勢いで書き始めました。よくある転生もので、ご都合主義満載の内容ですが、それでもいいという奇特な方はしばしおつきあいください。
全身から力が抜けていくのを感じる。最早ナースコールに手を伸ばすこともできない。
そんな中で意識だけは鮮明だった。見慣れたホスピス病棟の無機質な天井も、これで見納めだと思うと物悲しい。
次第に視界もぼやけてきた。静かに、ゆっくりと目蓋が落ちてくる。
明確な「死」を感じる。死神の鎌が首筋に触れている姿を幻視した。
覚悟はしていたはずだが、やはり最後に思うことはたったひとつだった。
『死にたくない』
願ったところでどうにもならないことは分かり切っていたが、そう願わずにはいられなかった。震えはもう止まっていた。いや、最初から身体は震えてなどいなかったのかもしれない。
ああ、これで終わりか。次に生まれ変わる時はなによりも健康な身体が欲しい。
ただそれだけを願いながら目蓋を閉じた。
意識が落ちていくの感じたその直後、耳をつんざく強烈な音が鳴り響き、心臓が跳ね上がった。
反射的に、両目を見開く。そこはいつもの病室ではなく、見慣れぬ部屋だった。そこが瓦礫で埋まっている。
「……は?」
思わず間の抜けた声が漏れた。先ほどの大音響は瓦礫が崩れた音だったのだろう。その瓦礫の部屋のただ中で、俺は上体を起こした。
特に何も考えず、立ち上がる。
そこで、またしてもぎょっとした。
終末医療の末、手足は枯れ枝のようにやせ細り、車イスの生活を余儀なくされた俺が、自分の足で立っていた。そのことに驚愕する。
思考の空隙を埋めるように、二度目の崩落が起こった。
状況はまるで不明だが、とりあえず避難するしかない。
出口を探すために辺りを見渡すと、視界の端に一人の少女が飛び込んできた。その姿に、身をこわばらせる。
その少女は両の目と口から血を流し、瓦礫の下敷きになっていた。素人目に見てもマズい状態だと分かる。
「――くそッ!」
見捨てることもできず、少女の元へと駆け寄る。自分が真面に走れたことは僥倖だった。持ち上げた瓦礫が酷く軽く感じたが、そんなことに構っている余裕はない。少女を抱きかかえると、穴の開いた天井に向かって飛び上がる。その行動に何の疑問も抱かなかった。
自分の中に何か得体の知れない超常的な力が宿っていたのが、直観的に理解できたからだ。
空を駆け、数キロ離れた場所に腰を下ろす。
どうやらここは日本ではないらしい。飛行中に確認できた看板はいずれも英語だった。だとすれば、イギリスかアメリカか、或いは他の英語圏の国か。
地面に下ろした少女の顔を確認する。蒼白だった顔色は、すでに血の気を取り戻していた。正直あと五分でも治療が遅れていたら絶命していただろう。
何故こんな『治療』ができたかは分からない。だが、できるという確信があった。
自身に宿っている力に改めて驚かされる。何故そんなものが自分の中にあるのかは不明だが、与えられた力はありがたく使わせてもらった。
一息ついたところで、改めて自身の能力について思考を巡らせた。
まずは内部展開。身体の内側に力場を内包させる。身体能力が強化され、一部の能力の行使が可能になる。あの場所から飛び立った時に使った力だ。見た目に変化はない。大抵のことはこの形態で片付きそうではある。
次に外部展開。鎧のようなものを装着するタイプ。中々にカッコイイがかなり目立つし、無邪気にはしゃげるほど若くもない。
更に先、言うならば最終形態のようなものもあるが、できるなら使う機会は訪れないでほしい。
「―――ん、ううん……」
どうやら少女が目覚めたようだ。
「おはよう。身体の調子はどうかな?」
「え? 貴方は? ……身体?」
目覚めた少女はよく分からないといった表情で身体を確かめている。どうやら痛みなどはないようだ。
「はじめまして、俺の名前は神宮寺紫音。君の名を教えてくれるかな? お嬢さん」
「わたし? わたしは、わたしは誰、なんでしょう?」
…………記憶喪失?