あれからエルフナインとはよく会話するようになった。キャロルとこんな話をしたとか、キャロルがこんな反応をしたとか、そんなことも話す。俺も月並みとはいえ多少のアドバイスをする。そんな関係だ。だが、未だキャロルを改心させることは出来ていないようだ。
その日もエルフナインと会話をした。だがいつもの様子とは少し違っていた。何かを言いよどんでいるような、そんな感じだった。
今、俺の目の前を歩いている姿も妙だ。足音を立てないように歩き、キョロキョロと辺りを気にして、視線が定まっていない。実に分かりやすい。
「エルフナイン」
俺が声を掛けると、エルフナインは今にも飛び上がりそうな反応でこちらに振り向いた。
「し、紫音さん……」
「水臭いな。挨拶もなしに出て行くつもりか?」
「気づいて、たんですか?」
「そんな恰好で行くつもりか? ほら、シャツとズボン。靴脱いで、足上げる」
「あ、はい……」
まさか下着とフードマントだけとは思わなかった。もしかして警察に保護されるためかな。だとすれば悪いことしたか?
「テレポート・ジェムは持ってるか?」
「あ、いえ、これから探そうかと……」
「ほら、これで日本まで行けるから」
情報収集のために用立てて貰った俺のジェムをひとつ渡す。
「あ、ありがとうございます。あ、あの、紫音さんも……」
「エルフナイン。それ以上はいけない」
俺がエルフナインの言葉を遮ると、それを拒絶と受け取ったのか、彼女の顔が曇った。
「君は諦めたわけじゃないんだろ? 内から変えるのが難しいなら、外から変える。その判断は間違ってない。君には君の、俺には俺のやるべきことがある」
優しくエルフナインの髪を撫でる。
「迷わず進め。歩みを止めない者にのみ、未来は訪れる」
「――はいっ! 行ってきます!」
テレポート・ジェムの光に包まれて、エルフナインは姿を消した。それを見届けた直後、背後から声が掛かる。
「――派手な反逆だな。縛り上げてマスターに差し出すべきか」
「よく言う。全てキャロルの掌の上だろうに」
「否定はしない」
物陰からゆっくりとレイアが姿を見せる。
「レイアが追立役か。地味な仕事だな」
「命令とあれば否やはない」
「俺とキャロルの契約、覚えてるか?」
「問題ない。マスターから言い含められている」
「そうか、邪魔して悪かったな」
「構わない。時間的猶予はある。が、そろそろ追いかけたほうがよかろう」
レイアの身体が光とともにかき消えた。エルフナインを追ったのだろう。それを見送ると、俺はきびすを返した。
事態は動き始めた。俺もどう動くか、考えておかねばなるまい。