キャロルからはそれなりの信頼を得ていたらしく、俺は作戦前のブリーフィングへの参加を許されていた。また、キャロルから錬金術の講義を受けるかたわら、彼女が機嫌のよい時は計画の大筋を聞くこともあった。なので大まかな流れは理解している。
「次はその身に譜面を刻むつもりだろう?」
「ああ。まだ奴らはダインスレイフの実用化までこぎつけていないようだが、それが完成次第な」
「その役目、俺がやろう」
「……本気か?」
「ああ、ダインスレイフで強化されたシンフォギアの一撃を受ければいいんだろ? まあ、俺が受けても意味がないから、受ける媒体を貸してもらう必要があるけど」
「よかろう。その時までに用意しておく」
それなりに重要な役割だったはずだが、意外にもキャロルはすんなりと了承した。
あれから一週間が経ち、ようやく出撃命令が下った。その間に何度かキャロルと話をしたが、計画に変更はなかった。だが迷っているふしはある。まあ、長年構想してきた計画を、実行段階になって変更、或いは中止するには何か大きな切っ掛けが必要だろう。
眼下に広がるのは広大な発電施設。その各所からはすでに黒煙が上がっている。
アルカ・ノイズは使っていない。施設の破壊くらい大した労力ではないからな。
さて、姿を現してからそれなりに経つが、やっと動きだしたか。
「――兄さんっ!」
「セレナか。それに調と切歌、久しぶりだな」
「……紫音、さん」
「なんでそっちにいるデスかッ!」
改修されたギアは天羽々斬とイチイバル、ガングニールだったな。奏はまだ復帰できないか。シンフォギアと違って、融合した聖遺物は自力で修復するしかないからな。
「一応言っておくが、俺は俺の意思でこの場に立っている。遠慮は無用だ」
「兄さんから貰った力で兄さんと戦うのは気が引けますが、他に方法が無いのなら、私が兄さんを止めてみせます」
三人が戦闘態勢をとる。確か調と切歌は専用のLiNKERがなかったはずだ。身体に合わないものを使用しているのか? ならば早めに退場させたほうがいいな。
「まずは私がッ!」
調の放った二枚のノコギリ刃が迫る。一枚は俺の左腕を、もう一枚は俺の右脚を切断した。
「――調さんッ! 右ですッ!」
自身の攻撃の結果に呆けていた調がこちらに振り向く。だがもう遅い。調の腹部に膝蹴りを叩きこみ、あらわになった首筋に手刀を打ち込む。直後に反転、切歌へと距離を詰める。
「――ッ! なめるなデスッ!」
横薙ぎの鎌が俺の頭上を通り過ぎる。低い体勢から放ったアッパー、それはギリギリでかわされた。だが逆の手で放った死角からの手刀は、綺麗に首筋へと吸い込まれた。
シンフォギアのバリア機能を突き破り、致命傷を与えずに意識だけを刈り取る。中々に加減が難しい。
「鏡像……。奏さんの言ってた通りですね」
セレナが小さく独りごちる。奏は俺の手の内を一番身をもって知っているからな。セレナに助言していたのだろう。
セレナの頭上を飛び越え、元の位置に戻ろうと飛び上がった。あの場所じゃあ、二人が巻き込まれるからな。
空中で身体を捻っているとき、セレナの前に出現した光の盾から大口径のビームが照射された。だが、それはミラーバリアに拡散され、発電施設の各所に突き刺さる。
「この状況でそれは悪手だぞ」
「――なら、これでッ!」
セレナの腕部から三本ずつ、計六本の短剣が射出された。それぞれが意思をもっているように空中を舞い、その尖端から細いビームが射出される。それをセレナに反射しようとするが、セレナも動いている。
「まあいいさ、しばらくつきあってやる」