと、先のベートの二の舞になる。ぶつける先のないハイテンションの結果が先ほどのタックルであり、くの字に折れ曲がったタカヒロと「なんだロキか」と何事もなかったかのようにスルーするヘスティアの横で、飛び退いて驚くベル・クラネル。

 もっとも、人間程度の力のタックルで青年が崩れることなど在り得ず数歩よろめいて踏みとどまっている。ロキが走ってくるのも感じ取っており、そのままの棒立ちでは彼女がダメージを負ってしまうため、身体を反って衝撃を和らげた格好だ。勿論この場合においては、カウンターストライクや報復ダメージは発動しない。

 

 

「嗚呼、神ロキか……先日は御馳走になった、素敵な食事会をありがとう」

 

 

 ヘスティアに似て、てっきり取っ組み合いが始まるかと思って身構えたロキだが、意外にも相手の反応は落ち着いておりしっかりとした礼儀もあった。思わず彼女も、真面目な反応をしなければと態度を改めてしまっている。

 

 

「……お、おう、気に入ってもらえたんなら何よりや。にしても、なんや元気無いの。あのあと別の店で飲んだんか?二日酔いか?」

「いや、昨夜の出来事を思い出して反省している。考えなしに口にすべきではなかった」

 

 

 真面目に彼が回答すると、ロキは口からドライアイスを口に含んでいるかのように溜息を吐いた。先ほどの紳士的な対応をされては怒るに怒れず、更には冗談で言っているようにも見て取れない。横ではヘスティアとベルも共に溜息を吐いている始末だ。

 とはいえ、ただ考えなしに思っていた内容をそのまま口にした。というだけの話で終わらないのが会話と呼ばれる行為である。これが便所の落書きならば問題は無かったが、加えてあの場においては証人が多すぎた。

 

 ロキ・ファミリアはもちろん、エルフで形成されるコミュニティにおいても昨晩の様相は伝言ゲームとなっているのが現状だ。当該者の男の情報は伏せられているものの、オラリオにおいて知らないエルフは極少数というレベルとなっている。

 たった今ヘスティアが口にした言葉「がんばれよタカヒロ君」が“誤解を解いた方が良い”なのか“責任を取れ”の類なのか、それは本人にしか分からない。どちらとしても、自身の鎧のような棘の道であることに変わりはないだろう。

 

 当時の流れと一連の状況は聞いていたロキだが、青年の口から出てきた言葉の真意は探らなければならないと考えている。招待してくれたリヴェリアを庇っただけなのかと問いを投げれば、予想だにしない答えが返ってきた。

 青年曰く、本音を羅列しただけのこと。更には覚悟なく口にした点こそ反省しているが、思っている事実であるために撤回するつもりは無いとの内容だ。

 

 さっそくロキは、魂を見て嘘か本当かを判別する。もちろん結果は驚きの白さであり、彼が嘘を口にしているということは有り得なくなった。

 

 

「……嘘やない、やと……!?タカヒロはん、よう口に出せたな……」

「尾ひれを付けているわけでも無し、嘘でもない。とはいえ口に出た理由は、あの犬が並べていたセリフにイラっときていたから、かな……」

「クソ度胸やなー……」

 

 

 はぁ。と、ため息が彼にも伝染する。最後の一文に対して魂を見たロキだが、その点についても嘘ではないことが判明していた。

 もっとも、もしもレフィーヤから聞いた言葉が上辺(うわべ)だけならば一発ぶん殴ってやろうと思っていたのが真相だ。しかしこうも驚きの白さとなると本気度合いを感じて罪悪感が芽生えており、ロキにしては大人しい対応となっている。

 

 しかし、問題は別のところにもある。名前を出さない点で恐らくは知らないのであろうベートという人物は狼であって、犬ではない。

 実のところはタカヒロとて、居酒屋やリヴェリアの口から彼の名前を聞いてベートという名前を知っている。しかしながら彼女を貶した人物の名前を口にしたくないだけであり、犬と狼については単純な勘違いであった。

 

 

「一応フォローしとくけど、あん時にリヴェリアの悪口を言ってたんはベート・ローガ、うちのレベル5や。そんで犬やのうて、狼やで」

 

 

 最後の点については、単純な彼の思い違いである。別にベートという人物を貶すために口にしていたわけでもなく、本当の事ならば謝罪したいと思っているが、謝罪したならばしたで乱闘になると考えコッソリと言い方を直すことを選択した。

 そして一応、確認のためにロキに言葉を投げている。

 

 

「……まじか」

「まじや」

「狼か」

「狼や」

「それは失礼」

「ええんやで(ニッコリ」

「いいのかい!?」

 

 

 思わず条件反射でツッコミを入れてしまったヘスティアに、「自業自得や」とロキは返事をする。何があったのかと尋ねるヘスティアに対して、以前にベートが酒場でタカヒロに殴りかかった時の状況を説明するとヘスティアも納得してしまっていた。

 むしろベルを貶した点についてを拾っており、「そんなやつは吊るされておけばいいんだよ!」と吐き捨てヘソを曲げてしまっている。実際のところ閉店時間まで吊るされていたことをロキが告げると、ヘスティアの機嫌も多少は改善するのであった。

 

 

「あ、リューさん。おはようございます」

「おはようございます、クラネルさん」

 

 

 その時に対面から歩いてくる、話の中に出てきた酒場の給仕服姿を見せるエルフの女性。美しく輝く金髪と凛々しい表情は、高貴と言われるエルフに相応しい。

 とはいえ、彼女は表情の薄さに定評がある。いつも酒場で見せている仏頂面のままであるがベルと挨拶を交わすと、その整った顔を青年の方へと一度向け、再びベルの方へと向き直った。

 

 

「クラネルさん、ロキ・ファミリアにおける昨晩の件ですが」

「えっ、リューさんも知っているんですか!?」

「……なるほど。ありがとうございます」

 

 

 思わず答えてしまったベルだが、どうやら誘導尋問の類だった模様。バッと両手で口を押さえる少年ながら、時すでに遅し。問題の“相手”が誰か分からなかったリューだが、エルフではないベルが知っているとなると、これで判明した格好だ。

 リューはそのまま身体をタカヒロに向け、フード越しに隠れている瞳に目を合わせる。青年もまたフード越しに見返しており、何が始まるのかと気が気でない彼に対し――――

 

 

「貴方でしたか。何があったかは掻い摘む程度に耳にしましたが、リヴェリア様と並ぶには程遠い。努々、精進を怠らないことです」

 

 

 リューは、中々に手厳しい言葉を口にした。後半はさておき、何があったかという内容を無関係のエルフまでもが知っているのかと考えると、青年の口からは溜息しか出てこない。

 しかしそうなると、逆にどのような男ならばエルフ的に許せるか気になるのがロキである。その質問を受けてしばし右手を口に当てて考える仕草を見せた彼女は、要点を上げるごとに指を一本ずつ立てて力説を行った。

 

 

「まずリヴェリア様より強く、頭脳明晰で容姿も申し分なく、優れた品性と度量を持ち、男らしく家事も料理もハイレベルに全てをこなし、日々の豪遊に困らぬ収入を持ち、様々な記念日を決して忘れることのない殿方です」

「尾ひれ背びれ抜きにハードルが高すぎないか……」

「世界中の全種族を探したかて、レア(珍しい)とかレジェンド(稀少極まりない)通り越してファンタズム(幻想級)やろ、そないな男……」

 

 

 そもそも男らしい家事と料理ってなんのことだ?と疑問符を浮かべるタカヒロとロキだが、互いに質問し合って首をかしげている。全くもって想像の欠片も浮かばない。

 そう考えながらリューを見るも、最初に口に出した本人は明後日の方向に向かってガッツポーズしているので聞くに聞けないために始末が悪い。鳥の鳴き声が小ばかにしているように響き渡り、秘め得る原初のポンコツさが垣間見えている。

 

 そんなガッツポーズも長くは続かず、ヘスティアを先頭として市場への移動が開始される。ヘスティア、ベル、リューの3名は何を買うのかと井戸端会議を続けており、とてもじゃないがエルフの女性一人が持てそうにない買い出しの内容を聞いてベルは冷や汗が流れていた。

 逆に集団の後方少し離れた距離では、タカヒロがロキに肩をゆすられ捲し立てられている。ロキが言うことは正論だらけであるだけに、タカヒロも、ああだ、こうだと言い返せない。

 

 

「せやかて自分はリヴェリアの事どう思うとるんや?ホレホレ、はよゲロってまえ」

 

 

 彼女の事を好きかどうかと言われれば、容姿的には余裕でゴールラインを越えている。陸上などの周回できるトラックで例えるならば、余裕で2周3周している程に高いものだ。

 なんせ種族はエルフであり、神々にも負けない容姿と謳われる程。もっとも青年としては昨夜の言葉通りで、容姿よりも内面に魅力を感じているワケなのだが、この容姿が後押ししていることもまた事実。

 

 今のところ現を抜かす程ではないが、青年としても彼女の性格や思いやりの心に惹かれているところもあり、共に過ごしていて楽しいと感じているのも事実である。その抱いている感情を好意と捉えるかどうかは人による所があるだろうが、似たようなベクトルにある事に違いは無い。

 なんせ、腐りかけていた己を引っ張り上げてくれた存在だ。そんな情景が焦がれに変わったとしても何ら不思議ではなく、相手を守り、更なる一歩を知るうちに感情が変わったとしても、至極当然の経過である。

 

 最も確実な答え合わせとしては、あれ程のガントレットを得たというのに、今だ数値的な検証を行っていないということだ。装備の事よりもロキ・ファミリアの立食会に参加することを優先し彼女と過ごしていた事こそが、答えそのものを示していると言っても過言では無いだろう。

 

 

 と、いうことで。

 バシバシと肩を叩いてくるロキに対して、普段のような仏頂面をキープし此度も声に出して回答こそしないものの。青年側からリヴェリアへと向けられている好感度も、実のところは非常に良好なのである。

 

 

「リヴェリア相手にあんな言葉掛けといて、まさかこのままとか無いやろな?」

「……そうだな」

 

 

――――とりあえず、今度メシでも誘ってみるか。

 

 フードの下で生まれる溜息を作る口元は、少しの緊張感を抱いていた。

 




次回、設定がほんの僅かにしか見つけられなかった人物が登場します。
この人が出てくる2次小説ってあるのかな……


・それぞれの内心
ロキ:今のところファミリア間がどうこう気にせず愉しんでる
タカヒロ:最近相手を意識しだした
リヴェリア:本日爆誕。実は爆誕してから行方不明

・直近の予定イベント
本日昼:???⇒次話にて。
明後日:教導再開

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